ケイヒン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイヒン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する総合物流企業です。国内での倉庫・運送事業と、国際運送・港湾作業などの国際物流事業を展開しています。2025年3月期の業績は、国内の保管需要増や輸出車両の取扱増加により、売上高505億円、経常利益31億円、当期純利益22億円といずれも前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、ケイヒン株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ケイヒンってどんな会社?

ケイヒンは、横浜港での倉庫業からスタートし、現在は陸・海・空の輸送モードを組み合わせた総合物流サービスをグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要

1947年に大津工業として設立され、翌年京浜倉庫へ商号変更し倉庫営業を開始しました。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1971年には同第一部へ指定替えとなりました。1984年に現在のケイヒンへ商号変更し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

同グループの連結従業員数は897名、単体では307名です。筆頭株主は京友株式会社で、同社は役員及びその近親者が議決権の過半数を所有している資産管理会社です。第2位は朝日生命保険相互会社、第3位は東京海上日動火災保険株式会社であり、金融機関や事業会社が主要株主となっています。

氏名 持株比率
京友 9.40%
朝日生命保険相互会社 7.61%
東京海上日動火災保険 7.39%

(2) 経営陣

同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は杉山光延氏が務めています。社外取締役比率は約18%です。

氏名 役職 主な経歴
大津育敬 代表取締役会長 1978年ケイヒン アメリカ コーポレーション社長。1989年専務、1991年社長を経て2019年より現職。エヴェレット スティームシップ コーポレーション会長も兼任。
杉山光延 代表取締役社長 1985年住友銀行入行。2008年同社入社、営業統轄部担当部長。取締役、常務、専務を経て2019年より現職。
関本篤弘 専務取締役営業部門管掌宅配統轄部長 1981年同社入社。2008年取締役、2016年常務。ケイヒン配送社長を兼務し、2022年より現職。
大津英敬 専務取締役管理部門管掌社長室長兼システム統轄部長 2009年セブン-イレブン・ジャパン入社。2015年同社入社。社長室長兼システム統轄部長、常務を経て2022年より現職。
坂井賢敏 常務取締役国際担当兼港湾運送営業部長 1982年同社入社。ケイヒン海運社長兼務。2012年取締役、海上・ターミナル営業部長などを経て2022年より現職。
荒井正俊 取締役財務部長 1985年住友銀行入行。読売広告社を経て2009年同社入社。2012年より現職。
吉村裕 取締役総務部長 兼人財開発部長 1990年同社入社。関西営業部長、人財開発部長を経て2023年より現職。
筒井章太 取締役営業統轄部長 1993年同社入社。2017年営業統轄部長となり、2019年より現職。
葉梨陽一郎 取締役関東営業部長 1994年同社入社。2017年関東営業部長。ケイヒン陸運社長を兼務し、2019年より現職。


社外取締役は、本保芳明(元国土交通省観光庁長官)、野口隆(元フィード・ワン取締役副社長執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「国内物流事業」および「国際物流事業」を展開しています。

(1) 国内物流事業

国内において、倉庫保管、倉庫荷役、流通加工、陸上運送、宅配、海上コンテナ輸送、物流システムソフト開発および情報処理などのサービスを顧客に提供しています。食品や医療分野などの取扱い拡大にも注力しています。

収益は、顧客からの保管料、荷役料、運送料などから得ています。運営は、主にケイヒン、ケイヒン配送、ケイヒン陸運、ケイヒンコンテナ急送、オーケーコンテナエキスプレス、ダックシステムなどが行っています。

(2) 国際物流事業

国際運送取扱、航空運送取扱、通関、港湾作業、船舶代理店業務を行っています。グローバルなネットワークを活用し、海上・航空貨物の輸出入業務や港湾での荷役作業を提供しています。

収益は、顧客からの運賃、取扱手数料、通関料、作業料などから得ています。運営は、主にケイヒン、ケイヒン海運、ケイヒン港運、ケイヒン航空、およびシンガポールやフィリピンなどの海外現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期まで増加傾向にありましたが、2024年3月期に一度減少しました。しかし、2025年3月期には再び500億円台に回復しています。利益面では、経常利益率が6%台で推移しており、安定した収益性を維持しています。当期純利益も20億円前後を確保しており、堅実な経営が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 482億円 541億円 598億円 465億円 505億円
経常利益 25億円 33億円 40億円 30億円 31億円
利益率(%) 5.2% 6.1% 6.6% 6.4% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 23億円 27億円 20億円 22億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は約10%で横ばいです。営業利益率は5.7%程度で推移しています。販管費の増加が見られますが、増収効果により営業増益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 465億円 505億円
売上総利益 47億円 51億円
売上総利益率(%) 10.0% 10.1%
営業利益 27億円 29億円
営業利益率(%) 5.7% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が4億円(構成比20%)、給与手当が4億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益

国内物流事業は、物流施設の拡充により保管・入出庫が増加し、増収微増益となりました。国際物流事業は、輸出車両の海上輸送取扱いの増加やコンテナ運賃の上昇などにより、大幅な増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内物流事業 264億円 276億円 29億円 30億円 10.8%
国際物流事業 201億円 228億円 13億円 16億円 7.2%
調整額 -億円 -億円 -16億円 -17億円 -%
連結(合計) 465億円 505億円 27億円 29億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って、投資(投資CFマイナス)を行いつつ、借入金の返済(財務CFマイナス)を進めている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 39億円 38億円
投資CF -27億円 -28億円
財務CF -14億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「お客様に歓迎され、信頼される物流サービスの提供を通じて、広く国際社会に貢献する」という経営理念を掲げています。倉庫、港湾運送、陸上・海上・航空輸送などの物流サービスを有機的に結びつけ、利便性を追求した総合物流サービスを提供することを目指しています。

(2) 企業文化

「ケイヒングループ行動規範」および「ケイヒングループ行動指針」を策定し、法令遵守や環境保全活動に積極的に取り組む文化があります。倉庫業・トラック運送事業の全事業所において「グリーン経営認証」を維持するなど、企業の社会的責任を重視しています。また、「人」を財産と捉え、人財育成に注力する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標

2025年度の連結業績見通しとして、以下の数値を掲げています。
* 売上高:510億円
* 営業利益:31億5千万円
* 経常利益:33億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:22億円

(4) 成長戦略と重点施策

国内物流事業の収益力向上、海外・国際物流事業の拡大と基盤強化、グループ経営の基盤強化を基本方針としています。高機能物流への取り組みとして、AI・ロボティクスの導入や、食品・医療分野の取扱拡大を目指します。国際物流では、グローバルな代理店との連携強化や、新規開発営業部署の新設により取扱拡大を図ります。また、DXを活用した業務効率化や環境負荷低減も推進します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「個々の特性を活かす人事管理制度」を基軸に、社員の成長、プロフェッショナルの育成、多様性の尊重を重視しています。採用では通年採用や外国籍人材の採用を実施し、育成面ではジョブローテーションや海外トレーニー制度を導入しています。また、カムバック制度や従業員エンゲージメント調査を通じて、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 15.7年 6,150,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.4%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用) 72.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.4%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変動リスク

国内外の景気動向や物流市場の競争激化、顧客の物流合理化などが業績に影響を与える可能性があります。特定の大口顧客との取引縮小もリスク要因です。これに対し、主要顧客との信頼関係強化や新規顧客開拓によりリスク分散を図っています。

(2) 感染症に関するリスク

新たな感染症の流行によるサプライチェーンの混乱や消費低迷が、荷動きの減退を招く可能性があります。また、事業所の一時的閉鎖など、事業活動に制約が生じるリスクがあります。

(3) 人財確保に関するリスク

少子高齢化による労働力不足、特にトラックドライバー不足が深刻化しており、人件費の増加や受注抑制につながる可能性があります。「2024年問題」の影響もあり、必要な人財が確保できない場合、事業活動に制約が生じる可能性があります。

(4) 災害・事故等に関するリスク

主要拠点である東京・横浜・大阪などの物流施設が、地震等の大規模災害により損害を受けた場合、事業所の閉鎖や修繕コストが発生する可能性があります。また、火災等の事故発生も業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、施設のスクラップアンドビルドや保険付保等の対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。