※本記事は、株式会社ヒガシホールディングスの有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月5日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒガシホールディングスってどんな会社?
物流事業を中心に、オフィス移転やIT関連など幅広い法人向けサービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1944年に大阪東運送として設立され、1947年に日本生命保険が資本参加しました。2002年にヒガシトゥエンティワンへ社名変更し、2005年に上場を果たしています。近年はM&Aを推進し、ネオコンピタンスやピアレス等を子会社化しました。2025年に持株会社体制へ移行し現在の社名へ変更しています。
従業員数は連結1,744名、単体72名です。筆頭株主は事業会社の関西電力で、第2位は日本生命保険相互会社、第3位は星光ビル管理となっており、大手インフラ企業や金融機関との強固な資本関係を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 関西電力 | 13.76% |
| 日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) | 7.95% |
| 星光ビル管理 | 7.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表執行役社長は児島一裕氏が務めており、取締役の過半数にあたる6名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 児島一裕 | 取締役 代表執行役社長 |
1983年日本生命保険相互会社入社。同社専務執行役員を経て、2019年同社へ副社長執行役員として入社。2020年4月より現職。 |
| 山田寛 | 取締役 常務執行役 |
1988年同社入社。人事部長や業務開発部長等を歴任し、2019年に取締役常務執行役に就任。営業部門を統括し現職。 |
| 田口宗勝 | 取締役 常務執行役 |
1984年日本生命保険相互会社入社。2012年に同社入社。企画総務部長等を歴任し、2021年6月に取締役常務執行役に就任。管理部門を統括し現職。 |
| 角野公史 | 取締役 上席執行役 |
1994年同社入社。オフィスサービス事業部長等を経て、ヒガシオフィスサービス等の代表を歴任。2025年6月に取締役上席執行役に就任し現職。 |
社外取締役は、江上雅彦(京都大学理事・副学長)、樋口眞人(弁護士・元大阪府警察本部長)、大西由紀(天神橋税理士法人経営主席コンサルタント)、脇陽子(弁護士)、勝田達規(元関電不動産開発社長)、鵜川勝利(毎日新聞社執行役員大阪本社代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運送事業」「倉庫事業」「商品販売事業」「ウエルフェア事業」および「その他」事業を展開しています。
■運送事業
近畿地区の新聞配送や飲料配送、一般荷主の輸送業務をはじめ、企業各社のオフィス移転業務、ビル館内のデリバリー事業、精密機器輸送、IT関連事業などの輸送サービスを幅広く展開しています。
顧客からの輸送料、移転作業料、IT機器キッティングや保守の対価等として収益を獲得しています。事業の運営は主にヒガシトゥエンティワン、ワールドコーポレーション、ヒガシオフィスサービス等の各子会社が行っています。
■倉庫事業
製鋼所や家電メーカー、大手EC向けの大型物流センターなどにおいて、個々の顧客商品に適した保管・管理機能を提供しています。在庫管理から流通加工、配送まで一貫した総合情報システムを構築しています。
顧客企業から保管料、荷役料、物流加工料等を受け取るビジネスモデルです。運営は主にヒガシトゥエンティワンなどが担っており、流山や川西などの大型ロジスティクスセンターを活用しています。
■商品販売事業
物流事業から派生したサービスとして、物流インフラを活用した各種梱包資材や電力用資材、ICT機器などの販売を行っています。
大手インフラ会社や一般企業への資材・機器販売の対価として収益を獲得します。事業の運営は主にヒガシトゥエンティワンなどのグループ会社が行っています。
■ウエルフェア事業
介護支援事業者や福祉用具貸与事業者に対して、最新型のベッドや車椅子といった福祉用具のレンタルや販売を提供しています。
福祉用具のレンタル料や販売代金を受け取るビジネスモデルです。運営は主にヒガシトゥエンティワンが担っており、利用者のニーズに応じた製品をタイムリーに提供しています。
■その他事業
主要都市における立体駐車場等の運営、六本木ヒルズ内でのオフィスコンビニ運営のほか、PCデータ消去、人材派遣、システム開発・保守などの周辺事業を展開しています。
駐車場料金、サービス提供料、人材派遣料等として収益を獲得しています。ネオコンピタンスやピアレスなどのグループ各社が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は一貫して成長を続け、約2倍の規模へと拡大しています。経常利益も毎年過去最高を更新しており、特に直近の事業年度では大型物流センターの本格稼働やM&Aの効果により、大幅な増収増益を達成しました。収益性も向上傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 280億円 | 348億円 | 406億円 | 481億円 | 580億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 20億円 | 23億円 | 29億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 6.0% | 5.8% | 5.7% | 6.1% | 7.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 8億円 | 11億円 | 18億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。前期に先行実施した投資に伴う費用が減少した効果もあり、営業利益率は大きく改善し、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 481億円 | 580億円 |
| 売上総利益 | 90億円 | 111億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.8% | 19.1% |
| 営業利益 | 27億円 | 40億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 7.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賞与手当が31億円(構成比44%)、法定福利費が6億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である運送事業は、大手EC向けの輸送拡大により順調に成長しています。また、倉庫事業は大型ロジスティクスセンターの本格稼働によって大幅な増収を達成しました。その他事業等もM&Aの通年寄与により好調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 運送事業 | 255億円 | 295億円 |
| 倉庫事業 | 140億円 | 172億円 |
| 商品販売事業 | 51億円 | 67億円 |
| ウエルフェア事業 | 11億円 | 12億円 |
| その他 | 24億円 | 32億円 |
| 連結(合計) | 481億円 | 580億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を上回る借入等を行い、積極的な投資を継続する「積極型」の傾向を示しています。物流インフラ等への投資を進めていることが窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 24億円 | 50億円 |
| 投資CF | -45億円 | -7億円 |
| 財務CF | 28億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安全」と「安心」を大切にして物流事業を通じて社会に貢献することを経営の基本方針としています。また、グループパーパスとして「安心をずっと、驚きをもっと。人と技術とITで、新たな価値を創造し、豊かな明日へつなぎます。」を制定し、社会・株主・社員の繁栄を図る使命を掲げています。
■(2) 企業文化
コーポレートスローガンとして「Evolution for Customers-全進で未来へ“シンカ”-」を掲げ、お客様に最高のサービスをお届けするために変革し続ける企業を目指しています。変化を楽しむ企業文化の醸成に取り組み、これまでの常識にとらわれない新たな価値を生み出し続ける組織づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2028」を策定し、プライム市場昇格に向けたファンダメンタルズの完成を目指しています。当初目標を1年目で上回ったため、目標数値を上方修正し、強靭な経営体制の構築を図ります。
* 売上高 610億円
* 経常利益 44億円
* 1株当たり配当金 66円
■(4) 成長戦略と重点施策
物流の安定供給への貢献と責任ある企業経営の実践に向け、サービス・効率性の向上、EC需要の取り込み、IT事業の強化を通じた事業成長を推進しています。また、持続可能な発展に資するESG経営への取り組みを両立させることで、強固な経営基盤の構築を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは人的資本を最重要経営資源と位置づけ、採用・育成・定着・処遇の施策を総合的に推進しています。物流スキル研修による現場力の向上や次世代を担うマネジメント人材の育成を強化し、従業員一人ひとりがやりがいと誇りを持って働ける、安心で安全な職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.0歳 | 8.6年 | 5,827,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 89.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(15.9%)、平均残業時間(16.8時間)、有給取得率(66.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンプライアンス規制の対応
物流事業の運営には貨物自動車運送事業法等に基づく各種許認可が必要です。法令違反により事業停止等の行政処分を受けた場合、企業イメージの低下や損害賠償の負担が生じ、同社の財政状態や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の得意先への依存度
同社の売上高のうち、アマゾンジャパン合同会社に対する割合が22.1%を占めています。取引条件は市場価格を勘案して決定していますが、何らかの理由により契約関係の見直しが行われた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 外注(協力会社)の活用リスク
運送事業部門における外注比率は81.6%に達しています。需要集中時における協力会社の確保難や外注単価の上昇が発生した場合、効率的な物流網の維持が困難となり、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 重大事故発生に伴う影響
同社グループはトラックを利用した運送事業を営んでおり、安全確保に努めています。しかし、万一重大事故が発生した場合には、顧客からの信用低下や行政処分による営業活動の停滞等を招き、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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