※本記事は、株式会社杉村倉庫の有価証券報告書(第162期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 杉村倉庫ってどんな会社?
野村ホールディングスの親密会社として、関西・首都圏で倉庫・運送業を展開する老舗の総合物流企業です。
■(1) 会社概要
同社は1895年に杉村正太郎が「杉村安治川支店」として創業し、1919年に株式会社へ改組して設立されました。1940年に倉庫業法による倉荷証券発行許可を受け、1949年には大阪証券取引所に株式を上場しています。その後、1961年に現在の連結子会社となる杉村運輸を設立し、物流体制を強化しました。2013年には大阪市港区の倉庫屋上にて太陽光発電設備を新設し、売電事業を開始しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は373名、単体では99名です。筆頭株主は野村不動産グループの野村プロパティーズで、第2位は資産管理業務を行うりそな銀行、第3位は野村ホールディングスとなっており、野村グループが過半数の株式を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野村プロパティーズ | 46.10% |
| りそな銀行 | 4.60% |
| 野村ホールディングス | 4.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は福山漢成氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 福山 漢成 | 取締役社長(代表取締役) | 1990年野村證券入社。同社執行役員、常務、専務を経て、2024年同社副社長執行役員に就任。2025年6月より現職。 |
| 福西 康人 | 取締役会長 | 1988年野村證券入社。同社常務執行役員等を歴任後、2018年同社取締役副社長、2019年社長を経て、2025年6月より現職。 |
| 竹谷 仁彦 | 取締役専務執行役員(代表取締役)営業部門担当 | 1981年同社入社。首都圏営業部長、業務部長などを歴任。2014年常務取締役、2016年専務取締役を経て、2023年4月より現職。 |
| 浅井 俊彦 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年同社入社。首都圏営業部長、大阪営業部長などを経て、2022年執行役員。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、宮川壽夫(大阪公立大学大学院教授)、近本茂(大阪ガスケミカル取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流事業」「不動産事業」「その他の事業」の3つのセグメントを展開しています。
■(1) 物流事業
得意先から受託した貨物の保管業務や荷役荷捌、貨物自動車運送を行っています。倉庫業務では首都圏や関西圏に拠点を持ち、保管・梱包・流通加工などを提供しています。運送業務では子会社の杉村運輸などが連携し、配送や事務所移転作業などを手掛けています。
主な収益源は、寄託を受けた貨物の保管料、荷役作業に伴う荷役料、および貨物運送による運送料です。運営は主に同社および連結子会社の杉村運輸が行っており、杉村運輸は梱包作業や流通加工業務なども担当しています。
■(2) 不動産事業
同社が保有する土地、建物(倉庫、オフィスビル等)の賃貸を行っています。大阪市港区や神奈川県厚木市などに賃貸用不動産を所有しており、物流施設やオフィスとしてのスペースを提供しています。また、一部の土地を子会社に賃貸し、駐車場として活用されています。
収益源は、テナント顧客からの賃貸料収入および駐車場利用料です。運営は同社が主体となって土地・建物の貸付けを行っているほか、一部施設を利用して子会社の杉村興産が駐車場業務を行っています。
■(3) その他の事業
同社グループが保有する施設を利用したゴルフ練習場の運営や、倉庫屋上に設置した太陽光発電設備による売電事業を行っています。
収益源は、ゴルフ練習場の利用者からの利用料および電力会社への売電収入です。ゴルフ練習場の運営は子会社の杉村興産が担っており、売電事業は同社が大阪市港区の倉庫屋上にて行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は102億円から112億円へと着実に増加傾向にあります。経常利益も10億円台前半で推移しつつ、直近では13億円台後半まで伸長しています。利益率も安定しており、底堅い収益力を維持しながら緩やかな成長を続けていることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 102億円 | 102億円 | 106億円 | 109億円 | 112億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 11億円 | 10億円 | 13億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 12.0% | 11.2% | 9.8% | 11.9% | 12.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 8億円 | 7億円 | 9億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も前期の11.9%から12.2%へと改善しており、増収効果が利益面に反映されています。コストコントロールが適切に行われ、収益性が向上している状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 109億円 | 112億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.3% | 23.3% |
| 営業利益 | 13億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 11.9% | 12.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比46%)、その他が7億円(同54%)を占めています。
■(3) セグメント収益
物流事業は新規貨物の寄与や食品取扱の増加により増収増益となり、利益率は10%を超えました。不動産事業も賃料改定や駐車場利用増で堅調に推移し、高い利益率を維持しています。一方、その他の事業はゴルフ練習場の入場者減などで減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 物流事業 | 92億円 | 96億円 | 9億円 | 10億円 | 10.9% |
| 不動産事業 | 13億円 | 13億円 | 9億円 | 9億円 | 66.4% |
| その他事業 | 3億円 | 3億円 | 1億円 | 1億円 | 28.9% |
| 調整額 | -1億円 | -1億円 | -6億円 | -6億円 | - |
| 連結(合計) | 109億円 | 112億円 | 13億円 | 14億円 | 12.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済を進めつつ、投資も自己資金の範囲内で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 19億円 |
| 投資CF | -4億円 | -2億円 |
| 財務CF | -10億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.0%で市場平均(スタンダード非製造業平均48.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「常にお客様のニーズを先取りし期待に応える」「物流業務を通じて社会に貢献する」「株主、従業員に豊かさを還元する」という経営理念を掲げています。これらに則り、安心安全で高品質な物流サービスを提供し、サステナビリティへの課題に対処することで、すべてのステークホルダーにとって「より良い会社」となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「環境保護方針」や「杉村グループサステナビリティ行動指針」に基づき、環境・社会・企業統治などの社会的課題に取り組む文化を持っています。指示待ちではなく課題に立ち向かう自律型の社員育成を重視し、コンプライアンスやガバナンスの強化を通じて、社会から信頼される健全な経営を目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2022年度に策定した中期経営計画(2022年度~2026年度)において、2026年度に連結営業収益111億円、連結営業利益13億円を目標としていましたが、2024年度において営業利益目標に到達しました。現在、新たな中期経営計画の策定を検討中です。
* 連結営業収益:111億円(目標)
* 連結営業利益:13億円(目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、「取扱貨物拡大」「拠点拡大」「生産性の向上」を重点施策としています。具体的には、グループ連携強化による物流提案やアウトソーシング受託領域の拡大、大阪港営業所の倉庫増床や首都圏・中部圏での新規拠点設置の検討を進めます。また、DX推進や業務プロセスの見直しによる効率化・省人化にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「より良い会社」への成長のため、指示待ちではなく課題に立ち向かう自律型社員の育成を目指しています。OJTや外部研修を通じた教育を実施し、多様な人材が活躍できる環境整備を推進しています。能力本位の人材登用を行い、育児・介護支援や資格取得支援などの制度を充実させ、従業員の能力発揮をサポートしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.3歳 | 13.3年 | 6,236,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 76.5% |
※男性育児休業取得率については、該当者がいなかった等の理由により有報には記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化と競業激化
国内外の景気変動や主要顧客の物流政策変更、賃貸不動産市況の変化により、他社との競争が激化し業績に影響を及ぼす可能性があります。特に販売比率の高い顧客の動向や、海外情勢による顧客企業の生産・調達活動の停滞が、業務委託量の減少につながるリスクがあります。
■(2) 法的規制の影響
主たる事業である物流事業は関連法規による規制を受けており、これらの法令規制の変更や強化が行われた場合、コストの増加につながり、同社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金利の動向の変化
設備投資のために金融機関から資金調達を行っており、現在は低水準の金利で推移していますが、金融不安やインフレ等により資金調達環境が悪化したり、金利が上昇した場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 固定資産の減損リスク
保有する土地、建物、投資有価証券等の資産時価の下落や、事業所の採算性悪化、新規投資の見積りとの乖離などが生じた場合、減損処理が必要となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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