ケイヒン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイヒン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイヒンは東京証券取引所スタンダード市場に上場する総合物流企業です。国内における倉庫保管や陸上運送から、国際運送や港湾作業などの国際物流まで幅広いサービスを展開しています。直近の業績は、国内の物流施設の取扱い増加や港湾作業の好調などに牽引され、増収増益のトレンドを維持して安定した成長を遂げています。


※本記事は、ケイヒンの有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ケイヒンってどんな会社?


ケイヒンは国内外で倉庫業、運送業、港湾作業などを提供する総合物流企業グループです。

(1) 会社概要


1947年に設立され、翌年より倉庫業の営業を開始しました。その後、1955年に一般港湾運送業へ参入し、1962年に東証二部、1971年に東証一部へ上場しました。1978年の米国拠点設立を皮切りに国際展開を進め、1984年に現在のケイヒンへと社名を変更し、総合物流企業として事業を拡大しています。

従業員数は連結で917名、単体で302名です。筆頭株主は事業会社の京友で、第2位はインタラクティブ・ブローカーズ証券が常任代理人を務める外国法人、第3位は朝日生命保険相互会社です。京友は同社の役員およびその近親者が議決権の過半数を所有する企業であり、設備の修繕や不動産賃貸等で取引関係にあります。

氏名 持株比率
京友 9.40%
INTERACTIVE BROKERS LLC 8.30%
朝日生命保険相互会社 7.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は杉山光延氏です。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
杉山光延 代表取締役社長 住友銀行を経て2008年に同社へ入社し、営業統轄部担当部長や専務取締役を歴任。2019年より現職。
大津育敬 代表取締役会長 米国現地法人社長や社長室長を経て1991年に代表取締役社長に就任。2019年より現職。
関本篤弘 専務取締役営業部門管掌宅配統轄部長 1981年に入社し、ケイヒン配送の代表取締役社長や常務取締役を経て、2022年より現職。
大津英敬 専務取締役管理部門管掌社長室長兼システム統轄部長 セブン-イレブン・ジャパンを経て2015年に同社へ入社。常務取締役を経て2022年より現職。
坂井賢敏 常務取締役国際担当兼港湾運送営業部長 1982年に入社し、ケイヒン海運の代表取締役社長などを歴任。2022年より現職。
吉村裕 取締役総務部長兼人財開発部長 1990年に入社し、関西営業部長などを経て2023年より現職。
荒井正俊 取締役財務部長 住友銀行等を経て2009年に同社へ入社。財務部担当部長などを経て2012年より現職。
筒井章太 取締役営業統轄部長 1993年に入社し、営業統轄部長を経て2019年より現職。
葉梨陽一郎 取締役関東営業部長 1994年に入社し、関東営業部長やケイヒン陸運の代表取締役社長を経て2019年より現職。


社外取締役は、本保芳明(元国土交通省観光庁長官)、野口隆(元横浜銀行取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、国内物流事業および国際物流事業を展開しています。

(1) 国内物流事業


医療医薬・食品・アパレルなどの分野を顧客とし、倉庫保管、倉庫荷役、流通加工、陸上運送、宅配、海上コンテナ輸送から物流システムの開発まで、国内における幅広い物流サービスを提供しています。AIやロボティクスを活用した高付加価値な物流や、拠点の拡充による配送の効率化を通じて顧客のサプライチェーンを支えています。

収益源は、顧客からの倉庫保管料、荷役料、運送運賃、および流通加工に係る作業手数料などです。事業の運営は同社が主体となりつつ、倉庫荷役や陸上運送などの実作業や実運送は、ケイヒン配送、ケイヒン陸運、ケイヒンコンテナ急送、ダックシステムなどの国内グループ各社が相互に連携してサービスを提供しています。

(2) 国際物流事業


国内外の荷主を対象に、国際運送取扱、航空運送取扱、通関業務、港湾作業、および船舶代理店業務を提供しています。グローバルに展開する海外代理店との連携や、シンガポール、フィリピン、香港、台湾などアジア地域を中心とした海外拠点を活用し、高品質な国際複合一貫輸送や輸出車両の海上輸送などを手がけています。

主な収益源は、顧客からの国際運送取扱手数料、通関手数料、港湾荷役料、および船舶代理店としての各種手数料です。事業の運営は同社に加えて、通関や船舶代理店業務を担うケイヒン海運、港湾運送を行うケイヒン港運、航空輸送を取り扱うケイヒン航空、および各国の海外現地法人が連携して事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は460億円から600億円の規模で推移しています。経常利益は安定して30億円台から40億円台を確保しており、利益率も概ね6%台から7%台と堅調な水準を維持しています。直近の期においては売上高が微減となったものの、経常利益と当期利益が大幅に伸長し、収益性の向上が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 541億円 598億円 465億円 505億円 503億円
経常利益 33億円 40億円 30億円 31億円 37億円
利益率(%) 6.1% 6.6% 6.4% 6.1% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 21億円 14億円 14億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高は前年同期から横ばいである一方、売上総利益は約5億円増加して利益率も改善しています。これに伴い営業利益も堅調に推移しており、国内における物流施設の取扱い増や業務効率化の成果が収益構造の良化に寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 505億円 503億円
売上総利益 51億円 56億円
売上総利益率(%) 10.1% 11.2%
営業利益 29億円 34億円
営業利益率(%) 5.7% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が4.7億円(構成比22%)、給与手当が3.5億円(同16%)を占めています。また売上原価の主な内訳は、作業費が316億円(構成比71%)、人件費が59億円(同13%)、賃借料が39億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、国内物流事業は倉庫での保管・入出庫の取扱いや陸上運送が堅調に推移し、増収となっています。一方で国際物流事業については、複合一貫輸送や輸出車両の取扱いは増加したものの、期中の海上運賃下落や運賃単価の高い北米向け航空貨物の減少などが影響し、全体として減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
国内物流事業 276億円 281億円
国際物流事業 228億円 223億円
連結(合計) 505億円 503億円


同社のキャッシュ・フローは、本業で創出した資金を上回る規模で投資を行い、不足分を外部からの資金調達で賄う「積極型」のパターンです。当期は、本社移転を見据えた国内の不動産取得を含む固定資産の取得等により投資支出が大きく膨らみ、それに伴い長期借入金を中心とした資金調達を実施して成長投資を進めています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 38億円 56億円
投資CF -28億円 -121億円
財務CF -13億円 27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.5%でこちらも非製造業の市場平均を上回っています。収益性と財務の健全性を高い次元で両立させていることがわかります。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様に歓迎され、信頼される物流サービスの提供を通じて、広く国際社会に貢献する」という経営理念を掲げています。倉庫から陸・海・空の輸送までを機能的に結びつけ、利便性を追求した総合物流サービスを提供することで、人々の生活と地球規模のサプライチェーンを支える重要な社会インフラとしての使命を果たしています。

(2) 企業文化


「コンプライアンスの遵守はすべてに優先する」という経営トップの強い方針のもと、揺るぎない倫理観を持った健全な組織基盤の構築を重視しています。問題や不安を隠さず報告・相談できる心理的安全性を確保し、多様な人材が国内外で協力・協調し合える、風通しが良く働きがいのある企業風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な企業価値の向上と資本コストを意識した経営を目指し、2026年度に向けた中短期の数値目標を掲げています。新規顧客の獲得や成長市場であるEC物流の強化による事業拡大を通じて、以下の達成を見込んでいます。

* 売上高510億円
* 営業利益35億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は持続的な成長に向けて、国内施設の高度化を通じた医療医薬・食品・アパレル分野の取扱い拡大や、AI・ロボティクス導入による省人化など高機能物流の推進を図ります。国際面ではアジア地域への新たな拠点進出も視野に入れ、DXの推進を通じてグローバルなサービス領域の拡大と収益基盤の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営戦略を牽引する人材ポートフォリオへの変革を目指し、実践型育成によるグローバル・プロフェッショナル人材の早期育成、自律的な挑戦を後押しするキャリア支援、専門性を高める能力開発支援を掲げています。海外トレーニー制度やジョブローテーションへの重点投資を通じ、次世代人材の早期輩出を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。給与等の決定にあたっては、年功序列的な一律の運用を排し、個人の役割や発揮された能力・成果を適正に反映させる成果主義を基軸としており、モチベーションの向上と人材の定着を図る人事制度へと見直しを進めています。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.4歳 15.3年 6,468,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.9%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全従業員) 72.7%
男女賃金差異(正規) 72.5%
男女賃金差異(非正規) 64.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 物流市場や顧客動向の変動リスク


国内外の景気動向や在庫調整の影響、価格競争などの物流市場の動向が事業に影響を及ぼす可能性があります。また、主要な顧客企業との取引が停止・縮小した場合には売上減少につながるため、同社は既存顧客との信頼関係構築や新規開拓に注力し、リスクの分散を図っています。

(2) トラックドライバー等の人材不足リスク


少子高齢化による労働力不足や、いわゆる「2024年問題」などに伴う慢性的なトラックドライバー不足が事業活動に制約をもたらす可能性があります。人件費の増加や受注抑制を避けるため、同社は職場環境の待遇改善や教育体制の充実、パートタイマーの活用などを通じて人材の確保と定着に努めています。

(3) 情報システムへの障害・漏洩リスク


物流サービスを支える情報システムへの外部からの不正侵入等により障害が発生し、適切なサービス提供が困難となるリスクがあります。また、個人情報を含む顧客情報の漏洩が生じた場合には社会的信用の失墜を招くため、同社は強固なセキュリティ対策を講じるとともに保険を付保してリスクの軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。