三井倉庫ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三井倉庫ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する三井倉庫ホールディングスは、国内外での倉庫保管、港湾作業、陸上・海上・航空運送等の総合的な物流事業と、オフィスビル等の不動産事業を展開しています。直近の連結業績は、物流事業における航空貨物輸送の取扱増や新規テナント入居の寄与により増収増益となっています。


※本記事は、三井倉庫ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第178期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三井倉庫ホールディングスってどんな会社?


国内外での総合物流サービスと不動産賃貸事業を柱とし、社会インフラを支える企業グループです。

(1) 会社概要


同社は1909年に旧三井銀行倉庫部から分離独立して設立されました。1942年に三井倉庫へ改称し、1950年には東京証券取引所へ上場しました。事業の多角化やグローバル展開を進めたのち、2014年に持株会社制へ移行して現社名となりました。直近では同業他社との資本業務提携等も推進しています。

現在の従業員数は連結で7,654名、単体で291名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主ならびに第2位株主は資産管理業務や金融業務を行う国内外の金融機関等が占めており、第3位には資本業務提携を締結している総合デベロッパーの三井不動産が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.99%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 7.18%
三井不動産 7.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長社長執行役員グループCEO兼取締役会議長兼三井倉庫エクスプレス代表取締役会長は古賀博文氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
古賀 博文 代表取締役社長社長執行役員グループCEO兼取締役会議長兼三井倉庫エクスプレス代表取締役会長 1981年旧三井銀行入行。当社の上級執行役員として財務経理や企画・事業開発管掌を歴任し、2017年より代表取締役社長グループCEO。2025年より現職。
中山 信夫 代表取締役専務執行役員財務経理管掌兼最高財務責任者兼三井倉庫取締役兼三井倉庫サプライチェーンソリューション監査役兼三井倉庫トランスポート監査役 1975年旧三井銀行入行。2007年当社入社後、2015年に常務取締役財務経理管掌兼最高財務責任者に就任。長年にわたり財務関連を牽引し、2025年より現職。
郷原 健 取締役常務執行役員法務総務・リスク管理管掌兼コンプライアンス責任者兼三井倉庫エクスプレス監査役 1987年入社。経営企画室長やグループ会社の代表取締役専務などを歴任。その後当社の上級執行役員として事業開発やリスク管理を管掌し、2025年より現職。
西村 健 取締役常務執行役員経営企画・広報・ESG・オペレーション統括管掌兼三井倉庫取締役兼三井倉庫ロジスティクス取締役 1997年入社。経営企画室長を経て執行役員に就任。経営企画や業務改革、広報、オペレーション統括などを担当し、常務執行役員を経て2025年より現職。


社外取締役は、中野泰三郎(元コカ・コーラボトラーズジャパン代表取締役副社長)、平井孝志(筑波大学大学院教授)、菊地麻緒子(弁護士・元日本マイクロソフト執行役)、月岡隆(元出光興産代表取締役社長)、甲斐順子(弁護士・厚生労働省年金特別会計公共調達委員会委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 物流事業


倉庫保管・入出庫荷役、コンテナターミナルの運営といった港湾作業のほか、陸上・海上・航空輸送など総合的な物流サービスを提供しています。メーカーや流通小売業、ヘルスケア産業など、国内外の幅広い顧客のサプライチェーンを支えています。

顧客から保管料、荷役料、港湾作業料、運送収入などを受け取る収益モデルです。運営は同社が事業戦略等を統括し、三井倉庫、三井倉庫エクスプレス、三井倉庫ロジスティクスなどの事業会社がそれぞれの専門領域のサービスを提供しています。

(2) 不動産事業


東京都内などを中心とした賃貸用のオフィスビル等や物流施設の開発・運営など、ビル賃貸業を中心とする不動産賃貸サービスを提供しています。テナント企業のビジネス基盤となるオフィス環境を整備・提供しています。

入居するテナント企業から受け取る不動産賃貸収入(家賃や共益費など)を主な収益源としています。同社ならびに一部の連結子会社が事業主体となり、施設の資産価値向上やマルチテナント化を通じた安定的な収益基盤の構築を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


経常利益は210億円から265億円付近で推移していましたが、直近では約213億円となりました。当期利益についても一時的に100億円を超えましたが、直近は約53億円となっています。外部環境の変化を受けつつも安定的に利益を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 256億円 265億円 210億円 180億円 213億円
当期利益(親会社所有者帰属) 145億円 156億円 121億円 100億円 112億円

(2) 損益計算書


直近2期の営業利益を比較すると、前期の178億円から当期は221億円へと増加しています。物流事業における航空貨物輸送の堅調な取扱増や、不動産事業における新規テナント入居の寄与などが主な要因とみられ、本業の収益力が着実に向上していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 178億円 221億円

(3) セグメント収益


物流事業は、航空貨物輸送の取扱い増加や重点分野での新規業務獲得などにより、前期から堅調な増収を達成しました。また、不動産事業においても、保有するオフィスビルのマルチテナント化に伴う新規テナントの入居が寄与し、両セグメントともに着実な売上成長を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
物流事業 2,751億円 2,920億円
不動産事業 57億円 75億円
連結(合計) 2,807億円 2,995億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスの「健全型」です。営業活動で生み出した安定的な資金を元手に、既存施設の維持更新や新規設備への投資を行いつつ、借入金の返済や株主還元を並行して進める優良な資金循環を実現しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 219億円 237億円
投資CF -156億円 -96億円
財務CF -26億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はグループ理念として、「PURPOSE(社会を止めない。進化をつなぐ。)」と、「VISION(いつもも、いざも、これからも。共創する物流ソリューションパートナー)」を掲げています。社会インフラである物流を支える企業集団として、新たな価値を創出し、社会の持続的な成長を実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は行動様式として「VALUES(価値観・行動指針)」を制定し、「PRIDE」「CHALLENGE」「GEMBA」「RESPECT」の4つを重視しています。誇りと責任を持ち、現場の力を活かしながら、多様なステークホルダーと互いに尊重し合い、新たな事業領域へ果断に挑戦し続ける文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は5カ年計画「中期経営計画2022」を策定し、持続的な成長と高水準な資本効率の維持を目指しています。成長領域への戦略投資と既存施設の維持更新を組み合わせた積極的な投資を実行し、株主還元も強化する方針を打ち出しています。

* 営業収益:3,500億円
* 営業利益:230億円
* ROE:12%超

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画における成長戦略の柱として、グループ総合力の結集によるトップラインの成長、業務標準化やテクノロジーの融合によるオペレーションの競争力強化を掲げています。さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や人的資本への投資、事業アセットの開発・向上など、経営基盤の構築にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「未来を描き、動き動かし続ける人」を求める人材像とし、経営戦略と連動した人材戦略を実行しています。「人材育成方針」に基づく自律的な学習支援やDX人材の育成、「社内環境整備方針」に基づく多様な働き方の推進や健康経営の強化を通じて、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる組織の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 12.9年 8,473,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.6%
男性育児休業取得率 88.2%
男女賃金差異(全労働者) 79.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 73.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人あたり平均研修時間(19.3時間)、有給休暇取得率(73.5%)、エンゲージメントスコア(68)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

同社グループは北米やアジア、欧州などグローバルに事業を展開しているため、各国の予期せぬ法規制の変更や、政治・経済的混乱の影響を受ける可能性があります。これに対し、現地スタッフを通じた情報収集や国内外の連携体制を強化し、不測の事態への備えを徹底しています。

(2) システムに関するリスク

物流サービスを効率的かつ安定的に提供するため、事業運営のシステム化を推進しています。しかし、サイバー攻撃の巧妙化やシステム障害が発生した場合、サービス提供に支障をきたす恐れがあります。そのため、専門チームによるセキュリティ基盤の強化や対応訓練を実施しています。

(3) 情報漏洩に関するリスク

事業を通じて取引先の機密情報や個人情報を保持しているため、外部への情報流出が発生した場合、損害賠償や社会的な信用の失墜を招くリスクがあります。この対策として、情報セキュリティ委員会を設置し、システムの継続的な点検や役職員への教育を通じて未然防止に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。