※本記事は、共栄タンカー株式会社 の有価証券報告書(第95期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 共栄タンカーってどんな会社?
大型タンカーを中心とした船舶を保有し、海運会社等への長期貸船を通じて安定収益を確保する海運企業です。
■(1) 会社概要
1937年3月に神戸市で設立され、戦後の再建を経て1951年に外航タンカー運航事業へ進出しました。1961年には東京証券取引所第一部に上場し、1963年の海運集約により日本郵船グループに参加しました。その後、環境認証の取得やシンガポール現地法人の設立などを経て、2022年4月の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は66名、単体では63名です。筆頭株主は同社と緊密な関係にある大手海運会社で、第2位は大手造船会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本郵船 | 30.01% |
| ジャパンマリンユナイテッド | 12.43% |
| コスモ石油プロパティサービス | 6.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は近藤 耕司氏です。社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 近藤 耕司 | 代表取締役社長 | 日本郵船にてタンカーグループ長や経営委員などを歴任。同社常務取締役などを経て2022年より現職。 |
| 松下 裕史 | 代表取締役専務取締役人事総務部担当 | コスモ石油に入社後、コスモエネルギーホールディングス常務執行役員などを歴任。2023年より現職。 |
| 太田 晶宏 | 常務取締役経営管理部・企画部・経理部担当 | みずほ銀行執行役員、みずほ証券執行理事などを歴任。2023年より現職。 |
| 稲葉 泰規 | 取締役営業部長 | 大和証券を経て1993年に入社。営業部副部長、営業部長などを歴任し2022年より現職。 |
| 新保 二郎 | 取締役船舶部長兼船舶管理グループ長 | 1992年に入社。船舶部船舶管理グループ長などを歴任し2023年より現職。 |
| 吉田 雅和 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年に入社。船舶部長、常務取締役などを経て2024年より現職。 |
社外取締役は、石﨑青次(海祥海運代表取締役会長)、稲見俊文(シティコンピュータ顧問)、黒川貴史(日本郵船財務グループ長)、植松孝之(コスモエネルギーホールディングス取締役)、奥村衞子(伏見運送代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「外航海運業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■外航海運業
大型タンカー(VLCC)、LPG船、石油製品船、ばら積み船などの船舶を保有し、国内外の海運会社や石油会社へ貸し渡す貸船事業や運航業務を行っています。顧客ニーズに対応した最適な船隊構成を構築し、安全運航と海洋・地球環境保全に配慮した海上輸送サービスを提供しています。
収益は主に、船舶を運航または貸し渡すことによる運賃や貸船料から成り立っています。運営は主に同社およびシンガポールの現地法人であるKYOEI TANKER SINGAPORE PTE.LTD.などの海外子会社が行っており、グループ全体で船舶の保有・管理体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は長期契約に基づき安定的に推移していましたが、直近では好条件での契約更改や円安効果により150億円台へ増加しました。利益面では、経常利益が市況変動やコスト増の影響を受けつつも回復傾向にあります。特に当期は、船舶売却益の計上により当期純利益が過去最高水準の51億円へと急拡大しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 117億円 | 121億円 | 143億円 | 142億円 | 152億円 |
| 経常利益 | 3.0億円 | 0.2億円 | 2.7億円 | 1.9億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 0.1% | 1.9% | 1.3% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | 8.8億円 | 8.8億円 | 1.5億円 | 51億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約10億円増加しました。営業利益は、売上増に加え、修繕費の削減や減価償却費の減少などにより、前期の赤字から14億円の黒字へと大幅に改善しました。大幅な増益を達成し、収益性が大きく向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 152億円 |
| 売上総利益 | 8億円 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 5.9% | 16.5% |
| 営業利益 | -1億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | -0.9% | 9.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が3.2億円(構成比28%)、役員報酬が1.4億円(同12%)を占めています。売上原価(海運業費用)においては、船費が122億円(構成比96%)と大半を占めており、船舶の運航・管理に関わる費用がコスト構造の中心となっています。
■(3) セグメント収益
外航海運業の単一セグメントです。好条件での傭船契約更改や円安の影響により売上高が増加しました。利益面では、売上増に加え、入渠地の変更による修繕費の削減やVLCCの耐用年数変更に伴う減価償却費の減少などが寄与し、大幅な増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 外航海運業 | 142億円 | 152億円 | -1億円 | 14億円 | 9.1% |
| 連結(合計) | 142億円 | 152億円 | -1億円 | 14億円 | 9.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
共栄タンカーは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の状況を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資などによる資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済などによる資金の動きを示しており、同社は金融機関からの長期借入金を主な調達手段としています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 60億円 | 47億円 |
| 投資CF | -26億円 | -21億円 |
| 財務CF | -35億円 | 6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、大型タンカーの長期貸船契約を柱とした安定収益の確保、ならびに「安全運航と海洋・地球保全」に努めることを経営の基本方針としています。資本コストを意識した経営のもと、株主への安定的な利益還元と財務基盤の強化に取り組む姿勢を示しています。
■(2) 企業文化
「品質および環境管理マニュアル」を策定し、海陸全社員に対して定期的な教育・研修や海難事故を想定した緊急対応訓練を実施するなど、安全と環境を最優先する文化が根付いています。また、個々の人材育成を重要視し、社員に成長機会を提供することで生産性向上や組織力強化を図る方針を持っています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標は公表していませんが、安定収益の確保と財務基盤の強化を経営の重要課題として掲げています。また、株主還元については、安定配当を維持しつつ経営成績に応じた配当を実施することを基本方針とし、配当性向なども意識した経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力である傭船事業の持続的成長に向け、既存取引先との関係深耕を図るとともに、シンガポール現地法人を活用した新規取り組みや設備投資を積極的に検討しています。
* 脱炭素化に伴う将来のエネルギー転換を見据えた、最適な船隊構成の構築
* 高度な船舶管理業務を実現するための人材拡充と国内外での船員教育の充実
* 次世代型技術に対するニーズを捉えた積極的な取り組みによる海洋・地球環境保全活動
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
安全運航に不可欠な高度な船舶管理業務を継続するため、積極的な採用による人材の拡充と、国内外での船員教育の充実を並行して進める方針です。個々の人材育成を重要視し、社員に成長の機会を提供・支援することで、生産性の向上や組織力の強化、さらなる社業の発展につなげることを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.3歳 | 11.9年 | 9,587,831円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海運市況変動リスク
運賃・傭船料・売買船の市況は、世界情勢や船舶の需給により大きく変動します。同社は長期傭船契約を主体としていますが、契約更改や売船のタイミングによっては、市況下落が業績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 固定資産の減損損失リスク
保有する船舶等の固定資産について、時価の著しい下落や収益性の悪化が生じた場合、減損損失が発生し、業績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 公的規制等のリスク
船舶の安全性や運航に関わる国際機関や各国政府の法令、船級協会の規則等の公的規制を受けています。これらの規制遵守に伴うコスト増加や事業活動の制限が、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 為替・金利変動リスク
外貨建ての収入・支出や借入金があるため、為替相場や金利の変動が業績に影響を与える可能性があります。為替予約や金利スワップ取引によるリスク低減を図っていますが、完全に回避できるものではありません。



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