※本記事は、日本石油輸送株式会社 の有価証券報告書(第108期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本石油輸送ってどんな会社?
石油・高圧ガス・化成品などの輸送を手掛ける物流企業です。鉄道と自動車を組み合わせた輸送網が強みです。
■(1) 会社概要
同社は1946年に日本原油輸送として設立され、1967年に東証市場第二部へ上場しました。1978年には市場第一部へ指定替えとなり、2000年には日本初となるLNGコンテナの鉄道輸送を開始しました。2013年にはISOタンクコンテナによる国際一貫輸送を開始するなど事業を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。
連結従業員数は1,603名、単体では158名が在籍しています。筆頭株主はエネルギー事業を展開するENEOSホールディングスで、第2位は事業投資などを行う光通信です。ENEOSホールディングスは同社の主要な取引先でもあり、資本・業務面で密接な関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ENEOSホールディングス | 29.14% |
| 光通信 | 7.47% |
| UH Partners 2 | 7.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名、計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は原昌一郎氏が務めています。社外取締役比率は13.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原 昌一郎 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1985年入社。石油部長、グループ安全推進部長などを経て、エネックス代表取締役社長を歴任。2018年6月より現職。 |
| 髙橋 文弥 | 代表取締役専務執行役員石油輸送事業部長 | 1985年入社。関東支店長、石油部長などを経て、近畿石油輸送代表取締役社長を兼務。2024年6月より現職。 |
| 武本 修 | 取締役常務執行役員コンテナ輸送事業部長 | 1984年日本石油(現ENEOS)入社。同社執行役員広報部長などを経て、2017年当社入社。2025年4月より現職。 |
| 岡﨑 基太 | 取締役常務執行役員経営企画室長兼人事部長 | 1988年入社。執行役員経理部長兼情報システム部長、取締役執行役員人事部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 松井 克浩 | 取締役常務執行役員総務部長兼資産運用部長 | 1981年日本石油(現ENEOS)入社。同社根岸製油所副所長を経て2010年当社入社。2024年6月より現職。 |
| 遠藤 尚 | 取締役執行役員関東支店長 | 1993年入社。海外事業部長、化成品部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 成川 隆介 | 取締役執行役員高圧ガス輸送事業部長兼高圧ガス1部長 | 1998年入社。東北支店長、LNG部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 花田 優 | 取締役執行役員化成品輸送事業部長兼化成品1部長兼化成品2部長 | 1998年入社。シンガポール支店長、化成品2部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 田長丸 雅 司 | 取締役 | 1986年入社。LNG部長、取締役常務執行役員化成品部長などを経て、エネックス代表取締役社長を兼務。2021年6月より現職。 |
社外取締役は、草刈隆郎(元日本郵船代表取締役会長)、坂之上洋子(元ブルービーグル・インク代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「石油輸送事業」「高圧ガス輸送事業」「化成品・コンテナ輸送事業」「資産運用事業」を展開しています。
**(1) 石油輸送事業**
ガソリン・灯油・軽油などの石油製品を、鉄道タンク車およびタンクローリーを用いて輸送しています。主な顧客は石油元売各社です。長距離大量輸送に適した鉄道と、機動性の高い自動車輸送を組み合わせたサービスを提供しています。
収益は、石油元売各社などから受け取る輸送運賃が主な源泉です。運営は、鉄道輸送を同社が、自動車輸送を主に連結子会社のエネックス、近畿石油輸送、JKトランスなどが担っています。
**(2) 高圧ガス輸送事業**
LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素などの高圧ガスを、専用の鉄道コンテナやタンクローリーで輸送しています。また、鉄道コンテナのリースも行っています。主な顧客はガス会社などです。
収益は、ガス会社などから受け取る輸送運賃やコンテナのリース料です。運営は、同社がコンテナリースや輸送手配を行い、実輸送を連結子会社のエネックス、近畿石油輸送などが担う体制をとっています。
**(3) 化成品・コンテナ輸送事業**
化学品や食品などの液体・粉粒体をISOタンクコンテナ等で輸送するほか、各種コンテナのリース・レンタルを行っています。国内および国際複合一貫輸送にも対応しており、化学品・食品メーカーや通運会社が主な顧客です。
収益は、顧客から受け取る輸送運賃やコンテナのリース・レンタル料です。運営は同社および連結子会社のエネックス、JKトランスなどが行っており、海外事業も展開しています。
**(4) 資産運用事業**
保有する不動産の賃貸および太陽光発電事業を行っています。
収益は、賃貸先からの不動産賃貸料や電力会社への売電収入です。運営は同社および連結子会社のエネックスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は過去最高の371億円を記録しました。経常利益は15億円から18億円前後で推移しており、比較的安定した収益性を維持しています。当期純利益も安定的に推移しており、2025年3月期は投資有価証券売却益の計上もあり増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 323億円 | 343億円 | 352億円 | 350億円 | 371億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 16億円 | 18億円 | 18億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 4.8% | 5.1% | 5.1% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 8億円 | 10億円 | 8億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、利益率はやや低下傾向にあります。これは人件費や修繕費などのコスト増による影響と考えられます。営業利益は横ばいで推移しており、売上の伸びに対して利益の伸びが抑制されています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 350億円 | 371億円 |
| 売上総利益 | 39億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.1% | 11.3% |
| 営業利益 | 16億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が15億円(構成比59%)、賃借料が2億円(同8%)を占めています。売上原価については内訳の詳細データがありません。
■(3) セグメント収益
石油輸送事業は輸送数量の増加や運賃改定により増収増益となりました。高圧ガス輸送事業は増収ながら人件費等の増加で赤字に転じました。化成品・コンテナ輸送事業は売上増ながら成長投資に伴う償却費増で減益、資産運用事業は物件売却の反動で減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 石油輸送 | 163億円 | 176億円 | 7億円 | 11億円 | 6.2% |
| 高圧ガス輸送 | 90億円 | 94億円 | 1億円 | △0.6億円 | -0.6% |
| 化成品・コンテナ輸送 | 92億円 | 96億円 | 4億円 | 2億円 | 2.5% |
| 資産運用 | 6億円 | 5億円 | 3億円 | 3億円 | 51.8% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | - | - | △6億円 | △6億円 | - |
| 連結(合計) | 350億円 | 371億円 | 16億円 | 16億円 | 4.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は本業で稼いだ資金で借入金を返済しつつ、手元資金で投資を行う「健全型」のキャッシュ・フロー構造となっています。営業CFは安定してプラスを維持しており、投資CFは設備投資等によりマイナス、財務CFはリース債務返済や配当支払によりマイナスとなっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 50億円 | 51億円 |
| 投資CF | △31億円 | △26億円 |
| 財務CF | △18億円 | △26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「奉仕こそ我が務め(Service is my Business)」を社是として掲げています。ライフラインを支える物流企業グループとして、安全かつ高品質なサービスの提供を通じて、顧客、株主、地域社会から信頼され、社会とともに発展し続けることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「JOTグループ・ミッション」として、「安全・フェア・信頼・チャレンジ・ハーモニー」の5つのキーワードを掲げています。これらを経営理念の柱とし、企業が持続的に成長するために不可欠なESG(環境・社会・ガバナンス)活動を推進する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2024年度から2026年度までの中期経営計画を策定しています。最終年度となる2026年度において、以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:375億円以上
* 営業利益:18億円以上
* 経常利益:20億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「国内No.1のエネルギー輸送会社」を目指す2030年ビジョンの実現に向け、基盤事業の強化と成長事業の拡大に取り組んでいます。石油輸送等の基盤事業ではシェア維持と適正運賃収受に注力し、LNG輸送や海外化成品輸送などの成長事業では規模拡大を図ります。また、脱炭素社会に向けた新エネルギー輸送の研究・実践も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「個の尊重」をテーマに、従業員の多様性を尊重し、安心して働ける職場づくりを目指しています。ワークライフバランスの充実に向けた制度整備や、OJT・OFF-JTを組み合わせた教育プログラムによる人材育成、女性活躍推進法に基づく行動計画の策定などを通じて、労働生産性の向上と人材確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 15.4年 | 6,896,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.6% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※男女賃金差異(非正規雇用)については、対象者がいない等の理由により記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(75.8%)、新卒採用者に占める女性の割合(36.0%)、労働者数に占める女性の割合(28.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害の発生によるリスク
大規模な自然災害により鉄道・道路網や顧客設備が損害を受けた場合、輸送サービスの提供が困難になり業績に影響を与える可能性があります。これに対し、同社はBCP(事業継続計画)を策定し、鉄道と自動車の代替輸送体制を整えるなど、影響の最小化に努めています。
■(2) 石油製品等の需給バランスの変化
主力取扱品目である石油製品や化成品等の需要が、経済情勢やエネルギー転換により大幅に変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に海外向け化成品輸送は世界情勢の影響を受けやすいため、セグメントの分散化や新規事業の開拓によりリスク低減を図っています。
■(3) 市況変動に関わるリスク
燃料油価格や為替レートの変動は、コスト増や調達価格の上昇を通じて業績に影響を与える可能性があります。これに対し、燃費の良い車両の導入や燃料サーチャージの適用、為替予約によるヘッジなどを通じて、変動リスクへの対応を進めています。
■(4) 過失による事故等の発生リスク
輸送事故や容器の点検不備などの過失により重大事故が発生した場合、社会的信用の失墜や行政処分により業績に影響が出る可能性があります。同社は安全専門の教育施設での研修や、車両への安全運転支援装置の導入、定期的な容器点検などを通じ、安全体制の確立に努めています。



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