リンコーコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リンコーコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リンコーコーポレーションは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、新潟港を拠点に港湾運送や貨物自動車運送などの運輸事業を主力とする企業です。その他にホテル事業、不動産事業、関連事業も展開しています。直近の業績は、貨物取扱量の増加やホテル稼働の回復により増収となり、当期純利益も大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社リンコーコーポレーション の有価証券報告書(第165期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リンコーコーポレーションってどんな会社?


新潟港を拠点とする総合物流企業であり、ホテル運営や不動産、関連事業など多角的な事業を展開しています。

(1) 会社概要


1905年に新潟健康舎として創立され、1920年に新潟臨港へと商号変更しました。1931年に臨港埠頭工事を完成させ、1955年に新潟証券取引所に上場しました。1991年にリンコーコーポレーションへ商号を変更し、2026年には日本海倉庫を連結子会社化して新潟港での物流基盤を強化しています。

従業員数は連結583名、単体329名です。筆頭株主は事業会社である川崎汽船で24.24%の株式を保有し、第2位および第3位には資産管理業務を行うみずほ銀行とみずほ信託銀行がそれぞれ4.99%を保有しています。海運業等の取引先や金融機関との関係性を維持しています。

氏名 持株比率
川崎汽船 24.24%
みずほ銀行 4.99%
みずほ信託銀行 4.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は本間常悌氏が務めており、社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
本間常悌 代表取締役社長社長執行役員 1992年同社入社。臨港支店長、現業部長、運輸副本部長を経て、新光港運代表取締役を務める。その後、専務執行役員などを歴任し、2022年6月より現職。
南波秀憲 取締役会長 1977年同社入社。東京支社営業部長、国際物流部長、東京支社長、運輸本部長などを歴任。2015年に代表取締役社長に就任し、2022年6月より現職。
坂牧克記 取締役専務執行役員運輸本部長 1991年同社入社。総務人事部長、人事部長、運輸副本部長などを歴任し、2017年に取締役に就任。2022年4月より現職。日本海倉庫代表取締役も務める。
前山英人 取締役常務執行役員 1992年同社入社。経理部長、総務部長を経て2016年に執行役員に就任。2017年より取締役常務執行役員を務め、2022年よりホテル新潟の代表取締役も兼任。


社外取締役は、中山久(川崎汽船常務執行役員)、小野方嘉(元JFE鋼材常務取締役)、坂井康一(新潟県酒造組合専務理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、運輸部門、不動産部門、ホテル事業部門、関連事業部門を展開しています。

(1) 運輸部門


新潟港を主体とした入出港船舶の本船積卸や沿岸作業などの港湾運送事業をはじめ、鉄道貨物の取扱、倉庫業、貨物自動車運送事業などを展開しています。脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー関連貨物や特殊貨物の取扱など、多様な物流ニーズに対応した海陸一貫作業のサービスを顧客に提供しています。

主な収益源は、顧客から受け取る貨物の荷役料、保管料、および運送料金などです。事業の運営は同社のほか、新潟港における下請作業や海陸一貫作業を担うリンコー港運倉庫、鉄道貨物の取扱や集貨配達業務などを担うリンコー運輸が連携して行っています。

(2) 不動産部門


同社が所有する土地および建物の賃貸、土地建物の分譲、ならびに不動産の仲介業務を展開しています。新潟県内を中心に賃貸用住宅、商業施設、貸地・駐車場などを保有し、法人や個人のテナントに対して安定した不動産スペースを提供しています。

主な収益源は、保有する賃貸用物件を利用するテナントからの不動産賃貸収入や、商品土地などの販売代金、仲介手数料です。本部門は単独セグメントとして同社が事業を運営し、低収益不動産の売却と高収益賃貸物件の入れ替えを進めることで安定的な収益確保を図っています。

(3) ホテル事業部門


ホテル、結婚式場、宴会場、およびレストラン・食堂の経営を行っています。新潟市内のシティホテルとして、宿泊客だけでなく、宴会やレストランを利用する地元客、インバウンドツアー客など、幅広い層に対して付加価値の高いホスピタリティサービスを提供しています。

主な収益源は、顧客からの宿泊料金、結婚式や宴会の利用料、レストランでの飲食代金などです。この事業の運営は、同社の連結子会社であるホテル新潟が単独で担っており、ブランド価値の発信と独自性の高いサービスの提供を通じて収益力の強化と集客基盤の拡充を進めています。

(4) 関連事業部門


建設機械の販売・各種自動車等の修理・整備・部品販売を行う機械整備販売業や、住宅建設資材・日用品などの物品販売業を展開しています。また、損害保険代理店業や木材リサイクル事業による産業廃棄物処理業など、多岐にわたる付帯サービスも提供しています。

主な収益源は、顧客への建設機械や部品・資材の販売代金、整備作業料、保険契約に伴う代理店手数料、廃材の受入・処理費用などです。この事業は同社が主体となって運営しており、他のセグメント部門との連携を通じて販路の拡大や新たな収益機会の創出に取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね130億円台で堅調に推移しており、直近では貨物取扱量の増加やホテル稼働の回復により増収となっています。経常利益は一時的に落ち込む時期があったものの、直近2期間は6億円台へと回復しました。また、当期利益も投資有価証券売却益などの影響で大幅な増益を記録し、利益率も改善傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 127億円 134億円 131億円 135億円 139億円
経常利益 4億円 4億円 3億円 6億円 6億円
利益率(%) 3.0% 3.2% 2.1% 4.5% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 7億円 3億円 4億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を構成要素から見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は安定的に推移しています。販管費などのコストを吸収した上で営業利益も増益を達成しており、堅調な本業の収益性が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 135億円 139億円
売上総利益 18億円 18億円
売上総利益率(%) 13.1% 13.2%
営業利益 5億円 5億円
営業利益率(%) 3.5% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1.4億円(構成比11%)、給料が1.4億円(同11%)を占めています。また、売上原価は売上高の約87%を占めており、物流や施設運営等の原価負担が高い事業構造であることがうかがえます。

(3) セグメント収益


運輸部門は取扱貨物量の増加などにより堅調に推移し、全社の売上を牽引しています。ホテル事業部門も客室改装後の稼働率上昇や宴会・レストラン部門の好調により増収を記録しました。不動産部門や関連事業部門もそれぞれ売上を伸ばしており、各事業が全社業績の向上に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
運輸部門 99億円 100億円
不動産部門 3億円 3億円
ホテル事業部門 23億円 25億円
関連事業部門 10億円 11億円
連結(合計) 135億円 139億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た利益で借入金の返済を進めつつ、投資活動も手元資金の範囲内で賄っている「健全型」の優良な状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 13億円 14億円
投資CF -8億円 -6億円
財務CF -6億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「リンコーグループ経営理念」に「顧客・株主・社員とその家族・地域社会に信頼され、その全ての人々に貢献する企業集団を目指す」とあります。新潟を基盤にしつつ世界に視野を広げ、総合物流・ホテル・不動産などの各事業分野で地域No.1企業を目指すという中長期的なビジョンを掲げています。

(2) 企業文化


創立120周年を迎えた同社は、「みなと から今を支え、明日を拓く。」というグループパーパスを掲げています。原点である「みなと」に深く根ざしながら人々の生活を支え、持続可能で明るい未来の構築に貢献するため、常に進取の精神でビジネスに挑戦する文化を重視して経営を行っています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画(2024年度~2026年度)」において、運輸部門を中心に収益力を早期回復させ、グループ全体の収益性・効率性の向上を目指しています。2026年度の目標値として以下を掲げています。

* 売上高:150億円
* 営業利益:6億円
* 営業利益率:4%
* ROE:4%
* ROA:2%
* 各セグメント利益:1億円以上維持

(4) 成長戦略と重点施策


「運輸部門の収益基盤の安定と向上」を柱に、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー関連貨物や特殊貨物の確保を進めます。また、ホテル事業では内装・設備の刷新によるブランド価値の向上、全社的には事業間連携による資産の有効活用や人的資本への投資強化を成長戦略として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を持続的成長の源泉である「最重要資本」と位置づけています。変化の激しい業務環境に柔軟に対応できる「現場力」を重視し、ジョブローテーションや複線型キャリア制度を導入して人材育成を進めています。また、多様な人材の活躍支援や健康経営を推進し、働きがいのある組織づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.2歳 20.8年 5,995,119円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 86.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 85.3%


また、同社はサステナビリティ等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、WEB・集合により実施した研修の数(66講座)、自己啓発プログラムを受講した社員数(9.0%)、エンゲージメントサーベイ結果(56点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 重大な労働災害発生リスク


同社は重機やトラック、高所作業など危険を伴う作業が多く、安全第一の体制を構築していますが、不測の労働災害が発生した場合は社会的評価が低下し、事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 物流・ホテル事業の人材確保リスク


港湾荷役やトラック輸送、ホテル接客・調理など労働集約型の事業を多く展開しています。少子高齢化に伴う労働力不足により、専門技能を持つ人材や現場を担う人材の確保が困難になった場合、業績に影響する可能性があります。

(3) 燃料・外注費等のコスト上昇リスク


重機やトラック、ホテル設備などエネルギーを利用する設備を多く保有し、外注作業も多く発生します。適正料金の収受に取り組んでいますが、それを上回る外注費やエネルギーコストの上昇が生じた場合、収益を圧迫するリスクがあります。

(4) 中東情勢等の地政学リスクの影響


港湾運送やトラック運送など物流インフラを担っているため、地政学リスクによるサプライチェーンの混乱や、原油高による燃料費の負担増、取引先の生産活動低下に伴う荷動きの低調化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。