ヤマタネ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマタネ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。物流関連、食品関連、情報関連、不動産関連事業を展開。当連結会計年度は、コメ卸売販売における販売単価上昇や子会社の通年寄与等により、売上高は前期比25.4%増、経常利益は同14.8%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ヤマタネ の有価証券報告書(第126期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマタネってどんな会社?


物流・食品・情報・不動産の4事業を展開。「信は万事の本を為す」を理念に豊かな社会の実現を目指す企業です。

(1) 会社概要


1937年に辰巳倉庫として設立され、1950年に株式上場しました。1989年に山種米穀を吸収合併し食糧卸売へ進出、1995年に現社名へ変更しました。2023年には株式会社ショクカイを子会社化し食品事業を拡大。2025年には山種不動産を吸収合併するなど、事業再編を進めています。

連結従業員数は1,013名、単体では397名です。筆頭株主は信託銀行ですが、第2位は創業家に関連する公益財団法人山種美術財団、第3位は外国法人等となっています。主要取引銀行である三井住友銀行も大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.80%
公益財団法人山種美術財団 8.40%
PERSHING-DIV.OF DLJ SECS.CORP. 6.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は河原田 岩夫氏、社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
河原田 岩夫 代表取締役社長執行役員 住友銀行(現三井住友銀行)専務執行役員等を経て、2022年より同社副社長。2024年6月より現職。
山﨑 元裕 代表取締役会長 1988年同社入社。食品本部長、管理本部長等を歴任し、2013年社長就任。2024年6月より現職。
溝口 健二 取締役 1987年同社入社。管理本部経理部長、経営企画部長等を歴任し、2025年4月より専務執行役員コーポレート本部長。
櫻田 琢磨 取締役 1993年同社入社。物流本部関西支店長等を歴任し、2025年4月より常務執行役員物流カンパニー長。
平田 実 取締役監査等委員(常勤) 住友銀行を経て同社入社。経営企画部長、山種不動産社長等を歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、岡伸浩(弁護士)、岩見博之(元SMBC日興証券専務)、伊藤朋子(元QUICK専務)、サミュエル・デビッド・スノディ(ファンドマネージャー)、松典男(伊藤忠都市開発社長)、内藤潤(弁護士)、松沢玲子(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流関連」「食品関連」「情報関連」「不動産関連」事業を展開しています。

(1) 物流関連


倉庫業、港湾運送業、貨物利用運送業を行っています。倉庫での保管・荷役、京浜港・神戸港での港湾運送、国際輸送や海外引越などを提供し、企業のサプライチェーンを支援しています。

収益は、顧客である荷主からの保管料、荷役料、運送料等から得ています。運営は主に同社が行い、株式会社ヤマタネロジワークス等の子会社が業務を分担しています。

(2) 食品関連


玄米の仕入・販売・精米加工を行う米穀卸売販売と、冷凍食品を中心とした加工食品卸売販売を行っています。大手量販店、外食産業、コメ小売店等が主な顧客です。

収益は、商品販売代金として顧客から得ています。運営は同社および株式会社ショクカイが行っています。

(3) 情報関連


システム導入・開発・保守・運用のトータルサービスや、ソフトウェア・ハードウェアの販売、棚卸サービスを提供しています。物流・食品業界特有のノウハウを活かしたサービスが特徴です。

収益は、システム開発料、保守運用料、機器販売代金等から得ています。運営は主に株式会社ヤマタネシステムソリューションズが行っています。

(4) 不動産関連


オフィスビル等の賃貸、売買、仲介、管理業務を行っています。保有不動産の有効活用や流動化などのCRE戦略を推進しています。

収益は、テナントからの賃貸料や不動産売買収益、管理手数料等から得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


経常利益は安定して30億円台を維持してきましたが、直近で増加傾向にあります。当期純利益については、特別利益の計上などにより大きく伸長しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常利益 31億円 27億円 35億円 32億円 37億円
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 11億円 10億円 11億円 45億円

(2) 損益計算書


売上高は大幅に増加しました。これは食品関連事業での価格上昇やM&A効果によるものです。営業利益率も安定的に推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 645億円 809億円
営業利益 35億円 38億円
営業利益率(%) 5.4% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、職員給料手当が14億円(構成比22%)、運賃倉庫諸掛が8億円(同12%)、役員報酬が4億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


食品関連事業が売上高・利益ともに大きく伸長し、全体を牽引しました。物流関連や不動産関連も堅調ですが、利益面では調整額の影響もあり全体としての伸び率は売上高に比べて緩やかです。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
物流関連 244億円 249億円
食品関連 341億円 496億円
情報関連 17億円 18億円
不動産関連 42億円 47億円
連結(合計) 645億円 809億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 37億円 58億円
投資CF -170億円 -100億円
財務CF 112億円 29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「信は万事の本を為す」に則り、社業を通じて豊かな社会の実現に貢献することを企業理念としています。また、パーパスとして「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」を掲げています。

(2) 企業文化


グループの役職員が大切にする価値観(Values)として、「挑戦を楽しむ」「チーム力を信じる」「“ありがとう”を繋げる」を定めています。これらを通じて、チャレンジ精神溢れる企業文化の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


新中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」を策定しています。
* 売上高:880億円
* 営業利益:47億円
* ROE:6.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


2025年4月より「カンパニー制」へ移行し、意思決定の迅速化と資本効率を意識した経営を推進します。物流では「食×物流」シナジー創出、食品ではバリューチェーン拡大、情報では特化型SI展開、不動産ではCRE戦略高度化に取り組みます。また、人的資本投資やDX推進により企業価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財の多様性と活躍の促進」を重要課題とし、生産性向上による働き方改革や、女性活躍を含む多様な人財の活躍推進に取り組んでいます。また、次世代経営人財の育成や、専門能力を持つ高齢者の雇用、キャリア採用の拡大など、多様な人財基盤の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 13.8年 6,602,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.4%
男性育児休業取得率 13.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 51.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(72.8%)、一人当たり時間外労働時間(22.5時間)、定年後再雇用者継続雇用率(71.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業ごとの経営成績の変動リスク


物流関連では主要顧客の物流戦略変更や取扱量変動、食品関連では消費減少や競合との価格競争、調達価格変動、情報関連では技術競争力の低下、不動産関連では空室や価格競争のリスクがあります。顧客ニーズへの対応や調達力強化、先端技術への対応等によりリスク低減を図ります。

(2) エネルギー価格や外注コスト等の高騰について


ウクライナ情勢や円安等によるエネルギー価格高騰、物流2024年問題に伴うドライバー不足や外注コスト上昇が業績に影響する可能性があります。価格転嫁や効率的な事業運営により影響の低減を図ります。

(3) 人財について


グループの成長には多様な人財の活用が不可欠であり、優秀な人財の確保・育成ができない場合や流出防止ができない場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。また、労務管理の不備による労働災害等は社会的信用の低下を招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。