櫻島埠頭 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

櫻島埠頭 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、大阪港を拠点とした港湾運送・倉庫事業者です。石炭等のばら貨物や液体化学品の保管・荷役を主力とし、関西圏の物流インフラを支えています。直近の業績は、売上高43億円(前期比5.5%増)と増収を達成しましたが、経常利益は3億円(同10.6%減)と減益になりました。


※本記事は、櫻島埠頭株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 櫻島埠頭ってどんな会社?


大阪港の好立地を活かし、石炭・化学品などの重要物資を取り扱う港湾運送・倉庫業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1948年2月、財閥解体による旧三井物産の解体に伴い、同社の埠頭施設を継承して設立されました。1949年5月には大阪証券取引所に上場しています。1955年には石油化学品タンクを建設し油槽所業務を開始、1973年には倉庫業の許可を取得するなど事業を拡大しました。直近では2023年11月に1号ばら貨物倉庫の大規模改修工事を完工するなど、設備更新を進めています。

連結従業員数は93名、単体では73名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は同社の関連会社で港湾運送事業を行う企業、第2位は兵庫県の運輸会社、第3位は兵庫県の産業会社となっており、物流・産業関連の企業が上位を占めています。

氏名 持株比率
埠頭ジャスタック 19.12%
セオ運輸 10.78%
丸協産業 8.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は谷本祐介氏です。社外取締役比率は28.6%(取締役7名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
松岡 眞 取締役会長 1981年住友商事入社。同社無機化学品第2部長等を経て、ソーダアッシュジャパン代表取締役社長を歴任。2018年櫻島埠頭入社、2020年代表取締役社長執行役員を経て、2025年6月より現職。
谷本 祐 介 代表取締役社長執行役員ファシリティ強化事業部・内部監査室担当 1983年三菱商事入社。同社監査部部長代行等を経て、日東富士製粉取締役常務執行役員を歴任。2020年櫻島埠頭取締役常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
佐 藤 禎 広 取締役専務執行役員総務部・経理部担当 2014年10月櫻島埠頭入社。経営企画ユニットマネージャー、執行役員経営企画部長兼営業・業務統括部長、取締役執行役員、取締役常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
藤 井  守 取締役常務執行役員業務第一部・業務第二部・マーケティング部担当 1985年4月櫻島埠頭入社。営業本部液体物流ユニットマネージャー、営業部長、執行役員営業部長、取締役執行役員を経て、2024年6月より現職。
森 下  勝 取締役執行役員営業部担当 1993年4月櫻島埠頭入社。営業部長兼東京営業所長、執行役員営業部長兼東京営業所長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、種村泰一(弁護士)、德平隆之(元大阪市港湾局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ばら貨物」「液体貨物」「物流倉庫」および「その他」事業を展開しています。

(1) ばら貨物セグメント


石炭・コークス・塩などの原燃料ばら貨物を中心に、大型荷役機械や専用倉庫、野積場を活用して物流業務を一貫して行っています。各種企業を顧客とし、輸入原材料の受入から保管、納入までの作業を担っています。

収益は、顧客からの港湾運送や倉庫保管、運送に係る料金等から得ています。運営は同社に加え、子会社である浪花建設運輸が輸入原材料の陸上貨物自動車運送を行っています。

(2) 液体貨物セグメント


大阪港において、小型から大型まで約13万キロリットルの容量を持つタンクと大型タンカーが接岸可能な岸壁を有し、大規模な商業用基地として機能しています。液体化学品や石油系燃料等の入庫から出庫までの中継業務を行っています。

収益は、タンクを利用する顧客からの保管料や入出庫作業料等から得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) 物流倉庫セグメント


危険物の保管・受払業務を行う化学品センター、および特定顧客と提携している冷蔵倉庫、低温物流倉庫、食材流通加工施設から構成される部門です。化学工業製品や冷凍食品など多種多様な貨物を取り扱っています。

収益は、倉庫保管料や荷役料、流通加工料等から得ています。運営は同社が行っています。

(4) その他のセグメント


太陽光発電設備を利用した売電事業を行っています。

収益は、発電した電力の売却による収入です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 45億円 42億円 39億円 41億円 43億円
経常利益 1.7億円 2.2億円 2.4億円 3.4億円 3.0億円
利益率(%) 3.8% 5.2% 6.3% 8.2% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.9億円 1.8億円 1.8億円 2.2億円 2.4億円


売上高は2023年3月期を底に回復傾向にあり、直近では43億円まで増加しています。経常利益率は3%台から上昇し、近年は6〜8%台で推移していますが、2025年3月期は前期比でやや低下しました。当期純利益は安定的に黒字を維持しており、緩やかな増加基調にあります。

(2) 損益計算書

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 41億円 43億円
売上総利益 7.8億円 8.0億円
売上総利益率(%) 19.0% 18.4%
営業利益 2.4億円 2.0億円
営業利益率(%) 5.7% 4.7%


売上高は増加しましたが、売上原価の増加により営業利益は減少しました。売上高営業利益率は前期の5.7%から4.7%へ低下しています。売上増に伴う利益確保が課題となる一方で、安定した売上総利益を維持しています。

コスト分析:
売上原価のうち、荷役関係諸払費が12.7億円(構成比38.2%)、借地料が5.4億円(同16.2%)、施設修理維持費が4.0億円(同12.1%)を占めています(単体ベース)。販売費及び一般管理費においては、給料及び手当等の人件費やその他経費が増加傾向にあります。

(3) セグメント収益


ばら貨物セグメントは保管業務が好調で増収となりましたが、営業損失となりました。液体貨物セグメントは荷役・保管ともに堅調で増収増益でした。物流倉庫セグメントも安定稼働により増収増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ばら貨物 22億円 23億円 -0.4億円 -0.6億円 -2.4%
液体貨物 14億円 15億円 4.6億円 4.8億円 32.1%
物流倉庫 5.3億円 5.3億円 2.0億円 2.1億円 40.2%
その他 0.2億円 0.2億円 0.1億円 0.1億円 33.2%
調整額 - - -3.9億円 -4.4億円 -
連結(合計) 41億円 43億円 2.4億円 2.0億円 4.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン:**健全型**
営業活動で得たキャッシュで、借入金の返済や設備投資を行っている、財務的に安定した状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.6億円 7.6億円
投資CF -10.8億円 -6.1億円
財務CF 2.4億円 -0.6億円


* 財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.8%でスタンダード市場平均(57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Vision」として、顧客からの信頼と好立地という強みを伸ばして企業価値を高めること、付加価値を追求して強靭な企業体力を構築すること、大阪港において地元産業に貢献する公共使命を拡大することを掲げています。

(2) 企業文化


同社は「Vision」の中で、法令を遵守し、高潔な企業精神を維持していくことを掲げています。また、次世代に残せる事業構造への転換とサステナビリティ経営の推進を通じて、ステークホルダーへの貢献を目指す姿勢を示しています。

(3) 経営計画・目標


同社は第4次中期経営計画(2024年度~2026年度)「産業構造の変化に対応する次世代ビジネスへのStep2」を策定しています。

* 2026年度 EBITDA(特殊要因を除く):9億円以上
* 中計期間中 総設備投資額:30億円以上
* Net有利子負債の増加抑制:10億円まで

(4) 成長戦略と重点施策


産業構造の変化に対応するため、中長期的視点に立った事業ポートフォリオの改善と必要な投資を実施する方針です。また、サステナビリティ経営を推進し、資本・財務政策を実行することで企業価値向上を目指します。

* ばら貨物セグメント:新規貨物誘致のため、汎用性の高い倉庫を新設(2026年度中完工予定)。
* 液体貨物セグメント:石炭需要縮小を見据え、野積場スペースへのステンレスタンク新設を検討。既存鉄製タンクのステンレス化も検討。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サステナビリティ基本方針のもと、人材を「人財」と捉え、幅広い投資と公平な育成機会の提供を基本としています。具体的には、法令遵守精神の醸成、中長期的視野を持つキャリア形成の支援、各種資格取得の推奨を行っています。また、多様な人材が働ける環境創出のため、社員の安全確保、人権尊重、ハラスメント防止教育、健康経営に向けた施策を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.6歳 18.4年 6,249,000円


※平均年間給与は賞与並びに基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、資格取得件数(46件)、受講人数(118名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業特性に由来するリスク


同社は独立した立場で港湾荷役や保管事業を展開していますが、取扱貨物が原材料やエネルギー資源中心であるため、特定の取引先への売上依存度が高くなる傾向があります。取引先や国の資源政策に変化があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、取扱貨物の多様化や新規ビジネスの発掘を進めています。

(2) 大型荷役設備のメンテナンス及び自然災害リスク


ばら貨物作業に使用する大型クレーン等の設備に突発的な不具合が発生した場合、事業活動に影響を与える可能性があります。また、事業設備が一箇所に集中しているため、大規模な台風や地震による被害を受けた場合、全事業活動が停止する恐れがあります。保険付保等の対策を行っていますが、地震被害等については影響が出る可能性があります。

(3) 固定資産の減損リスク


事業活動のために多額の固定資産を保有しています。経済変動による時価の下落や収益力の低下に伴い、減損損失が発生する可能性があります。

(4) パンデミックリスク


感染症対策を実施していますが、従業員や専属下請作業会社の作業員が罹患した場合、事業活動に影響を与え、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。