櫻島埠頭 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

櫻島埠頭 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する櫻島埠頭は、大阪港を拠点に港湾運送事業、倉庫業、運送業などを展開する企業です。直近の業績では、売上高が約43億円で前年比減収となった一方で、経常利益は約4億円、当期純利益は約3億円といずれも増益を達成しており、利益率の改善と堅調な収益確保が進んでいます。


※本記事は、櫻島埠頭株式会社の有価証券報告書(第84期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 櫻島埠頭ってどんな会社?


大阪港を拠点に、ばら貨物や液体貨物の港湾運送、倉庫・運送業を展開する総合物流企業です。

(1) 会社概要


1948年2月に設立され、旧三井物産の埠頭施設を継承して事業を開始しました。1949年5月に大阪証券取引所に上場しています。1951年の港湾運送事業登録を経て、1955年に石油化学品タンクを建設し油槽所業務を開始しました。その後も塩倉庫や低温物流倉庫などを新設し事業を拡大しています。

現在、従業員数は連結で89名、単体で71名体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業会社の埠頭ジャスタックで、第2位はセオ運輸、第3位は楽天証券となっています。

氏名 持株比率
埠頭ジャスタック 19.06%
セオ運輸 11.51%
楽天証券 9.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は谷本祐介氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
谷本祐介 代表取締役社長執行役員ファシリティ強化事業部・内部監査室担当 1983年三菱商事入社。日東富士製粉取締役常務執行役員等を経て2020年同社取締役就任。2024年より現職。
松岡眞 取締役会長 1981年住友商事入社。ソーダアッシュジャパン代表取締役社長等を経て2020年同社代表取締役社長就任。2025年より現職。
佐藤禎広 取締役専務執行役員総務部・経理部担当 2014年同社入社。経営企画ユニットマネージャー、執行役員経営企画部長等を経て、2024年より現職。
藤井守 取締役常務執行役員業務第一部・業務第二部・マーケティング部担当 1985年同社入社。営業本部港運ユニットマネージャー、執行役員営業部長等を経て、2024年より現職。
森下勝 取締役執行役員営業部担当 1993年同社入社。営業部長兼東京営業所長、執行役員営業部長兼東京営業所長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、種村泰一(中之島中央法律事務所弁護士)、德平隆之(元大阪市港湾局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ばら貨物」、「液体貨物」、「物流倉庫」および「その他」事業を展開しています。

(1) ばら貨物


石炭、コークス、塩などの原燃料ばら貨物を中心に、大型荷役機械と各種専用倉庫、野積場を備え、物流業務を一貫輸送体制にて迅速に処理するサービスを提供しています。

主な収益源は、顧客から受け取る荷役作業料、保管料、運送料などです。運営は主に同社が行い、受注した輸入原材料の陸上貨物自動車運送等は子会社の浪花建設運輸が担っています。

(2) 液体貨物


約13万キロリットルの容量を持つタンクと大型タンカーが接岸可能な岸壁を有し、液体化学品や石油系燃料等の入庫から出庫までの中継業務を提供しています。大規模な商業用基地としての役割を担っています。

主な収益源は、顧客からのタンク利用料や入出庫作業料などです。運営は同社が行っており、特定の取引先と長期の利用契約を締結することで安定的な収益確保を図っています。

(3) 物流倉庫


危険物の保管・受払業務を行う化学品センターと、冷蔵倉庫、低温物流倉庫、食材流通加工施設を活用した物流サービスを提供しています。特定顧客と提携し、効率的な保管と流通加工を実施しています。

主な収益源は、倉庫の保管料や入出庫作業に伴う手数料などです。運営は同社が行っており、パートナー企業と連携しながら安定的な倉庫稼働と収益力の改善に努めています。

(4) その他


太陽光発電設備を活用した売電事業を展開しています。

再生可能エネルギーによる売電収入が主な収益源となっており、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は40億円前後で推移しており、増減はあるものの安定した水準を保っています。一方で、経常利益や当期利益は着実に成長を続けており、利益率も5%台から9%台へと大きく改善しています。事業環境の変化に対応しながら、収益性の向上が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 42.0億円 38.7億円 41.1億円 43.4億円 42.6億円
経常利益 2.2億円 2.4億円 3.4億円 3.0億円 4.0億円
利益率(%) 5.2% 6.3% 8.2% 6.9% 9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.8億円 1.8億円 2.2億円 2.3億円 2.9億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上総利益と営業利益は増加しており、利益率の向上が見られます。既存設備の積極的なメンテナンス等のコスト管理や、荷役関係諸払費の減少などが利益改善に大きく寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 43.4億円 42.6億円
売上総利益 8.0億円 8.6億円
売上総利益率(%) 18.4% 20.2%
営業利益 2.0億円 2.5億円
営業利益率(%) 4.7% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.7億円(構成比29%)、役員報酬が1.1億円(同19%)、雑費が0.5億円(同8%)を占めています。売上原価においては、経費が17.1億円(構成比53%)、荷役関係諸払費が11.8億円(同36%)、人件費が3.5億円(同11%)となっています。

(3) セグメント収益


ばら貨物セグメントは、石炭やイルメナイトなどの荷役業務が好調で微増収となりました。液体貨物セグメントは、石油類・化学品類の保管需要は堅調だったものの、一部貨物の荷動きが落ち着き減収となっています。物流倉庫セグメントは、各倉庫の安定稼働により増収を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ばら貨物 23.0億円 23.1億円
液体貨物 14.8億円 13.9億円
物流倉庫 5.3億円 5.4億円
その他 0.2億円 0.2億円
連結(合計) 43.4億円 42.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フローです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7.6億円 6.9億円
投資CF -6.1億円 -6.2億円
財務CF -0.6億円 -4.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様からの厚い信頼と事業上の好立地という強みを伸ばし、企業価値を更に高める」というビジョンを掲げています。国際貿易港である大阪港において、地元産業に貢献する公共的使命を拡大し、その発展に寄与するとともに、法令を遵守し、高潔な企業精神を維持していくことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、現状に満足せずあらゆる付加価値を追い求める姿勢を重視しています。将来のいかなる環境においても生き残り成長する強靭な企業体力を構築することを目指しており、サステナビリティ経営を推進しながら、地域社会やすべてのステークホルダーと協働して発展していく文化が築かれています。

(3) 経営計画・目標


同社は、第4次中期経営計画(2024年度〜2026年度)を策定し、中長期的視点に立った事業ポートフォリオの継続的改善と資本・財務政策を推進しています。稼ぐ力とキャッシュ創出力を伸ばすため、以下の定量目標を定めています。

・2026年度のEBITDA(特殊要因を除く):9億円以上
・中計期間中の総設備投資額:30億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


産業構造の変化に対応するため、既存設備のメンテナンスと新規事業への投資を並行して進めています。汎用性の高いばら貨物倉庫の新設や液体貨物用タンクの最適化を通じて中長期的な収益構造を強固にするほか、大阪港の新規ビジネスの発掘や働き方改革に対応した人事制度の整備に注力し、持続的な企業価値の向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」は「人財」であるとの基本方針のもと、社員への幅広い投資と公平な育成機会の提供を行っています。業務経験を通じた中長期的なキャリア形成の支援や資格取得の推進により、未来を担う人財の育成に注力するほか、多様な働き方を支援する社内環境の整備や健康経営の推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.9歳 18.7年 6,091,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、資格取得件数(31件)、受講人数(119名)、ハラスメント教育の実施率(100%)、育児支援制度の利用率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢やエネルギー政策の変動

同社グループは西日本の電力会社や大手メーカー向けの輸入貨物物流を担っています。為替相場の変動や地政学リスク、エネルギー政策の転換により、主要な取扱貨物である石炭などの需要が縮小し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定取引先への売上依存リスク

産業経済に不可欠な原材料やエネルギー資源を中心に扱う事業特性上、特定の取引先への売上依存度が比較的高くなる傾向があります。主要取引先の事業方針や日本の産業構造に大きな変化があった場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 大型設備の不具合や自然災害リスク

大型荷役設備を使用して作業を行うため、専門部署による常時点検や部品の常備を行っていますが、突発的な設備の不具合が発生した場合は事業活動に支障を来す恐れがあります。また、事業設備が一箇所に集中しているため、大規模な台風や地震による被害を受けた際のリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。