三愛オブリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三愛オブリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三愛オブリは東証プライム市場に上場し、石油やガス、航空燃料、化学品などのエネルギー関連事業を幅広く展開しています。直近の業績では、原油価格変動の影響等により売上高は減少したものの、航空燃料取扱手数料の単価改定などが寄与し、経常利益は増益を確保しています。事業ポートフォリオの変革を推進中です。


※本記事は、三愛オブリ株式会社の有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三愛オブリってどんな会社?


石油・ガス・航空燃料など社会インフラを支えるエネルギー関連事業を幅広く展開しています。

(1) 会社概要


1952年に三愛石油として設立され、羽田空港で航空機への給油事業に着手しました。1961年に東証二部に上場、1968年に東証一部へ指定替えとなりました。2004年にはキグナス石油を子会社化し事業基盤を強化しています。2022年に現在の三愛オブリへと社名変更を行い、新たなスタートを切りました。

同社グループは、連結で1,914名、単体で388名の従業員を擁しています。筆頭株主は技術振興を支援する公益財団法人市村清新技術財団であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、提携先などの事業会社を通じた安定的な資本関係も構築しており、社会インフラを担う強固な事業体制を維持しています。

氏名 持株比率
公益財団法人市村清新技術財団 13.38%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.70%
日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・リコー退職給付信託口) 9.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長社長執行役員を隼田洋氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
隼田 洋 代表取締役社長社長執行役員 1986年同社入社。常勤監査役、執行役員エネルギーソリューション事業部門担当兼化学品事業部門担当、常務執行役員などを経て、2023年より現職。
金田 凖 代表取締役会長 1972年同社入社。取締役、常務取締役を経て、2007年に代表取締役社長に就任。2017年より現職。
長谷川 文則 取締役 1982年三菱商事入社。同社執行役員石油事業本部長や千代田化工建設代表取締役副社長執行役員などを経て、2024年に同社専務執行役員。同年より現職。
佐藤 孝志 取締役常務執行役員総務部・広報・IR部・経理部・法務審査部担当経理部長 1987年同社入社。人事総務部長、法務審査部長などを歴任。2023年に取締役就任。2026年より現職。
石井 浩一郎 取締役執行役員ガス事業部門担当ガス事業部長 1991年同社入社。子会社代表取締役社長、同社ガス販売部長などを経て、2022年に執行役員ガス事業部門担当兼ガス事業部長。2023年より現職。


社外取締役は、鵜瀞惠子(元公正取引委員会経済取引局長)、二宮洋二(佐賀共栄銀行代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「石油関連事業」「化学品関連事業」「ガス関連事業」「航空関連事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 石油関連事業


揮発油、灯油、軽油、重油等の石油製品類を特約店や大口需要家へ販売するほか、元売会社等からの委託による石油製品の保管や出荷業務を行っています。また、系列のサービスステーション(SS)ネットワークを活用した小売販売や自動車関連商品の提供にも取り組んでいます。

収益は、特約店や需要家への石油製品の販売代金、SSでの小売販売による代金、委託元からの保管・出荷手数料から得ています。運営は主に三愛オブリのほか、キグナス石油や三愛リテールサービスなどが担っています。

(2) 化学品関連事業


洗車機用ワックスや撥水コートといった自動車関連商品に加え、防腐・防黴剤、防災商品など機能性の高い化学製品類の製造および販売を行っています。機能化学品領域の拡充や研究開発を進め、顧客への安定供給を支えています。

収益は、自動車関連施設や各産業の需要家に対する化学製品の販売代金によって構成されています。運営は主に三愛オブリが製品の販売を担い、三愛理研が化学製品類の製造および販売を行っています。

(3) ガス関連事業


関東から九州にかけての幅広いエリアを拠点とし、特約店や大口需要家に対するLPガスの卸売や一般消費者向けの小売販売を展開しています。また、九州地方を中心とした天然ガスパイプラインの運営や都市ガスの供給なども行っています。

収益は、卸売先や一般消費者からのガス販売代金、基本料金収入、およびガス器具の販売代金から得ています。運営は主に三愛オブリのほか、三愛オブリガス西日本、三愛オブリガス東日本、佐賀ガスなどの事業会社が行っています。

(4) 航空関連事業


羽田空港をはじめとする国内主要空港において、航空燃料の保管や航空機への給油業務を受託・運営しています。国内空港の給油施設を自社で所有して賃貸も行っており、安定的な供給体制を基盤として航空インフラを支えています。

収益は、航空会社や石油元売会社から受け取る航空燃料の取扱手数料や給油作業料、および自社所有する給油施設の賃貸料から得ています。運営は主に三愛オブリのほか、三愛アビエーションサービスなどが担っています。

(5) その他事業


半導体製造装置の精密洗浄などを行う金属表面処理業(クリーンテック事業)や、建設工事の設計・施工を行う建設業、不動産賃貸業、ビル管理業などを展開しています。クリーンテック事業は今後の重要な成長事業に位置付けられています。

収益は、需要家からの精密洗浄の受託料や建設工事の請負代金、および保有不動産等の賃貸料から得ています。運営は主に三愛オブリが不動産賃貸業を、三愛オブリテックが建設業や金属表面処理業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は市場環境や原油価格の変動により6,000億円前後で推移しています。一方、経常利益は120億円〜170億円台で安定的に黒字を計上し、利益率も2%台を維持しています。事業の効率化や収益性の改善が底堅い利益水準を支えています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,987億円 6,478億円 6,596億円 6,544億円 6,116億円
経常利益 131億円 160億円 177億円 129億円 134億円
利益率(%) 2.2% 2.5% 2.7% 2.0% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 58億円 79億円 93億円 68億円 86億円

(2) 損益計算書


当期は前期比で売上高が減少した一方で、売上総利益および営業利益は増加しています。これは、一部事業におけるマージン改善や価格改定、およびサプライチェーン最適化による利益率の改善が寄与したものと考えられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,544億円 6,116億円
売上総利益 589億円 595億円
売上総利益率(%) 9.0% 9.7%
営業利益 118億円 124億円
営業利益率(%) 1.8% 2.0%


販売費及び一般管理費(471億円)のうち、人件費が131億円(構成比28%)、雑費が65億円(同14%)、減価償却費が52億円(同11%)を占めています。売上原価(5,521億円)の内訳は、商品売上原価が5,481億円(構成比99%)と大部分を占めています。

(3) セグメント収益


売上高の大部分を占める石油関連事業は販売数量の減少などにより減収減益となりました。一方、航空関連事業はインバウンド需要の回復や単価改定が奏功して大幅な増益を達成しました。ガス関連事業やその他事業も増益となり、全体業績を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
石油関連事業 5,603億円 5,164億円 74億円 57億円 1.1%
化学品関連事業 127億円 128億円 11億円 11億円 8.8%
ガス関連事業 613億円 585億円 21億円 23億円 3.9%
航空関連事業 144億円 167億円 37億円 57億円 34.1%
その他事業 57億円 72億円 9億円 12億円 16.4%
調整額 -39億円 -72億円 -23億円 -25億円 -
連結(合計) 6,544億円 6,116億円 129億円 134億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 231億円
投資CF -25億円 -52億円
財務CF -115億円 -88億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、経営理念である三愛精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」とコーポレートブランド「Obbli(オブリ)」を礎としています。これらをベースに、社会インフラの一端を担う企業としてエネルギーの供給責任を果たすとともに、人々の生活と産業を支えるパートナーとして成長し続けることを使命としています。

(2) 企業文化


同社グループは、誠実かつ正直に行動し、法令やルールを順守することを基本姿勢としています。また、自然環境や地域社会との関係を大切にし、顧客の満足を追求するとともに、従業員一人ひとりが「自ら学び、自ら考え、自ら行動する」自律的な組織文化の醸成を重視し、持続可能な社会の実現に貢献しています。

(3) 経営計画・目標


持続的成長による株主価値の向上を目指し、中期経営計画において具体的な財務目標を設定しています。資本コストを意識した経営資源の配分を行いながら、株価純資産倍率(PBR)1倍以上の維持に向けた取り組みを進めています。

* 連結経常利益:130億円~150億円
* 連結ROE:8%以上
* 総還元性向:100%を目指す
* 1株当たり配当金:100円を下限

(4) 成長戦略と重点施策


低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオへの進化を図るため、「戦略の実行と投資の加速」を推進しています。基幹ビジネスである石油関連事業における収益の安定化を図るとともに、化学品やガス、航空関連事業を成長・基盤事業として強化し、さらにクリーンテック事業などの次世代の柱となる新領域への投資を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の経営資本と捉え、自律した「個」の集団となることを人財戦略に掲げています。社員の多様性を尊重し、互いの価値観の違いを認めて能力を最大限発揮できる社内環境の整備を推進しています。また、研修体制の充実やキャリア採用の拡大を通じて、事業戦略の変化に対応できる専門人材の確保と育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.9歳 15.0年 8,232,781円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 86.7%
男女賃金差異(全労働者) 75.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 56.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員1人あたりの教育費(100千円)、採用に占めるキャリア採用割合(71.0%)、新卒採用人数に占める女性割合(29.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と競争激化

気候変動への対応やカーボンニュートラルを目指す動きが加速する中、EV車の普及やオール電化の浸透により、石油・LPガス市場の縮小が懸念されています。異業種との販売競争も激化しており、これらが中長期的な業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は事業ポートフォリオの進化と成長分野への投資で対応しています。

(2) 危険物施設の事故や自然災害

航空機給油施設や石油製品出荷基地、天然ガスパイプラインなどの危険物取扱設備を多数保有しています。大規模な地震や異常気象などにより、燃料供給障害や漏洩事故が発生した場合、操業回復までに多大な時間とコストを要するリスクがあります。BCPの見直しや施設の強靭化工事により被害の最小化に努めています。

(3) 原油価格・為替の変動と地政学リスク

主力商品である石油製品の多くを海外からの輸入に依存しているため、原油価格や為替レートの変動が仕入価格に直結します。中東地域などでの政治的・経済的な混乱や紛争が発生した場合、製品の安定調達や価格維持に支障をきたし、業績に多大な影響を及ぼすおそれがあります。供給網の多様化と資金流動性の確保で備えています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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