※本記事は、東 海運株式会社 の有価証券報告書(第124期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東 海運ってどんな会社?
東 海運は、1917年の創立以来100年以上にわたり、港湾運送やセメント輸送を軸に事業を展開する総合物流企業です。
■(1) 会社概要
同社は1917年12月に創立し、1952年8月には太平洋セメントの前身である小野田セメントの海上輸送業務を開始しました。2006年3月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2007年3月には同市場第一部銘柄に指定されました。2012年8月にはアグリ事業として植物工場「AZUMA FARM三重」を建設するなど、多角化も進めています。
同社グループは連結従業員数762名、単体578名の体制で事業を行っています。大株主の構成は、筆頭株主が同社の主要な取引先でもあるセメント製造販売大手の事業会社で、第2位は静岡県を拠点とする建設会社、第3位はその関連の物流会社となっています。資本関係のある事業会社が上位を占めており、安定した株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太平洋セメント | 38.96% |
| 鈴与建設 | 13.34% |
| 鈴与 | 3.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松井 伸介氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松井 伸介 | 代表取締役社長 | 1988年4月同社入社。九州事業部長、執行役員海運事業部長、取締役執行役員などを歴任し、2022年4月より現職。 |
| 根津 由明 | 取締役常務執行役員 | 1988年10月同社入社。関東事業部長、執行役員、上席執行役員京浜事業部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 永山 賢一 | 取締役常務執行役員 | 1992年4月同社入社。経理部長、企画管理部長、執行役員企画管理部長、常務執行役員を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、大杉 秀雄(公認会計士)、吉田 稔(元みずほインターナショナルビジネスサービス上席執行役員)、勝海 和弘(元MOLマリン&エンジニアリング取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流事業」「海運事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 物流事業
当部門では、港湾における輸出入貨物の荷役作業、倉庫での保管、通関手続き、国際複合一貫輸送のほか、トラックやトレーラーによる貨物運送、コンテナ輸送、引越業務などを提供しています。また、顧客の工場構内における貨物の保管や梱包、搬出入業務も行っています。
収益は、荷主や顧客企業からの荷役料、保管料、運送料、通関手数料などから得ています。運営は、東 海運のほか、近畿港運、アヅマ・ロジテック、関東エアーカーゴ、タンデム・ジャパン、東華貨運代理 (青島) 有限公司などが担っています。
■(2) 海運事業
当部門では、セメント専用船を用いた太平洋セメント製品の輸送や、一般貨物船による石膏、石灰石、石炭灰などの内航・外航輸送を行っています。また、旅客船の配乗業務なども手掛けています。
収益は、荷主からの海上運賃や用船料、配乗管理料などから得ています。運営は、東 海運に加え、イースタンマリンシステム、豊前久保田海運、東成マリンなどが担っています。
■(3) 不動産事業
当部門では、同社グループが保有する不動産の賃貸業務を行っています。
収益は、テナントや利用者からの賃貸料収入です。運営は主に東 海運が行っています。
■(4) その他事業
当部門では、農産物の生産管理および販売業務(アグリ事業)を行っています。
収益は、生産した農産物(ミニトマト等)の販売代金から得ています。運営は主に東 海運が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で推移しており、安定した基盤を持っています。利益面では、燃料価格変動などの影響を受けつつも黒字を維持しており、当期は大幅な増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 390億円 | 396億円 | 415億円 | 397億円 | 394億円 |
| 経常利益 | 7.3億円 | 8.9億円 | 9.4億円 | 1.5億円 | 7.4億円 |
| 利益率(%) | 1.9% | 2.2% | 2.3% | 0.4% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.9億円 | 6.4億円 | 2.0億円 | 3.2億円 | 5.8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となりましたが、売上総利益率は向上しました。営業利益率は前期の0.7%から1.7%へと改善し、本業の収益力が回復しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 397億円 | 394億円 |
| 売上総利益 | 36億円 | 40億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.0% | 10.2% |
| 営業利益 | 2.9億円 | 6.9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.7% | 1.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が14億円(構成比42%)、その他費用が6億円(同18%)、雑費が5億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
物流事業と海運事業が売上の大半を占めています。当期は物流事業と海運事業が増益となり、全体の利益を牽引しました。不動産事業は安定した利益率を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 物流事業 | 298億円 | 297億円 | 14億円 | 17億円 | 5.8% |
| 海運事業 | 90億円 | 88億円 | 4億円 | 5億円 | 5.7% |
| 不動産事業 | 7億円 | 6億円 | 6億円 | 5億円 | 80.9% |
| その他事業 | 2.4億円 | 2.5億円 | -0.0億円 | -0.1億円 | -4.4% |
| 調整額 | -1.0億円 | -2.5億円 | -20億円 | -20億円 | - |
| 連結(合計) | 397億円 | 394億円 | 3億円 | 7億円 | 1.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は、本業で稼いだ資金と借入金を活用して、将来のための設備投資を積極的に行っている「積極型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.2億円 | 30億円 |
| 投資CF | -8.9億円 | -44億円 |
| 財務CF | -1.7億円 | 10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%でスタンダード市場平均を下回っています。また、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率についても42.4%でスタンダード市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様に最適な物流サービスを提供する総合物流企業を目指し、社会に貢献するとともに、企業価値を高める」ことを経営理念としています。また、株主、投資家、取引先、従業員などのステークホルダーからの信頼に応え、新しい物流動向に柔軟に対応し、持続的に成長する企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「企業行動指針」において、法令遵守、地球環境保全、社会との対話、グローバルかつ柔軟な発想、挑戦する姿勢、多様な価値観の尊重、安全で健康な職場環境の保持を掲げています。また、「サステナビリティ基本方針」では、「運ぶ力」「繋ぐ力」「貫く力」に加え、常に新しいことに挑戦し続ける「挑む力」によって、社会の発展に貢献することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「市場と顧客に選ばれる企業」を将来のありたい姿として掲げ、2024年度から2026年度までの3ヵ年を対象とする中期経営計画を策定しています。最終年度である2027年3月期における数値目標を設定し、企業価値の向上を目指しています。
* 連結営業収益:440億円
* 連結経常利益:11億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、既存領域の深化として倉庫やフォワーディング、輸出入通関、海外事業の拡大を図るとともに、海運や不動産といった基盤事業の収益維持を目指しています。また、陸運やアグリ事業などの最適化による利益の安定化、営業部門の増強、ICT戦略の推進に取り組みます。組織面では、人的資本経営の推進やガバナンス強化を掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財」を最適な物流サービス提供の源泉と捉え、意欲向上と能力開発の機会を提供しています。資格や役職に応じた研修に加え、「問題解決」や「業務改善」のスキル向上を図る研修を実施しています。また、安全管理とコンプライアンス徹底のための教育も重視しています。多様な価値観を持つ職員が柔軟に働けるよう、在宅勤務や時差出勤、短時間勤務制度などを整備し、チャレンジ精神を持つ人材の採用と育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.8歳 | 13.7年 | 6,456,678円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 38.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 20.2% |
※女性管理職比率については、有報に従業員(新卒)の女性割合等の記載はありますが、管理職比率の数値データが記載されていないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、職員(新卒)の女性の割合(53.8%)、男性職員に対する女性職員の平均勤続年数の割合(48.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定取引先への依存について
同社の主要株主である太平洋セメントおよび同社グループ向けのセメント原料等輸送による営業収益は、全体の約28%を占めています。同社グループの動向によっては、業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は、港湾運送事業や倉庫事業、国際事業などを拡大し、特定の取引先への依存度低減を目指しています。
■(2) 燃料価格の高騰について
海上・陸上輸送事業等において船舶やトラック等を多数保有しており、燃料費はコストの大きな割合を占めています。経済情勢等による燃料価格の高騰は業績に悪影響を与える可能性があります。同社は市場調査や大量購入による対策を行っています。
■(3) 人的資本確保について
労働力不足がいわゆる「2024年問題」として懸念される中、人的資本の確保ができない場合、業績に影響する可能性があります。同社はダイバーシティへの配慮やハラスメント防止、働き方改革への対応を進め、安全で健康的な就労環境の保持に取り組んでいます。



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