川西倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

川西倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、倉庫業を中心とした国内物流事業および国際複合一貫輸送等の国際物流事業を展開しています。直近の連結業績は、売上収益が255億円と前期比で増収となる一方、経常利益は12億円と減益となりました。国内での運送業務や倉庫保管料の増加が寄与しましたが、コスト増等が利益を圧迫しました。


※本記事は、川西倉庫株式会社 の有価証券報告書(第168期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 川西倉庫ってどんな会社?


倉庫業を中核に、港湾運送や国際輸送などを組み合わせた総合物流サービスを提供する老舗企業です。

(1) 会社概要


1903年に神戸で個人事業として倉庫業を開始し、1918年に前身となる会社を設立、1922年に現在の商号となりました。日本の主要港湾を中心に事業基盤を築き、1989年にはタイに現地法人を設立するなど早期から国際展開を進めています。2016年にはインドネシアに現地法人を設立し、ASEAN地域への事業拡大を加速させています。

2025年3月31日時点の連結従業員数は632名(単体404名)です。筆頭株主は計量計測機器メーカーの大和製衡で、第2位および第3位は個人株主となっています。同社は大和製衡の関連会社等ではありませんが、大和製衡出身者が同社社長を務めるなど人的関係があります。

氏名 持株比率
大和製衡 16.57%
川西 多美 7.22%
川西 央也 6.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は川西 二郎氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
川西 二郎 代表取締役社長 1995年安田火災海上保険入社、2007年大和製衡入社を経て2010年同社入社。常務取締役管理企画部門管掌等を経て2021年4月より現職。
若松 康裕 取締役会長 1977年同社入社。常務取締役営業本部副本部長、代表取締役社長等を経て2021年4月より現職。
高杉 誠 常務取締役管理企画部門管掌 1988年富士銀行(現みずほ銀行)入行。支店長等を歴任後、2016年同社入社。経営企画部長等を経て2021年4月より現職。
笠原 謙 取締役国際部門・港運部門管掌 1993年同社入社。THAI KAWANISHI LIMITED出向、国際部長等を経て2021年4月より現職。
長島 聡 取締役国内部門管掌 1989年同社入社。営業部長、執行役員神戸支店長等を経て2021年4月より現職。


社外取締役は、八杉 勝英(元株式会社みなとカード代表取締役専務)、虎頭 信宏(弁護士)、公江 正典(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内物流事業」、「国際物流事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 国内物流事業


国内において、倉庫での貨物の保管・荷役業務、港湾における船積み・陸揚げ作業、トラック等を利用した貨物運送、通関業務や流通加工業務などを行っています。食料品等の輸入貨物の取り扱いに強みを持ち、主要港湾に拠点を有しています。

主な収益源は、寄託者からの保管料・荷役料、港湾運送料金、運送の依頼主からの運賃・料金などです。運営は同社、川西ファインサービス株式会社、川西港運株式会社、株式会社メイサク、株式会社マルカ陸運などが主に行っています。

(2) 国際物流事業


国際複合一貫輸送業務(NVOCC)を中心とした海外輸送業務、輸出入貨物の取り扱い、および海外での現地作業や倉庫業務を行っています。ASEAN地域や北米に拠点を展開し、国際的な物流ニーズに対応しています。

主な収益源は、荷主からの国際間複合輸送に係る運賃・料金、海外倉庫での保管料・荷役料などです。運営は同社およびKAWANISHI LOGISTICS (S) PTE. LTD.、THAI KAWANISHI LIMITED、KAWANISHI LOGISTICS (AMERICAS) INC.等の海外現地法人が行っています。

(3) その他


太陽光発電による売電事業、不動産の賃貸事業、物流資材の販売事業などを行っています。

主な収益源は、電力会社への売電収入、賃借人からの賃貸料、資材購入者からの代金などです。運営は主に同社および川西ファインサービス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は緩やかな増加傾向にあります。2023年3月期に大きく伸長した後、高水準を維持しています。利益面では、2024年3月期に経常利益がピークに達しましたが、直近期ではやや減少しました。当期利益は変動が見られますが、安定的に黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 211億円 236億円 271億円 250億円 255億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 6億円 9億円 10億円 12億円 12億円
利益率(%) 2.7% 3.7% 3.5% 4.9% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 5億円 15億円 8億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業利益率は低下しました。売上総利益率は微増していますが、販管費の増加が利益を圧迫する要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 250億円 255億円
売上総利益 38億円 38億円
売上総利益率(%) 15.2% 15.1%
営業利益 12億円 10億円
営業利益率(%) 4.6% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が14億円(構成比50.5%)、その他が11億円(同37.5%)を占めています。売上原価では、運送費が95億円(構成比43.9%)、下払作業費が33億円(同15.2%)と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


国内物流事業は、港湾運送業務の減少があったものの、倉庫保管料や運送業務の好調により増収増益となりました。一方、国際物流事業は売上高が増加しましたが、海外子会社の業績低迷等の影響で大幅な減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内物流事業 204億円 207億円 17億円 17億円 8.4%
国際物流事業 42億円 45億円 3億円 2億円 4.0%
その他 4億円 4億円 2億円 2億円 64.7%
調整額 -0億円 -0億円 -11億円 -11億円 -
連結(合計) 250億円 255億円 12億円 10億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を、設備投資や借入金の返済に充当しており、財務体質の健全化と事業基盤の強化を並行して進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 24億円
投資CF -8億円 -12億円
財務CF -10億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、取引先顧客へのサービス向上を第一とし、ステークホルダーとの信頼関係を維持することを基本方針としています。健全な財務体質を意識しながら経営基盤の安定と強化を図り、既存事業の利益改善を目指しています。また、時代のニーズに合致した物流の構築を進め、DXの推進やサステナビリティなどの社会課題に対応した企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「コンプライアンスの行動宣言および取組」を掲げ、法令遵守や企業倫理の実践を業務遂行の基本としています。また、100年以上にわたり積み上げてきたステークホルダーからの信頼を基盤とし、環境への配慮や安全管理を徹底する姿勢を重視しています。公共性の高い物流企業として、持続可能な社会の実現に貢献する誠実な風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は長期ビジョン「KAWANISHI2030」および中期経営計画「Vision2027事業領域の拡大」を策定しています。2027年度の数値目標として、以下を掲げています。

* 連結営業収益:300億円
* 連結営業利益:15億円

(4) 成長戦略と重点施策


「次世代型物流施設の計画推進」、「ASEAN投資」、「リコンストラクション(拠点/組織の再構築)」を三大重点戦略として推進しています。成長に向けた戦略的投資として、DXを活用した物流施設の構築や海外事業の拡大に注力するとともに、社内体制の強化として業務効率化や人材育成、財務基盤の強化に取り組んでいます。既存事業においても、物流拠点の機能拡充や運送部門の強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働力不足に対応した人材育成を重要課題と位置づけ、各種階層別研修の実施や海外拠点での実地研修制度を通じて、グローバルに活躍できる人材の育成を推進しています。また、戦略的な人事制度運用や適正な評価を行うため、2024年4月より新たな人事制度を導入しました。多様性の確保に向けて、女性管理職比率の向上や育児休業取得の促進など、働きやすい環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.8歳 14.7年 6,207,594円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.9%
男女賃金差異(正規雇用) 57.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 122.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休暇取得人数(24人)、女性管理職数(課長級以上)(9人)、教育研修費(7,647千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システムトラブルによる事業停止リスク


物流事業において情報システムやインターネットを利用しているため、災害による機器の被災やシステム作動不能、外部からの不正アクセスやウイルス感染によるシステム障害、情報漏洩等が発生した場合、経営成績や社会的信用に影響を与える可能性があります。

(2) コンプライアンス違反による信用失墜


法令遵守や企業倫理の実践を基本としていますが、これらが完全に履行できない場合、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。各種業法への理解不足による違法行為を防ぐため、研修や委員会設置等の対策を行っていますが、リスクは内在しています。

(3) 国内外の設備投資計画の進捗遅延


国内外で積極的な事業展開を計画していますが、事業戦略が当初の計画通りに進捗せず、投入資本の回収計画が低下、停滞、または中断に至った場合、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業展開におけるカントリーリスク


アジアを中心に海外展開を拡大していますが、政治・経済情勢の変化、予期せぬ法規制の変更、自然災害、テロ、戦争等の事態により事業継続が困難となるリスクがあります。特に近年投資を拡大しているインドネシア等でのリスク顕在化が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。