鈴与シンワート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鈴与シンワート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鈴与シンワートは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、システム開発やクラウドサービス等の情報サービス事業と、港運・倉庫等の物流事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高191億円(前期比11.4%増)、経常利益14億円(同34.8%増)となり、4期連続の増収増益で過去最高益を更新しました。


※本記事は、株式会社鈴与シンワート の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鈴与シンワートってどんな会社?


情報サービスと物流の2つの事業を柱に、鈴与グループのIT中核企業として成長を続ける企業です。

(1) 会社概要


同社は1947年に新和運輸として設立され、1963年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。1993年に鈴与グループの一員となり、1994年に現在の鈴与シンワートへ商号変更しています。1998年にソフトウエア開発会社を買収して情報サービス事業へ本格進出し、2008年にはデータセンター営業を開始しました。2024年12月にはインタークエストを完全子会社化しています。

2025年3月31日時点の連結従業員数は880名(単体644名)です。筆頭株主は情報通信業の鈴与システムテクノロジー、第2位は不動産業等の鈴与興産、第3位はグループ統括の鈴与ホールディングスとなっており、親会社である鈴与が議決権の51.16%を保有しています。

氏名 持株比率
鈴与システムテクノロジー 12.06%
鈴与興産 11.37%
鈴与ホールディングス 9.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は德田 康行氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
德田 康行 代表取締役社長執行役員 日本政策投資銀行監査役室長、鈴与ホールディングス常務等を経て、2020年6月より同社代表取締役社長。
平野 文康 取締役副社長執行役員 日本電気(NEC)等を経て、2023年6月より同社取締役副社長執行役員。事業部門統括等を担当。
道田 隆典 取締役 五洋電気等を経て、1999年同社入社。常務執行役員ソリューションサービス事業本部長等を経て、2024年4月より現職。
大川 正 取締役執行役員 鈴与商事、NTTデータベルSCMソリューションズ等を経て、2023年6月より同社取締役執行役員管理本部長兼総務・人事部長。
大石 素久 取締役 鈴与入社後、新星運輸常務、鈴与シンワ物流代表取締役社長等を歴任。2022年6月より同社取締役。
佐藤 滋美 取締役(監査等委員) 日本電信電話公社(現NTT)入社後、NTTデータビジネスブレインズ社長等を歴任。2016年6月より現職。


社外取締役は、吉田芳之(元日本郵船専務)、河合健一(元静岡銀行常務)、杉田光秀(元静岡銀行専務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」および「物流事業」を展開しています。

(1) 情報サービス事業


システム開発、人事・給与・会計等のパッケージソリューション、Webシステム、データセンター運営やクラウドサービス、各種コンサルティングを提供しています。顧客は一般企業のほか、鈴与グループ各社も含まれます。

収益は、顧客からのシステム開発受託費、パッケージソフトやクラウドサービスの利用料、データセンターの保守運用費等から構成されます。運営は主に同社が行い、連結子会社のインタークエストがWebソリューションを、ビジネス・デザイン・コンサルティングが人事ITコンサルティングを担当しています。

(2) 物流事業


倉庫事業、港運事業、陸運事業を展開しており、食品等の輸出入貨物の取扱いや、セメント・小麦粉等の輸送を行っています。鈴与との倉庫相互利用や業務請負も行っています。

収益は、荷主からの保管料、荷役料、および貨物運送料等です。運営は主に連結子会社の鈴与シンワ物流が中心となり、倉庫・港運・陸運業務を行い、シンワ運輸東京が貨物自動車運送を受託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は143億円から191億円へと右肩上がりで成長しています。利益面でも、経常利益率が2%台から7.5%へと大幅に改善しており、増収効果と収益性向上が相まって利益額が急拡大しています。特に直近では連続して過去最高益を更新しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 143億円 145億円 155億円 172億円 191億円
経常利益 3億円 4億円 6億円 11億円 14億円
利益率(%) 2.3% 2.8% 3.6% 6.2% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 2億円 3億円 6億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は22.8%から24.2%へ上昇しました。販管費も増加していますが、増収効果がそれを上回り、営業利益率は6.0%から7.3%へと改善しています。収益構造の強化が進んでいることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 172億円 191億円
売上総利益 39億円 46億円
売上総利益率(%) 22.8% 24.2%
営業利益 10億円 14億円
営業利益率(%) 6.0% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料が11億円(構成比33%)、賞与引当金繰入額が3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


情報サービス事業は、パッケージソリューションの大型案件やクラウドサービスが好調で増収となり、生産性向上により利益率も高まりました。物流事業は、陸運の新規貨物等が寄与して増収となり、利益面でも作業効率化等により堅調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報サービス事業 139億円 157億円 23億円 29億円 18.5%
物流事業 33億円 34億円 6億円 6億円 18.5%
調整額 -0億円 -0億円 -19億円 -21億円 -
連結(合計) 172億円 191億円 10億円 14億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

鈴与シンワートは、情報サービス事業と物流事業を両輪に、安定したキャッシュ・フローを生み出しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上、売上債権や棚卸資産の増加、仕入債務の減少、そして法人税等の支払いなどにより、堅調に推移しました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産や無形固定資産の取得による支出があったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入により、使用額は前連結会計年度よりも減少しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増額、長期借入金の返済、自己株式の取得、配当金の支払いなどにより、資金の使用がありました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 18億円 18億円
投資CF -4億円 -2億円
財務CF -13億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、鈴与グループ共通の「共生(ともいき)」の精神を経営理念として掲げています。「社会との共生」「お客様・取引先との共生」「社員同士、グループ各社の共生」を実践し、社会貢献できる企業グループであり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


経営ビジョンとして「徹底した現場力の向上による収益構造の改革」を掲げ、現場起点の改善活動を重視しています。また、物流事業においては「働きやすくやりがいのある職場づくり」を掲げ、人的資本への先行投資や待遇改善を推進するなど、社員を尊重する風土があります。

(3) 経営計画・目標


2025中期経営計画において、事業拡大と収益力強化を推進しています。経営上の目標達成状況を判断する指標として、売上高、営業利益、経常利益を重視しています。2025年3月期の実績は以下の通りです。

* 売上高:191億円
* 営業利益:14億円
* 経常利益:14億円

(4) 成長戦略と重点施策


情報サービス事業では、企業のDX推進やAIなどの先進技術への投資需要を取り込むため、システム開発やクラウドサービスの受注拡大と収益性向上に注力します。物流事業では、2024年問題や人手不足に対応するため、システム導入によるDX化や人的資本への投資を進め、業務効率化と人材定着を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多彩で卓越した専門性を有し、自律して協働できる人財を育てる」を育成方針とし、従業員が心身ともに健康で活躍できる環境づくりを目指しています。人的資本への投資、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)、健康経営を重要テーマとして推進し、従業員のエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 11.6年 6,948,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.2%
男性育児休業取得率 55.5%
男女賃金差異(全労働者) 80.5%
男女賃金差異(正規雇用) 80.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 83.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用3年以内離職率(2.9%)、品質教育受講率(95.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報サービス事業の事業環境


同社の主力である情報サービス事業は、景気動向や顧客企業のIT投資意欲、競合他社の動向に強く影響を受けます。これらの環境が変化し、受注減少や競争激化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報セキュリティ


顧客の重要情報や個人情報を扱うため、情報漏洩や紛失のリスクがあります。対策を講じていますが、万が一事故が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 社内システム障害のリスク


サービス提供に不可欠な社内システムが、災害、事故、アクセス集中等により機能不全に陥った場合、顧客へのサービス提供が遅延・停止し、解約や信用の低下を招くことで、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人財の確保・育成


事業拡大や技術革新に対応するためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。採用競争の激化等により計画通りに人材を確保・育成できない場合、競争力の低下や事業機会の逸失につながり、業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。