安田倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

安田倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、倉庫業を中心とした物流事業およびオフィスビル賃貸等の不動産事業を展開しています。直近の業績は、物流事業における取扱量の増加や倉庫・輸配送ネットワークの拡充などが寄与し、売上収益、各利益ともに増加する増収増益となりました。


※本記事は、安田倉庫株式会社 の有価証券報告書(第157期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 安田倉庫ってどんな会社?


物流事業と不動産事業を柱に展開する倉庫会社です。首都圏を中心に拠点を持ち、高品質なサービスを提供しています。

(1) 会社概要


同社は1919年に興亜起業として創立され、1924年に横浜市で普通倉庫業を開業しました。1999年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2005年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2019年には大西運輸を完全子会社化するなど事業基盤を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

連結従業員数は2,538名、単体では472名です。筆頭株主は損害保険ジャパンで、第2位は明治安田生命保険相互会社、第3位は不動産大手の東京建物となっており、旧安田財閥系企業との結びつきが強い安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
損害保険ジャパン 7.03%
明治安田生命保険相互会社 5.51%
東京建物 5.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員は小川一成氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
藤井 信行 代表取締役会長執行役員 1982年富士銀行入行。みずほ銀行副頭取等を経て、2017年安田倉庫顧問に就任。社長などを歴任し2024年4月より現職。
小川 一成 代表取締役社長執行役員 1987年安田倉庫入社。芝浦営業所長、業務部長、取締役常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。
武藤 博幸 取締役専務執行役員国際業務部長 1986年安田倉庫入社。大黒流通センター所長、芙蓉エアカーゴ社長などを経て、2024年4月より現職。
松井 正 取締役専務執行役員 1987年安田倉庫入社。厚木営業所長、メディカル物流ユニット長、営業企画部長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、井福正博(元明治安田生命保険相互会社取締役執行役副社長)、曽禰寛純(アズビル取締役会長)、周藤晴子(JR東日本マネジメントサービス代表取締役社長)、東山克之(元農林中央金庫代表理事専務)、野上宰門(日本精工取締役会議長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 物流事業


倉庫における貨物の保管・荷役作業、陸上運送、国際貨物取扱、物流施設の賃貸、物流情報の処理、物流機器の販売および賃貸等を行っています。顧客はメーカー、商社、流通業者など多岐にわたり、国内物流から国際物流まで幅広いニーズに対応しています。

収益は、顧客からの保管料、荷役作業料、運送賃、国際貨物取扱手数料などから構成されています。運営は同社に加え、ヤスダワークス、北海安田倉庫、安田運輸、芙蓉エアカーゴ、日本ビジネス ロジスティクスなどの子会社が担っています。

(2) 不動産事業


同社グループが保有する不動産の賃貸および管理運営を行っています。東京・横浜地区を中心としたオフィスビルやマンション等の賃貸に加え、再開発事業やファシリティマネジメント業務も展開しています。

収益は、テナントからの賃貸料や共益費、管理手数料などが主な源泉です。運営は主に同社が行い、ビルの管理業務等は子会社の安田エステートサービス、ファシリティマネジメント等は後藤建築事務所が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5期間で継続的に増加しており、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益は安定的に推移しており、当期は増益となりました。当期純利益も安定した水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 477億円 530億円 598億円 674億円 751億円
経常利益 44億円 40億円 38億円 40億円 50億円
利益率(%) 9.1% 7.6% 6.3% 5.9% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 29億円 22億円 23億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、利益率も改善傾向にあります。営業利益も前期から大幅に伸長し、営業利益率も上昇しました。増収効果に加え、利益率の改善も進んでいます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 674億円 751億円
売上総利益 80億円 96億円
売上総利益率(%) 11.9% 12.7%
営業利益 26億円 35億円
営業利益率(%) 3.9% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が25億円(構成比42%)、その他が19億円(同31%)を占めています。売上原価では、作業費が307億円(構成比47%)、人件費が150億円(同23%)となっています。

(3) セグメント収益


物流事業は新規取引の開始や既存顧客の取引拡大により増収増益となり、全社の業績を牽引しました。不動産事業は賃貸料の減少などにより減収減益となりましたが、依然として高い利益率を維持し、安定収益源としての役割を果たしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
物流事業 616億円 694億円 33億円 46億円 6.6%
不動産事業 58億円 57億円 20億円 18億円 32.1%
調整額 -5億円 -5億円 -27億円 -29億円 -
連結(合計) 674億円 751億円 26億円 35億円 4.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金で投資を行いながら借入金の返済も進めている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 59億円 130億円
投資CF -158億円 -68億円
財務CF 120億円 -33億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.6%で市場平均(非製造業)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「信頼・創造・挑戦」を企業理念として掲げています。この理念のもと、「健全な企業活動を通じて、お客様、株主、従業員、地域社会の期待に応え豊かさと夢を実現する」ことを経営理念とし、全てのステークホルダーの期待を超える企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


2030年のあるべき姿として「長期ビジョン2030」を掲げ、「世界に誇れるYASDAブランドと革新的テクノロジーの融合」を目指しています。顧客には他追随を許さないソリューションを、従業員には多様性を尊重し働き甲斐のある職場を提供することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2027年度を最終年度とする中期経営計画「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」を策定しています。グループ総合力の進化により「YASDA Value」の提供を目指し、以下の数値目標を掲げています。

* 営業収益820億円
* 営業利益45億円
* ROE5.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


物流事業では、国内外の拠点新設や輸配送ネットワークの拡大、DX推進による高付加価値物流の提供を目指します。不動産事業では、保有物件の再開発や維持管理を通じた価値向上を図ります。経営インフラとしては、サステナビリティ経営の推進やガバナンス強化に加え、資本政策による企業価値向上に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様性を尊重し働きやすく且つ働き甲斐のある職場で従業員が最大限のパフォーマンスを発揮する」ことを目指し、人材育成の強化として各種研修制度や海外留学生制度等を拡充しています。また、職員の意識・行動を変える評価制度や多様な働き方の推進を通じて、現場力・企業力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.5歳 12.8年 7,574,375円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.9%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 67.2%
男女賃金差異(正規雇用) 68.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(66.2%)、従業員1人当たりの研修受講回数(4.1回)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害等


同社グループの主要拠点は首都圏に集中しており、大規模地震などの自然災害が発生した場合、事業継続計画等の対策を行っていても業績に影響を与える可能性があります。また、感染症の流行により事業継続に支障が生じた場合も同様のリスクがあります。

(2) 法的規制


物流事業および不動産事業は倉庫業法や建築基準法などの法的規制を受けています。コンプライアンス体制の強化に取り組んでいますが、規制の強化や新設が行われた場合、対応コストや時間の増加により業績に影響を与える可能性があります。

(3) 経営環境の変化


物流事業では景気動向や顧客の戦略変更による稼働率低下、不動産事業では地価や賃料相場の下落、空室率の上昇などが業績に影響を与える可能性があります。特にオフィス市況の悪化は不動産事業の収益性に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 固定資産の減損会計


物流施設や賃貸不動産を保有しており、土地・建物の時価下落や収益性の悪化、賃貸オフィス市況の悪化などが生じた場合、固定資産の減損処理が必要となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。