※本記事は、KNT-CTホールディングス株式会社の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. KNT-CTホールディングスってどんな会社?
同社は、多様な顧客ニーズに応える旅行事業や地域共創事業を国内外で展開する総合旅行グループです。
■(1) 会社概要
同社は1941年に設立された関急旅行社を起源とし、1955年に近畿日本ツーリストへ商号を変更しました。1995年にはクラブツーリズム事業本部が発足し、2013年に同事業を完全子会社化して純粋持株会社体制へ移行、現在の社名となりました。2026年には主要事業会社の一社化方針を公表しています。
現在の従業員数は連結で3,305名、単体で92名体制です。筆頭株主は親会社である近鉄グループホールディングスで過半数の株式を保有しており、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 近鉄グループホールディングス | 53.56% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(近畿日本鉄道退職給付信託口) | 6.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は小山佳延氏が務めています。社外取締役は4名選任されており、取締役全体の約27%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小山佳延 | 取締役社長(代表取締役) | 1982年同社入社。クラブツーリズム取締役社長や同社専務取締役などを経て、2024年より現職。 |
| 三宅貞行 | 取締役副社長(代表取締役)経理部および監査部担当 | 1983年近畿日本鉄道入社。近鉄不動産取締役や近畿日本鉄道取締役常務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 中之坊健介 | 専務取締役(代表取締役)社長室長、コンプライアンス改革本部長、地域共創推進室 | 1987年近畿日本鉄道入社。近鉄不動産専務取締役などを経て、2023年より現職。 |
| 片本義也 | 常務取締役コンプライアンス改革本部副本部長、総務CSR部担当 | 1986年同社入社。近畿日本ツーリスト九州取締役などを経て、2024年より現職。 |
| 武藤綾子 | 常務取締役人事部担当 | 1986年同社入社。クラブツーリズム取締役などを経て、2024年より現職。 |
| 米田昭正 | 取締役会長 | 1982年近畿日本鉄道入社。近畿日本鉄道取締役常務執行役員や同社取締役社長などを経て、2024年より現職。 |
| 永﨑安基 | 取締役 | 1988年同社入社。近畿日本ツーリスト取締役や近鉄HRパートナーズ常務取締役などを経て、2025年より現職。 |
| 小林哲也 | 取締役 | 1968年近畿日本鉄道入社。近鉄グループホールディングス取締役相談役や同社取締役会長などを経て、2019年より現職。 |
社外取締役は、髙橋洋(民間資金等活用事業推進機構取締役会長兼社長)、堀泰則(ひだホテルプラザ取締役会長)、河崎雄亮(河崎雄亮公認会計士事務所開業)、藤田清文(弁護士法人淀屋橋・山上合同入所)です。
2. 事業内容
同社グループは旅行業を単一セグメントとして事業を展開しています。
■(1) 個人旅行・クラブツーリズム事業
新聞広告や会員情報誌、Webを通じた個人旅行商品の企画販売を展開しています。また、会員同士の交流会や勉強会、各種イベントやツアーを実施する事業など、多様なニーズに応える独自の旅行関連サービスを提供しています。
旅行代金やツアー参加費を顧客から受け取ることで収益を獲得しています。この領域の事業運営は、主にクラブツーリズムが担当しています。
■(2) 団体旅行・MICE事業
企業や学校、官公庁、自治体などを対象とした国内および海外の団体旅行の企画販売を行っています。また、MICE事業やスポーツ・ウエルネス事業のほか、地域共創などの受託業務や店舗での対面による個人旅行販売も手掛けています。
法人顧客や自治体からの旅行代金や各種イベントの業務委託料を主な収益源としています。この事業は、主に近畿日本ツーリストが運営を担っています。
■(3) Web専門・訪日旅行事業
個人旅行のWeb販売事業や商品企画事業に特化し、ダイナミックパッケージ商品や宿泊商品の企画販売を中心に展開しています。また、訪日個人市場向けのWeb販売事業や訪日団体旅行の企画販売の一部も担っています。
オンラインを通じた旅行代金や宿泊手配の手数料を収益の柱としています。この事業の運営は、主に近畿日本ツーリストブループラネットが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、社会情勢の変動等で一時的な落ち込みがあったものの、その後は着実な回復傾向を示しています。直近の期では訪日旅行需要の拡大や海外旅行の回復が寄与し、大幅な増収増益を達成するなど、堅調な成長を続けています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1400億円 | 2522億円 | 2554億円 | 2745億円 | 2971億円 |
| 経常利益 | -39億円 | 121億円 | 80億円 | 68億円 | 76億円 |
| 利益率(%) | -2.8% | 4.8% | 3.1% | 2.5% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 22億円 | -1億円 | 9億円 | 86億円 | 116億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と売上総利益はともに順調に拡大しており、収益基盤の強化が進んでいます。システムや人的資本への投資を拡大しつつも、営業利益は安定して黒字を確保しており、中長期的な成長に向けた事業構造改革の成果が表れています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2745億円 | 2971億円 |
| 売上総利益 | 529億円 | 562億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.3% | 18.9% |
| 営業利益 | 60億円 | 61億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が269億円(構成比54%)、販売諸経費が65億円(同13%)、システム経費が57億円(同11%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動によるキャッシュ・フローがプラスであり、投資および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっているため、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の財務状態と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 71億円 |
| 投資CF | -9億円 | -31億円 |
| 財務CF | -2億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、グループのパーパス(存在意義)として「まだ見ぬところへ、まだ見ぬ明日へ」を掲げています。お客さまからの信頼を事業活動の原点とし、知らない世界へ案内する旅行会社としての役割を果たすとともに、旅そのものを進化させ、旅行に限らない新たな価値を創造・提供することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、「顧客志向」「本物志向」および「未来志向」を重要なキーワードとして掲げ、社会の急速な環境変化に自ら適応する「変化対応企業」への転換を重視する文化を持っています。また、多様な人材が活躍できるようダイバーシティの推進やワークライフバランスの実現を推進し、新たな事業を創出する柔軟な組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、安定的に利益を創出できる体制の構築を目指し、営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益を重視しています。また、財務の安定性や資本効率を測る指標として自己資本比率を目標指標に設定し、財務の健全性向上に向けた取り組みを進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「地域共創事業」と「訪日旅行事業」を成長の柱に位置づけています。2027年には主要事業会社を一社化し、経営資源と意思決定を統合することで変化への対応力を高める計画です。また、自治体との連携によるDMC事業の確立や、旅行の枠を超えた次世代の「未来創造事業」の育成を推進しています。
* 2030年までに世界30か所に拠点を設置
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、パーパスを具現化するために、社内教育機関「KNT-CTアカデミー」を基軸とした体系的な人材育成を推進しています。適材適所の人材配置によるグループ全体の生産性向上を図るほか、ジョブ型要素を反映した人事制度の拡充やタレントマネジメントの活用により、次世代を担う多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.5歳 | 18.0年 | 6,548,000円 |
※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.8% |
| 男性育児休業取得率 | 110.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 104.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒社員に占める入社後3か年以内の退職率(21.9%)、管理職におけるビジネスコンプライアンス検定資格取得率(94.5%)、KNT-CTアカデミー主催人間力研修対象者に占める受講割合(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 交通機関・宿泊施設の予約手配ミス等の事業運営リスク
旅行商品の手配において、重要な運輸機関や宿泊施設の予約ができない事態や、委託先が事故等を起こした場合、損害賠償請求や行政処分を受ける恐れがあります。各種マニュアルの整備や訓練を行っていますが、手配ミス等が発生した場合は、ブランドイメージが毀損し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 旅行予約を支える情報システムとセキュリティリスク
旅行予約やチケット発券など多くの業務を情報システムに依存しているため、システムの重大な故障やサイバー攻撃によるシステムダウンが生じた場合、長時間の業務停止を招く恐れがあります。また、大量の個人情報を保有しており、万一の漏洩時には信用失墜による売上減少のリスクがあります。
■(3) 国内人口の減少と景気変動に関わるリスク
売上高に占める国内顧客の割合が高いため、少子高齢化に伴う国内市場の縮小が中長期的な懸念材料です。また、旅行需要は個人の余暇を目的にしているため、景気悪化による個人消費の低迷や物価上昇に強く影響を受けます。同社はインバウンド強化や法人需要の取り込みで影響緩和に努めています。



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