※本記事は、株式会社大運の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大運ってどんな会社?
大運は、港湾運送や国際コンテナ輸送、通関、倉庫業を基本とする国際複合一貫輸送を展開する総合物流企業です。
■(1) 会社概要
1945年3月に大阪海運を設立し、港湾運送事業、貨物自動車業、通関業等を開始しました。1961年10月に大阪証券取引所市場第二部に上場し、翌1962年に現在の大運へ商号変更を行っています。2007年の関西商運吸収合併などを経て事業を拡大し、2013年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。
現在、同社は単体で97名の従業員を擁し事業を展開しています。筆頭株主は大運協力会社持株会で、第2位は大運従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大運協力会社持株会 | 18.23% |
| 大運従業員持株会 | 9.21% |
| W | 3.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は岩崎雅信氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩崎雅信 | 代表取締役社長 | 1989年関西商運入社。2007年大運に移籍入社し管理部総務課課長に就任。管理部次長、管理部部長、執行役員管理本部担当、取締役管理本部長を経て、2018年6月より現職。 |
| 福永芳郎 | 常務取締役港運本部長 | 1993年大運入社。国内部課長、同次長、同部長、執行役員、取締役営業業務本部長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 上岡紀哉 | 取締役第一営業本部長 | 2002年大運入社。国際物流部青島事務所長、同次長、営業本部営業部長、執行役員などを経て、2023年6月より現職。 |
| 川原弘真 | 取締役第二営業本部長 | 1996年関西商運入社。2007年大運入社。輸出課課長、輸入課次長、営業本部部長、執行役員などを経て、2023年6月より現職。 |
| 根間岳史 | 取締役監査等委員(常勤) | 1993年大運入社。営業部輸入課長、営業本部次長、同部長、常務取締役営業本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中井保弘(中井保弘税理士事務所所長)、面屋晋(フジコーポレーション取締役)、岡部一男(元大阪海運貨物取扱業会専務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「港湾運送事業」および「自動車運送事業」などの事業を展開しています。
■港湾運送事業
同事業では、港湾運送事業法に基づく一般港湾荷役事業や沿岸荷役事業のほか、輸出入貨物の通関手続業務、普通倉庫での保管・荷役業務などを提供しています。主に船会社、荷主、元請港運事業者などを対象にサービスを展開しています。
収益源は、これらの貨物運送、荷捌き、保管、通関手続き等の役務提供に伴う手数料や利用料です。運営は大運が行っています。
■自動車運送事業
大小各型トラックによる一般陸運貨物の現地運送および集配業務、長距離貨物輸送業務、国際海上コンテナ貨物の内陸輸送業務などを提供しています。
収益は、輸送距離や貨物量に応じた運送手数料等から得ています。運営は大運が行っています。
■その他
各種損害保険の代理店業務を行っています。自動車、火災、傷害、海上等の損害保険契約の仲介による手数料収入を収益源としています。運営は大運が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績を見ると、売上高は安定して成長を続けており、それに伴い経常利益や当期純利益も堅調に推移しています。円安の影響下にありながらも輸入貨物の受注が底堅く、効率的な事業運営が収益の増加に寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 81億円 | 87億円 | 92億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 3億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 3.7% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、営業収入の増加に伴って営業利益も拡大しています。新規顧客の獲得や既存顧客との取引深耕に加え、国際一貫輸送の受注活動が実を結び、増収増益の堅調な結果となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 87億円 | 92億円 |
| 営業利益 | 2億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 2.8% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、保険料が0.6億円(構成比16.2%)、役員報酬が0.5億円(同14.4%)、従業員給料が0.5億円(同12.7%)を占めています。売上原価については、港湾運送費が66億円(構成比77.1%)、自動車運送費が5億円(同6.0%)となっています。
■(3) セグメント収益
港湾運送事業は主要取引先からの受注が堅調に推移したことで増収となりました。一方、自動車運送事業は収益面で厳しい状況が続いており、燃料費などの各種コスト高騰の影響を受けて減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 港湾運送事業 | 85億円 | 90億円 |
| 自動車運送事業 | 2億円 | 2億円 |
| その他 | - | - |
| 連結(合計) | 87億円 | 92億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の状況にあります。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も66.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「常に豊かな総合物流の未来を拓く」を基本理念とし、長年培った経験と実績を礎に顧客のニーズへいち早く応える「創造するロジスティクス」の追求を通じて社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
安全第一、コンプライアンスの徹底、地球環境に配慮したグリーン経営を重視しています。また、多様化する荷主や市場の変化に柔軟に応え得る企業体質の確立を目指し、中長期的な視点での施設・設備の充実や人材育成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
安定した収益の確保を目指し、収入・粗利益・経費の中期計画を完全実施することを目標としています。あらゆる部署における利益確保を思考し、毎期安定的かつ継続的な営業利益の確保を目指して経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、荷主の選別と集中による重点対象の明確化、海外拠点(中国事務所)の機能強化とパートナー拡大を推進します。また、営業担当者の質的向上と人員増加による営業力強化、港湾運送事業を基礎とした3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)の視野に入れたネットワーク拡大を図ります。さらに、ローコストオペレーションによる生産性の向上も重点項目としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様性確保のため、従来の固定観念に縛られない多様な価値観を有する人材の獲得を推進しています。性別や国籍にとらわれない採用活動や、他業種での経験を有する中途採用を積極的に行っています。あわせて、働きやすい職場環境の整備や、これからの事業の担い手となる管理職層の計画的な育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50.0歳 | 22.6年 | 6,113,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は従業員規模などにより公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職数(4名)、中途採用者の管理職比率(50%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 立替金および営業未収入金等の回収遅延や貸倒れリスク
長年の慣例として、海上運賃・関税・消費税などの一時的な立替払いを行うことが一般的であり、営業未収入金とともに多額の立替金が計上されています。これらが回収不能となった場合や、関税・消費税率の変更により立替払いが急増した場合に、資金繰りや業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 外部経営環境に関わるリスク
同社は大阪港の港運を中心とした総合物流事業を展開していますが、輸送需要は経済動向、天災、テロや戦争、疾病の発生・蔓延などによって大きく減少するリスクがあります。
■(3) 有価証券の価値の変動に関するリスク
低金利下での余資運用などの目的で有価証券を保有していますが、予期せぬ金融市場の混乱などにより、保有する有価証券の価値が変動し、同社の経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。



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