三重交通グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三重交通グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、運輸、不動産、流通、レジャー・サービス事業を展開する企業グループです。直近の業績は、バス事業での単価上昇や不動産事業での分譲マンション販売好調など各事業が堅調に推移したことにより、増収増益のトレンドを維持して成長しています。


※本記事は、三重交通グループホールディングス株式会社の有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三重交通グループホールディングスってどんな会社?


運輸から不動産、流通、観光・レジャー分野まで、地域に密着した幅広い総合生活産業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2006年に三重交通および三交不動産の株式移転により、純粋持株会社として設立されました。同年に名古屋証券取引所市場第一部に上場を果たしています。その後、株式交換等を通じて名阪近鉄バスや三重交通商事などを完全子会社化し、2015年には東京証券取引所市場第一部へ上場するなど、グループの事業規模を着実に拡大してきました。

現在の従業員数はグループ全体で3,072名、単体では69名となっています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は事業会社である近鉄グループホールディングス、第3位には金融機関である百五銀行が名を連ねており、多様なステークホルダーとともに安定した資本基盤を構築してグループ経営を推進しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 27.63%
近鉄グループホールディングス 14.15%
百五銀行 3.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役会長に小倉敏秀氏、代表取締役社長に竹谷賢一氏が就任しており、社外取締役比率は31.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
小倉敏秀 代表取締役会長 近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社後、同社社長等を経て、2023年より現職。
竹谷賢一 代表取締役社長 三重交通に入社後、同社社長や代表取締役副社長等を経て、2023年より現職。
岡本直之 取締役相談役 近畿日本鉄道入社後、同社副社長や三重交通グループホールディングス社長等を経て、2023年より現職。
田端英明 取締役 三重交通入社後、名阪近鉄バス社長や三重交通グループホールディングス執行役員を経て、2023年より現職。
増田充康 取締役 近畿日本鉄道入社後、同社執行役員や三重交通グループホールディングス執行役員を経て、2023年より現職。
村田陽子 取締役 三重交通入社後、三交イン社長や三重交通グループホールディングス企画室長等を経て、2020年より現職。
中村充孝 取締役 三重交通入社後、三交不動産専務取締役や同社代表取締役社長を経て、2021年より現職。


社外取締役は、楠井嘉行(楠井法律事務所代表)、都司尚(近鉄グループホールディングス会長)、田中彩子(医療法人誠仁会理事長)、髙宮いづみ(近畿大学名誉教授)、植田隆(一般財団法人三重県友の会理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸」「不動産」「流通」「レジャー・サービス」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

運輸


同セグメントでは、一般乗合旅客自動車運送事業(路線バス)や一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)、タクシーなどの旅客輸送サービスを提供しています。主に地域住民の日常的な足としての役割を果たすほか、観光客やイベント向けの輸送ニーズにも広く対応し、安全・安心な移動環境を支えています。

収益は、乗客からの運賃や運送雑収として受け取っています。事業の運営は、三重交通、名阪近鉄バス、三交伊勢志摩交通、八風バス、三交タクシーなどが担っており、地域に密着した輸送ネットワークを形成し、自動運転バスやタッチ決済の導入など新たなモビリティサービスの提供にも努めています。

不動産


同セグメントでは、分譲マンションや戸建住宅の販売、オフィスビルや商業施設の賃貸、注文住宅の建築工事請負などを展開しています。さらに、太陽光発電施設等による環境エネルギー事業や不動産管理事業を通じ、開発から維持管理まで総合的な不動産サービスを一貫して提供しています。

収益は、顧客からの不動産売却代金や施設テナントからの賃貸料、建築請負代金などから得ています。事業の運営は、主に三交不動産や三重交通コミュニティなどが行っており、地域ニーズに応じた高付加価値な商品開発と新規施設の開発により、成長ドライバーとしての安定した収益基盤の拡充を進めています。

流通


同セグメントでは、ガソリンスタンド等での石油製品の販売をはじめ、フランチャイズ展開等による生活用品の販売、トラックやバスなど新車・中古車の販売事業を展開しています。日々の生活に密着した商品やカーライフに関わる総合的なサービスを通じ、幅広い顧客層へ多様な価値を提供しています。

収益は、顧客に対する商品販売代金や自動車のメンテナンス費用などから得ています。事業の運営は、三重交通商事や三交クリエイティブ・ライフ、三重いすゞ自動車などが担っており、販売力の強化や店舗ごとの競争力向上を図りつつ、車の生涯を通じたサイクル・ビジネスの拡充による収益拡大を目指しています。

レジャー・サービス


同セグメントでは、ビジネスホテルや旅館、ドライブイン、ロープウエイ、ゴルフ場などの施設運営から、旅行の斡旋や自動車教習所の運営まで幅広いレジャー事業を提供しています。個人客から団体ツアー、インバウンド需要まで、国内外の多様な観光・レジャーニーズに柔軟に応えています。

収益は、宿泊客からの宿泊料金や施設利用料、旅行参加者からの旅行代金などとして受け取っています。事業の運営は、三交インや鳥羽シーサイドホテル、御在所ロープウエイ、名阪近鉄旅行などが担っており、需要にマッチした高付加価値プランの拡充や新規ホテルの開発により顧客満足度の向上に努めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、段階的な回復と成長の傾向を示しています。売上高は右肩上がりで拡大を続け、経常利益も順調に利益水準を押し上げており、安定した利益率を確保しながら収益力の強化が図られていることがわかります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 844億円 931億円 982億円 1,038億円 1,103億円
経常利益 42億円 69億円 75億円 85億円 97億円
利益率(%) 5.0% 7.4% 7.7% 8.2% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 38億円 48億円 61億円 63億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の成長に伴い営業利益も堅調に伸びており、本業における稼ぐ力が強化されています。営業利益率も前期の8.1%から8.8%へと着実に改善しており、効率的な事業運営が行われていることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,038億円 1,103億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 84億円 98億円
営業利益率(%) 8.1% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が70億円(構成比33.0%)、減価償却費が39億円(同18.5%)、賃借料が28億円(同13.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての事業セグメントにおいて増収を記録しており、中でも不動産セグメントが高い利益率を維持し、グループ全体の利益を牽引しています。運輸セグメントも単価や稼働の上昇により利益を大幅に改善させました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
運輸 227億円 246億円 5億円 12億円 4.9%
不動産 340億円 362億円 61億円 67億円 18.5%
流通 322億円 331億円 6億円 8億円 2.4%
レジャー・サービス 150億円 164億円 11億円 11億円 6.7%
連結(合計) 1,038億円 1,103億円 84億円 98億円 8.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を元に、積極的な設備投資や借入を行って事業拡大を図る「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 91億円 79億円
投資CF -113億円 -89億円
財務CF -27億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均と同水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


グループ基本理念として、「三重交通グループは、お客さまの豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献します。」と掲げています。運輸から不動産、レジャーまで多様な事業を展開し、地域に密着した総合生活産業を営む企業グループとして、持続的な成長と企業価値の向上を通じて社会的な存在意義を果たしていくことを目指しています。

(2) 企業文化


「グループ経営指針」として、お客さまのよろこびの追求、地域社会への貢献、絶えざる自己革新、誠実な企業活動、グループ総合力の発揮、いきいきとした企業風土の6つを定めています。過去にとらわれず常に未来へ挑戦し、よき企業市民としての信頼を深めながら、互いに協力・連携してグループの総合力を発揮する組織文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、2026年度を最終年度とする経営目標を設定し、成長性、健全性、効率性のバランスが取れた持続的な成長を目指しています。

* 営業収益:1,100億円
* 営業利益:88億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:59億円
* 自己資本比率:35%程度
* ROE(自己資本純利益率):9.0%程度
* 有利子負債/EBITDA倍率:6倍以下

(4) 成長戦略と重点施策


「安全・安心・安定・快適なサービスの提供」を最重要方針とし、成長分野の深耕やサステナビリティへの取り組みを推進しています。運輸セグメントでは自動運転などの新たな輸送サービスの研究、不動産セグメントでは賃貸施設の新規開発と収益基盤の拡充、流通やレジャー分野ではインバウンド需要の取り込みや新規ホテル開発に注力し、グループの経営資源を最大限に活用した成長戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「経営方針・事業戦略を理解し、環境変化に適応し得る人材育成」を重点課題と位置づけています。基本的人権と多様性を尊重し、従業員の健康・安全を成長の基盤と捉え、労働環境の向上に努めるとともに、従業員一人ひとりが働きがいを持って能力を十分に発揮できる仕組みづくりや、安心して働き続けることができる職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.8歳 13.3年 6,265,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 51.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者の有給取得率(69.4%)、障がい者雇用率(3.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事故や災害等の発生


お客さまの安全確保を最優先としていますが、不可避な要因による事故や、地震・台風等の自然災害、感染症の流行などが発生した場合、施設の運営休止やバスの運行停止を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。事業継続計画(BCP)の策定や防災訓練の実施により非常時の対応強化に努めています。

(2) 気候変動による事業運営への影響


異常気象に伴う大型台風や集中豪雨により保有資産が被害を受けるリスクや、温室効果ガスの排出抑制に向けた大規模な投資・費用負担が発生するリスクがあります。電動車の導入や自社使用電力の実質再エネルギー化など、脱炭素社会に向けた環境負荷低減の取り組みを進めています。

(3) 人的資源の確保


労働力人口の減少により人材獲得競争が激化しており、特に運輸セグメントにおけるバス運転士の不足などが課題となっています。必要な人材を確保できない場合、サービスの提供に支障をきたす恐れがあるため、初任給の引き上げや定年延長等の待遇改善、育児休業制度の整備による働きやすい職場づくりを推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。