兵機海運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

兵機海運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、内航海運、港湾運送、倉庫、外航海運などの総合物流事業を展開する企業です。当期の業績は、売上高137億円(前期比6.2%減)、当期純利益4.4億円(同15.0%減)と減収減益でした。港運事業における取扱量の減少やコスト増などが響きました。


※本記事は、兵機海運株式会社 の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 兵機海運ってどんな会社?


兵庫県を拠点に内航・外航海運および港湾運送・倉庫業を展開する総合物流企業です。

(1) 会社概要


1942年、兵庫県下の内航海運業者と船主を集約統合して設立されました。1949年に港湾運送事業、1970年に倉庫業を開始し、事業を拡大。1964年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年には東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場しました。2025年には主要取引先である大和工業グループと資本業務提携契約を締結し、連携を強化しています。

従業員数は連結を行っていないため単体のみで237名です。大株主の構成は、筆頭株主が鉄鋼メーカーの大和工業で、第2位は法人株主の堂島汽船、第3位は取引先で構成される持株会です。

氏名 持株比率
大和工業 14.61%
堂島汽船 10.00%
ふたば会 5.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は大東洋治氏、代表取締役社長は大東慶治氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
大東 洋治 取締役会長(代表取締役) 1970年同社入社。神戸第一支店長などを経て2004年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
大東 慶治 取締役社長(代表取締役) 2002年同社入社。倉庫部長、営業副本部長、常務取締役などを歴任し、2024年6月より現職。
内田 一彦 取締役 兵庫県警察を経て2020年同社入社。姫路支店ヤマトスチール事業部統括部長などを経て2024年6月より現職。
松岡 和良 取締役 1980年同社入社。姫路支店長、執行役員などを経て2023年6月より取締役。2024年6月より現職。
田中 清隆 取締役 広島銀行を経て2019年同社入社。営業本部室長、外航部長などを経て2024年6月より現職。
梅﨑 慎一 取締役 兵庫相互銀行(現みなと銀行)を経て2022年同社へ出向。財務部長を経て2024年6月より現職。
尾嵜 朋史 取締役 三井物産入社後、鉄鋼製品事業部長などを歴任。大和工業常務執行役員を経て2025年6月より現職。
佐藤 清 取締役 1975年同社入社。常務取締役、株式会社吉美代表取締役などを経て2025年6月より現職。
松本 利晴 取締役(監査等委員) 1977年同社入社。本社営業部統括部長、姫路支店長などを歴任し、2016年6月より現職。


社外取締役は、五島大亮(公認会計士・税理士)、濵田在人(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「海運事業」「港運・倉庫事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

**(1) 海運事業**
国内および国外の海上輸送業務を提供しています。主力の内航海運では、鉄鋼製品や建設機械、バイオマス燃料などの産業基礎物資を輸送し、外航海運では近海区域を中心に委託船を活用した輸送を行っています。顧客は主に鉄鋼メーカーや商社、建設機械メーカーなどです。
収益は、顧客から受け取る海上運賃が主な源泉です。運営は兵機海運が行っており、関連会社の七洋船舶管理株式会社が船員派遣等の関連事業を行っています。

**(2) 港運・倉庫事業**
神戸・大阪・姫路港において、輸出入貨物の取扱いや倉庫保管業務を提供しています。港湾運送では貨物の船積み・陸揚げを行い、倉庫事業では普通倉庫や定温倉庫、危険品倉庫などを運営しています。
収益は、荷役料や倉庫保管料、入出庫料などが中心です。運営は兵機海運が行っており、関連会社の株式会社吉美に姫路港での荷役や倉庫入出庫の一部を委託しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の直近5期間の業績推移です。売上高は2023年3月期にピークを迎えましたが、その後は減少傾向にあります。利益面では、経常利益・当期純利益ともに安定して黒字を確保していますが、直近では減益となりました。利益率は3〜4%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 129億円 160億円 184億円 146億円 137億円
経常利益 2.0億円 5.3億円 6.1億円 6.8億円 6.2億円
利益率(%) 1.6% 3.3% 3.3% 4.6% 4.5%
当期純利益(親会社所有者帰属) 1.1億円 3.6億円 4.4億円 5.1億円 4.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は減少しましたが、売上総利益率は改善しました。営業利益は微増し、本業の収益性は維持されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 146億円 137億円
売上総利益 26億円 26億円
売上総利益率(%) 17.5% 19.2%
営業利益 5.2億円 5.5億円
営業利益率(%) 3.5% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が12億円(構成比55%)、福利厚生費が3億円(同13%)を占めています。売上原価では、その他荷捌費が67億円(構成比61%)、支払運賃が35億円(同31%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を分析します。海運事業は運航コスト上昇に対し運賃改定や効率配船を進め増益を確保しましたが、港運・倉庫事業は中国経済停滞による取扱量減少やコスト増により減収減益(営業損失)となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
海運事業 82億円 83億円 4.1億円 5.8億円 6.9%
港運・倉庫事業 64億円 54億円 1.1億円 -0.3億円 -0.5%
連結(合計) 146億円 137億円 5.2億円 5.5億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

兵機海運は、営業活動により資金を獲得し、投資活動と財務活動で資金を使用しました。営業活動では、主に税金等の支払いが主な要因となり、前期と比較して獲得資金は減少しました。投資活動では、固定資産の取得や貸付金関連の支出が主な要因となり、前期とは異なり資金を使用する結果となりました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いなどが主な要因となり、前期よりも多くの資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 9.1億円 8.8億円
投資CF 0.7億円 -1.5億円
財務CF -7.4億円 -7.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「総合物流業者としてその業務を通じて社会に貢献する」という経営理念を掲げています。顧客のニーズを先取りし、生産と消費をつなぐ物流のエキスパートを目指しています。高度な情報力と革新的でスピーディーな経営を行い、社会や環境との共存を図りながら、ステークホルダーの信頼と期待に応えることを方針としています。

(2) 企業文化


専門知識の修得に努め、高度な見識をもって常に現状の改善を目指す姿勢を重視しています。また、「感謝の気持ちと謙虚な心をもって業務に励み、信頼される会社を築く」ことを行動指針としています。共存共栄の精神のもと、荷主や協力業者と一体となった信頼関係を築く姿勢を経営思考の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


2035年度に向けた長期経営ビジョンと、2027年度を最終年度とする中期経営計画を策定しています。2035年には物流ソリューション企業として新たなステージへ進むことを目指し、以下の数値目標を掲げています。

* 2035年度目標:売上高200億円、営業利益10億円
* 2027年度目標(中計最終):売上高150億円、営業利益6.8億円、経常利益6.9億円、当期純利益4.8億円
* 2025年度目標(中計初年度):売上高140億円、営業利益5.8億円

(4) 成長戦略と重点施策


大和工業グループとの資本業務提携による連携強化を基盤拡大の柱とし、船腹・船員増強による輸送力拡大や継続的な設備投資を推進します。また、部門間連携による提案型営業の強化や高収益商材への取り組み強化により収益性を高める方針です。

* 船腹・船員増強による輸送力拡大
* 継続的な設備投資
* 荷主開拓による営業収益拡大
* 部門間連携による提案型営業力強化
* 高収益商材(危険品、定温貨物、重量貨物等)への取り組み強化

5. 働く環境


同社 人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本経営の実現」を中期経営計画の重要テーマとし、従業員の経営参画意識向上や長期的な人材育成に取り組んでいます。OJTや外部セミナーを活用した階層別研修を実施し、専門知識の習得を支援しています。また、内航船員の高齢化に対応するため、関連会社を通じて若年船員の育成や女性船員の採用にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.4歳 16.3年 6,051,362円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 2.0%
男性労働者の育児休業取得率 40.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) -
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) -


※男女の賃金の差異については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 傭船先の経営状況


内航海運事業において、船舶の確保のために船主への貸付や債務保証を行う場合があります。傭船先の経営が悪化した場合、貸倒損失や保証履行により同社の業績や財務に影響を与える可能性があります。これを防ぐため、定期的なモニタリングを行っています。

(2) マーケット動向


外航事業において近海マーケットでの事業展開を行っていますが、需要減退や競争激化、船腹需給バランスの変化により船舶稼働率が低下する可能性があります。主要航路の複線化や取扱貨物の多様化によりリスク軽減を図っています。

(3) 特定の取引先の動向


大和工業グループおよびJFE物流グループからの売上が全体の約37%を占めており、主要品目である鉄鋼の需要変動が業績に大きく影響します。大和工業グループとの資本業務提携により連携を強化する一方、サービスの高度化や取扱貨物の複線化にも取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。