共栄タンカー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共栄タンカー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共栄タンカーは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、大型タンカー等の長期貸船契約を主体とする外航海運事業を展開しています。直近の業績は、傭船契約の順調な稼働により売上高155億円と増収で過去最高を記録しましたが、一部船舶の出港不許可に伴う特別損失計上等により、当期純利益は4億円と減益になりました。


※本記事は、共栄タンカー株式会社の有価証券報告書(第96期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 共栄タンカーってどんな会社?


外航海運事業を主体とし、大型原油船やLPG船等の運航および貸渡業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1937年に神戸市で設立され、1949年に現在の共栄タンカーへと社名を変更しました。1951年に外航タンカー運航事業を開始し、1961年には東京証券取引所第一部などに上場を果たしています。1963年の海運集約により日本郵船グループに参加しました。2019年にはシンガポールに子会社を設立しています。

筆頭株主は海運業を展開する日本郵船で、第2位は造船業のジャパンマリンユナイテッド、第3位は石油元売りのコスモ石油です。同社グループの従業員数は連結で67名、単体で63名となっています。

氏名 持株比率
日本郵船 30.01%
ジャパンマリンユナイテッド 12.43%
コスモ石油 6.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は近藤耕司氏が務めています。社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
近藤耕司 代表取締役社長 昭和海運入社後、合併により日本郵船に移籍。同社経営委員等を経て、2018年共栄タンカー常務取締役に就任。2022年より現職。
新村正晴 代表取締役専務取締役人事総務部担当 コスモ石油入社後、同社販売部長、取締役執行役員を経て、コスモエネルギーホールディングス顧問を歴任。2025年より現職。
太田晶宏 常務取締役経営管理部・企画部・経理部担当 日本興業銀行入行。みずほ銀行執行役員大企業・金融・公共法人部門長、みずほ証券執行理事などを経て、2023年より現職。
稲葉泰規 取締役営業部担当 大和証券入社後、1993年共栄タンカー入社。同社営業部長、理事などを経て、2022年取締役営業部長に就任。2026年より現職。
新保二郎 取締役船舶部長兼船舶管理グループ長 1992年共栄タンカー入社。同社船舶部船舶管理グループ長、理事船舶部長などを経て、2023年より現職。
吉田雅和 取締役(常勤監査等委員) 1985年共栄タンカー入社。同社理事などを経て2017年取締役に就任。常務取締役などを経て2024年より現職。


社外取締役は、石﨑青次(海祥海運代表取締役会長)、稲見俊文(中国塗料社外取締役)、黒川貴史(日本郵船経営企画統轄グループ長)、植松孝之(コスモエネルギーホールディングス取締役)、奥村衞子(伏見運送代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「外航海運業」の単一セグメントで事業を展開しています。

外航海運業


同社グループは大型原油タンカーや石油製品船、LPG船、ばら積み船などの船舶を保有し、顧客に貸し渡す外航海運事業を展開しています。大型タンカーの長期貸船契約を柱とし、国内外の海運会社やエネルギー企業などを主要な顧客として、安定的な海上輸送サービスを提供しているのが特徴です。

収益源は、傭船契約に基づき顧客に船舶を貸し渡すことで得られる貸船料です。同社が主体となって外航海運事業を営むほか、シンガポールやパナマの海外子会社9社が船舶を保有し、同社や得意先への船舶貸渡事業を行っています。共有船の運用などにおいては主要株主である日本郵船とも緊密に連携しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は概ね右肩上がりで推移しており、直近では155億円と過去最高を更新しています。一方で利益面は、海運市況の変動や為替相場の影響等により増減を繰り返しています。当期は船舶出港不許可に伴う特別損失計上等により、当期利益は4億円と前期から減少しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 121億円 143億円 142億円 152億円 155億円
経常利益 0.2億円 3億円 2億円 10億円 9億円
利益率(%) 0.1% 1.9% 1.3% 6.8% 5.7%
当期利益 7億円 0.5億円 2億円 5億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から3億円増加し155億円となりました。一方で、インフレによる外国人船員費等の運航コスト上昇や、外形標準課税による租税公課の増加などが影響し、営業利益は12億円と前期比で減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 152億円 155億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 14億円 12億円
営業利益率(%) 9.1% 8.0%


一般管理費のうち、従業員給与が4億円(構成比29%)、役員報酬が1億円(同11%)を占めています。また、海運業費用(売上原価に相当)のうち、船費が125億円(構成比96%)、借船料が5億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは外航海運業の単一セグメントであるため、事業別の業績は連結実績と同一です。当期は大型原油船等の長期貸船契約が順調に稼働したことにより、売上高は増加しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
外航海運業 152億円 155億円
連結(合計) 152億円 155億円


同社の当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 47億円 55億円
投資CF -21億円 -54億円
財務CF 6億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も33.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「船舶の安全運航および海洋・地球環境の保全」を企業理念として掲げています。社会インフラとしての海上輸送を担う責任を自覚し、大型タンカー等の運航において海洋汚染を防ぐ活動を推進することで、社会的な責務を果たしながら中長期的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、高品質な船舶管理を実現するために「学ぶ文化」の醸成を推進しています。海難事故を想定した緊急対応訓練の定期的な実施や、階層別研修の体系化、能力開発奨励制度の導入などを通じて、海陸の全従業員が専門性を高めることを重視しています。また、コンプライアンスや安全運航に対する高い意識が組織の行動様式として根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、資本コストを意識した経営のもと、財務基盤の強化と着実な利益還元を実現することを経営の基本方針としています。具体的な数値目標の開示はありませんが、中核である大型タンカーの長期貸船契約を柱に安定収益の確保を図るとともに、効率的な運航と諸経費の節減に全社を挙げて取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、中核事業である大型原油タンカー事業を安定収益基盤として注力しつつ、培った船舶管理技術を活かして他の船舶事業への展開や新規顧客の開拓を進める方針です。また、持続的な成長を実現するため、次世代型技術に対する積極的な取り組みや、環境関連法規を遵守するための設備投資など、海洋・地球環境保全に向けた施策を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、高品質な船舶管理を担保する海上従業員と陸上従業員を継続的に採用・育成していくことを人的資本戦略の基本方針としています。海陸一体の計画的な採用・配置による人材ポートフォリオの最適化を図るほか、職制定年の廃止や再雇用制度の整備によるシニア世代のノウハウ活用、有給休暇取得奨励日の設定など、従業員のエンゲージメント向上に繋がる社内環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.4歳 11.0年 9,562,721円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海運市況変動リスク


同社グループの業績は長期傭船契約を主体として安定化を図っていますが、運賃や傭船料、売買船の市況は世界の政治・経済動向や船舶の需給により大きく変動します。各船舶の傭船契約の更新時期や売船のタイミングにおいて市況が下落している場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 固定資産の減損損失リスク


同社グループは大型タンカー等の船舶を多数保有しているため、固定資産の時価が著しく下落した場合や、事業の収益性が悪化した場合には減損損失が発生するリスクがあります。多額の減損損失が計上された場合、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(3) 公的規制等のリスク


外航海運業においては、船舶の設備の安全性や安全運航を確保するため、国際機関や各国政府の法令、船級協会の規則など様々な公的規制を受けています。将来的に新たな環境規制などが導入された場合、対応するためのコスト増加や事業活動の制限が生じる可能性があります。

(4) 政治・経済情勢等によるリスク


同社グループの事業活動は世界各地に及んでいるため、地域間紛争や戦争、テロ、海賊等の地政学リスクの影響を受けやすい環境にあります。原油等の資源価格高騰による運航コストの上昇や、高リスク海域での船舶保険料の急騰などが生じた場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。