※本記事は、株式会社ヒガシホールディングス の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒガシホールディングスってどんな会社?
物流事業を中核に、PC設定やビル内配送など独自の派生サービスも展開する企業です。
■(1) 会社概要
1944年に大阪東運送として設立され、1968年に倉庫事業を開始しました。2005年にジャスダックへ上場し、2011年に東証二部(現スタンダード)へ上場しました。その後、ビル館内デリバリーや事務所移転事業等の分社化を経て、2025年4月にヒガシホールディングスへ商号変更し、持株会社体制へ移行しました。
連結従業員数は1,603名、単体では716名です。筆頭株主は関西のインフラ企業である関西電力、第2位は大手生命保険会社の日本生命保険相互会社、第3位はビル管理会社の星光ビル管理となっており、設立経緯や事業展開において関係の深い事業会社が大株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 関西電力 | 13.81% |
| 日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行株式会社) | 7.98% |
| 星光ビル管理 | 7.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表執行役社長は児島一裕氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 児島一裕 | 取締役 代表執行役社長 | 日本生命保険相互会社専務執行役員を経て、2019年に入社し副社長執行役員に就任。2020年より現職。グループ会社の代表取締役も兼任。 |
| 山田寛 | 取締役 | 1988年入社。人事部長、業務統括本部副本部長などを経て、2019年より取締役常務執行役として営業部門を統括。 |
| 田口宗勝 | 取締役 | 日本生命保険相互会社代理店部長を経て、2012年に入社。企画総務部長、法務室長などを歴任し、2021年より取締役常務執行役として管理部門を統括。 |
| 原田昌也 | 取締役 | 関西電力入社後、関電セキュリティ・オブ・ソサイエティ社長などを経て2018年に入社。営業開発部長などを歴任し、2021年より取締役常務執行役。 |
社外取締役は、江上雅彦(京都大学大学院経済学研究科教授)、樋口眞人(元大阪府警察本部長・弁護士)、大西由紀(天神橋税理士法人経営主席コンサルタント)、脇陽子(弁護士)、勝田達規(元関電不動産開発社長)、亀井正明(毎日新聞社執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運送事業」「倉庫事業」「商品販売事業」「ウエルフェア事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 運送事業
一般荷主の輸送業務や事務所移転、静脈物流(廃棄物収集運搬)、ビル館内デリバリー、IT機器の輸送・設定など多岐にわたるサービスを提供しています。大手ECや金融機関、一般企業が主な顧客です。
収益は、輸配送業務や移転作業、PCキッティング等の役務提供対価として顧客から受領します。運営は主に株式会社ヒガシトゥエンティワンが行い、ビル館内デリバリーは株式会社FMサポート21、移転事業はヒガシオフィスサービス株式会社等が担当しています。
■(2) 倉庫事業
製鋼所、家電メーカー、大手EC向けの物流センター運営や、書類保管(ドキュメントサービス)、流通加工などを行っています。顧客の商品特性に合わせた保管・管理・配送を一貫して提供します。
収益は、商品の保管料、入出庫料、流通加工料などを顧客から受領します。運営は主に株式会社ヒガシトゥエンティワンが行い、ドキュメントサービスや流通加工サービスも提供しています。
■(3) 商品販売事業
物流インフラを活用し、各種梱包資材や電力用資材などの販売を行っています。
収益は、資材等の販売代金として顧客から受領します。運営は主に株式会社ヒガシトゥエンティワンが行っています。
■(4) ウエルフェア事業
介護支援事業者(福祉用具貸与事業者)向けに、電動ベッドや車椅子などの福祉用具のレンタル卸(貸与)を行っています。
収益は、福祉用具のレンタル料を介護支援事業者から受領します。運営は主に株式会社ヒガシトゥエンティワンが行っています。
■(5) その他
立体駐車場の運営、オフィスコンビニ運営、PCデータ消去、人材派遣、システム開発などを展開しています。
収益は、駐車料金、商品販売代金、データ消去作業料、派遣料などを受領します。運営は株式会社ヒガシトゥエンティワンのほか、株式会社ネオコンピタンス(人材派遣)などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に直近では大手EC向け業務の拡大やM&Aにより売上高が大きく伸長し、利益面でも増益基調を維持しています。当期利益も順調に増加しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 244億円 | 280億円 | 348億円 | 406億円 | 481億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 17億円 | 20億円 | 23億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 6.0% | 5.8% | 5.7% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 7億円 | 8億円 | 11億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約19%前後で推移しており、営業利益率も改善傾向にあります。事業規模の拡大に伴い販管費も増加していますが、増収効果が上回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 406億円 | 481億円 |
| 売上総利益 | 78億円 | 90億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.1% | 18.8% |
| 営業利益 | 22億円 | 27億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賞与手当が27億円(構成比44%)、法定福利費が5億円(同9%)を占めており、人件費が主要なコストとなっています。
■(3) セグメント収益
運送事業と倉庫事業が収益の柱であり、特に倉庫事業の大幅な増収増益が全体の成長を牽引しています。商品販売事業やその他事業も増収増益となっており、全セグメントで好調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運送事業 | 229億円 | 255億円 | 28億円 | 31億円 | 12.3% |
| 倉庫事業 | 107億円 | 140億円 | 9億円 | 12億円 | 8.4% |
| 商品販売事業 | 44億円 | 51億円 | 2億円 | 3億円 | 6.1% |
| ウエルフェア事業 | 11億円 | 11億円 | 2億円 | 2億円 | 15.9% |
| その他 | 15億円 | 24億円 | 3億円 | 4億円 | 14.8% |
| 調整額 | - | - | -22億円 | -24億円 | - |
| 連結(合計) | 406億円 | 481億円 | 22億円 | 27億円 | 5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、物流事業を主軸に事業を展開しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上、売上債権の増加等により、前年同期と比較して収入額が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社株式の取得等により、支出額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入や短期借入の増加、長期借入金の返済等により、収入額が大幅に増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 30億円 | 24億円 |
| 投資CF | -33億円 | -45億円 |
| 財務CF | 8億円 | 28億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安全」と「安心」を大切にして物流事業を通じて社会に貢献することを基本方針としています。「商品・サービスの使命」「社会的使命」「経済的使命」の3つの使命に基づき、顧客満足の向上、地域貢献・環境保全、経営基盤の強化・安定に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
事業環境の変化に対応し、従業員一人ひとりが社会的存在価値を再認識するために、グループパーパス「安心をずっと、驚きをもっと。人と技術とITで、新たな価値を創造し、豊かな明日へつなぎます。」を制定しています。これを共通の価値観として、主体的に業務に取り組む文化の醸成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2028」を策定し、「プライム市場昇格に向けたファンダメンタルズを完成させる3年」と位置付けています。最終年度となる2028年3月期の目標として以下を掲げています。
* 売上高:550億円
* 経常利益:35億円
* ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「サービス・効率性の向上」「EC需要の取り込み」「IT事業強化」を通じた事業成長と、ESG経営への取り組みを軸としています。具体的には、大手EC向け倉庫事業の拡大、新規M&Aによる成長、車両・設備・人材への投資を進めるとともに、2025年4月からの持株会社体制への移行により、グループガバナンスの強化と柔軟な経営体制の構築を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「新たな価値を創造できる人材」の育成を目指し、「変化を楽しむ企業文化の醸成」「価値創造をリードするマネジメント人材の育成」「安心と価値創造を支える現場力の向上」を柱としています。採用では若手や即戦力の中途採用を推進し、労働環境の整備により人材の定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.4歳 | 8.1年 | 4,643,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.6% |
| 男性育児休業取得率 | 62.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 70.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均残業時間(21.9時間)、有給取得率(66.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制・環境規制への対応
貨物自動車運送事業法や倉庫業法、環境規制などの法的規制を受けており、これらを遵守して事業を行っています。法令違反防止マニュアルの実行等により体制を強化していますが、将来的な規制強化によるコスト増加や、万一の行政処分等があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の得意先への依存
アマゾンジャパン合同会社に対する売上高比率が18.2%となっており、特定の得意先への依存度が高まっています。取引条件は市場価格を勘案して決定していますが、契約関係の見直し等が行われた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保及び育成
事業拡大に伴い優秀な人材の確保と育成が急務となっています。積極的な採用と研修制度の充実に取り組んでいますが、物流業界全体での人手不足(2024年問題含む)が深刻化しており、人材確保が不十分な場合や採用コストが増加した場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 事故による影響
トラック運送事業において、デジタルタコグラフ等の導入により事故撲滅に努めていますが、万一重大事故が発生した場合、社会的信用の低下や行政処分による営業停止等を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(5) 外注比率について
需要変動への対応のため多くの協力会社を活用しており、運送事業原価に占める外注比率は約8割となっています。需要集中時に必要な業者の確保が困難になったり、外注単価が上昇したりした場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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