アサガミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサガミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサガミは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、物流事業、不動産事業、印刷事業などを展開しています。直近の業績トレンドは、売上高が前期比で増加し、各段階利益も増加する増収増益となっています。物流関連を主軸に、事業規模の拡大と業務効率化を推進し、持続的な成長と高収益体質の確立を目指しています。


※本記事は、アサガミ株式会社の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アサガミってどんな会社?


アサガミは、港湾運送や倉庫、陸上輸送などの物流事業を中核に、不動産事業や印刷事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1948年に双栄運輸として設立され、港湾運送業を開始しました。1954年に浅上航運倉庫へ商号変更し、1961年に東京証券取引所市場第二部へ株式上場を果たしました。1989年に現在のアサガミに商号を変更しています。2007年にはマイプリントの株式を取得するなど、印刷事業の基盤拡大も進めてきました。

同社グループの従業員数は連結で1,444名、単体で436名です。筆頭株主は親会社のオーエーコーポレーションで、第2位は信託銀行の三井住友信託銀行、第3位は芝海となっています。

氏名 持株比率
オーエーコーポレーション 52.53%
三井住友信託銀行 4.38%
芝海 3.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性17名、女性0名の計17名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は木村健一氏が務めています。社外取締役比率は23.5%(17名中4名)です。

氏名 役職 主な経歴
木村健一 代表取締役社長社長執行役員営業本部長 1988年に三井信託銀行に入社後、1992年にオーテック取締役を経て1994年に同社取締役に就任しました。専務取締役などを経て、2004年に代表取締役社長に就任し、営業本部長を務めています。
木村知躬 代表取締役会長 1975年に大崎建運(現アサガミ)の代表取締役社長に就任し、1979年に同社代表取締役相談役となりました。1981年に代表取締役社長を務めたのち、2004年に代表取締役会長に就任しました。
篠塚昌宏 代表取締役専務専務執行役員営業副本部長 1986年に同社へ入社し、市原支店長や営業第一部長などを歴任しました。2007年に執行役員となり、2011年に取締役に就任しました。2022年より代表取締役専務兼専務執行役員を務めています。
野口俊夫 取締役常務執行役員総務部長秘書室長 1987年に同社へ入社し、経理部長や人事部長などを歴任しました。2003年に執行役員となり、2007年に取締役に就任しました。経営企画室長や事業管理部長等を経て、2022年より現職に就任しています。
北川敏行 取締役執行役員関連事業部長 1998年に同社へ入社し、2008年に経理部長および執行役員に就任しました。2009年に関連事業部長となり、2013年に取締役に就任しました。また、マイプリントの代表取締役社長も兼務しています。
堀籠聖二 取締役執行役員東京倉庫支店長 1987年に同社へ入社し、2013年に執行役員に就任しました。2016年に東京倉庫支店長となり、2017年に取締役に就任しました。アサガミプレスセンターなどの代表取締役社長も兼務しています。
田中茂 取締役執行役員安全管理室長事業管理部長 1991年に同社へ入社し、2010年に市原支店長を務めました。2017年に安全管理室長となり、2019年に執行役員に就任しました。2022年より取締役兼執行役員として、事業管理部長等を務めています。
木村亮一 取締役執行役員営業本部付部長 2019年に三井住友信託銀行へ入社し、2022年に日本テーマパーク開発へ入社して同社取締役に就任しました。那須興業の代表取締役社長等を経て、2024年に同社取締役となり、2026年より現職に就任しています。
渡邉幹文 取締役執行役員人事部長 1991年に同社へ入社し、2017年に執行役員人事部長に就任しました。2025年に取締役に就任しています。また、アサガミ・キャリア・クリエイトの代表取締役を兼務しています。


社外取締役は、泉山元(三八五流通代表取締役社長)、水越豊(ボストンコンサルティンググループシニア・パートナー・エメリタス)、北村邦太郎(元三井住友信託銀行代表取締役社長)、馬田一(元JFEホールディングス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」、「不動産事業」、「印刷事業」および「その他」の事業を展開しています。

物流事業


寄託を受けた貨物の倉庫保管や入出庫・荷捌き、海上・航空運送の輸送手続き、貨物自動車による貨物の運送等の業務を提供しており、主に製造業や小売業の企業が顧客となります。

物流センターの保管取扱料や、港湾・空港における貨物の輸送手続きおよび荷役作業料、貨物自動車による運送料を顧客から受け取ります。運営は主に同社や、港運輸工業、エアロ航空、浅上重機作業などの連結子会社が行っています。

不動産事業


顧客の要望に合わせた大型物流施設や商業施設等の不動産賃貸および管理業務を提供しています。物流施設を利用する企業や商業施設のテナントなどが主な顧客となります。

保有または賃借している施設を貸し出すことで、テナントから賃貸料や管理料等の不動産賃貸収入を受け取ります。運営は主に同社が行っています。

印刷事業


婚礼や年賀状等の一般印刷、新聞等の受託印刷、発送およびこれらに付帯する業務を提供しています。新聞社や一般消費者向けサービスを提供する企業などが主な顧客となります。

受託印刷物の印刷料や一般印刷の制作料などを顧客から受け取ります。運営は主にアサガミプレスセンター、アサガミプレスいばらき、マイプリントといった連結子会社が行っています。

その他


自動倉庫工事等の建築工事や、グループ内の業務請負事業などを提供しています。グループ内企業や関連する外部企業が主な顧客となります。

建築工事の請負代金や、業務請負に伴う対価を受け取ります。運営は主に同社およびアサガミ・キャリア・クリエイトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期の売上高は400億円前後で底堅く推移しており、一時的な減少が見られたものの、直近では増収に転じています。経常利益と当期利益も直近2期で連続して増加し、利益率も6.8%に向上するなど、着実な収益性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 415億円 411億円 396億円 389億円 391億円
経常利益 22億円 19億円 16億円 21億円 27億円
利益率(%) 5.2% 4.6% 4.1% 5.3% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 9億円 8億円 10億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から微増していますが、売上総利益と営業利益はいずれも増加しています。特に営業利益は大きく伸びており、収益性の向上が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 389億円 391億円
売上総利益 81億円 82億円
売上総利益率(%) 20.9% 21.0%
営業利益 19億円 26億円
営業利益率(%) 4.9% 6.6%

(3) セグメント収益


物流事業は輸送量や作業量の増加により増収となりました。不動産事業はほぼ横ばいで推移しています。印刷事業は新聞分野で増収となったものの、年賀・婚礼分野の受注減により減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
物流事業 218億円 228億円
不動産事業 19億円 19億円
印刷事業 147億円 139億円
その他 5億円 6億円
連結(合計) 389億円 391億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の優良企業であると言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 31億円 37億円
投資CF -5億円 -10億円
財務CF -17億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.6%で、いずれも市場平均を上回っています(スタンダード市場・非製造業の平均と比較)。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「顧客に対する最高のサービス」「適正利潤の追求」「眞に働きがいのある会社」を経営理念として掲げています。顧客の要望を先取りし、高い品質のサービスとして最適に提供することで、顧客および自社の利益を最大限に追求し、社会への貢献と従業員の物心両面での充実を目指しています。

(2) 企業文化


「安全はすべてに優先する」という認識のもと、経営層との迅速な情報共有や改善提案の推進など、盤石な安全性の確立を重視する文化があります。また、「アサガミコンプライアンス指針」を定め、法令遵守や倫理性の確保に努めるとともに、自己申告制度等を通じて風通しの良い職場環境を構築しています。

(3) 経営計画・目標


事業基盤および財務体質の強化により、安定的かつ継続的な配当を行うことを株主還元の基本方針としており、持続的な経常利益の確保を経営上の目標としています。質の高いサービスの提供により顧客満足度を高め、無駄な業務を改善・効率化することで利益を確保していく方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長に向け、「顧客満足度・品質の向上」「事業規模の拡大」「業務効率化」「人材の育成・確保」を重点課題に掲げています。既存顧客への深耕や新規開拓により事業拡大を目指すほか、労働力不足への対応として業務工数の削減や手順の簡素化を進め、従業員が働きやすい環境整備を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働力不足や高齢化への対応を最重要課題と位置づけ、従業員が安心して長期的に働ける環境整備を進めています。若手人材の早期戦力化を図るためのOJT教育や資格取得支援に加え、高齢者も含めた給与水準の見直し、各種手当の拡充などを通じて、現場人材の確保と定着を推進する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.8歳 19.3年 6,258,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、会計に関する資格取得者の比率(41%)、情報技術に関する資格取得者の比率(30%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原油価格や景気動向による事業環境の変化


物流事業における国内外の景気動向や原油価格の動向、顧客の物流政策の方針、不動産事業や印刷事業における市場動向等の事業環境が変化した場合、同社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。顧客からの情報収集やコミュニケーションを確実に実施し、対応できる体制を構築しています。

(2) 物流事業等の運営に関わる法的規制への対応


同社グループは経営を行う上でさまざまな法的規制を受けています。コンプライアンス経営を重視していますが、これら法律等の制定および改正が行われた場合、その対応により業績および財政状態に影響を与える可能性があります。各専門家等から情報収集し、コンプライアンスのための社内ルール改定等により対応しています。

(3) 物流車輌による重大な事故の発生


物流事業においてトラックやトレーラ等の多数の車輌を保有しています。研修やデジタルタコグラフのデータを活用した安全運転指導などの事故防止活動を実施していますが、重大な交通事故等が発生し、顧客の信頼および社会的信用が低下した場合、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。