※本記事は、鈴与シンワート株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 鈴与シンワートってどんな会社?
情報サービスと物流の2事業を柱とし、システム開発から倉庫・輸送まで幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1947年にセメント荷扱会社として設立され、1963年に東証二部へ上場しました。1989年にシンワートへと社名変更後、1993年に鈴与グループの一員となりました。1998年の情報サービス事業への進出を経て、2022年には東証スタンダード市場へと移行し、事業基盤の強化を図っています。
現在の従業員数は連結で918名、単体で723名です。筆頭株主は親会社と同じ鈴与グループの鈴与システムテクノロジーであり、第2位は鈴与興産、第3位には鈴与ホールディングスが名を連ねており、グループ会社が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鈴与システムテクノロジー | 12.06% |
| 鈴与興産 | 11.38% |
| 鈴与ホールディングス | 9.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は德田康行が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 德田 康行 | 代表取締役社長執行役員 | 日本政策投資銀行監査役室長、鈴与ホールディングス常務等を経て2019年鈴与システムテクノロジー取締役および同社代表取締役社長に就任。2023年より現職。 |
| 平野 文康 | 取締役副社長執行役員事業部門統括兼CIO兼CISO兼CQO | 日本電気事業本部長、NECソリューションイノベータ取締役執行役員常務等を経て2016年同社専務取締役に就任。2021年ビジネス・デザイン・コンサルティング代表取締役会長。2023年より現職。 |
| 道田 隆典 | 取締役西日本地区担当 | 1999年同社入社。システムインテグレーションカンパニー長、常務取締役西日本地区担当等を経て2024年より現職。インタークエスト代表取締役会長を兼任。 |
| 大川 正 | 取締役執行役員管理本部長 | 鈴与システムテクノロジー等を経て2012年同社入社。総務人事部長、シェアードサービスカンパニー長、管理本部長兼総務・人事部長を経て2026年より現職。 |
| 大石 素久 | 取締役 | 東海埠頭常務等を経て2022年鈴与シンワ物流代表取締役社長、シンワ運輸東京代表取締役社長に就任し、同社取締役として現職。 |
| 佐藤 滋美 | 取締役(監査等委員) | NTTデータビジネスイノベーション本部長等を経て2013年同社取締役、鈴与システムテクノロジー代表取締役社長に就任。2016年より現職。 |
社外取締役は、吉田芳之(元日本郵船専務経営委員)、河合健一(元静岡コンピュータサービス社長)、杉田光秀(元静岡銀行専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報サービス事業」および「物流事業」を展開しています。
■情報サービス事業
システム開発、人事給与・会計等のHCMサービス、クラウドサービス、およびコンサルティングサービスを提供しています。主に一般企業のITインフラのセキュリティ構築・運用からソフトウェアの導入まで、幅広くデジタルトランスフォーメーションの推進を支援しています。
顧客企業から受託開発費、パッケージ導入費、インフラ構築費および月額利用料などを受け取る収益モデルです。運営は鈴与シンワートに加え、Webソリューションをインタークエストが、人事ITコンサルティングをビジネス・デザイン・コンサルティングがそれぞれ担っています。
■物流事業
食品や輸出入貨物を取り扱う倉庫事業、貨物の船積みや陸揚げなどを行う港運事業、小麦粉やセメント等の輸送を行う陸運事業を展開しています。顧客のサプライチェーンを支える総合的な物流サービスを提供し、現場改善や業務効率化に努めています。
顧客から倉庫の保管料、港湾における荷役作業の対価、および陸上輸送の運賃等を受け取って収益を上げるモデルです。事業の運営は主に鈴与シンワ物流が中心となって行っており、一部の貨物自動車運送についてはシンワ運輸東京が受託して事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりで推移しています。企業の活発なIT投資需要や物流事業での取引拡大が寄与し、安定した成長を遂げています。収益性の改善も進んでおり、利益率は着実に向上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 145億円 | 155億円 | 172億円 | 191億円 | 207億円 |
| 経常利益 | 4.1億円 | 5.5億円 | 10.7億円 | 14.4億円 | 18.1億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 3.6% | 6.2% | 7.5% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.2億円 | 2.7億円 | 6.2億円 | 9.2億円 | 11.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。生産性向上や高付加価値化の取り組みにより、売上総利益率および営業利益率ともに前年を上回る水準で推移しており、堅調な収益構造がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 191億円 | 207億円 |
| 売上総利益 | 46.2億円 | 55.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.2% | 27.0% |
| 営業利益 | 14.0億円 | 17.5億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 8.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が13.2億円(構成比34.4%)、賞与引当金繰入額が4.0億円(同10.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
情報サービス事業は、大型案件の拡大やクラウドサービスの好調により増収を牽引しました。物流事業も、既存顧客の取扱量増加や新規取引の獲得が寄与し、すべてのセグメントで前年を上回る売上を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 情報サービス事業 | 157.3億円 | 171.2億円 |
| 物流事業 | 33.9億円 | 35.5億円 |
| 連結(合計) | 191.2億円 | 206.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17.6億円 | 7.1億円 |
| 投資CF | -1.7億円 | -11.8億円 |
| 財務CF | -9.9億円 | -4.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「共生(ともいき)」の精神に則り、事業活動を通して様々な社会課題に取り組むサステナブル経営を推進しています。「社会との共生」「お客様・取引先との共生」「社員同士、グループ各社の共生」を実践し、持続可能な社会の実現に貢献できる企業グループであり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
思いやりと自律と協働により、一人ひとりの個性が尊重される文化を重視しています。また、「現場力」の一層の向上を掲げ、従業員一人ひとりがビジネスの現場で活躍し成長を実感できるような、多様な人材の尊重や働きやすい職場環境の整備に力を注いでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画のもと、「徹底した現場力の向上による収益構造の改革」という経営ビジョンを掲げ、事業拡大と安定した利益構造の確保を目指しています。成長性と収益性を重視する観点から、以下の数値を経営上の客観的な目標指標として定めて推進しています。
* 売上高:210億円
* 営業利益:15.6億円
* 経常利益:15.7億円
■(4) 成長戦略と重点施策
利益率の大幅な向上を成し遂げた中期経営計画のビジョンを継続し、さらなる収益力強化を図ります。情報サービス事業では生成AIの活用や付加価値型ビジネスへの転換を進め、物流事業ではDX活用による生産性向上と人的資本への投資を通じて人材の定着・育成を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略の遂行と持続的な成長を実現するため、「多彩で卓越した専門性を有し、自律して協働できる人財を育てる」ことを人材育成方針として掲げています。「人的資本投資・開発」「人権の尊重と多様性の推進(DE&I)」「健康経営」を具体的な重点テーマとし、従業員のリスキリングや自律的キャリア形成を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 10.6年 | 7,251,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 88.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、3年以内離職率(0.0%)、品質教育の受講率(89.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報サービス事業の環境変動リスク
景気動向、顧客企業のシステム開発状況および競合企業の動向といった外部環境の変化によって、需要が落ち込むリスクがあります。IT投資動向などの事業環境に予期せぬ変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報セキュリティにおけるリスク
システム構築やクラウドサービスの提供において、個人情報や顧客情報を含んだ情報資産を取り扱っています。情報漏洩や紛失等のリスクを回避するため認証取得など対策を講じていますが、万が一情報漏洩が発生した場合には、損害賠償や信用の失墜により業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 社内システム障害に関するリスク
情報サービス提供の際に使用する社内システムにおいて、災害や事故によるネットワーク切断、急激なアクセス集中によるサーバーの一時的な作動不能などのトラブルが発生した場合、顧客へ適時にサービスが提供できなくなり、解約につながるリスクがあります。
■(4) システム開発業務の品質に関するリスク
プロジェクト収支の運用や品質マネジメントシステムによる体制整備を行い、品質強化に取り組んでいます。しかし、プロジェクト成果物に不具合が生じたり、想定外の仕様変更によって作業工数が大幅に増加したりした場合には、採算が悪化し業績に影響を及ぼす可能性があります。



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