杉村倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

杉村倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

杉村倉庫は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、倉庫保管や貨物自動車運送等の物流事業を中核に、不動産賃貸やゴルフ練習場等の運営も展開しています。直近の業績では、物流事業での既存顧客の取扱物量増加や売電事業の好調などにより、営業収益は微増、営業利益や当期純利益も増加し、増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社杉村倉庫 の有価証券報告書(第163期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 杉村倉庫ってどんな会社?


物流事業を中核に、不動産やサービス業務など多角的な事業展開で安定した収益基盤を構築する企業です。

(1) 会社概要


1895年に杉村安治川支店として大阪市西区で創業し、1919年に現在の会社を設立しました。1949年には大阪証券取引所に株式上場し、その後、東京、神戸、神奈川、埼玉などに営業所を開設し物流ネットワークを拡大しています。近年は老朽化施設の再開発や太陽光発電設備を新設するなど多角的に事業を展開しています。

同社の従業員数は連結で377名、単体で101名です。筆頭株主は事業会社の野村プロパティーズで、第2位は外国法人のGOLDMAN SACHS INTERNATIONAL、第3位はりそな銀行となっています。

氏名 持株比率
野村プロパティーズ 46.20%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) 8.00%
りそな銀行 4.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は福山漢成氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
福山漢成 取締役社長(代表取締役) 1990年野村證券(現野村ホールディングス)入社。同社常務、専務等を歴任し、2024年杉村倉庫副社長執行役員に就任。2025年より現職。
福西康人 取締役会長 1988年野村證券(現野村ホールディングス)入社。同社常務等を経て2018年杉村倉庫取締役副社長。2019年より社長を務め、2025年より現職。
竹谷仁彦 取締役専務執行役員(代表取締役)営業部門担当 1981年杉村倉庫入社。首都圏営業部長、取締役経営企画部長、常務取締役等を歴任。2016年専務取締役となり、2023年より現職。
浅井俊彦 取締役(常勤監査等委員) 1986年杉村倉庫入社。首都圏営業部長、大阪営業部長、執行役員などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、宮川壽夫(昭和女子大学グローバルビジネス学部客員教授)、近本茂(大阪ガスケミカル取締役会長・元大阪瓦斯常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」「不動産事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 物流事業


得意先から受託した貨物の倉庫における保管や荷役、流通加工を行うほか、貨物自動車による運送や企業等の事務所移転作業を提供しています。顧客は食品、製造業、卸売業など多岐にわたります。

収益源は、寄託貨物の保管料、荷役作業に伴う荷役荷捌料、および貨物の運送や移転作業に伴う運送料です。運営は同社のほか、子会社の杉村運輸が行っており、同社が受託した貨物の一部について杉村運輸に委託する体制をとっています。

(2) 不動産事業


所有する土地、オフィスビル、賃貸用物流施設や駐車場などの不動産施設を事業法人や個人などのテナント顧客に向けて貸し付けています。

収益源は、テナント顧客から受け取る賃貸料です。運営は主に同社が行っていますが、施設の一部を子会社の杉村興産に貸し付けており、杉村興産がその施設を利用して駐車場業務を行っています。

(3) その他の事業


所有する施設や遊休スペースを有効活用し、一般消費者や事業法人向けに付加価値の高いサービスを提供しています。

収益源は、ゴルフ練習場の利用客から得られる利用料や、倉庫の屋上に設置した太陽光発電設備を利用した売電事業による売電収入です。運営は、ゴルフ練習場については子会社の杉村興産が、売電事業については同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、経常利益が10億円台から14億円台の範囲で堅調に推移しています。当期利益も8億円から11億円の間で推移しており、安定した収益基盤を維持しながら着実な利益を確保していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - - - - -
経常利益 11億円 10億円 13億円 14億円 14億円
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 9億円 8億円 8億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高や売上総利益のデータは非開示ですが、営業利益は直近2期間で14億円前後を安定して確保しています。物流事業や不動産事業における着実な収益貢献が、堅実な利益水準の維持に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 14億円 14億円


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2億円(構成比18%)、役員報酬が2億円(同17%)、減価償却費が1億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


物流事業とその他の事業が微増収となった一方で、不動産事業も堅調に推移しています。特に物流事業は、人件費の増加などの影響を受けつつも増益を達成し、全セグメントにおいて安定した収益を生み出しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
物流事業 96億円 96億円
不動産事業 13億円 13億円
その他の事業 3億円 3億円
連結(合計) 112億円 112億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 19億円 19億円
投資CF -2億円 -6億円
財務CF -7億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「常にお客様のニーズを先取りし期待に応える」「物流業務を通じて社会に貢献する」「株主、従業員に豊かさを還元する」という3つの経営理念を掲げています。社会インフラとしての物流機能を提供し続けることで社会的責任を果たしつつ、すべてのステークホルダーにとって価値ある企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、指示待ち社員ではなく課題に立ち向かう「自律型社員」の育成を重視する企業文化を持っています。定期的に各部門で実施されるCSミーティングを活用したOJTや外部教育研修への参加を通じて、現場力の底上げを図っており、安心・安全で働きやすい労働環境のもと、多様な人材が活躍できる職場づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、「杉村グループ中期経営計画」を策定し、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいます。前期に掲げた営業利益目標を達成したことから、現在は新たな中期経営計画の策定に向けた検討を進めており、当面は現計画の課題への対応を継続し、外部環境の変化に適切に対応しながら安定的な事業基盤の確立を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、グループ各社の連携強化による物流提案で取扱貨物の拡大を図るとともに、顧客ニーズに適合した新規拠点の設置や大阪港営業所等での施設機能の増強を検討しています。また、人手不足への対応として、社内DX推進グループを起点とした業務プロセスの見直しや新型物流機器の導入による生産性向上を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、物流現場を担う人材の確保および定着を重要な経営課題と位置付けています。CSミーティングを活用したOJTや外部研修を通じて従業員の業務遂行能力と現場力の底上げを図り、多様な人材が継続して活躍できるよう安心・安全で働きやすい労働環境の整備と業務負荷の軽減を進めることで、安定的なサービスの提供に繋げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 12.9年 6,296,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 73.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競業の激化等による事業環境の変化


主要顧客の物流政策の変更や賃貸不動産物件の市況変化などにより他社との競業が激化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、販売比率の高い顧客の動向や、海外情勢の変動による物流網の混乱に伴う委託量の減少もリスクとして認識されています。

(2) 法的規制の変更とコスト増加


同社グループの主たる事業である物流事業は、関連法規による厳格な規制を受けて事業を展開しています。将来において、これらの法令や規制が変更・強化された場合、対応に向けた各種コストの増加につながり、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 金利動向の変化と資金調達への影響


事業用資産の新設や更新のために継続的な設備投資を行っており、金融機関から資金調達を行っています。金融不安の再燃やインフレ等の問題が発生して金利が上昇した場合、資金調達環境が悪化し、支払利息の増加等を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 資産価値下落による減損損失の発生


同社が保有している土地、建物、投資有価証券等の資産の時価が下落したり、運営している事業所等の採算性が著しく悪化した場合、または新規投資における採算性の見積りを誤った場合には、減損処理を行う必要が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。