※本記事は、三井倉庫ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第177期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三井倉庫ホールディングスってどんな会社?
三井倉庫ホールディングスは、100年以上の歴史を持つ総合物流企業であり、倉庫、港湾、運送等の物流事業と不動産賃貸事業を展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
同社は1909年、東神倉庫として創立され、1950年に東京証券取引所へ上場しました。2014年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更するとともに、倉庫事業等を三井倉庫として分社化しました。近年では2025年に株式分割を実施したほか、本店所在地を東京都中央区に移転するなど、経営基盤の整備を進めています。
同社グループの連結従業員数は7,924名、単体では265名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は保険事業を行う大樹生命保険です。第3位も信託銀行であり、機関投資家や金融機関が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.51% |
| 大樹生命保険(常任代理人 日本カストディ銀行) | 6.29% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長 グループCEO兼取締役会議長兼三井倉庫エクスプレス代表取締役会長は古賀 博文氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古賀 博文 | 代表取締役社長グループCEO兼取締役会議長兼三井倉庫エクスプレス株式会社代表取締役会長 | 1981年三井銀行入行。同社常務執行役員等を経て、2014年三井倉庫ホールディングス入社。企画事業開発広報管掌などを歴任し、2017年より代表取締役社長グループCEO。2024年4月より現職。 |
| 中山 信夫 | 代表取締役専務取締役財務経理管掌兼最高財務責任者兼三井倉庫株式会社取締役兼三井倉庫サプライチェーンソリューション株式会社監査役兼三井倉庫トランスポート株式会社監査役 | 1975年三井銀行入行。2007年三井倉庫ホールディングス入社。常務取締役財務経理管掌兼CFO等を経て、2017年より代表取締役専務取締役。財務経理管掌兼CFOとしてグループ財務を統括。 |
| 郷原 健 | 常務取締役法務総務・リスク管理管掌兼コンプライアンス責任者兼三井倉庫エクスプレス株式会社監査役 | 1987年三井倉庫ホールディングス入社。経営企画室長、三井倉庫エクスプレス代表取締役専務等を歴任。2022年より常務取締役法務総務・リスク管理管掌兼コンプライアンス責任者。 |
| 糸居 祐二 | 取締役社長特命 | 1981年日本アイ・ビー・エム入社。日本オラクルを経て2012年三井倉庫ホールディングス入社。情報システム部長、上級執行役員情報システム管掌等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 桐山 智明 | 取締役上級執行役員戦略営業・事業開発管掌兼三井倉庫サプライチェーンソリューション株式会社取締役兼三井倉庫トランスポート株式会社取締役 | 1990年三井倉庫ホールディングス入社。事業開発室長、執行役員戦略営業・事業開発担当等を経て、2022年より取締役上級執行役員戦略営業・事業開発管掌。 |
社外取締役は、中野 泰三郎(タイアップ代表取締役社長)、平井 孝志(筑波大学大学院教授)、菊地 麻緒子(元日本マイクロソフト執行役)、月岡 隆(出光興産名誉顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流事業」および「不動産事業」事業を展開しています。
■(1) 物流事業
同事業では、倉庫保管・荷役、港湾作業、海外物流、複合一貫輸送、航空貨物輸送、3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)、サプライチェーンマネジメント支援、陸上貨物運送などの多様な物流サービスを顧客に提供しています。
収益は、倉庫保管料、荷役料、港湾作業料、運送賃、業務受託料等から構成されます。運営は、三井倉庫、三井倉庫エクスプレス、三井倉庫ロジスティクス、三井倉庫サプライチェーンソリューション、三井倉庫トランスポートなどのグループ各社が担っています。
■(2) 不動産事業
同事業では、主に保有するオフィスビル等の賃貸を行っています。主要物件として、東京都中央区のMSH日本橋箱崎ビルなどを保有しており、テナントに対する賃貸スペースの提供を行っています。
収益は、入居テナントからの賃貸料収入等から構成されます。運営は主に三井倉庫ホールディングスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益に関するデータは欠損していますが、利益面では変動が見られます。経常利益は2023年3月期まで増加傾向にありましたが、その後は減少に転じています。当期純利益も同様の傾向を示しており、直近では減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | -億円 | -億円 | -億円 | -億円 | -億円 |
| 経常利益 | 172億円 | 256億円 | 265億円 | 210億円 | 180億円 |
| 利益率(%) | -% | -% | -% | -% | -% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 78億円 | 56億円 | 71億円 | 103億円 | 67億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高についてはデータがありませんが、売上総利益についてはデータがなく、営業利益は前期の208億円から当期は178億円へと減少しています。営業利益率についても売上高データの欠損により算出できません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | -億円 | -億円 |
| 売上総利益 | -億円 | -億円 |
| 売上総利益率(%) | -% | -% |
| 営業利益 | 208億円 | 178億円 |
| 営業利益率(%) | -% | -% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が71億円(構成比32%)、電算費が29億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
物流事業は、航空貨物輸送の物量が堅調に推移したことや新規物流拠点の稼働により増収となりました。一方、不動産事業は、主要ビルのテナント入れ替えに伴う一時的な空室発生により減収となりました。全体としては増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 物流事業 | 2,518億円 | 2,751億円 |
| 不動産事業 | 88億円 | 57億円 |
| 調整額 | -億円 | -億円 |
| 連結(合計) | 2,606億円 | 2,807億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金を借入金の返済や投資に充てており、健全な財務運営が行われている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 232億円 | 219億円 |
| 投資CF | -105億円 | -156億円 |
| 財務CF | -171億円 | -26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、社会インフラとしての物流を支え、持続的な成長を果たすために「グループ理念(PURPOSE、VISION、VALUES)」を制定しています。PURPOSEとして「社会を止めない。進化をつなぐ。」を掲げ、VISIONとして「いつもも、いざも、これからも。共創する物流ソリューションパートナー」を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、VALUESとして「PRIDE」「CHALLENGE」「GEMBA」「RESPECT」を掲げています。これらを判断基準や行動指針とし、誇りと責任を持ち、絶えず挑戦し、現場力を高め、多様なステークホルダーを尊重する企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画2022」(2023年3月期~2027年3月期)を策定しています。最終年度である2027年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 営業収益:3,500億円
* 営業利益:230億円
* 営業キャッシュ・フロー:300億円
* ROE:12%超
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「一気通貫の統合ソリューションサービスの構築」「圧倒的な現場力の構築」「ESG経営の推進」などの施策を深化させる方針です。成長戦略として、グループ総合力結集によるトップライン成長、オペレーションの競争力強化、そしてこれらを支える経営基盤(DX、共創、事業アセット、ESG)の構築を推進しています。
* 総額1,300億円の投資(DX、新規設備投資等に1,000億円、通常投資に300億円)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を価値創造の源泉と位置づけ、「未来を描き、動き動かし続ける人」を求める人材像としています。人材ポートフォリオの可視化、タレントマネジメントシステムの導入、オンライン学習プラットフォームや「三井倉庫カレッジ」による個の進化、メンター制度等による共創力の強化、エンゲージメントサーベイ等の環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 12.4年 | 7,929,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.5% |
| 男性育児休業取得率 | 93.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 75.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人平均研修時間(13.9時間)、1人平均研修費用(6.0万円)、有給休暇取得率(70.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
北米、欧州、アジア等で事業を展開しているため、予期せぬ法規制の変更、政治・経済情勢の悪化、未整備な社会インフラ、税制変更、テロや感染症等の社会的混乱が発生した場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。
■(2) システムに関するリスク
物流サービスの提供において情報システムへの依存度が高まる中、システムの高度化やサイバー攻撃の巧妙化によりシステム障害リスクが増大しています。社内要因やサイバー攻撃等によりシステム障害が発生した場合、物流サービスの提供が困難になる恐れがあります。
■(3) 情報漏洩に関するリスク
事業活動を通じて取引先の機密情報や個人情報を保有しています。情報セキュリティ対策を講じていますが、不正アクセス等により情報が外部に流出した場合、損害賠償や社会的信用の失墜、競争力の低下を招く可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。