※本記事は、株式会社リンコーコーポレーションの有価証券報告書(第164期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リンコーコーポレーションってどんな会社?
新潟港における港湾運送事業を中核に、ホテルや不動産など多角的に事業を展開する地域密着型の企業です。
■(1) 会社概要
同社は1905年に新潟健康舎として創立され、1914年に倉庫・運輸事業等を開始しました。1931年には臨港埠頭工事を完成させ、港湾物流の基盤を築きました。1961年に東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場し、1963年には現在のホテル事業につながるホテル新潟を設立するなど、新潟を基盤に事業を拡大してきました。
2025年3月31日現在の連結従業員数は586名(単体329名)です。筆頭株主は、海運大手で同社と船舶代理店業務等の取引がある川崎汽船です。第2位、第3位には、同社の資金調達等に関わる金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 川崎汽船 | 24.24% |
| みずほ銀行 | 4.99% |
| みずほ信託銀行 | 4.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は本間常悌氏が務めています。社外取締役比率は約42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 南波 秀憲 | 取締役会長 | 1977年入社。国際物流部長、東京支社長、運輸本部長などを歴任。2015年に代表取締役社長に就任し、2022年6月より現職。 |
| 本間 常悌 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1992年入社。臨港支店長、現業部長、運輸副本部長などを歴任。新光港運代表取締役を経て、2022年6月より現職。 |
| 坂牧 克記 | 取締役専務執行役員運輸本部長 | 1991年入社。安全衛生推進室長、人事部長などを歴任。2022年4月より現職。 |
| 前山 英人 | 取締役常務執行役員 | 1992年入社。経理部長、総務部長などを歴任。2022年5月よりホテル新潟代表取締役を兼務し現職。 |
社外取締役は、金森聡(川崎汽船専務執行役員)、小野方嘉(元JFE鋼材常務取締役)、坂井康一(新潟県酒造組合専務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸部門」「不動産部門」「ホテル事業部門」「関連事業部門」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 運輸部門
新潟港を主体とした港湾運送、倉庫保管、トラック輸送、通関業務などを一貫して提供しています。主要な取扱貨物には素材原料やコンテナ貨物などが含まれ、企業の物流ニーズに応えています。
収益は、荷役料、保管料、運送料などから得ています。運営は、リンコーコーポレーションが主体となり、連結子会社のリンコー港運倉庫、リンコー運輸と連携して行っています。
■(2) 不動産部門
同社が所有する土地や建物の賃貸、分譲、仲介業務を行っています。新潟県内を中心に賃貸用住宅や商業施設、駐車場などを展開し、地域の不動産ニーズに対応しています。
収益は、賃貸物件のテナントや利用者からの賃貸料、不動産販売代金などから得ています。運営は主にリンコーコーポレーションが行っています。
■(3) ホテル事業部門
新潟市内で「ANAクラウンプラザホテル新潟」を運営し、宿泊、結婚式、宴会、レストランなどのサービスを提供しています。観光客やビジネス客、地域住民を顧客としています。
収益は、宿泊料、宴会・婚礼利用料、レストランでの飲食代金などから得ています。運営は、連結子会社の株式会社ホテル新潟が行っています。
■(4) 関連事業部門
建設機械の販売・修理・整備、損害保険代理店業、産業廃棄物処理、物品販売などを行っています。建設業者や一般顧客向けに多様なサービスを提供しています。
収益は、機械の販売代金や整備料、保険手数料、処理手数料などから得ています。運営は主にリンコーコーポレーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は130億円前後で安定的に推移していますが、利益面では変動が見られます。直近の2025年3月期は増収増益となり、利益率も改善しました。当期純利益も回復傾向にあり、黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 127億円 | 134億円 | 131億円 | 135億円 |
| 経常利益 | -3億円 | 4億円 | 4億円 | 3億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | -2.2% | 3.0% | 3.2% | 2.1% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -16億円 | 5億円 | 7億円 | 4億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も上昇しており、本業の収益性が改善していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 131億円 | 135億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 18億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.2% | 13.1% |
| 営業利益 | 2億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が3億円(構成比20%)、役員報酬が2億円(同15%)、福利厚生費が2億円(同15%)を占めています。売上原価においては、人件費や下払作業料などの比重が高い構造となっています。
■(3) セグメント収益
運輸部門は貨物取扱量の増加により増収となり、利益も黒字転換しました。ホテル事業部門は利用客数の回復により大幅な増益となりました。不動産部門と関連事業部門は概ね安定していますが、関連事業部門は減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸部門 | 96億円 | 99億円 | -1億円 | 1億円 | 1.5% |
| 不動産部門 | 3億円 | 3億円 | 1億円 | 1億円 | 47.8% |
| ホテル事業部門 | 21億円 | 23億円 | 1億円 | 1億円 | 5.1% |
| 関連事業部門 | 10億円 | 10億円 | 1億円 | 1億円 | 8.7% |
| 連結(合計) | 131億円 | 135億円 | 2億円 | 5億円 | 3.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済等を進めている(財務CFマイナス)ため、「健全型」に分類されます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 13億円 |
| 投資CF | -6億円 | -8億円 |
| 財務CF | -12億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均とほぼ同じ水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「みなと から今を支え、明日を拓く。」をグループパーパスとし、顧客・株主・社員・地域社会に信頼され貢献する企業集団を目指しています。新潟を基盤としつつグローバルな視野を持ち、総合物流、ホテル、不動産などの事業を通じて地域No.1企業となることを掲げています。
■(2) 企業文化
「進取の精神」でビジネスに挑戦し、「ホスピタリティーの精神」に基づきサービスを提供することを重視しています。効率的な経営とコスト競争力を保持しながら、良質なサービスを提供し続けることで安定した成長を目指す姿勢を持っています。また、現場における安全を最優先とする風土があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2024年度~2026年度)において、運輸部門の収益基盤強化や効率性向上に取り組んでいます。最終年度である2026年度の数値目標として、以下を掲げています。
* 売上高:150億円
* 営業利益:6億円
* 営業利益率:4%
* ROE:4%
* ROA:2%
■(4) 成長戦略と重点施策
運輸部門では、コンテナ内航フィーダーサービスを活用したモーダルシフトの推進や、再生可能エネルギー関連貨物等の新規貨物の獲得に注力します。ホテル事業では、客室改装を契機としたサービス差別化により集客力を強化します。また、事業資産の有効活用や政策保有株式の縮減により、資産効率の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「現場力」を重視し、顧客ニーズや現場の変化に柔軟に対応できる人材の育成と配置を進めています。女性や外国人、高齢者など多様な人材の活躍を推進するとともに、働きがいの向上に向けた人事制度の検討や、育児・介護支援制度の拡充など、社内環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.8歳 | 20.5年 | 5,778,877円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.4% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 87.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男女賃金差異(非正規)については、該当者がいない等の理由により記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、WEB・集合により実施した研修の数(53講座)、自己啓発プログラムを受講した社員の割合(11%)、エンゲージメントサーベイ結果(57点)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 重大な労働災害に関わるリスク
同社グループは重機やトラックを使用する作業が多く、事故が発生した場合、社会的信用の低下や補償問題により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。安全教育や事故対策会議を通じて防止に努めていますが、不測の事態による影響は否定できません。
■(2) 人材の確保に関わるリスク
物流、ホテル、機械整備など労働集約型の事業が多く、少子高齢化による労働力不足が深刻化した場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。賃上げや働き方改革、多様な人材の採用を進めていますが、必要な人材を確保できない場合、業績に影響が出る可能性があります。
■(3) コスト上昇に関わるリスク
外注作業やエネルギー使用が多い事業構造であるため、外注費や燃料費等のコスト上昇が適正料金への転嫁を上回る場合、利益を圧迫する可能性があります。生産性向上や料金改定に取り組んでいますが、急激なコスト増はリスク要因となります。



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