※本記事は、株式会社ヤマタネ の有価証券報告書(第127期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤマタネってどんな会社?
物流や食品の流通を中心とする多角的な事業展開により、社会の持続的な発展を支える企業です。
■(1) 会社概要
1937年に辰巳倉庫として設立されました。1950年に東京証券取引所へ上場し、1989年には山種米穀を吸収合併して食糧卸売事業に本格参入しました。1995年に現在の社名であるヤマタネに変更し、近年では2025年にヤマタネドキュメントマネジメントやキョクトウなど複数社を子会社化し事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で1,087名、単体で404名です。筆頭株主は公益財団法人の山種美術財団で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は投資会社のグループ企業となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山種美術財団 | 8.80% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.50% |
| スノーボールキャピタル | 5.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長は山﨑元裕氏、代表取締役社長執行役員は河原田岩夫氏が務めています。社外取締役比率は58.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山﨑元裕 | 代表取締役会長 | 1988年同社入社。食品本部長兼貿易部長、物流本部関西支店長などを経て、2013年代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 河原田岩夫 | 代表取締役 | 1986年住友銀行入行。三井住友銀行専務執行役員などを経て、2022年同社副社長執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 溝口健二 | 取締役 | 1987年同社入社。管理本部経理部長などを経て、2020年取締役に就任。2025年専務執行役員コーポレート本部長となり現職。 |
| 櫻田琢磨 | 取締役 | 1993年同社入社。物流本部関西支店長やヤマタネロジワークス代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
| 平田実 | 取締役監査等委員(常勤) | 1986年住友銀行入行。同社管理本部経営企画部長、山種不動産代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、岡伸浩(岡綜合法律事務所代表)、岩見博之(元三井住友銀行常務執行役員)、伊藤朋子(元市況情報センター専務取締役)、サミュエル・デビッド・スノディ(根津アジアキャピタルリミテッドファンドマネージャー)、松典男(伊藤忠都市開発代表取締役社長)、内藤潤(J&N法律事務所代表)、松沢玲子(松沢玲子税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流関連」「食品関連」「情報関連」「不動産関連」の報告セグメントを展開しています。
物流関連
同社グループは、倉庫における物品の保管や入出庫に伴う荷役業務のほか、港湾運送業や国内外に向けた貨物利用運送業務を提供しています。顧客は食品、家電、医療など多様な業界にわたります。
収益は、寄託を受けた物品の保管料や、荷役および運送に伴う各種手数料から得ています。運営はヤマタネのほか、ヤマタネロジスティクス、シンヨウ・ロジ、ヤマタネドキュメントマネジメントなどの子会社が行っています。
食品関連
全国の主要産地から玄米を仕入れ、精米加工して大手量販店や外食産業などに販売するほか、冷凍食品を中心とした加工食品の卸売を行っています。顧客は一般消費者や飲食関連事業者です。
収益は、玄米や精米、加工食品の販売代金から得ています。運営はヤマタネを中心に、ショクカイ、農産ベストパートナー、しん力などの子会社が担っています。
情報関連
コンピュータシステムに関する導入、開発、保守、運用のトータルサービスや、情報処理に関連するソフトウェアおよびハードウェアの販売、棚卸サービスを提供しています。主に大企業などが顧客です。
収益は、システム開発や保守サービスの提供に伴う対価、および機器の販売やレンタル料金から得ています。運営は主にヤマタネシステムソリューションズが行っています。
不動産関連
首都圏を中心に、オフィスビルや商業施設などの賃貸、管理、および不動産の売買や仲介業務を行っています。顧客はオフィステナントや一般企業などです。
収益は、保有する物件からの賃貸料や不動産売買、仲介に伴う手数料から得ています。運営はヤマタネが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上収益が継続して拡大傾向にあり、順調な成長を示しています。利益面でも一時的な足踏みはあったものの、当期は価格転嫁の進展や子会社化の寄与により、経常利益および当期利益ともに大幅な増益を達成しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 468億円 | 511億円 | 645億円 | 809億円 | 887億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 35億円 | 32億円 | 37億円 | 55億円 |
| 利益率(%) | 5.8% | 6.8% | 5.0% | 4.6% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 10億円 | 11億円 | 45億円 | 48億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加傾向にあり、それに伴い営業利益も拡大しています。利益率も改善しており、価格転嫁や事業効率化の取り組みが着実に成果を結んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 809億円 | 887億円 |
| 売上総利益 | 101億円 | 133億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.5% | 15.0% |
| 営業利益 | 38億円 | 59億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、職員給料手当が15億円(構成比20%)、運賃倉庫諸掛が8.6億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の食品関連は、米不足の影響による販売単価の上昇と子会社化の寄与により大幅な増収となりました。物流関連も海外引越事業の好調や価格転嫁により順調に売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 物流関連 | 249億円 | 261億円 |
| 食品関連 | 496億円 | 563億円 |
| 情報関連 | 18億円 | 17億円 |
| 不動産関連 | 47億円 | 46億円 |
| 連結(合計) | 809億円 | 887億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 58億円 | 82億円 |
| 投資CF | -100億円 | -33億円 |
| 財務CF | 29億円 | -18億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「信は万事の本を為す」に則り、社業を通じて豊かな社会の実現に貢献することを企業理念として掲げています。この理念のもと、コーポレートメッセージとして「“「続く」を支える。”」を掲げ、すべてのステークホルダーの良きパートナーとして最適な解を提供し、共に持続的な成長を歩み続けるという矜持を持っています。
■(2) 企業文化
同社グループは、すべての役職員が大切にする価値観「Values」として、「挑戦を楽しむ」「チームの力を信じる」「“ありがとう”を繋げる」を定めています。これらを中心に据え、「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」というパーパスの実現と、チャレンジ精神溢れる企業文化の醸成を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、長期ビジョン「ヤマタネ2031ビジョン」の実現に向けた第2フェーズとして、中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」を推進しています。成長投資の推進や資本効率の向上を加速させるため、2028年3月期の財務目標を見直しました。
・売上高:1,000億円
・営業利益:47億円
・EBITDA:92億円
・ROE:7.5%以上
・総還元性向:70~80%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、カンパニー制への移行による部門別収益管理の高度化や事業シナジーの創出を推進しています。また、パーパス経営の加速やDX推進により、生産性向上と新たなサービスの開発を進める方針です。さらに、人的資本投資や成長投資を積極的に行い、中長期的な企業価値向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人財を最も重要な資本と位置付け、教育や研修を通じて能力を高めることで企業価値向上を図る方針です。キャリアの複線化や理念体系を反映した評価を組み込んだ新たな人事制度を導入し、社員の挑戦を後押ししています。また、働き方改革や女性活躍、高齢者雇用体制の構築など多様な人財が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 12.9年 | 7,109,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.2% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 48.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人あたり研修費用(88,634円)、有給休暇取得率(72.0%)、定年後再雇用者継続雇用率(80.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 各事業における環境変化やコスト高騰リスク
物流関連では顧客の物流戦略変化やドライバー不足による外注コスト高騰が、食品関連では米の調達価格の変動や消費減少が収益を圧迫する可能性があります。また、不動産関連では建築コストの増大や金利上昇による影響が懸念されます。
(2) 情報セキュリティやIT人財不足のリスク
大企業を中心にDX投資が加速する一方、高度なIT人財の獲得競争が激化し、顧客の需要に対応するリソースが不足する恐れがあります。また、セキュリティ要件の高度化に伴う対応コストの増大や、インシデント発生時の信用失墜もリスクとして挙げられます。
(3) 投資有価証券や固定資産の価値低下リスク
同社グループが保有する有価証券や不動産などの資産において、今後の経済情勢の悪化により経済価値が低下した場合、必要な減損処理を実施することとなり、財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。



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