三重交通グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三重交通グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミアに上場し、三重県を中心に運輸、不動産、流通、レジャー・サービス事業を展開する企業グループです。第19期は、主力事業の回復や不動産・流通事業の伸長により、営業収益は1,038億円(前期比5.7%増)、経常利益は85億円(同13.0%増)の増収増益となりました。


三重交通グループホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社三重交通グループホールディングス の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三重交通グループホールディングスってどんな会社?

東海地方を中心にバス・タクシー等の運輸業や不動産業、流通業などを展開する地域密着型の複合企業グループです。

(1) 会社概要

2006年(平成18年)、三重交通と三交不動産の株式移転により設立され、名証一部に上場しました。その後、2007年に名阪近鉄バスを完全子会社化し、2012年には三重いすゞ自動車を連結子会社化するなど体制を強化しました。2015年に東証一部へ上場し、現在はプライム市場およびプレミア市場に上場しています。

同社グループの連結従業員数は3,010名、単体では68名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はその他の関係会社として鉄道事業を営む近鉄グループホールディングス、第3位は三重県を地盤とする地方銀行の百五銀行となっており、近鉄グループや地域との結びつきが強い資本構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 27.69%
近鉄グループホールディングス 14.19%
百五銀行 3.98%

(2) 経営陣

同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は竹谷賢一氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
小倉敏秀 代表取締役会長 近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。同社取締役専務執行役員などを経て、2020年近鉄グループホールディングス社長。2023年6月より現職。
竹谷賢一 代表取締役社長 三重交通入社。同社社長、三重交通グループホールディングス副社長などを経て、2023年6月より現職。
岡本直之 取締役相談役 近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。同社副社長、三重交通グループホールディングス社長、会長を経て、2023年6月より現職。
田端英明 取締役 三重交通入社。名阪近鉄バス社長などを経て、2023年6月より三重交通社長および三重交通グループホールディングス取締役に就任し現職。
増田充康 取締役 近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。同社執行役員などを経て、2023年6月より三重交通専務および三重交通グループホールディングス取締役に就任し現職。
村田陽子 取締役 三重交通入社。三重交通グループホールディングス企画室部長などを経て、2020年6月より三交イン社長および三重交通グループホールディングス取締役に就任し現職。
中村充孝 取締役 三重交通入社。三交不動産専務などを経て、2021年6月より同社社長および三重交通グループホールディングス取締役に就任し現職。


社外取締役は、楠井嘉行(弁護士)、都司尚(近鉄グループホールディングス会長)、田中彩子(医療法人誠仁会理事長)、髙宮いづみ(近畿大学客員教授)、植田隆(元三重県副知事)です。

2. 事業内容

同社グループは、「運輸」「不動産」「流通」「レジャー・サービス」事業を展開しています。

(1) 運輸

乗合バス、貸切バス、タクシー等による旅客運送サービスや、自動車整備事業などを提供しています。地域の移動手段としての役割に加え、観光需要にも対応しています。
運賃収入等を主な収益源としています。運営は主に、三重交通、名阪近鉄バス、三交タクシーなどが行っています。

(2) 不動産

マンション・戸建住宅の分譲、オフィスビル・商業施設の賃貸、建築請負、リフォーム、不動産仲介、不動産管理、太陽光発電事業などを展開しています。
不動産の販売代金、賃貸料、工事請負代金、管理委託料、売電収入などが収益源です。運営は主に、三交不動産、三重交通コミュニティなどが行っています。

(3) 流通

石油製品(ガソリン等)の販売、生活用品販売(ハンズのフランチャイズ運営等)、いすゞ自動車製トラック・バスの販売および整備などを行っています。
顧客からの商品代金や車両販売・整備代金が収益源です。運営は主に、三重交通商事、三交クリエイティブ・ライフ、三重いすゞ自動車などが行っています。

(4) レジャー・サービス

ビジネスホテル「三交イン」や旅館「鳥羽シーサイドホテル」の運営、ドライブイン、ロープウエイ、ゴルフ場の経営、旅行代理業などを展開しています。
宿泊料、施設利用料、旅行代金などが収益源です。運営は主に、三交イン、鳥羽シーサイドホテル、御在所ロープウエイ、三交興業などが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上収益は回復傾向にあり、特に直近では1,000億円台に乗せています。利益面でも、経常利益および当期利益ともに増加基調を維持しており、コロナ禍からの回復と成長が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 812億円 844億円 931億円 982億円 1,038億円
経常利益 20億円 42億円 69億円 75億円 85億円
利益率(%) 2.5% 5.0% 7.4% 7.7% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -17億円 22億円 38億円 48億円 61億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上原価および販管費も増加していますが、増収効果により営業利益は増加しています。営業利益率は向上しており、収益性が改善していることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 982億円 1,038億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 74億円 84億円
営業利益率(%) 7.5% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が68億円(構成比33.7%)、減価償却費が37億円(同18.2%)を占めています。

(3) セグメント収益

全てのセグメントで増収増益となりました。運輸は観光需要や運賃改定により堅調、不動産は賃貸事業等が伸長しました。流通は自動車販売の増加等が寄与し大幅増益、レジャー・サービスもインバウンド需要等により収益を伸ばしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
運輸 220億円 227億円 4億円 5億円 2.3%
不動産 332億円 340億円 58億円 61億円 18.0%
流通 292億円 322億円 2億円 6億円 1.9%
レジャー・サービス 138億円 150億円 8億円 11億円 7.6%
その他 - - - - -
調整額 - - 1億円 0.3億円 -
連結(合計) 982億円 1,038億円 74億円 84億円 8.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

三重交通グループホールディングスは、営業活動により堅調なキャッシュ・フローを生み出しています。投資活動では、固定資産の取得に積極的に資金を投じており、財務活動では借入金の返済や配当金の支払いを行っています。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物の残高は前期から減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 64億円 91億円
投資CF -56億円 -113億円
財務CF -0.5億円 -27億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「お客さまの豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献します。」というグループ基本理念を掲げています。運輸、不動産、流通、レジャー・サービスの4つのセグメントが連携し、地域に密着した総合生活産業として、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化

「お客さまのよろこびの追求」を第一に掲げ、新たな価値の提供を目指しています。また、「地域社会への貢献」「絶えざる自己革新」「誠実な企業活動」「グループ総合力の発揮」「いきいきとした企業風土」をグループ経営指針として定めており、地域発展への貢献や誠実な活動、社員の活力向上を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標

2023年度を初年度とする4カ年の中期経営計画(2023-2026)を推進しています。直近の業績動向を踏まえ、最終年度である2026年度(令和8年度)の数値目標を一部上方修正しており、以下の目標を掲げています。
* 営業収益:1,100億円
* 営業利益:88億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:59億円
* 自己資本比率:35%程度
* ROE:9.0%程度

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画では、「安全・安心・安定・快適なサービスの提供」を最優先としつつ、成長分野の創造やDX推進、サステナビリティへの取組みを掲げています。運輸セグメントの回復と事業機会拡大、不動産セグメントの収益基盤拡充、流通・レジャー等の競争力向上、地域との共生などを重点施策として推進しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

経営方針・事業戦略を理解し環境変化に適応できる人材の育成を重点課題としています。人材育成方針に基づき計画的な施策を推進し、人的資源の充実と企業体質の強化を図っています。また、社内環境整備方針のもと、従業員の健康・安全を成長基盤と捉え、働きがいがあり安心して働ける職場環境の整備や能力開発に積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.6歳 13.6年 5,782,060円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.6%
男性育児休業取得率 72.7%
男女賃金差異(全労働者) 68.5%
男女賃金差異(正規雇用) 69.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理監督職に占める女性の割合(16.3%)、労働者の有給取得率(72.7%)、障がい者雇用率(3.5%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事故や災害等の発生

運輸事業等において、不可避な要因による事故が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、地震や台風等の自然災害、感染症の流行などもリスク要因として認識されており、事業継続計画(BCP)の策定や訓練実施により対応強化に努めています。

(2) 気候変動による事業運営への影響

異常気象による大型台風や集中豪雨で資産が被害を受けたり、運行休止となったりした場合、業績に影響が出る可能性があります。また、温室効果ガス排出抑制への対応コスト発生のリスクもあります。災害時の復旧体制構築やEVバス導入等の脱炭素への取組みを進めています。

(3) 少子高齢化や地域人口の減少

事業エリアにおける就労・通学人口の減少が続いた場合、バス利用者減などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、東京・名古屋・関西での事業展開による収益基盤拡充や、既存事業でのバリアフリー化、効率化による持続的成長を目指しています。

(4) 人的資源の確保

労働力人口の減少により人材獲得競争が激化しており、必要な人材を確保できない場合、サービス提供に支障をきたす可能性があります。特にバス運転士不足が課題となっており、初任給引き上げや定年延長等の待遇改善、働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます。

(5) 営業拠点及び経営資源の集中

営業エリアが三重県を中心とした東海地区西部に集中しており、特に津市や四日市市に拠点が集まっています。このため、同地域で大規模な災害が発生した場合、事業継続に支障をきたす可能性があります。また、伊勢志摩地域への観光客減少もリスクとなります。BCP策定等で備えています。

(6) 原油価格の変動

バス・タクシーの燃料費増加や、石油製品販売事業における仕入価格への影響など、原油価格の上昇は業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、コスト削減や適切な価格転嫁等の対策を講じることが考えられますが、競合状況等により影響を受ける可能性があります。

(7) 金利の上昇

急激な金利上昇により負債コストが増加した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社グループでは、長期借入による金利の固定化を進め、短期的な変動リスクに備えるとともに、調達条件の改善や維持に努めています。

(8) 販売商品の瑕疵や欠陥

販売した不動産や商品等に瑕疵や欠陥が見つかった場合、補償費用や信用失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。関係法令の遵守や品質管理の徹底により、商品の安全性確保に万全を期しています。

(9) 食中毒等の発生

ホテルやレストラン等での食事提供において食中毒事故が発生した場合、営業停止や信用失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。衛生管理や食品安全管理体制の整備・徹底を図り、安全性の確保に努めています。

(10) 国のエネルギー政策変更

環境エネルギー事業(太陽光発電等)において、固定価格買取制度等の政策変更があった場合、収益性が変動し業績に影響を及ぼす可能性があります。動向を注視しつつ運営を行っています。

(11) 資産価値の下落等

保有する不動産や有価証券の価値下落、年金資産の運用環境悪化などが業績に影響を及ぼす可能性があります。収支管理の見直しや運用状況の定期的な把握によりリスク低減に努めています。

(12) 法的規制等の変更

事業に関連する法改正や許認可要件の変更があった場合、対応コストの増加や事業環境の変化により業績に影響を及ぼす可能性があります。法令遵守体制の構築や情報収集に努めています。

(13) コンプライアンス違反

ハラスメントや法令違反等の不祥事が発生した場合、信用失墜や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス行動規範の周知や教育研修、相談窓口の設置等により、不正防止に取り組んでいます。

(14) 情報システム障害・個人情報の漏洩

システム障害やサイバー攻撃、個人情報流出が発生した場合、復旧費用や信用失墜等により業績に影響を及ぼす可能性があります。セキュリティ対策や従業員教育、管理体制の強化を進めています。

(15) 乗合バス事業における補助金

不採算路線の運行維持に活用している補助金制度が改廃された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。自治体等との協議を通じ、地域公共交通としての役割を果たせるよう努めています。

(16) 賃貸等不動産における空室及び賃料低下

競争激化等により入居者が確保できない場合や賃料が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。テナント誘致の強化等により稼働率維持に努めています。

(17) 建築コストの高騰

資材価格や人件費の高騰に対し、価格転嫁が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。計画的な在庫確保や効率化によりコスト抑制を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。