※本記事は、ニッコンホールディングス株式会社の有価証券報告書(第85期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ニッコンホールディングスってどんな会社?
自動車や住宅設備等の輸送・保管・梱包を一貫して手掛ける、独立系の総合物流企業です。
■(1) 会社概要
1953年に日本梱包運搬社として創業し、1968年に日本梱包運輸倉庫へ商号変更しました。1970年に東証二部上場、1997年に東証一部指定を受け、2015年の持株会社体制移行に伴い現社名へ変更しました。国内拠点の拡充に加え、近年は東南アジアや北米、中南米など海外展開も積極的に進めています。
従業員数は連結で13,746名、単体で43名です。筆頭株主は金融機関等を通じて保有するゴールドマン・サックス証券関連で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位も金融機関が名を連ねています。国内外の幅広い顧客基盤を持ち、大規模な物流インフラを支える体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| GOLDMAN, SACHS & CO.REG(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) | 21.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.33% |
| THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDON SPECIAL ACCOUNT NO.1(常任代理人 みずほ銀行) | 5.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長社長執行役員は黒岩正勝氏が務めています。社外取締役比率は54.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒岩正勝 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1973年に同社へ入社し、鈴鹿センター営業所長や営業本部長などを歴任。1986年に取締役に就任し、常務、専務を経て2009年に代表取締役社長に就任。2015年10月より現職。 |
| 大岡誠司 | 代表取締役専務執行役員 | 1983年に同社へ入社し、KD梱包営業所長や梱包営業部長を歴任。2011年に執行役員、2016年に取締役執行役員へ就任し、国内事業部長などを経験。2021年6月より現職。 |
| 枩田泰典 | 代表取締役常務執行役員 | 1982年に同社へ入社し、経理部長や関係会社管理部長などを歴任。2012年に執行役員および取締役執行役員に就任し、法務部長や海外事業部長を経験。2025年6月より現職。 |
| 本橋秀浩 | 取締役執行役員 | 1988年に同社へ入社し、人事部長や勤労部長などを歴任。2015年に日本梱包運輸倉庫の執行役員に就任。2020年に同社の執行役員となり、グループ管理部長等を経て2026年4月より現職。 |
| 川﨑秀樹 | 取締役監査等委員 | 1986年に同社へ入社し、第四営業部課長や勤労部長を歴任。日本梱包運輸倉庫の総務部長や業務監査室長、監査役等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、高麗愛子氏(ルネス総合法律事務所パートナー弁護士)、尾関竜太郎氏(尾関代表取締役社長)、神田一成氏(ワイエムアセットマネジメント代表取締役)、ClarkGraninger氏(Reboot代表取締役社長)、奥田哲也氏(運輸総合研究所専務理事)、武田佳奈子氏(IAU税理士法人岩田事務所税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運送事業」「倉庫事業」「梱包事業」「テスト事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 運送事業
四輪・二輪完成自動車および自動車部品をはじめ、住宅設備や農業用機械などの輸送サービスを国内外の顧客へ幅広く提供しています。多様な輸送ニーズに応える専門的な車両ネットワークを構築しています。
顧客であるメーカーなどから貨物輸送の対価として運送収入を受け取ります。運営は主に日本梱包運輸倉庫のほか、関連会社57社が行っています。
■(2) 倉庫事業
四輪・二輪完成自動車や自動車部品、住宅設備、農業用機械などの保管サービスを提供しています。国内外に多数の拠点を有し、顧客のサプライチェーンを支える重要なインフラとして機能しています。
顧客から製品や部品の保管および入出庫業務の対価として倉庫収入を受け取ります。運営は主に日本梱包運輸倉庫のほか、関連会社28社が行っています。
■(3) 梱包事業
流通加工や自動車部品などの納入代行、および輸出向けの梱包サービスを提供しています。物流現場における高度な包装技術と作業ノウハウを活かし、顧客の多様な出荷要件に対応しています。
顧客から依頼された包装作業や物流現場での加工業務の完了に伴い、梱包収入を受け取ります。運営は主に同社および日本梱包運輸倉庫のほか、関連会社36社が行っています。
■(4) テスト事業
四輪・二輪完成自動車や自動車部品、農業用機械などのテスト業務を受託し、製品の性能評価や品質向上を支援するサービスを提供しています。
メーカーなどから一定期間のテスト作業を通じた成果の提供に対する対価として、テスト収入を受け取ります。運営は主にオートテクニックジャパンのほか、関連会社4社が行っています。
■(5) その他
通関業や車両などの修理および整備、石油製品の販売、損害保険代理店業、不動産の売買や賃貸管理、廃棄物処理、包装材の製造販売などを行っています。
各事業のサービス提供や販売に伴う手数料や売上を収益源としています。運営は主に同社および日本梱包運輸倉庫のほか、関連会社37社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、約1,982億円から2,699億円へと順調に拡大しています。経常利益も概ね安定して成長しており、利益率は9%〜10%台を維持しています。国内外での物流拠点の拡充や業務量の増加が寄与し、着実な事業成長を遂げていることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,982億円 | 2,121億円 | 2,223億円 | 2,479億円 | 2,699億円 |
| 経常利益 | 216億円 | 221億円 | 239億円 | 240億円 | 249億円 |
| 利益率(%) | 10.9% | 10.4% | 10.7% | 9.7% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 84億円 | 84億円 | 92億円 | 64億円 | 92億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も順調に拡大しました。売上総利益率は約16%弱で安定しており、利益をしっかりと確保できる構造です。積極的な設備投資に伴う減価償却費の増加などにより営業利益率はやや低下したものの、営業利益額自体は前期を上回っており、強固な収益基盤を有しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,479億円 | 2,699億円 |
| 売上総利益 | 388億円 | 428億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.7% | 15.9% |
| 営業利益 | 232億円 | 238億円 |
| 営業利益率(%) | 9.3% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が87億円(構成比46%)、その他の人件費が78億円(同41%)を占めています。売上原価においては、運送原価が1,085億円(構成比48%)、梱包原価が498億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の運送事業は業務量の増加により増収となりました。倉庫事業も拠点の新増設による効果で保管取扱量が増加し、売上を伸ばしています。梱包事業およびテスト事業についても業務量の増加が寄与して堅調に推移しており、すべての報告セグメントにおいて前年を上回る売上を計上しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 運送事業 | 1,180億円 | 1,243億円 |
| 倉庫事業 | 409億円 | 430億円 |
| 梱包事業 | 574億円 | 576億円 |
| テスト事業 | 242億円 | 246億円 |
| その他 | 75億円 | 203億円 |
| 連結(合計) | 2,479億円 | 2,699億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 276億円 | 382億円 |
| 投資CF | -540億円 | -256億円 |
| 財務CF | 191億円 | -111億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「我々は、地球的視野に立ちビジネスロジスティクスを介し『共有できる歓び』『共感し得る価値』『共生したる環境』を先進創造し、お客様・株主様・従業員と共に社会の繁栄に貢献する」ことを基本理念に掲げています。この理念のもと、健全な事業活動を通してステークホルダーへの責任を果たし、国家や地域社会の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「グループ基本理念」や「グループ行動指針」に基づき、物流事業を通じて新たなサービスを創出することで持続可能な社会の実現と企業価値の向上を図る文化を重視しています。安全・安心を最優先とし、一人ひとりの「個」と「多様性」を尊重して能力を最大限に引き出すことで、誇りと活気のある組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2027年3月期からスタートする「第14次中期経営計画」において、地球環境問題をはじめとした社会課題に対応しながら、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しています。最終年度である2029年3月期の目標として、以下の数値を掲げています。
・売上高:3,500億円
・営業利益:330億円
・営業利益率:9.4%
・自己資本利益率(ROE):10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略の実行と収益基盤の強化を最重要課題とし、既存顧客の深耕や海外展開を支える物流拠点の確保、自動化設備等への投資を加速させます。国内では半導体や医療機器などの成長産業での新規開拓を進め、海外では一貫物流サービスの提供による利益成長を図ります。また、資本コストを重視した投資判断を徹底し、サプライチェーン全体の生産性向上や経営基盤の強化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の時代を切り拓く原動力は人材であるとの認識のもと、現場力および変革推進力を磨き続けるための教育と人材投資を積極的に推進しています。「多様な人材の活躍」「個の力の発揮と結集」「安全と成長を基盤とした働き甲斐ある組織づくり」を柱とし、女性管理職候補層の育成やグローバル人材の育成、資格取得の推奨などを通じて人的資本経営を実践しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.2歳 | 14.2年 | 6,164,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.9% |
| 男性育児休業取得率 | 47.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員全体に占める女性の割合(24.1%)、役職者全体に占める女性の割合(17.6%)、CO2排出量削減率(6.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 燃料価格や為替相場の変動によるコスト増
輸送用車両の燃料費は原油価格や為替相場の変動に影響を受けます。コスト増が生じた場合は顧客との協議による適正な料金収受を図りますが、急激な上昇や料金転嫁が困難な場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制の強化による追加コストの発生
運送事業の一部では、自動車NOx・PM法や生活環境確保条例などの規制を受けています。車両の代替や排出ガス低減装置の取り付けなどで対応していますが、今後さらに規制内容が変更・強化された場合、追加のコストが発生する可能性があります。
■(3) 重大な交通事故等による信用の低下と行政処分
社会的責任を最優先に営業活動を行っていますが、万一重大な交通事故などが発生した場合、社会や顧客からの信用が低下し、事業所の営業停止や事業許可の取り消しといった行政処分を受ける可能性があります。
■(4) 自動車業界の動向への高い依存度
同社の連結売上高のうち、自動車業界向けの取引が50%超を占めています。そのため、主要な顧客企業における生産調整や物流需要の減少などが発生した場合、業績や財務状況に直接的な影響を及ぼす可能性があります。



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