※本記事は、日本石油輸送の有価証券報告書(第109期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本石油輸送ってどんな会社?
日本石油輸送は、石油製品や高圧ガス、化成品の鉄道および自動車輸送を主力とするエネルギー物流企業です。
■(1) 会社概要
1946年に国産原油の輸送を目的として設立され、1957年に現在の日本石油輸送へ社名を変更しました。1967年に東京証券取引所へ上場し、その後化成品やLNGコンテナの鉄道輸送など事業領域を順次拡大しています。現在はライフラインを支える物流企業グループとして、エネルギーの安全かつ高品質な輸送サービスを提供しています。
従業員数は連結で1,626名、単体で161名です。筆頭株主は事業会社のENEOSホールディングスで、第2位および第3位は投資事業有限責任組合となっています。長年にわたり主要な顧客である石油元売各社と強固な関係を築いています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ENEOSホールディングス | 29.49% |
| UHPartners2投資事業有限責任組合 | 7.56% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長社長執行役員は原昌一郎氏が務めています。取締役における社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原 昌一郎 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1985年同社入社。2012年取締役執行役員石油部長等を経て、2018年より現職。 |
| 髙橋 文弥 | 代表取締役専務執行役員石油輸送事業部長 | 1985年同社入社。2013年取締役執行役員関東支店長等を経て、2025年より現職。 |
| 武本 修 | 取締役専務執行役員 | 1984年日本石油(現ENEOS)入社。2017年同社執行役員等を経て、2026年より現職。 |
| 岡﨑 基太 | 取締役常務執行役員経営企画室長 | 1988年同社入社。2016年取締役執行役員人事部長等を経て、2025年より現職。 |
| 遠藤 尚 | 取締役執行役員コンテナ輸送事業部長兼グループ安全推進部長 | 1993年同社入社。2021年化成品部長等を経て、2026年より現職。 |
| 成川 隆介 | 取締役執行役員高圧ガス輸送事業部長兼高圧ガス1部長 | 1998年同社入社。2020年LNG部長等を経て、2025年より現職。 |
| 花田 優 | 取締役執行役員化成品輸送事業部長兼化成品1部長兼化成品2部長 | 1998年同社入社。2018年シンガポール支店長等を経て、2025年より現職。 |
| 松原 宗宏 | 取締役執行役員経理部長兼情報システム部長兼経営企画室副室長 | 1994年同社入社。2020年経理部長等を経て、2025年より現職。 |
| 田長丸 雅司 | 取締役 | 1986年同社入社。2014年取締役執行役員化成品部長等を経て、2021年より現職。 |
社外取締役は、長澤仁志(日本郵船取締役会長)、安岡定子(安岡定子事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「石油輸送事業」「高圧ガス輸送事業」「化成品・コンテナ輸送事業」および「資産運用事業」を展開しています。
■(1) 石油輸送事業
ガソリン、軽油、灯油等の石油製品を鉄道タンク車およびタンクローリーによって輸送するサービスを提供しています。石油元売各社などを主な顧客とし、長距離で大量輸送が可能な鉄道と、高い機動性を有する自動車を組み合わせた柔軟な対応を強みとしています。
主な収益源は、石油製品の輸送に伴う運賃収入です。本事業は同社および連結子会社のエネックス、近畿石油輸送、JKトランスが主体となって運営しており、顧客の需要に応じた安全かつ安定的な輸送ネットワークを構築しています。
■(2) 高圧ガス輸送事業
自動車を用いて、民生用および産業用のLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素などの高圧ガスを輸送するサービスを提供しています。ガス会社等を主な顧客とし、専用の教育施設での徹底した安全教育に基づく安定輸送を強みとしています。
収益源は、高圧ガスの自動車輸送に係る運賃収入です。本事業は同社および連結子会社のエネックス、近畿石油輸送が担っており、長年蓄積された経験と実績を活かし、トランジションエネルギーとして需要が堅調なLNGの輸送を支えています。
■(3) 化成品・コンテナ輸送事業
各種化学品や食品等を運ぶISOタンクやホッパコンテナ等のリース事業と、国内外における鉄道・自動車等を用いた複合一貫輸送のワンストップサービスを提供しています。化学品や食品メーカー、国内輸送事業者等を顧客としています。
収益源は、輸送手配から精算までを一括して請け負う物流サービス料金や、各種コンテナのリース・レンタル料です。同社および連結子会社のエネックス、JKトランスが運営し、多様なコンテナラインナップと機動力を活かして顧客の業務効率化に貢献しています。
■(4) 資産運用事業
保有する資産を適切かつ有効に活用し、主に不動産賃貸および太陽光発電事業を展開しています。長期安定的な収益の確保とさらなる収益向上を目的として、様々な資産運用施策を推進しています。
収益源は、所有する不動産の賃貸収入や太陽光発電による売電収入です。同社および連結子会社のエネックスが運営を行っており、物流拠点などの資産を最適に活用することで、グループ全体の強固な収益基盤の形成を補完しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が343億円から385億円規模へと拡大傾向にあります。経常利益も16億円から21億円へと伸長しており、直近の2026年3月期は石油製品や高圧ガスの運賃改定等の効果もあり、利益率が5.6%に改善して堅調な成長を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 343億円 | 352億円 | 350億円 | 371億円 | 385億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 18億円 | 18億円 | 18億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 5.1% | 5.1% | 4.7% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 10億円 | 8億円 | 10億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は前期比で増収となり、それに伴い売上総利益も42億円から47億円へ増加しました。運賃改定等の浸透により利益率が改善し、営業利益ベースでも16億円から19億円へと着実な利益成長を実現しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 371億円 | 385億円 |
| 売上総利益 | 42億円 | 47億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.3% | 12.2% |
| 営業利益 | 16億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が16億円(構成比56%)、賃借料が2億円(同7%)を占めています。売上原価の主な内訳は、外部委託している鉄道運賃や委託輸送費などで構成されています。
■(3) セグメント収益
主力の石油輸送事業は、タンク車使用料や自動車輸送の運賃改定により増収増益を達成しました。高圧ガス輸送事業は新規需要の獲得等で増収となったものの、人件費等の増加により赤字となりました。化成品・コンテナ輸送事業は海外での個数確保に努めましたが減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 石油輸送 | 176億円 | 187億円 | 11億円 | 15億円 | 8.0% |
| 高圧ガス輸送 | 94億円 | 98億円 | -0.6億円 | -0.2億円 | -0.2% |
| 化成品・コンテナ輸送 | 96億円 | 96億円 | 2.4億円 | 1.5億円 | 1.5% |
| 資産運用 | 5.4億円 | 5.2億円 | 2.8億円 | 2.5億円 | 48.4% |
| 連結(合計) | 371億円 | 385億円 | 16億円 | 19億円 | 4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行いながら投資も手元資金で賄う健全型の財務状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 51億円 | 58億円 |
| 投資CF | -26億円 | -24億円 |
| 財務CF | -26億円 | -28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、ライフラインを支える物流企業グループとして、物流を通じた安全かつ高品質なサービスの提供を行うことにより、お客様、株主、地域社会等から信頼され、社会とともに発展を遂げていく企業グループであり続けることを経営の基本方針としています。また、社是である「奉仕こそ我が務め」のもと、「JOTグループ・ミッション」を経営理念に掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、「安全・フェア・信頼・チャレンジ・ハーモニー」の5つのキーワードからなる「JOTグループ・ミッション」を重視しています。また、企業が持続的成長を目指す上で欠かせない要素であるESG(環境・社会・ガバナンス)を含めた活動を推進し、全ての活動の中心に「安全」を据えて事業運営に取り組む文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、グループの未来像として「国内No.1のエネルギー輸送会社」を目指す2030年ビジョンを制定し、その実現に向けて中期経営計画(2024年度~2026年度)を策定しています。最終年度である2026年度において、以下の数値目標の達成を目指しています。
・売上高:375億円以上
・営業利益:18億円以上
・経常利益:20億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向けて、変化する環境に迅速かつ的確に対応し、適正な運賃・料金の収受へ向けた取り組みを進めます。また、将来の脱炭素社会に向けた新エネルギー(水素や液体アンモニア等)輸送の研究や実践を継続します。さらに、持続的成長に向けた人材戦略・労働生産性の向上、雇用環境の改善による乗務員の確保に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「個の尊重」をテーマに、従業員の多様性を尊重し、一人ひとりが安心して働くことができる職場づくりを目指しています。次代を担う若手従業員の早期育成や専門能力を高めるため、OJTや自己啓発支援を組み合わせた教育プログラムを実施しています。また、ワークライフバランスの充実に向けてフレックスタイム制度やテレワーク制度を導入しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 14.8年 | 7,151,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(76.7%)、新卒採用者に占める女性の割合(29%)、労働者数に占める女性の割合(27%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害の発生によるリスク
大規模な自然災害等による鉄道・道路関連施設および出荷設備等へ著しい損害が発生した場合、主要事業である各種輸送サービスの提供自体が困難となる可能性があります。同社グループでは事業継続計画(BCP)を策定し、防災備蓄品の配備や鉄道・自動車の相互代替輸送体制を整えています。
■(2) 石油製品・高圧ガス等の需給バランスの変化
エネルギー需要構造の変化や国内外の情勢によって、石油製品や高圧ガスの供給・需要に極端な変動が生じた場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。特定の事業セグメントへの過度な依存を避け、新規事業の拡大や開拓に継続的に取り組むことで収益の安定化を図っています。
■(3) 乗務員不足のリスク
自動車乗務員の高齢化や労働時間の上限規制の適用により、乗務員不足が深刻化し事業継続が困難となる可能性があります。同社グループでは、賃金の引き上げやシステム化による労働負担軽減など、雇用環境の改善を通じて乗務員の確保に努めています。
■(4) 過失による事故等の発生リスク
自動車輸送における事故や輸送容器の点検不備等により重大事故を惹起した場合、輸送契約の解除や許認可の取消し等により業績に影響を及ぼす可能性があります。教育施設の設置や安全運転支援装置の導入など、ハード・ソフト両面から安全体制の確立を目指しています。



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