※本記事は、アサガミ株式会社 の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アサガミってどんな会社?
物流、不動産、印刷の3事業を柱とする複合企業グループです。
■(1) 会社概要
1948年に双栄運輸として設立され、1961年に東証市場第二部に上場しました。JFEスチール(旧川崎製鉄)やAGC(旧旭硝子)の工場新設に伴い営業所を開設し、物流基盤を確立しています。2001年には広島県に大型商業施設を新設し不動産事業を拡大、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,451名、単体従業員数は437名です。筆頭株主は親会社である不動産事業会社のオーエーコーポレーションで、発行済株式の過半数を保有しています。第2位は信託銀行、第3位は芝海となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オーエーコーポレーション | 54.44% |
| 三井住友信託銀行 | 4.38% |
| 芝海 | 3.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性17名、女性0名の計17名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は木村健一氏が務めています。社外取締役比率は約30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村知躬 | 代表取締役会長 | 1975年大崎建運社長。1981年アサガミ社長を経て、2004年6月より現職。 |
| 木村健一 | 代表取締役社長社長執行役員営業本部長 | 1988年三井信託銀行入行。2001年アサガミ代表取締役専務を経て、2004年6月より現職。 |
| 篠塚昌宏 | 代表取締役専務専務執行役員営業副本部長 | 1986年入社。2011年取締役、2017年代表取締役専務。2022年6月より現職。 |
| 野口俊夫 | 取締役常務執行役員総務部長秘書室長 | 1987年入社。2007年取締役。2022年6月より現職。 |
| 北川敏行 | 取締役執行役員関連事業部長 | 1998年入社。2013年取締役。マイプリント代表取締役社長を兼務。2019年6月より現職。 |
| 堀籠聖二 | 取締役執行役員東京倉庫支店長 | 1987年入社。2017年6月より現職。アサガミプレスセンター社長等を兼務。 |
| 田中茂 | 取締役執行役員安全管理室長事業管理部長 | 1991年入社。2022年6月より現職。 |
| 木村亮一 | 取締役 | 2019年三井住友信託銀行入行。那須興業社長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 渡邉幹文 | 取締役執行役員人事部長 | 1991年入社。2025年6月より現職。アサガミ・キャリア・クリエイト代表取締役を兼務。 |
社外取締役は、泉山元(三八五流通代表取締役社長)、水越豊(ボストンコンサルティンググループシニア・パートナー・エメリタス)、北村邦太郎(三井住友信託銀行名誉顧問)、馬田一(JFEホールディングス名誉顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流事業」、「不動産事業」、「印刷事業」および「その他」事業を展開しています。
■物流事業
倉庫での貨物保管・荷捌き、港湾・空港での輸出入貨物取扱、トラックによる貨物輸送を行っています。主要顧客には鉄鋼、化学、建設機械などのメーカーが含まれます。
収益は顧客からの保管料、荷役料、運送料等から得ています。運営は主にアサガミが行うほか、株式会社エアロ航空、浅上重機作業株式会社、港運輸工業株式会社、ホワイト・トランスポート株式会社、アサガミ物流株式会社等のグループ会社が担っています。
■不動産事業
顧客の要望に合わせた大型物流施設や商業施設等の賃貸および管理を行っています。東京都江東区や広島県などに拠点を有しています。
収益はテナントからの賃貸料収入等から得ています。運営は主にアサガミが行っています。なお、同社は親会社である株式会社オーエーコーポレーションより一部施設を賃借しています。
■印刷事業
婚礼・年賀印刷などの一般印刷や、新聞の受託印刷、発送およびこれらに付帯する業務を行っています。
収益は印刷物の制作・印刷代金や受託料等から得ています。運営はアサガミプレスセンター株式会社、アサガミプレスいばらき株式会社、およびマイプリント株式会社が行っています。
■その他
自動倉庫工事等の建築工事およびグループ内の業務請負事業等を行っています。
収益は工事代金や業務請負料等から得ています。運営は主にアサガミおよびアサガミ・キャリア・クリエイト株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で推移しており、大きな変動はありません。経常利益は2021年3月期の約10億円から、2022年3月期以降は16億円〜21億円の水準で推移しており、利益率は向上傾向にあります。2025年3月期は減収ながらも経常利益は20億円台を回復しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 388億円 | 415億円 | 411億円 | 396億円 | 389億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 22億円 | 19億円 | 16億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 5.2% | 4.6% | 4.1% | 5.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 13億円 | 10億円 | 9億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりましたが、売上原価の低減等により売上総利益率はほぼ横ばいを維持しています。営業利益は増益となり、営業利益率も向上しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 396億円 | 389億円 |
| 売上総利益 | 82億円 | 81億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.6% | 20.9% |
| 営業利益 | 15億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 5.0% |
販売費及び一般管理費のうち、その他経費が35億円(構成比56%)、給料手当及び賞与が17億円(同28%)を占めています。売上原価については、HTMLの単体財務諸表注記によると外注費が51%、経費が30%、労務費が19%程度を占める構成となっています。
■(3) セグメント収益
物流事業は取扱量の変動等により微減収となりましたが、利益は確保しています。不動産事業は増収増益で、利益率は50%を超え高い収益性を維持しています。印刷事業は市場縮小の影響で減収となりましたが、固定費削減により大幅な増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 物流事業 | 220億円 | 218億円 | 20億円 | 20億円 | 9.1% |
| 不動産事業 | 19億円 | 19億円 | 16億円 | 18億円 | 91.8% |
| 印刷事業 | 152億円 | 147億円 | 1億円 | 4億円 | 2.8% |
| その他 | 5億円 | 5億円 | 1億円 | 1億円 | 9.1% |
| 調整額 | -18億円 | -18億円 | -22億円 | -23億円 | - |
| 連結(合計) | 396億円 | 389億円 | 15億円 | 19億円 | 5.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 31億円 |
| 投資CF | -9億円 | -5億円 |
| 財務CF | -19億円 | -17億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.9%でスタンダード市場平均(48.5%)とほぼ同じ水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「顧客に対する最高のサービス」、「適正利潤の追求」、「眞に働きがいのある会社」を経営理念として掲げています。この理念に基づき、物流、印刷、不動産等の各事業を展開し、株主、取引先、社員などグループに関わる人たちの幸せの実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「顧客第一」「企業規模の拡大」「高収益体質の確立」「磐石な安全性の確立」を経営方針としています。特に物流事業者として「安全はすべてに優先する」という認識のもと、経営層との迅速な情報共有や、現場での改善提案・ヒヤリハットの共有を行い、安全確保を徹底する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
安定的な企業活動の継続と株主還元のため、持続的な経常利益の確保を経営上の目標としています。具体的な数値目標として経常利益額を掲げており、2025年3月期の実績は2,056百万円でした。
■(4) 成長戦略と重点施策
顧客から常に「選ばれる企業」として持続的な成長を目指し、以下の課題に取り組んでいます。
* **顧客満足度・品質の向上**:安全確保の徹底と、顧客との頻繁なコミュニケーションによる課題解決提案。
* **事業規模の拡大**:社外ネットワークを活用した新規顧客の開拓。
* **業務効率化**:書類や業務工数の削減による生産性向上と労働力不足への対応。
* **人材の育成・確保**:資格取得支援や若手のOJT教育、Web・対面双方での採用活動の強化。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を大切にする会社として、従業員の家族も含めた働きがいのある環境整備に取り組んでいます。具体的には、新入社員へのOJT教育、階層別研修、資格取得支援などの育成策を実施しています。また、従業員の子どもの就学等のライフイベントに対する助成を行うなど、長く働きたいと思える職場環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.4歳 | 19.0年 | 6,197,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 59.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、事務系職員における会計に関する資格取得者比率(39%)、情報技術に関する資格取得者比率(32%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化
物流事業における景気や原油価格の動向、不動産・印刷事業の市場動向などが変化した場合、業績に影響を与える可能性があります。顧客とのコミュニケーション強化や業務効率化、コスト圧縮を推進し、環境変化に対応できる体制を構築しています。
■(2) 大規模な災害等
事業拠点で地震や台風などの大規模災害が発生し、設備破損等により事業運営が麻痺した場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。災害時には従業員の安全確保を優先しつつ、事業継続と顧客への影響最小化に努める体制としています。
■(3) 感染症の拡大
新たな感染症の拡大により消費活動や婚礼印刷事業等の運営が停滞した場合、業績に影響を与える可能性があります。また従業員の出社困難などの影響も想定されます。テレワークや時差出勤の活用、業務効率化を進め、事業継続を図ります。
■(4) 重大な事故等
物流事業において多数の車両を保有しているため、重大な交通事故が発生し社会的信用が低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。デジタルタコグラフのデータを活用した指導や安全管理研修等を実施し、事故防止に努めています。



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