神奈川中央交通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神奈川中央交通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神奈川中央交通は東京証券取引所プライム市場に上場し、旅客自動車事業、不動産事業、自動車販売事業などを展開しています。直近の業績は、売上高1,268億円(前期比7.3%増)と増収を達成した一方で、減価償却費や人件費の負担増が影響し、営業利益は68億円(同8.3%減)の減益となりました。


※本記事は、神奈川中央交通株式会社の有価証券報告書(第152期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 神奈川中央交通ってどんな会社?


旅客自動車事業を中心に、不動産や自動車販売など地域に密着した幅広い事業を展開しています。

(1) 会社概要


1921年に相武自動車として設立され、乗合バス等の自動車運輸事業を開始しました。1949年に東京証券取引所へ株式を上場し、1951年に現在の神奈川中央交通へ商号を変更しています。近年では、2025年にグループ会社の吸収合併によるバス事業の再編を行い、2026年には不動産関連会社の株式を取得するなど事業基盤の強化を進めています。

従業員数は連結6,432名、単体3,757名です。筆頭株主は事業会社である小田急電鉄で、第2位および第3位には信託銀行等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
小田急電鉄 45.41%
横浜銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) 4.99%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は今井雅之氏が務めており、社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
今井雅之 代表取締役社長社長執行役員 1992年同社入社。経営企画部長、執行役員、専務執行役員等を経て、2023年より現職。
大木芳幸 取締役専務執行役員 1984年同社入社。事業部長、経営企画部長、常務取締役、執行役員等を経て、2020年より現職。
住吉利夫 取締役監査等委員 1985年同社入社。経理部長、人事部長、神奈川中央交通東代表取締役社長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、星野晃司(小田急電鉄代表取締役会長)、結城正博(横浜ゴム取締役)、森重俊也(元国土交通審議官)、木野綾子(弁護士)、網本重之(公認会計士)、片桐春美(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、旅客自動車事業、不動産事業、自動車販売事業およびその他の事業を展開しています。

旅客自動車事業


乗合バス事業、貸切バス事業、タクシー事業を通じて、地域住民や観光客に対する旅客運送サービスを提供しています。自動運転バスの実証実験など、持続可能な次世代モビリティへの転換に向けた取り組みも積極的に推進しています。

顧客から運賃や利用料金を受け取る収益モデルです。乗合バス事業は同社が運営し、貸切バス事業は神奈中観光、タクシー事業は神奈中タクシーなどが事業を担っています。

不動産事業


湘南エリア等を中心とした戸建住宅などの分譲事業や、オフィスビル・商業施設などの不動産賃貸事業を展開しています。保有資産の一元管理や高度利用の推進により、不動産事業の持続的な成長を目指しています。

顧客への不動産販売代金やテナントからの賃貸料を主な収益源としています。分譲事業および賃貸事業ともに、同社や水島商事などが運営を行っています。

自動車販売事業


バスやトラックなどの商用車、および輸入車の販売と整備サービスを提供しています。顧客のニーズに合わせた適切な車両の提供により、物流や旅客輸送の基盤を支えています。

顧客からの車両販売代金や整備料金を受け取るビジネスモデルです。商用車販売は神奈川三菱ふそう自動車販売や中央自動車が、輸入車販売は神奈中相模ヤナセが運営を行っています。

その他の事業


流通事業、レジャー・スポーツ事業、飲食事業、ホテル事業、自動車整備事業、商用車架装事業など、人々の生活に密着した多様なサービスを展開しています。

各サービスの提供対価や商品の販売代金が収益源です。飲食事業は神奈中システムプラン、流通事業は神奈中商事、情報サービス事業は神奈中情報システムが担うなど、多数のグループ会社が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は旅客需要の回復や自動車販売台数の増加などにより、過去5期にわたり増加傾向が続いています。一方、経常利益や当期利益については順調に拡大していたものの、直近の期においては設備投資に伴う減価償却費の増や人件費の増加などの影響により、やや減益に転じました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 978億円 1,039億円 1,171億円 1,181億円 1,268億円
経常利益 26億円 49億円 77億円 77億円 67億円
利益率(%) 2.6% 4.7% 6.6% 6.6% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 15億円 26億円 32億円 29億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加したものの、売上原価が膨らんだため売上総利益は微減となりました。また、従業員の待遇改善や減価償却費の負担増などが影響し、営業利益および営業利益率も前期を下回る結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,181億円 1,268億円
売上総利益 217億円 214億円
売上総利益率(%) 18.3% 16.9%
営業利益 74億円 68億円
営業利益率(%) 6.3% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が77億円(構成比53%)、減価償却費が11億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の旅客自動車事業は、旅客需要が堅調に推移したことで増収となりました。自動車販売事業も商用車の新車販売台数や車両整備収入が増加し、大きく売上を伸ばしています。不動産事業およびその他の事業についても安定した推移を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
旅客自動車事業 570億円 577億円
不動産事業 66億円 67億円
自動車販売事業 341億円 403億円
その他 203億円 220億円
連結(合計) 1,181億円 1,268億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 84億円 92億円
投資CF -127億円 -169億円
財務CF 54億円 70億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客さまの『かけがえのない時間(とき)』と『ゆたかなくらし』の実現に貢献します。」を経営理念として掲げています。事業活動を通じて社会に貢献するとともに、関わり合うすべてのステークホルダーの発展と持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は経営方針として、常にお客さまの視点に立ち期待に応える価値を提供することや、地域の明日を考えみなさまとともに歩むことを重視しています。さらに、従業員が働くよろこびを実感できる活気ある企業を目指し、変化する社会のニーズや価値観に柔軟に対応する組織文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2030年度を最終年度とする長期ビジョンにおいて、以下の経営指標を目標として掲げています。財務健全性を確保しつつ、着実な利益成長と資本コストを意識した経営に取り組んでいます。

* 営業利益:76億円+α(2030年度目標)
* 有利子負債/EBITDA倍率:5倍台(2030年度目標)
* ROE(自己資本利益率):7%水準(2030年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


地域価値の創造、事業ポートフォリオの再構築、サステナビリティ経営の推進を方針としています。次世代モビリティへの転換加速や、不動産関連領域への重点的な投資を通じた高度利用・効率化を図ります。また、環境戦略としてEV車両の導入を推進するほか、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様化する顧客ニーズに応えるため、新たなサービスの創造に挑戦し続ける人材の確保と育成を進めています。運転職については新卒者や未経験者を積極的に採用し、充実した自社教習プログラムで育成するほか、シニア制度の導入や外国人採用など雇用形態の多様化を推進し、多様な人材が活躍できる職場づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 52.3歳 17.3年 5,926,186円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 89.3%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 95.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(92.5%)、特定保健指導受診率(96.7%)、喫煙者率(34.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の不足


労働集約型の事業が多いことから、従業員や乗務員の不足は路線の維持困難や稼働率の減少につながる恐れがあります。同社は採用広告の拡充や未経験者への免許取得支援など採用活動の強化を図るほか、多様な働き方に対応した環境整備を進めています。

(2) 輸送中の事故


旅客自動車事業が中核であるため、重大事故の発生は社会的信頼の低下や行政処分を招き、業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。安全・安心な運行への信頼を得るべく、各種委員会の組織やデジタル技術の導入による安全管理の徹底に努めています。

(3) 機密情報の漏えい


各事業で情報システムを活用しているため、サイバー攻撃や人為的ミスによって個人情報等の機密情報が漏えいした場合、信用の失墜を招く恐れがあります。厳正な情報管理体制の整備やセキュリティ対策の更新などを実施し、情報漏えいの防止に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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