安田倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

安田倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、倉庫・運送を中心とした物流事業と、東京・横浜地区を中心とした不動産事業を柱に展開しています。直近の業績では、物流・不動産両セグメントの堅調な推移により、増収増益のトレンドを維持し、持続的な成長を続けています。


記事タイトル:「安田倉庫転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、安田倉庫の有価証券報告書(第158期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 安田倉庫ってどんな会社?


物流・不動産の2大事業を基盤とし、安定的な収益力と幅広いソリューションを提供する老舗企業です。

(1) 会社概要


同社は1919年に設立され、1924年に横浜市で普通倉庫業を開業しました。長年にわたり事業を拡大し、1999年に東京証券取引所市場第二部へ上場、2005年には同市場第一部(現在のプライム市場)への指定替えを果たしました。近年は、オオニシ機工や南信貨物自動車を完全子会社化するなど、M&Aやグループ再編を積極的に進め、国内外での事業基盤を強化しています。

同社グループの従業員数は連結で2,581名、単体で488名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は事業会社の明治安田生命保険であり、第2位には東京建物が名を連ねています。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が並んでおり、安定した資本関係が構築されています。

氏名 持株比率
明治安田生命保険 5.53%
東京建物 5.53%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は小川一成氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
小川一成 代表取締役社長執行役員 1987年同社入社。芝浦営業所長、業務部長、取締役、常務取締役等を歴任し、2024年4月より現職。
藤井信行 代表取締役会長 1982年富士銀行入行。みずほ銀行取締役副頭取等を経て2017年同社顧問。社長を歴任し2026年4月より現職。
松井正 取締役専務執行役員 1987年同社入社。厚木営業所長、メディカル物流ユニット長、営業企画部長等を経て、2025年4月より現職。
武藤博幸 取締役 1986年同社入社。大黒流通センター所長、芙蓉エアカーゴ代表取締役社長等を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、井福正博(元明治安田生命保険取締役)、東山克之(元農林中央金庫代表理事専務)、野上宰門(元日本精工取締役)、征矢真一(元ポッカサッポロフード&ビバレッジ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 物流事業


同事業では、国内外における倉庫での貨物保管・荷役作業、国内陸上運送、国際貨物取扱、さらには物流施設賃貸やITキッティングなどの高付加価値物流サービスを提供しています。一般貨物から医薬品まで幅広い顧客のサプライチェーンを支援しています。

主な収益源は、顧客企業から受け取る保管料、倉庫作業料、陸運料、国際貨物取扱料などです。事業の運営は同社のほか、ヤスダワークス、安田運輸、芙蓉エアカーゴなどの国内子会社群、および上海や東南アジア等に展開する海外子会社群が共同で行っています。

(2) 不動産事業


同事業では、東京・横浜地区を中心とする自社保有のオフィスビルや賃貸施設の運用・管理を行っています。また、施設の維持管理や再開発を通じた価値向上施策に加え、ファシリティマネジメントなど専門性を活かしたソリューションも提供しています。

主な収益源は、入居するテナント企業から受け取る不動産賃貸料です。事業の運営は同社が主体となり、施設の管理や関連業務については子会社の安田エステートサービスや後藤建築事務所がサポートする体制をとっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりの成長を続けており、経常利益も直近に向けて拡大傾向にあります。事業基盤の着実な強化が収益の伸びにつながっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 530億円 598億円 674億円 751億円 800億円
経常利益 40億円 38億円 40億円 50億円 58億円
利益率(%) 7.6% 6.3% 5.9% 6.6% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 22億円 23億円 28億円 67億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益推移を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益や営業利益も順調に拡大しており、本業における稼ぐ力が安定的に向上していることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 751億円 800億円
売上総利益 96億円 105億円
売上総利益率(%) 12.8% 13.1%
営業利益 35億円 43億円
営業利益率(%) 4.7% 5.4%


販売費及び一般管理費(62億円)のうち、報酬及び給料手当が26億円(構成比41%)、支払手数料が7億円(同11%)を占めています。また、営業原価(695億円)については、作業費が335億円(同48%)、人件費が156億円(同22%)という構成になっています。

(3) セグメント収益


両セグメントともに増収増益を達成しています。物流事業は新規施設の高稼働や既存顧客との取引拡大が貢献し、不動産事業は横浜駅西口の複合用途ビル等の安定稼働が収益を底上げしました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
物流事業 694億円 742億円 46億円 53億円 7.1%
不動産事業 57億円 59億円 18億円 20億円 33.9%
連結(合計) 751億円 800億円 35億円 43億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金と借入等の調達資金を元手に、将来の成長に向けた積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 130億円 90億円
投資CF -68億円 -34億円
財務CF -33億円 17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「健全な企業活動を通じて、お客様、株主、従業員、地域社会の期待に応え豊かさと夢を実現する。」を経営理念に掲げています。企業理念である「信頼・創造・挑戦」を基軸として、社会的責務を果たしながら長期的な業績の安定と向上を追求しています。

(2) 企業文化


同社は「多様性を尊重し働きやすく且つ働き甲斐のある職場で従業員が最大限のパフォーマンスを発揮する」ことを目指しています。従業員のゆとりと豊かさを実現し、安全で働きやすい環境を確保するとともに、自律的に挑戦する姿勢を重視する文化を育てています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」において、2027年度を最終年度とする具体的な数値目標を設定し、グループ全体の総合力を活かした成長を目指しています。

* 営業収益820億円
* 営業利益45億円
* ROE5.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


物流事業では、グループ連携によるネットワーク拡充や、潜在ニーズを捉えた高品質・高付加価値物流の提供、DXによる効率化を推進しています。不動産事業では、保有不動産の維持管理と再開発による価値向上を図り、経営インフラとしてサステナビリティ経営や資本政策の最適化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な経営資本と位置付けています。多様な価値観を尊重しながら新たな価値創造を担う人材の育成を目指し、階層別研修や次世代リーダー育成、DX人材育成プログラムを展開しています。また、健康経営や柔軟な働き方の推進を通じて、能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 12.8年 7,715,711円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.1%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規労働者) 72.0%
男女賃金差異(非正規労働者) 58.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変動リスク


物流事業においては、国内外の景気動向や顧客の物流戦略の変更により稼働率が低下し、原価率が上昇するリスクがあります。また、不動産事業においても、地価の変動やオフィスビル等の空室率上昇・賃料下落が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制の強化リスク


同社の事業は倉庫業法や建築基準法など多くの法的規制を受けています。コンプライアンス体制を強化していますが、将来的にこれらの規制が強化・新設された場合、対応のための費用増や時間を要し、業績を圧迫する懸念があります。

(3) 情報システム障害のリスク


物流サービスの中核を担う総合物流情報システムは、ホストコンピュータやネットワークの二重化等で安全性を確保しています。しかし、不正アクセスなどによる予期せぬ一時的なシステム障害が発生し、業務が停滞した場合には事業に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業展開におけるカントリーリスク


中国や東南アジアなど海外での物流事業展開においては、各国の法令や行政手続きの変更、為替変動、政治・経済的な混乱等のカントリーリスクが存在します。これら社会的混乱が生じた場合、海外拠点の運営に支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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