※本記事は、株式会社大運 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大運ってどんな会社?
港湾運送事業や倉庫業、国際物流を主力とする大阪の物流企業です。中国などへの国際複合一貫輸送も手掛けます。
■(1) 会社概要
1945年に大阪海運として設立され、港湾運送や貨物自動車業を開始しました。1961年に関西運送を吸収合併し、商号を大運に変更するとともに大阪証券取引所市場第二部に上場しました。その後、2007年に関西商運を吸収合併し、2013年には東京証券取引所市場第二部へ市場変更を行っています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
同社(単体)の従業員数は99名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は協力会社による持株会、第2位は従業員持株会となっており、関係者による保有比率が高いのが特徴です。第3位以下には個人株主や取引先企業などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大運協力会社持株会 | 19.90% |
| 大運従業員持株会 | 8.81% |
| 前田慶和 | 2.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は岩崎雅信氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩崎雅信 | 代表取締役社長 | 1989年関西商運入社。2007年大運に移籍し管理部総務課長。執行役員、取締役管理本部長などを経て2018年6月より現職。 |
| 福永芳郎 | 常務取締役港運本部長 | 1993年入社。国内部長、執行役員、取締役営業業務本部長などを経て2023年4月より現職。 |
| 上岡紀哉 | 取締役第一営業本部長 | 2002年入社。国際物流部次長、営業部長、執行役員などを経て2023年6月より現職。 |
| 川原弘真 | 取締役第二営業本部長 | 1996年関西商運入社。2007年大運入社。輸出課長、営業本部部長、執行役員などを経て2023年6月より現職。 |
| 根間岳史 | 取締役監査等委員(常勤) | 1993年入社。営業本部部長、常務取締役営業本部長、常務取締役業務本部長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中井保弘(中井保弘税理士事務所所長)、面屋晋(フジコーポレーション取締役)、岡部一男(元大阪海運貨物取扱業会専務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「港湾運送事業」「自動車運送事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 港湾運送事業
港湾運送事業法に基づく無限定業者として、貨物の船積み・陸揚げから荷捌きまでを一貫して引き受けます。また、輸出入貨物の通関手続業務や、倉庫業法に基づく保管・荷役業務も行っています。
船会社や荷主、元請港運事業者などから委託を受け、運賃や荷役料、保管料などを受け取ることで収益を上げています。運営は主に大運が行っています。
■(2) 自動車運送事業
大小各種トラックによる一般陸運貨物の運送や集配業務、フェリーを利用した長距離輸送、国際海上コンテナの内陸輸送業務などを提供しています。
荷主企業等から貨物の運送料を受け取るビジネスモデルです。運営は主に大運が行っています。
■(3) その他
自動車保険、火災保険、傷害保険、海上保険などの各種損害保険の代理店業務を行っています。
保険会社からの代理店手数料等が主な収益源となります。運営は主に大運が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は70億円台後半から80億円台後半で推移しています。2023年3月期には売上高が約89億円に達しましたが、翌期は減少しました。当期は再び増加傾向にあります。経常利益は2億円から4億円の間で変動しており、利益率は概ね2%から4%台を維持しています。当期純利益も安定して黒字を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 88億円 | 89億円 | 81億円 | 87億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 4億円 | 2億円 | 3億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 4.9% | 2.6% | 3.3% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 2億円 | 3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
当期は前期と比較して増収増益となりました。売上高は約6億円増加し、それに伴い売上総利益も増加しています。営業利益率は前期の2.4%から2.8%へ改善しました。売上の増加が利益の押し上げに寄与していることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 81億円 | 87億円 |
| 売上総利益 | 6億円 | 6億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.8% | 7.0% |
| 営業利益 | 2億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、その他経費が1.0億円(構成比28%)、役員報酬が0.6億円(同15%)、従業員給料が0.5億円(同15%)を占めています。売上原価においては、港湾運送費が62億円(売上原価の77%)と大半を占めており、次いで自動車運送費が4億円(同5%)となっています。
■(3) セグメント収益
港湾運送事業は主要取引先の受注が堅調で増収増益となり、全社業績を牽引しました。一方、自動車運送事業は燃料費高騰等の影響で営業損失となり、厳しい状況が続いています。その他事業は規模が小さく、前期と同水準で推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 港湾運送事業 | 79億円 | 85億円 | 5億円 | 6億円 | 6.9% |
| 自動車運送事業 | 2億円 | 2億円 | -0億円 | -0億円 | -6.6% |
| その他 | 0億円 | 0億円 | 0億円 | 0億円 | 99.0% |
| 調整額 | -16億円 | -18億円 | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 81億円 | 87億円 | 2億円 | 2億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、本業で現金を獲得できています。投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、営業利益で借入金の返済や自己株式の取得、設備投資を行っている健全型のキャッシュ・フローと言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 2億円 |
| 投資CF | 2億円 | -1億円 |
| 財務CF | -2億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.9%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「常に豊かな総合物流の未来を拓く」を経営理念の基本としています。これまでの経験と実績を基盤としつつ、顧客のニーズにいち早く応え、「創造するロジスティクス」を追求することで、社会に貢献できる企業を目指しています。また、事業の発展と経営の安定を通じて、株主や協力会社等の期待に応える方針です。
■(2) 企業文化
安全第一、コンプライアンスの徹底、および地球環境に配慮したグリーン経営を重視する文化があります。また、多様な価値観を持つ人材を受け入れ、固定観念に縛られない姿勢を大切にしています。労使関係については、労働組合との協議による経営委員会を設置するなど、経営の透明性を高め、労使一体となった監視体制の構築に努めています。
■(3) 経営計画・目標
安定した収益の確保を目指し、収入・粗利益・経費の中期計画を完全実施する方針です。あらゆる部店での利益確保を考え、安定的に営業利益を確保することを目標としています。財務面では、毎期安定した収益と配当の確保に取り組み、財務体質の改善と経営の効率化・安定化を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
多様化する荷主や市場変化に対応するため、営業力の強化と施設・設備の充実、新輸送方法の研究開発、人材育成を目指しています。特に、重点荷主・貨種の選定と集中、中国事務所の機能強化など海外拠点の拡充、営業人員の増加による販売促進、3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)を視野に入れたネットワーク拡大、ローコストオペレーションによる生産性向上を重点項目としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な価値観を有する人材を確保するため、性別や国籍にとらわれない採用や、他業種経験者の中途採用を積極的に行っています。また、働きやすい職場環境の整備や次世代の管理職育成に注力しています。育児・介護休業の取得しやすい環境作りや短時間勤務制度の導入など、ライフワークバランスの推進にも努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 49.0歳 | 21.8年 | 5,953,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職(3名)、中途採用者の管理職(50%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 立替金等の回収リスク
業界の慣例として、海上運賃・関税・消費税などを一時的に立替払いするため、多額の立替金が発生します。営業未収入金が回収不能となった場合、立替金も回収不能となる恐れがあります。また、関税等の税率変更時には立替払いが急増し、資金繰りに影響を与える可能性があります。同社は与信管理や債権管理を徹底し、資金繰り計画の更新や余裕資金の確保で対応しています。
■(2) 外部経営環境の変動
大阪港の港運を中心とした総合物流事業を展開しているため、経済動向、天災、テロや戦争、疾病の発生・蔓延などにより輸送需要が大きく減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に輸出入需要やサプライチェーン全体の動向が、同社の取扱貨物量に直接的な影響を与えます。
■(3) 有価証券の価値変動
低金利下での余資運用等の目的で有価証券を保有していますが、予期せぬ金融市場の混乱等により、保有する有価証券の価値が変動するリスクがあります。これにより、同社の経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。同社は内部統制の整備や時価の適時報告などを通じてリスクの把握に努めています。



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