澁澤倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

澁澤倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場上場。倉庫保管や輸配送等の物流事業と、オフィスビル等の不動産事業を展開。当連結会計年度は、物流事業での新規取扱いや不動産事業の堅調な推移により、営業収益は前期比7.1%増、各利益段階でも増益を達成し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社澁澤倉庫 の有価証券報告書(第178期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 澁澤倉庫ってどんな会社?


物流事業と不動産事業を両輪とし、創業者の精神を受け継ぎながら新たな価値創造を目指す総合物流企業です。

(1) 会社概要


1897年に澁澤榮一を営業主として澁澤倉庫部を創業し、1909年に澁澤倉庫を設立しました。1950年に東京証券取引所に株式を上場。1969年には国際航空貨物運送取扱業務を開始して海外展開を進めました。2009年に本店を東京都江東区へ移転し、2025年には英文商号をShibusawa Logistics Corporationに変更しています。

連結従業員数は1,287名、単体では538名です。筆頭株主は小売業を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は建設業の清水建設となっており、事業会社や金融機関が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス 10.01%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.50%
清水建設 5.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表者は取締役社長の大隅毅氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
大隅 毅 取締役社長(代表取締役)兼社長執行役員物流部門管掌 1987年入社。総合企画部長、営業開発部長を経て、2017年より取締役社長兼社長執行役員。2023年より現職。
倉谷 伸之 取締役(代表取締役)兼専務執行役員不動産部門・管理部門管掌 1986年第一勧業銀行入行。みずほ銀行理事を経て2018年入社。不動産営業部門管掌などを歴任し、2023年より現職。
大橋 武 取締役兼常務執行役員物流部門副担当 1989年入社。営業開発部長、イノベーション推進室長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、松本伸也(元丸の内総合法律事務所パートナー代表弁護士)、力石晃一(元日本郵船代表取締役専務経営委員)、馬場佳子(よこはま都市未来研究所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 物流事業


倉庫業務、港湾運送業務、陸上運送業務、国際輸送業務などを提供しています。顧客企業の製品や原材料等の貨物を預かり、保管、荷役、流通加工、輸配送、通関といった一連の物流サービスを国内外で展開しています。

収益は、顧客からの倉庫保管料、荷役料、運送料、取扱手数料などから得ています。運営は、同社および大宮通運、澁澤陸運、日正運輸などの連結子会社に加え、香港やベトナム、中国などの海外現地法人が担っています。

(2) 不動産事業


オフィスビルや物流施設等の開発、賃貸、管理を行っています。東京都心部などに保有する賃貸用オフィスビルや物流施設を顧客に提供し、施設の有効活用を図っています。

収益は、テナントからの賃貸料や管理料、施設内の工事請負代金などから得ています。運営は主に同社が行い、施設の設備管理や各種工事請負については澁澤ファシリティーズが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績は、売上規模の拡大とともに利益も増加傾向にあります。特に当期は営業収益が順調に伸び、経常利益や当期純利益も前期を上回る結果となりました。利益率も安定した水準を維持しており、堅実な成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) -億円 -億円 -億円 734億円 786億円
経常利益 39億円 69億円 58億円 51億円 56億円
利益率(%) -% -% -% 6.9% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 53億円 38億円 37億円 49億円

(2) 損益計算書


前期と比較して増収増益となっています。売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、営業利益率も改善しました。コスト管理を行いつつ事業規模を拡大させており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 734億円 786億円
売上総利益 83億円 89億円
売上総利益率(%) 11.2% 11.3%
営業利益 43億円 47億円
営業利益率(%) 5.8% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が11億円(構成比27%)、支払手数料が4億円(同10%)を占めています。売上原価のうち、作業費が494億円(構成比71%)を占めています。

(3) セグメント収益


物流事業は、倉庫業務や陸上運送業務での新規取扱いが寄与し、適正料金の確保も進んだことで増収となりました。不動産事業も、施設稼働率の向上や工事請負業務が好調に推移し、増収を達成しています。両セグメントともに業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
物流事業 677億円 727億円
不動産事業 58億円 59億円
連結(合計) 734億円 786億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)に該当します。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 58億円 64億円
投資CF -69億円 -60億円
財務CF -117億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.8%で市場平均(24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「物流を越えた、新たな価値創造により、持続可能で豊かな社会の実現を支えること」をグループミッションとして掲げています。また、2030年に目指す姿として「Shibusawa 2030 ビジョン」を策定し、「お客さまの事業活動に新たな価値を生み出す Value Partner」の実現を目指して経営を行っています。

(2) 企業文化


創業者の精神である「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という価値観を共有しています。事業の競争力強化とサービス領域の拡大を図るとともに、持続的な価値向上のためのESG経営の確立に取り組み、この精神を体現する企業であり続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2026」を推進しています。また、「Shibusawa 2030 ビジョン」の実現に向けた数値目標として、2030年度の営業収益あたりCO2排出量を2019年度比で50%削減することなどを掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2026」に基づき、物流事業の収益力強化、国内外における物流ネットワークの拡充、物流の枠を超えた業域の拡大に取り組んでいます。また、不動産ポートフォリオの拡充やESGへの取り組み強化も推進しています。具体的には、カテゴリーNo.1の物流サービスの確立、アウトソーシングサービスの育成、スマートで強靭な不動産ポートフォリオの確立などを重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


OJTやジョブローテーション、各種指名研修による教育とともに、キャリアを見据えて学ぶ意欲のある人材に能力開発の機会を提供しています。また、多様な価値観を尊重し、ワークライフバランスの推進や健康経営に取り組むことで、誰もが心身ともに健康で安全かつ安心して働ける社内環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.0歳 17.9年 7,536,653円


※平均年間給与は基準外賃金および賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 74.8%
男女賃金差異(非正規) 72.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(48.0%)、有給休暇年間平均取得日数(11.91日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化


倉庫業や運輸業を主体とする物流事業において、国内外の経済環境や社会情勢の変動、天候等による景気動向の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、不動産事業においても、首都圏における賃貸オフィス市場の需給バランスの変化や市況動向の影響を受ける可能性があります。

(2) 法的規制への対応


物流事業は国内外で法的許認可を基盤としており、施設や設備の安全性、車両運行などに関わる様々な公的規制の適用を受けています。通商、租税、為替管理、環境、公正取引等に関する法令も含め、今後これらの法的規制の改廃や新たな規制の新設があった場合、事業運営や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 車両燃料油価格の変動


物流事業では車両運行のための燃料調達が不可欠であり、燃料費の削減や調達コストの平準化に努めています。しかし、燃料油の市場価格は原油価格に連動して変動するため、世界の景気動向や産油地域の情勢等の影響を受けやすく、燃料油価格の上昇は業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。