KNT-CTホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KNT-CTホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する旅行会社グループの持株会社です。「近畿日本ツーリスト」「クラブツーリズム」を中核に、国内・海外旅行や訪日旅行事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、旅行需要の回復や訪日旅行の好調により、売上高2,745億円(前期比7.5%増)の増収、最終利益は77億円の増益となりました。


※本記事は、KNT-CTホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KNT-CTホールディングスってどんな会社?


近畿日本ツーリストとクラブツーリズムという2大旅行会社を傘下に持つ、近鉄グループの旅行事業持株会社です。

(1) 会社概要


1941年に関西急行鉄道(現近鉄グループホールディングス)が出資し旅行業を開始しました。1955年に近畿日本ツーリストが発足し、2013年には持株会社体制へ移行して現商号に変更、同時にクラブツーリズムを完全子会社化しました。その後、地域会社の再編や統合を経て、現在は旅行事業を中心としたグループ経営を行っています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は3,183名(単体89名)です。筆頭株主は同社の親会社である近鉄グループホールディングスで、第2位は退職給付信託口としての信託銀行です。第3位も信託銀行の信託口となっています。

氏名 持株比率
近鉄グループホールディングス 53.56%
日本マスタートラスト信託銀行(近畿日本鉄道株式会社退職給付信託口) 6.95%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は小山佳延氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
米田 昭正 取締役会長(代表取締役) 1982年近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。同社取締役常務執行役員などを経て2019年よりKNT-CTホールディングス取締役社長。2024年6月より現職。
小山 佳延 取締役社長(代表取締役) 1982年同社入社。クラブツーリズム取締役社長、同社専務取締役などを歴任。2024年6月より現職。
三宅 貞行 専務取締役(代表取締役)経理部および監査部担当 1983年近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。同社取締役常務執行役員などを経て2020年6月より現職。
中之坊 健介 専務取締役社長室長、コンプライアンス改革本部長、地域共創推進室および訪日事業推進室担当 1987年近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。近鉄不動産専務取締役などを経て2023年6月より現職。
片本 義也 常務取締役コンプライアンス改革本部副本部長、コーポレート・コミュニケーション部担当 1986年同社入社。近畿日本ツーリスト九州取締役、同社執行役員などを経て2024年6月より現職。
武藤 綾子 常務取締役人事部担当 1986年同社入社。クラブツーリズム取締役、同社取締役などを経て2024年6月より現職。
瓜生 修一 取締役 1982年同社入社。近畿日本ツーリストブループラネット取締役社長などを経て、2023年9月より近畿日本ツーリスト取締役社長。2024年6月より現職。
小林 哲也 取締役 1968年近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。同社取締役社長、取締役会長グループCEOなどを歴任。2024年6月より同社取締役相談役。


社外取締役は、髙橋洋(日本政策投資銀行元取締役常務執行役員)、堀泰則(ひだホテルプラザ取締役会長)、河崎雄亮(公認会計士)、藤田清文(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「旅行業」の単一セグメントですが、事業の内容や収益の性質に基づき「旅行事業」および「旅行関連事業」を展開しています。

(1) 旅行事業


主に「クラブツーリズム」による個人旅行商品の企画販売、「近畿日本ツーリスト」による団体旅行や個人旅行の販売、「近畿日本ツーリストブループラネット」によるWeb販売を行っています。また、訪日旅行や地域共創事業にも取り組んでおり、顧客は個人から企業、学校、自治体まで多岐にわたります。

収益源は、顧客からの旅行代金や、手配旅行における取扱手数料などが中心です。運営は主に、クラブツーリズム、近畿日本ツーリスト、近畿日本ツーリストブループラネットなどが担っています。

(2) 旅行関連事業


旅行業以外の周辺事業として、商事・保険事業、業務受託事業、カタログ・広告制作事業、アシスタンス事業、人材派遣事業などを展開しています。旅行者の利便性向上や、旅行事業とのシナジー創出を図っています。

収益源は、商品販売代金、業務受託料、広告制作料などが挙げられます。運営は、近畿日本ツーリスト商事やツーリストインターナショナルアシスタンスサービスなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2022年3月期にかけては厳しい業績となりましたが、2023年3月期に黒字転換を果たしました。直近の2025年3月期は、売上高が2,745億円に達し、増収を達成しています。利益面では、経常利益率が2%台で推移しており、安定的な黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 879億円 1,400億円 2,522億円 2,554億円 2,745億円
経常利益 -167億円 -39億円 121億円 80億円 68億円
利益率(%) -19.0% -2.8% 4.8% 3.1% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -228億円 22億円 -1億円 9億円 86億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は2,554億円から2,745億円へ増加し、売上総利益も520億円から529億円へと微増しました。一方、営業利益は73億円から60億円へと減少しており、営業利益率は2.8%から2.2%へ低下しました。売上原価の増加等が利益率に影響を与えています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,554億円 2,745億円
売上総利益 520億円 529億円
売上総利益率(%) 20.4% 19.3%
営業利益 73億円 60億円
営業利益率(%) 2.8% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が258億円(構成比55%)、販売諸経費が64億円(同14%)を占めています。売上原価については内訳データがありません。

(3) セグメント収益


旅行事業は、海外旅行の回復や訪日旅行の好調により売上が増加しました。一方、旅行関連事業は、公務受託事業の減少などにより減収となりました。全体としては旅行事業の伸びが寄与し、連結売上高は増加しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
旅行事業 2,244億円 2,577億円
旅行関連事業 308億円 164億円
連結(合計) 2,554億円 2,745億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっていることから、本業で得た資金で投資や借入返済を行っている健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 140億円 42億円
投資CF -1.0億円 -9.4億円
財務CF -0.4億円 -2.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、パーパス(存在意義)として「まだ見ぬところへ、まだ見ぬ明日へ」を掲げています。旅そのものを進化させ、顧客を知らない世界へ案内する旅行会社としての役割に加え、旅に限らない新しい価値を創造・提供することを目指しています。また、社会課題の解決に寄与し、真に社会から必要とされる企業グループになることを目指しています。

(2) 企業文化


コンプライアンス改革を通じた内部統制システムの強化に加え、グループ全体の企業風土改革とコンプライアンス意識の涵養に継続的に取り組んでいます。常識にとらわれない発想で挑戦を続け、新たな価値と感動を生み出す姿勢を重視しています。顧客からの信頼を事業活動の原点に据え、全社一丸となってより良い明日を創る文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益を重視するとともに、財務の安定性や効率性を測る指標として、自己資本比率を目標としています。安定的に利益を出せる体質の構築を目指し、不測の事態にも耐えうる資本の厚みを維持しつつ、効率性にも配慮した経営を進める方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


従来の旅行事業に加え、「地域共創事業」と「訪日旅行事業」を成長領域として定め、取り組みを強化しています。地域共創では、グループ会社の強みを活かしたDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)として観光サービスを提供します。訪日旅行では、オンライン販売や多言語サイトの展開、海外拠点の再構築を進めています。

* 新規事業の創出(検索サイト「Chill+」の運営など)
* 海外での新規事業(米国でのおにぎり販売など)
* 大阪・関西万博関連のツアー販売強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


パーパスを具現化するため、KNT-CTアカデミーでの体系的な人材育成や、グループ全体での人材配置の最適化を推進しています。ジョブ型要素を取り入れた人事制度の定着・拡充や、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進により、次世代を担う人材の確保と育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.2歳 21.0年 7,080,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.2%
男性育児休業取得率 81.8%
男女賃金差異(全労働者) 68.6%
男女賃金差異(正規) 73.8%
男女賃金差異(非正規) 94.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職におけるビジネスコンプライアンス検定資格取得率(89.1%)、育児休職からの復職率(89.6%)、行動規範eラーニング受講率(97.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害、テロ、感染症等に関わるリスク


国内外で大規模な地震、台風、豪雨、テロ、重大な感染症の拡大などが発生した場合、旅行のキャンセルや自粛、出控えが生じ、旅行需要が長期間消失することで、グループの業績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制に関わるリスク


旅行業法などの関連法令を遵守する体制を整備していますが、万一重大な法令違反が発生した場合、行政処分による営業停止やブランドイメージの毀損を招き、事業展開や業績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 事業運営に関わるリスク


手配ミスや業務委託先の事故、法令違反等が発生した場合、損害賠償請求や行政処分を受ける恐れがあります。これらにより業務品質への信頼が低下し、ブランドイメージが損なわれることで、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。