栗林商船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

栗林商船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する内航海運会社です。北海道と本州を結ぶ定期航路を主力とし、RORO船による海陸一貫輸送を展開しています。直近の決算では、輸送単価の改善やホテル事業の回復などにより、売上高は前期比10.2%増、経常利益は同285.6%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、栗林商船株式会社 の有価証券報告書(第150期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 栗林商船ってどんな会社?


国内初のRORO船を導入した内航海運のパイオニアであり、北海道・本州間の物流を支える老舗企業です。

(1) 会社概要


同社は大正8年、栗林合名会社の船舶部門を分離して設立され、室蘭・本州間の定期航路を開設しました。昭和44年には国内初のロールオン・ロールオフ(RORO)船「神珠丸」を建造し、昭和63年には所有船舶を全てRORO船へ入れ替えました。令和元年には設立100周年を迎え、令和4年の市場再編に伴いスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は1,098名、単体では52名です。筆頭株主は栗林株式会社(9.03%)で、第2位は三井住友海上火災保険(8.34%)、第3位は栗林定友氏(6.76%)となっています。創業家関連や金融機関、主要取引先が上位株主として名を連ねており、安定した株主構成です。

氏名 持株比率
栗林株式会社 9.03%
三井住友海上火災保険 8.34%
栗林定友 6.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は栗林宏吉氏が務めています。社外取締役比率は約22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
栗林 宏吉 代表取締役社長 昭和57年同社入社。平成7年より代表取締役社長。ケイセブン代表取締役副社長、セブン代表取締役会長などを兼任。
楠 肇 専務取締役社長補佐兼営業本部長 昭和54年日本通運入社。平成30年同社入社。常務取締役等を経て令和4年より現職。
小栁 圭治 専務取締役経営管理本部管掌 昭和56年同社入社。総務部長、常務取締役等を経て令和5年より現職。
稲田 博久 専務取締役船舶本部長 昭和63年同社入社。栗林物流システム取締役、同社常務取締役等を経て令和5年より現職。
栗林 広行 常務取締役経営管理本部長 平成27年同社入社。セブン代表取締役社長、同社取締役第一営業部長等を経て令和5年より現職。
松井 伸二 取締役経営管理本部副本部長兼経営企画部長 昭和59年北海道東北開発公庫入庫。日本原燃部長等を経て令和5年より現職。
栗林 良行 取締役営業本部副本部長兼第二営業部長 平成29年同社入社。日本郵船出向を経て令和5年より現職。


社外取締役は、北村正一(元海上保安庁装備技術部長)、太田佳明(元日本興業銀行検査部副部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「海運事業」、「ホテル事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 海運事業


日本国内での内航運送業や一般旅客フェリー事業、東南アジア地域での外航海運業、港湾運送業などを展開しています。特に北海道と本州を結ぶ定期航路において、トレーラーごと貨物を運ぶRORO船を活用した海陸一貫輸送を強みとしています。

運賃や荷役料などが主な収益源です。内航および外航海運は主に栗林商船や栗林物流システムが、フェリー事業は青函フェリーが、港湾運送は栗林運輸や三陸運輸などのグループ会社が運営を行っています。

(2) ホテル事業


北海道登別市において、温泉リゾートホテル「登別グランドホテル」を運営しています。観光客やビジネス客に対し、宿泊、食事、温泉施設などのサービスを提供しています。

宿泊料や飲食代、売店での物品販売収入が収益源となります。運営は連結子会社の登別グランドホテルが行っています。

(3) 不動産事業


北海道室蘭市を中心に、店舗や倉庫などの不動産賃貸業を展開しています。グループが保有する不動産資産を有効活用し、安定的な収益確保を図っています。

テナントからの賃貸料が収益源です。運営は主に連結子会社のセブンが行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、北海道空知郡中富良野町において青果卸事業を行っています。

青果物の販売収益が主な収入となります。運営は連結子会社の北千生氣が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は400億円台後半で推移しており、直近では回復傾向にあります。利益面では、燃料価格変動等の影響を受けつつも、直近決算で大幅な増益を達成しました。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 476億円 460億円 415億円 453億円 499億円
経常利益 19億円 7億円 3億円 6億円 24億円
利益率(%) 4.0% 1.5% 0.7% 1.4% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 4億円 7億円 1億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸長しています。利益率も改善しており、本業の収益性が高まっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 453億円 499億円
売上総利益 69億円 94億円
売上総利益率(%) 15.2% 18.8%
営業利益 1億円 21億円
営業利益率(%) 0.2% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が22億円(構成比30%)、役員報酬が6億円(同8%)を占めています。売上原価においては、運航費や燃料費、船費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


海運事業が売上の大半を占めており、運航の合理化や効率化により増収増益となりました。ホテル事業は旅行支援制度やインバウンド再開により大幅な増収となり、赤字幅が縮小しています。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
海運事業 434億円 464億円 4億円 17億円 3.6%
ホテル事業 7億円 17億円 -6億円 -0.1億円 -0.7%
不動産事業 6億円 6億円 3億円 3億円 53.2%
その他 6億円 12億円 0.4億円 0.8億円 6.8%
調整額 -1億円 -4億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 453億円 499億円 1億円 21億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

栗林商船は、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加したことで、期末の資金残高が増加しました。営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加などが収入増に寄与しました。投資活動では、有形固定資産の取得にかかる支出が減少したことが、支出の抑制につながりました。財務活動では、長期借入れによる収入の減少が、支出の増加要因となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 49億円 49億円
投資CF -16億円 -36億円
財務CF -18億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「環境保全に努め、安全で効率的な海陸一貫輸送を通して社会に貢献する」ことを経営理念としています。また、「付加価値の高いサービスの提供」「顧客ニーズに的確に応える輸送体制の確立」「すべてのステークホルダーの信頼に応える企業」を目指すことを経営方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社は「誠実」「信頼」「社会貢献」の三つを社是とし、役職員の精神的バックボーンとしています。あらゆる場面で誠実に行動し、社会やステークホルダーからの信頼を高めるとともに、企業を「社会の公器」と認識し、社会的責任と公共的使命を果たすことを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(令和4年度から令和6年度)において経営ビジョンを定め、グループ全体の数値目標を設定しています。安定的かつ持続的な成長と利益確保の観点から、売上高、営業利益、経常利益を重要な経営指標と捉えています。

* 売上高:500億円(令和6年度)
* 経常利益:20億円(令和6年度)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、物流業界の課題である「2024年問題」や人手不足に対応するため、モーダルシフトの推進による新規貨物の開拓に注力しています。また、船舶の安全運航や環境保全に向けた国際安全管理コードの導入検討、効率的な運航形態の追求、船員および陸上職員の人材確保・育成、内部統制の強化などを重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


船員の不足や高齢化が進む中、同社は若手船員の確保と育成に注力しており、平均年齢は40歳未満を維持しています。技術伝承のマニュアル化やメンタルヘルス管理などを強化しています。陸上職員については、令和4年に人材開発部を創設し、研修体系の構築や人事制度の見直し、科学的人事の推進を通じて、高いモチベーションで業務に取り組み、社会に貢献できる人材の育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 41.4歳 12.0年 7,083,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※女性管理職比率は提出会社の数値です。男性育児休業取得率および男女賃金差異については、有報に記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害に対するリスク


同社グループは船舶による海上貨物輸送を主たる業務としています。地震や台風などの自然災害が発生した場合、船舶の運航、港湾荷役、車両運行などの業務遂行に支障をきたし、売上高の減少などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 船舶運航上のリスク


安全運航と安全作業に最大限の注意を払い、各種保険への加入や安全管理規程の遵守などの対策を講じていますが、不慮の事故、自然災害、テロなどに遭遇する可能性があります。これらが発生した場合、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 船舶燃料油価格の影響


運航する船舶の燃料油価格は変動が激しく、急騰や急落が生じることがあります。同社グループは運航効率化や燃料油価格変動調整金の導入などで対応していますが、燃料価格の著しい変動は業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。