※本記事は、株式会社ニッコンホールディングス の有価証券報告書(第83期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッコンホールディングスってどんな会社?
同社は、自動車物流を核に運送・倉庫・梱包・テスト事業を展開する総合物流企業グループの持株会社です。
■(1) 会社概要
1953年に株式会社日本梱包運搬社として創業し、運送事業を開始しました。1968年に日本梱包運輸倉庫へ商号変更し、1997年には東証一部に指定替えを行いました。2015年に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更するとともに、事業を新設の日本梱包運輸倉庫へ承継しました。2024年には米国のキャリアカー事業を買収するなど、海外展開も加速させています。
2024年3月31日現在、グループ全体の従業員数は12,802名、単体では39名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は英国の投資ファンド等の資産管理を行う銀行名義、第3位は米国の証券会社名義となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.18% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC)RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST | 5.06% |
| GOLDMAN, SACHS & CO.REG | 4.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表執行役社長は黒岩正勝氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒岩 正勝 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1973年同社入社。常務取締役、専務取締役、営業本部長等を経て、2009年代表取締役社長に就任。2015年10月より現職。 |
| 大岡 誠司 | 代表取締役専務執行役員 | 1983年同社入社。梱包営業部長、執行役員等を経て、2017年日本梱包運輸倉庫代表取締役社長執行役員に就任。2021年6月より現職。 |
| 枩田 泰典 | 取締役常務執行役員 | 1982年同社入社。経理部長、関係会社管理部長、執行役員等を歴任。2021年取締役常務執行役員に就任し、現在は法務部長を兼務。2021年4月より現職。 |
| 本橋 秀浩 | 取締役執行役員 | 1988年同社入社。人事部長、執行役員等を歴任。2021年取締役執行役員に就任し、現在はHR統括部長を兼務。2021年6月より現職。 |
| 山田 起王威 | 取締役執行役員 | 1980年三菱商事入社。メタルワン副社長執行役員等を経て、2019年同社入社。営業企画室長を務める。2021年6月より現職。 |
| 川﨑 秀樹 | 取締役監査等委員 | 1986年同社入社。勤労部長、日本梱包運輸倉庫総務部長、同社執行役員、監査役等を歴任。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、高麗愛子(弁護士)、尾関竜太郎(尾関代表取締役社長)、奥田哲也(元国土交通省自動車局長)、武田佳奈子(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運送事業」「倉庫事業」「梱包事業」「テスト事業」および「その他」事業を展開しています。
■運送事業
四輪・二輪の完成自動車をはじめ、自動車部品、住宅設備、農業用機械などの輸送を行っています。トラック輸送にとどまらず、鉄道や海上輸送を組み合わせた複合一貫輸送サービスを提供し、効率的な物流網を構築しています。
収益は、顧客であるメーカー等から受け取る輸送料金が主な源泉です。運営は、中核子会社の日本梱包運輸倉庫をはじめ、日本陸送、メイコン、日本運輸などの関係会社55社が行っています。
■倉庫事業
四輪・二輪完成自動車、自動車部品、住宅設備、農業用機械などの保管業務を行っています。単なる保管にとどまらず、在庫管理や入出庫業務などのロジスティクスサービスを提供し、顧客のサプライチェーンを支援しています。
収益は、顧客から受け取る保管料や荷役料などが中心です。運営は、日本梱包運輸倉庫のほか、日本陸送、メイコンなどの関係会社27社が行っています。
■梱包事業
流通加工、自動車部品等の納入代行、輸出梱包などを行っています。製品の特性に合わせた最適な梱包設計や資材の提供、工場内での請負作業など、物流の前工程・後工程を含めたサービスを提供しています。
収益は、顧客から受け取る梱包料や作業料などが主な源泉です。運営は、同社および日本梱包運輸倉庫のほか、NK PARTS INDUSTRIES,INC.などの関係会社35社が行っています。
■テスト事業
四輪・二輪の完成自動車および自動車部品、農業用機械などのテスト業務を行っています。車両の実走テストや部品の性能評価など、開発段階における各種試験を受託しています。
収益は、自動車メーカー等から受け取る業務受託料が源泉です。運営は、主に株式会社オートテクニックジャパンのほか、関係会社4社が行っています。
■その他事業
通関業、車両の修理・整備、石油製品の販売、損害保険代理店業、不動産の売買・賃貸、廃棄物の処理、発電・売電事業など多岐にわたるサービスを展開しています。
収益は、通関料、整備料、商品売上、保険手数料、賃貸料などが源泉です。運営は、同社および日本梱包運輸倉庫のほか、関係会社30社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、全体としては増加傾向にあります。特に直近では2,200億円台に達し、過去最高の水準となっています。経常利益も安定して200億円台を維持しており、利益率も10%台後半から11%前後で安定的に推移しています。当期純利益も堅調に推移しています。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,995億円 | 1,825億円 | 1,982億円 | 2,121億円 | 2,223億円 |
| 経常利益 | 225億円 | 206億円 | 216億円 | 221億円 | 239億円 |
| 利益率(%) | 11.3% | 11.3% | 10.9% | 10.4% | 10.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 103億円 | 107億円 | 84億円 | 84億円 | 92億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益も増益となっており、営業利益率は前期からわずかに改善しました。全体として、収益性は安定しており、事業規模の拡大に伴い利益額も伸長していることが分かります。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,121億円 | 2,223億円 |
| 売上総利益 | 306億円 | 328億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.4% | 14.7% |
| 営業利益 | 196億円 | 212億円 |
| 営業利益率(%) | 9.2% | 9.6% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が68億円(構成比59%)、その他経費が25億円(同22%)を占めています。売上原価においては、運送原価が90億円(構成比47%)、梱包原価が47億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで売上高が増加しました。特にテスト事業は大幅な増益を達成し、利益率も高い水準にあります。運送事業と梱包事業も増収増益となりましたが、倉庫事業は売上が増加したものの利益は微減となりました。
| 区分 | 売上(2023年3月期) | 売上(2024年3月期) | 利益(2023年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運送事業 | 967億円 | 1,004億円 | 51億円 | 56億円 | 5.6% |
| 倉庫事業 | 377億円 | 389億円 | 84億円 | 83億円 | 21.4% |
| 梱包事業 | 496億円 | 538億円 | 30億円 | 33億円 | 6.2% |
| テスト事業 | 209億円 | 229億円 | 22億円 | 33億円 | 14.5% |
| その他事業 | 71億円 | 64億円 | 11億円 | 9億円 | 14.8% |
| 調整額 | - | - | -2億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 2,121億円 | 2,223億円 | 196億円 | 212億円 | 9.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金を使って投資を行い、同時に借入金の返済なども進めている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 325億円 | 311億円 |
| 投資CF | -225億円 | -243億円 |
| 財務CF | -2億円 | -44億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「地球的視野に立ちビジネスロジスティクスを介し『共有できる歓び』『共感し得る価値』『共生したる環境』を先進創造し、お客様・株主様・従業員と共に社会の繁栄に貢献する」ことを基本理念として掲げています。この理念のもと、健全な事業活動を通じて企業責任を果たし、国家・地域社会の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「自前主義・手の内管理」という独自の戦略を重視しています。自社保有のファシリティやドライバーを活用することで、時間帯に関わらず柔軟な業務遂行を可能にし、顧客ニーズに対応しています。また、安全を最優先事項とし、法令順守と社会的責任を果たす企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月より第13次中期経営計画をスタートさせ、3ヵ年計画に取り組んでいます。最終年度等の詳細な数値目標については有価証券報告書本文に記載がありませんが、2025年3月期の目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:2,500億円
* 営業利益:240億円
* 営業利益率:9.6%
■(4) 成長戦略と重点施策
第13次中期経営計画において、「海外事業」「循環事業」「衣食住事業」の3つを成長ドライバーとして掲げています。新規倉庫の建設やM&A(ダンボール製造会社、産廃収集運搬事業、米国キャリアカー事業等)を通じて事業基盤を強化しています。また、「2024年問題」に対しては、自前主義による柔軟な業務遂行、長距離輸送の乗り継ぎ運行、荷役時間の短縮などで対処していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「安全最優先」を基本とし、「次世代物流の構築」に向けて高度物流人材の投入や若手育成に注力しています。一橋大学での寄付講座開講や「ニッコン経営スクール」の実施、トレーニー制度による若手の海外研修などを通じ、次世代リーダーを育成しています。また、多様な人材の確保に向け、外国人技能実習生や障がい者の受け入れ、女性採用の推進、ホワイトカラーエグゼンプション制度の導入推進など、環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 42.8歳 | 14.6年 | 6,224,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.5% |
| 男性育児休業取得率 | 34.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.8% |
※数値は日本梱包運輸倉庫株式会社の実績です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(国内18.3%)、役職者全体に占める女性の割合(国内11.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 燃料費の変動
輸送用車両の燃料費は、原油価格や為替相場の変動により影響を受けます。同社グループは顧客との協議により適正料金の収受を図りますが、急激な価格上昇や転嫁が困難な場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制等
運送事業の一部は、「自動車NOx・PM法」や「生活環境確保条例」等の環境規制を受けています。車両代替や排出ガス低減装置の導入で対応していますが、規制強化によるコスト増加の可能性があります。
■(3) 重大事故の発生可能性
社会的責任を最優先に営業活動を行っていますが、重大な交通事故が発生した場合、社会的信用が低下し、営業停止や事業許可取り消し等の行政処分を受ける可能性があり、業績に影響を与えるリスクがあります。
■(4) 人材の確保・育成
労働人口の減少や「2024年問題」によるドライバー不足が懸念されています。多様な人材の採用や就業環境の改善に努めていますが、必要な人材を確保できない場合、事業の維持・拡大が困難になり、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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