東陽倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東陽倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東陽倉庫は、東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する総合物流企業です。貨物の保管や運送、通関等を担う物流事業と、所有不動産の賃貸等を行う不動産事業を展開しています。直近の業績は、物流需要の堅調な推移などにより営業収益と経常利益がともに増加し、増収増益を達成しました。


東陽倉庫転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、東陽倉庫の有価証券報告書(第147期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東陽倉庫ってどんな会社?


総合物流サービスおよび不動産賃貸を展開し、人々の生活と産業を支える老舗企業です。

(1) 会社概要


東陽倉庫は1926年、旧名古屋倉庫と旧東海倉庫の合併により設立されました。1949年に名古屋証券取引所、2000年に東京証券取引所へ上場しています。2004年には連結子会社を合併して東陽物流を発足させました。2012年以降はタイに現地法人を設立するなど、海外での物流ネットワーク拡充も進めています。

現在の従業員数は連結で721名、単体で285名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は金融機関であるあいち銀行で、第2位は物流関連事業を展開する事業会社のダイセー倉庫運輸、第3位は伏見興産となっています。

氏名 持株比率
あいち銀行 4.95%
ダイセー倉庫運輸 4.77%
伏見興産 3.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長に武藤正春氏、代表取締役社長に黒田城児氏が就任しています。取締役における社外取締役の比率は22.2%となっています。

氏名 役職 主な経歴
武藤正春 取締役会長(代表取締役) 1975年東海銀行入行。2003年同社入社、2004年常務執行役員。2012年代表取締役社長を経て、2024年より現職。
黒田城児 取締役社長(代表取締役) 1984年同社入社。2011年執行役員。東陽物流の代表取締役社長などを経て、2020年取締役、2024年より現職。
渡邉誠 取締役常務執行役員管理本部長 1986年同社入社。2012年経理部長。執行役員経理部長、取締役執行役員管理本部長などを経て、2025年より現職。
白石好孝 取締役相談役 1968年東海銀行入行。1983年同社入社。2006年代表取締役社長、2012年代表取締役会長を経て、2024年より現職。


社外取締役は、水谷康二(元東洋熱工業常勤顧問)、小鹿誓子(八幡製鋲所取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「不動産事業」を展開しています。

物流事業


顧客の貨物に関する保管、荷役、運送、通関、国際複合輸送、およびこれらに付随する業務を提供しています。国内のメーカーや商社など幅広い産業の顧客を対象に、貨物の特性に応じたきめ細かい物流サービスを展開しています。

主に顧客からの保管料、荷役料、運送料などの業務受託対価を収益源としています。事業の運営は東陽倉庫本体のほか、運送・荷役業務を担う子会社の東陽物流などが連携して行っています。

不動産事業


同社グループが所有する建物や土地などの不動産を活用し、外部のテナントに対して賃貸サービスを提供しています。オフィスビルや商業施設などの優良資産を有効活用し、安定的な事業基盤の構築を図っています。

入居するテナント企業からの不動産賃貸料を主な収益源としています。同事業の運営は、主に東陽倉庫本体が直接担当し、保有資産の管理と継続的な安定収入の確保に努めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は18億円から21億円のレンジで安定的に推移しています。当期利益についても毎期11億円以上を継続して計上しており、堅実な事業基盤を背景に安定した収益力を維持していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 21億円 19億円 18億円 19億円 19億円
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 11億円 12億円 11億円 15億円

(2) 損益計算書


営業利益は前期から当期にかけて増加傾向にあります。事業環境の変化に対応しながら、安定した本業の収益基盤を維持・拡大していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 12億円 14億円

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、主力の物流事業は保管や荷役、運送等の増加により前期から増収を達成しています。一方、不動産事業は賃貸料収入の減少などによりやや減収となりましたが、全体としては物流事業の伸びが牽引し増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
物流事業 285億円 295億円
不動産事業 7億円 6億円
連結(合計) 292億円 302億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。本業の営業活動で創出した十分な資金を元手に、将来に向けた設備投資を実施しつつ借入金の返済等も進めており、財務の安定性を維持した優良な状態と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 32億円 22億円
投資CF -20億円 -16億円
財務CF -14億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業理念として『「もの」づくり、人の「くらし」を支える』を掲げ、社会と人々の生活に役立つ事を目指しています。また、経営ビジョンとして、高品質のサービスを高能率、適正コストで提供する総合物流企業を目指し、企業理念のもと、社会から選ばれ続ける物流企業として、安全の確保と社会との共生を図りつつ、物流業務全般を受注し、業容の拡大に努めています。

(2) 企業文化


倫理規範に「人権を尊重し、健全な企業風土を作ります」「透明性の高い会社運営を行い、企業として発展します」と定めています。これらを通じ、法令に基づく適切な開示や意思決定の透明性を確保し、取引先や地域社会などすべてのステークホルダーを尊重して誠実に事業活動を行う文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に努め、営業収益の拡大を図るとともに、収益性、経営効率および資本コストの観点から以下の目標値を設定しています。また、株主還元については、2027年3月期より配当性向40%、もしくは株主資本配当率(DOE)2%のいずれか高い方を目途としています。

- 売上高経常利益率 5%
- 自己資本利益率 5%

(4) 成長戦略と重点施策


経営戦略として、物流テクノロジーを駆使した3PL物流の推進、海外ネットワークの拡充およびグローバルな業務の強化、所有不動産等の活用による不動産関連事業の拡大を掲げています。具体的な施策として、情報収集力やDX化の強化による積極的な営業推進、社員教育の充実と職場環境の改善による社員の能力底上げなどを進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、持続的成長と企業価値向上を実現するため、人材確保と育成を軸とした「長期的な人的資本の強化」を重視しています。経営戦略に必要な人材ポートフォリオを構築し、新卒採用による中核人材の確保と中途採用による即戦力人材の獲得を両輪で推進しています。また、階層別研修や資格取得支援制度等を通じ、自律的な学びとキャリア構築を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.6歳 16.2年 6,485,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.6%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 64.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 64.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 36.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢等の影響


同社グループが取り扱う保管・物流品目は国内外の生産活動や消費活動に直結しているため、国内外の経済情勢の変化や金利、物価動向等が業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、経営体質と営業力の強化を図り、異なる事業領域での同時成長を目指すことでリスクの分散に努めています。

(2) 個人情報・情報システムのリスク


事業遂行において個人情報や重要なデータを扱っており、プライバシーマークの取得やウイルス対策、バックアップセンターの設置などでセキュリティ体制を整備しています。しかし、外部からの不正アクセスや事故によって情報漏洩やデータ喪失が発生した場合、信用低下や対応費用の発生により業績に影響する可能性があります。

(3) 労働力不足のリスク


物流事業を主体とする同社グループにとって、労働人口の減少に伴う人材確保の困難化は重要な課題です。必要な労働力が確保できず、人件費の上昇が生じた場合や、労働力不足によって受注の抑制を余儀なくされた場合には、同社グループの事業拡大および業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。