※本記事は、東 海運株式会社の有価証券報告書(第125期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東 海運ってどんな会社?
物流事業と海運事業を中核に、国内外で幅広いロジスティクスサービスを提供する総合物流企業です。
■(1) 会社概要
同社は1917年に創立され、東京湾における専属回漕業を開始した老舗企業です。1951年の港湾運送事業法施行に伴い複数港で事業登録を受け、その後1991年にタイに現地法人を設立するなど海外展開も本格化させました。2006年に東京証券取引所市場第二部へ株式上場を果たし、翌年には第一部銘柄に指定されています。近年では2017年に創立100周年を迎え、多様な物流ニーズに応えるインフラ基盤の拡充を続けています。
現在の従業員数は連結で753名、単体で572名です。筆頭株主は事業会社である太平洋セメントで、第2位には鈴与建設、第3位には鈴与が名を連ねており、事業会社を中心とした強固な資本関係が構築されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太平洋セメント | 39.38% |
| 鈴与建設 | 13.48% |
| 鈴与 | 3.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松井伸介氏が務めています。取締役6名中、社外取締役は3名となっており、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松井伸介 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。営業企画部長、九州事業部長、海運事業部長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 根津由明 | 取締役専務執行役員 | 1988年同社入社。関東事業部長、京浜事業部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 永山賢一 | 取締役常務執行役員 | 1992年同社入社。経理部長、企画管理部長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、大杉秀雄(公認会計士大杉秀雄事務所代表)、吉田稔(元みずほコーポレート銀行トランザクション業務管理部部長)、勝海和弘(元MOLマリン&エンジニアリング取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流事業」「海運事業」「不動産事業」および「その他事業」を展開しています。
■物流事業
港湾における荷役作業や倉庫での保管、輸出入貨物の国際複合一貫輸送、貨物自動車や大型トレーラー車による輸送業務などを提供しており、メーカーや商社などの幅広い企業を顧客としています。
収益は、顧客企業から受け取る荷役料、保管料、輸送料、通関手数料などが主な源泉です。運営は同社や、近畿港運、アヅマ・ロジテックなどの子会社が国内および海外の複数拠点で連携して展開しています。
■海運事業
セメント専用船による製品輸送や、一般貨物船による石膏、石灰石、石炭灰などの内航輸送・外航輸送サービスを提供しており、太平洋セメントを中心とした企業群を主要顧客としています。
収益は、セメントや関連製品などの海上輸送に伴う輸送料金が中心です。運営は同社および、イースタンマリンシステム、豊前久保田海運などの子会社が担っています。
■不動産事業
京浜地区やその他の地域において、賃貸収益を得ることを目的として賃貸事務所、賃貸住宅、賃貸倉庫および賃貸駐車場の保有と管理を行っています。
収益は、保有する不動産のテナントや利用者から受け取る賃貸料が主な源泉です。運営は同社が主体となって自社の保有資産を適正に管理しています。
■その他事業
アグリビジネスとして、植物工場におけるミニトマトなどの農産物の生産管理および販売業務を行っています。
収益は、生産した農産物の販売による売上が主な源泉です。運営は同社が主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の経常利益は増減を伴いながら推移していますが、当期は10億円へと拡大しています。当期利益についても、マイナスとなった時期を乗り越え、直近では堅調に回復・成長する傾向が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 9億円 | 9億円 | 2億円 | 7億円 | 10億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | -0.2億円 | 3億円 | 4億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は前期の7億円から当期は9億円へと増加しており、本業における収益性が着実に高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 7億円 | 9億円 |
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上を見ると、主力である物流事業と海運事業が安定的に推移しつつ、各事業で前年を上回る実績を確保しています。特に海運事業や不動産事業の増収が全体の成長を底上げしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 物流事業 | 297億円 | 300億円 |
| 海運事業 | 88億円 | 91億円 |
| 不動産事業 | 6億円 | 8億円 |
| その他事業 | 2億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 394億円 | 401億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 30億円 | 21億円 |
| 投資CF | -44億円 | -34億円 |
| 財務CF | 10億円 | 14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も41.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様に最適な物流サービスを提供する総合物流企業を目指し、社会に貢献するとともに、企業価値を高める」ことを経営理念として掲げています。社会インフラの構築を支える存在として、新しい物流の動向に柔軟に対応し、持続的に成長する企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は企業行動指針において、法とルールの遵守、地球環境の保全、社会とのコミュニケーション、グローバルかつ柔軟な発想でのニーズ実現を重視しています。「仕事に情熱を持ち、新しいことに挑戦し続ける」「雇用と人権を確保し、多様な価値観を尊重する」といった価値観を組織に根付かせています。
■(3) 経営計画・目標
将来のありたい姿である「市場と顧客に選ばれる企業」に向け、2024年度から2026年度までの中期経営計画を策定しています。最終年度である2027年3月期において、以下の数値目標の達成を目指しています。
・連結営業収益:440億円
・連結経常利益:11億円
■(4) 成長戦略と重点施策
基本戦略として、倉庫やフォワーディングなど拡大事業における「既存領域の深化」と、海運やコンテナターミナルなど基盤事業における「収益基盤の維持」、そして最適化事業での「利益の安定化」を進めています。加えて、営業部門の増強やICT戦略の推進、人的資本経営やESG経営の展開を通じた企業価値向上に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
最適な物流サービスを提供する源泉は「人財」であるとの認識のもと、人材育成を行っています。意欲向上と能力開発の機会を提供し、「問題解決」意識と「業務改善」手法を職場に浸透させる研修を実施しています。また、多様な働き方の実現に向けて在宅勤務制度や時差出勤制度を整備し、安全第一の労働環境確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.2歳 | 13.7年 | 6,661,376円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 28.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 25.4% |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、女性管理職比率については有報に記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、職員(新卒)の女性の割合(45.0%)、男性職員に対する女性職員の平均勤続年数の割合(47.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制や許認可の取消に関するリスク
同社の事業は港湾運送事業法や貨物自動車運送事業法など多岐にわたる法的規制を受けています。将来、関連法令の見直しや、何らかの事由による許認可の取消等が生じた場合、事業活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス体制の強化によりリスク回避に努めています。
■(2) 太平洋セメントグループへの依存リスク
同社の全営業収益のうち約28.7%は、主要株主である太平洋セメントおよび同社グループ向けの製品・原料輸送が占めています。同グループの業績動向や方針変更があった場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。港湾運送や国際事業などの拡大により、依存度の低減を図っています。
■(3) 燃料価格の高騰によるコスト増加リスク
海上輸送や陸上輸送、港湾運送事業において多数の船舶や車両を利用するため、燃料費は変動費の中で大きなウエイトを占めています。地政学的な緊張の高まりなどで原油価格が急激に上昇し燃料費が高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。定期的な市場調査と複数ルートからの大量購入で対策しています。
■(4) 事故や自然災害、パンデミック発生リスク
大型船舶や運搬機器を使用して事業を行う性質上、不測の油濁事故や交通事故が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、保有する港湾設備や倉庫が台風や大雨、地震などの自然災害に直面するリスクや、未知の感染症によるパンデミックの影響を受けるリスクにも備え、危機管理体制を強化しています。



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