南総通運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

南総通運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する総合物流企業です。千葉県を地盤に、トラックによる貨物自動車運送事業や倉庫事業、工場内作業などの附帯事業を展開しています。2025年3月期の連結売上高は161億円(前期比4.0%増)、経常利益は20億円(同4.0%増)となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、南総通運株式会社 の有価証券報告書(第116期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 南総通運ってどんな会社?


千葉県東金市に本社を置く物流企業です。地域密着型のトラック輸送と倉庫保管を軸に、工場内作業請負や建設、不動産賃貸まで多角的に展開しています。

(1) 会社概要


1942年に千葉県東金市で設立され、小運送業や貨物自動車運送事業を開始しました。1970年代以降、タクシー事業や建設事業を行う子会社を相次いで設立し、事業領域を拡大しました。1990年代には首都圏や北関東へ配送エリアを広げ、2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2022年の市場再編に伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は894名(単体708名)です。筆頭株主は事業会社の総和商事(6.17%)で、第2位は同社代表取締役社長の今井利彦氏(5.96%)、第3位は南総通運従業員持株会(5.66%)となっており、創業者家や従業員が主要な株主として名を連ねています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長は今井利彦氏が務めています。社外取締役は3名で、取締役会に占める割合は約23%です。

氏名 役職 主な経歴
今井 利 彦 代表取締役社長 1982年日本通運入社。2005年同社入社。常務執行役員、取締役副社長管理本部長などを経て、2017年6月より現職。
今関 仁 孝 取締役副社長営業本部長 1983年同社入社。東金支店営業課長、佐倉配送センター所長、専務取締役営業本部長などを経て、2023年6月より現職。
青木 勝 也 取締役専務執行役員東金支店長 1987年日本通運入社。2015年同社入社。茂原支店長、取締役常務執行役員東金支店長などを経て、2025年6月より現職。
伊藤 和 久 取締役 1985年同社入社。専務取締役茂原中央支店長、取締役副社長飲料物流本部長などを経て、2025年6月より現職。
川﨑  誠 取締役執行役員茂原支店長兼茂原中央支店長 1994年同社入社。佐倉配送センター所長、執行役員佐倉支店長などを経て、2025年6月より現職。
田 中 英 之 取締役執行役員管理部長 2008年同社入社。管理部総務人事課長、執行役員管理部部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、菅野茂徳(弁護士)、吉澤智子(社会保険労務士)、髙 橋 由 美 子(元柏労働基準監督署長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「貨物自動車運送事業」「倉庫事業」「附帯事業」「不動産事業」「建設事業」および「その他」事業を展開しています。

貨物自動車運送事業


顧客の工場等から製品や宅配便の荷物をトラックを利用して運送する事業です。企業間物流を中心に、地域に根差した輸送ネットワークを構築しています。

収益は、荷主である顧客企業からの運送料金によって構成されています。運営は、主に南総通運が行っています。

倉庫事業


自社が所有または賃借する倉庫を顧客に対して賃貸し、貨物の保管・管理を行う事業です。物流拠点としての機能を顧客に提供しています。

収益は、顧客企業からの保管料や倉庫賃貸料となります。運営は、南総通運および南総総業が行っています。

附帯事業


顧客から委託を受け、顧客の工場内での作業請負や、同社が賃貸している倉庫・物流センター等での商品の受け入れ、仕分け、梱包などを行う事業です。

収益は、顧客企業からの作業委託料や荷役料等によって構成されています。運営は、南総通運および南総総業が行っています。

不動産事業


自社が所有する土地や建物等の不動産を賃貸する事業です。物流施設以外の資産活用も含まれます。

収益は、テナント等からの不動産賃貸料です。運営は、南総通運、南総総業、および南総建設が行っています。

建設事業


同社グループ内の倉庫、配送センター、事務所等の建築および修繕を行うほか、グループ外の一般顧客向けにも建物の建築や修繕を行っています。

収益は、発注者からの工事請負代金となります。運営は、主に南総建設が行っています。

その他事業


タクシー業や一般貸切旅客運送(貸切バス)、損害保険代理店および生命保険の募集を行う事業です。

収益は、タクシー・バスの運賃収入や保険手数料等です。運営は、南総通運および南総タクシーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、直近5期間で増収基調を維持しています。利益面では、経常利益が安定して推移しており、第116期には20億円台に到達しました。当期純利益も高水準を維持しており、安定した収益基盤を確立していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 134億円 143億円 144億円 155億円 161億円
経常利益 13億円 15億円 16億円 19億円 20億円
利益率(%) 9.8% 10.5% 11.0% 12.6% 12.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 10億円 11億円 16億円 14億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約18%前後で推移しており、本業の収益性は安定しています。営業利益率も前期の12.6%から12.5%へと高い水準を維持しており、コスト管理が進んでいることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 155億円 161億円
売上総利益 28億円 29億円
売上総利益率(%) 17.9% 18.2%
営業利益 20億円 20億円
営業利益率(%) 12.6% 12.5%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が4.2億円(構成比45.7%)、その他経費が3.9億円(同43.1%)を占めています。物流業の特性上、人件費が主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


主力の貨物自動車運送事業と倉庫事業が堅調に推移し、増収増益に貢献しました。附帯事業も増益となりましたが、建設事業は完成高の減少により減収となり、営業損失を計上しました。不動産事業は一部物件売却の影響で減収となりましたが、利益面では増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
貨物自動車運送事業 62億円 66億円 5億円 6億円 8.4%
倉庫事業 43億円 44億円 13億円 14億円 31.8%
附帯事業 37億円 37億円 2億円 2億円 5.6%
不動産事業 10億円 9億円 6億円 6億円 71.6%
建設事業 1億円 0.4億円 -0.0億円 -0.1億円 -3.0%
その他 4億円 4億円 0.0億円 -0.1億円 -3.1%
調整額 -7億円 -3億円 -7億円 -8億円 -
連結(合計) 155億円 161億円 20億円 20億円 12.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

南総通運は、運転資金や設備資金を内部資金または借入で調達しており、短期資金は短期借入金、長期資金は長期借入金で賄っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の減少などにより、前年度比で減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の増加により、資金を使用しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出の増加により、前年度比で大きく増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 20億円
投資CF 0.1億円 -13億円
財務CF -15億円 -26億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業以来、地域社会との「共存共栄」を掲げ、「物流を通じ社会を豊かにする」ことを目指して事業を行っています。物流を社会の動脈と捉え、環境保全や安全・健全な運用に努めることで、未来の地域・世代に資産をつなぐことを使命としています。

(2) 企業文化


2022年の創立80周年を機に「NANSO100年プロジェクト」を発足させ、次世代育成、環境保全、地域社会活性化に取り組む姿勢を明確にしています。また、「ちばSDGsパートナー」に登録し、環境配慮型経営やダイバーシティ推進を掲げるなど、地域社会や環境との調和を重視する企業風土があります。

(3) 経営計画・目標


環境問題や社会問題に取り組む総合物流企業として、安定収益を確保できる企業体質の構築を目指しています。具体的な数値目標として、営業収入の拡大とともに、営業利益率で15%以上の確保を目標に掲げています。

* 営業利益率:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「物流2024年問題」や労働力不足への対応として、トータルロジスティクス事業のワンストップサービス拡販や、輸出入貨物物流、オートモーティブ事業等の拡大を目指しています。また、DXによる新物流サービスの開発や業務効率化、コスト転嫁の推進に加え、環境対応としてCO2削減にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材確保のため、職場環境の改善や業務効率化による「働きやすい職場づくり」と、適切な評価・待遇による「働き甲斐のある職場づくり」を推進しています。育成面では、多様性を活かしつつ企業理念を浸透させ、自ら考え行動できる「自立型社員」や利益に直結する行動ができる社員の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.0歳 12.1年 4,790,573円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.7%
男性育児休業取得率 16.6%
男女賃金差異(全労働者) 65.9%
男女賃金差異(正規雇用) 75.5%
男女賃金差異(非正規) 62.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員に占める35歳以下の割合(16.6%)、疾病による休業損失率(1.09%)、持株会の加入率(49.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金利変動の影響


倉庫や配送センター等の設備投資資金を金融機関からの借入金で調達しているため、総資産に占める借入金比率が高くなっています。金利が上昇した場合、支払利息が増加し、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、長期借入金については固定金利での調達に努めることで影響の抑制を図っています。

(2) 情報漏洩等によるリスク


物流サービスの提供過程で多くの顧客情報を取り扱っています。社内教育等で管理を徹底していますが、万が一情報の外部漏洩やデータ喪失が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償請求等により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 賃貸等不動産価格の下落によるリスク


千葉県内等に賃貸用の店舗、事務所、倉庫などを保有しています。主要顧客の撤退や地価の大幅な下落が発生した場合、減損損失の計上などにより業績に影響を与える可能性があります。特定物件の依存度が高まらないよう配慮していますが、一部倉庫では地価下落による減損の兆候も認識されています。

(4) 感染症の感染拡大に伴うリスク


新たな感染症が拡大した場合、物流業務の遂行能力が低下し、業績や事業継続に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、感染拡大を想定したバックアップ体制や緊急応援体制を策定するなど、BCP(事業継続計画)対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。