サンリツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンリツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場するサンリツは、梱包、運輸、倉庫事業を中心とした総合物流企業です。工作機械や精密機器などの特殊梱包に強みを持ちます。直近の業績は、売上高が201億円で増収、営業利益は10億円で増益となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となっています。


※本記事は、株式会社サンリツ の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンリツってどんな会社?


梱包事業を中核に、運輸事業、倉庫事業を展開する物流企業です。特に工作機械や医療機器等の梱包技術に定評があります。

(1) 会社概要


1948年3月に三立社として設立され、梱包・運送業を開始しました。1987年9月に株式を店頭公開し、1999年3月に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2007年3月に同市場第一部へ指定替えとなり、2022年4月の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社グループは連結従業員数449名、単体従業員数397名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は従業員持株会であるサンリツ共栄会で、第2位は三井住友銀行、第3位は外資系金融機関のHSBC(香港上海銀行)となっています。

氏名 持株比率
サンリツ共栄会 4.34%
三井住友銀行 3.28%
THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LIMITED-HONG KONG PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8028-394841 3.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長社長執行役員は柴本守人氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
柴本守人 代表取締役社長社長執行役員 1997年同社入社。人事総務部長、業務部長等を経て、2020年執行役員、2023年取締役執行役員国内事業本部長。2025年6月より現職。
三浦康英 取締役会長 1987年同社入社。取締役常務執行役員兼事業本部長等を経て、2009年代表取締役社長執行役員。2025年6月より現職。
平輪貢 取締役常務執行役員国内事業本部長兼グループ統括本部長 1982年同社入社。管理本部経理部長、取締役常務執行役員支援本部長等を経て、2023年グループ統括本部長兼SANRITSU LOGISTICS AMERICA Inc. CEO。2025年6月より現職。
尾留川一仁 取締役(監査等委員)(常勤) 1984年同社入社。人事・総務部長、国際事業本部長、管理本部長等を経て、2021年取締役常務執行役員。2025年6月より現職。


社外取締役は、戸谷左織(元セディナ債権回収常務執行役員)、吉能平(銀座共同法律事務所パートナー弁護士)、宮川由香(元沖電気工業常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「梱包事業」「運輸事業」「倉庫事業」「賃貸ビル事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

梱包事業


工作機械、精密機器、医療機器、電子・通信機器、硝子製品などの製品に対し、その特性に合わせた包装・梱包サービスを提供しています。また、木箱製造や顧客の工場内での荷役作業も行っています。

収益は、顧客からの梱包作業料や包装資材の販売代金から得ています。運営は主にサンリツ、連結子会社の千葉三立梱包運輸、および米国子会社のSANRITSU LOGISTICS AMERICA Inc.が行っており、一部業務を同社が受託または委託する形態をとっています。

運輸事業


電子・通信機器、硝子製品、工作機械、医療機器などのトラック輸送を行っています。梱包事業と連携し、製品の集荷から梱包、輸送までを一貫して提供できる体制を整えています。

収益は、顧客からの貨物運送料から得ています。運営はサンリツ、千葉三立梱包運輸、およびSANRITSU LOGISTICS AMERICA Inc.が行っており、一部業務を同社が受託または委託しています。

倉庫事業


顧客の製品や資材の保管業務、および入出庫管理業務を行っています。また、倉庫施設の賃貸も手掛けています。

収益は、保管料、入出庫料、および倉庫賃貸料から得ています。運営はサンリツ、千葉三立梱包運輸、およびSANRITSU LOGISTICS AMERICA Inc.が行っています。

賃貸ビル事業


同社が保有する不動産を活用し、事務所および共同住宅の賃貸事業を行っています。

収益は、テナントおよび入居者からの賃料収入から得ています。運営はサンリツが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね200億円前後で推移しており、直近の2025年3月期には201億円に達しました。利益面では、2023年3月期に高い水準を記録した後、翌期に減少しましたが、直近では営業利益・経常利益ともに回復傾向にあります。一方で、当期純利益は特別損失の計上等により減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 152億円 185億円 203億円 194億円 201億円
経常利益 5億円 11億円 12億円 8億円 8億円
利益率(%) 3.4% 6.0% 5.9% 4.1% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 7億円 8億円 3億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も微増しました。営業利益については、半導体製造装置等の取り扱い増や子会社における利益増加額の計上などにより増加し、営業利益率は5.1%に改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 194億円 201億円
売上総利益 44億円 44億円
売上総利益率(%) 22.5% 21.9%
営業利益 9億円 10億円
営業利益率(%) 4.5% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が13億円(構成比40%)、役員報酬が3億円(同8%)を占めています。売上原価についてはデータがありません。

(3) セグメント収益


主力の梱包事業は、半導体製造装置などの好調により増収増益となりました。運輸事業は医療機器や小型精密機器の取扱増加と価格転嫁により大幅な増収増益を達成しました。倉庫事業は新倉庫稼働で増収も、開設費用増により減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
梱包事業 139億円 141億円 15億円 17億円 12.4%
運輸事業 25億円 29億円 1億円 3億円 9.2%
倉庫事業 27億円 29億円 6億円 4億円 14.5%
賃貸ビル事業 2億円 3億円 1億円 1億円 29.3%
連結(合計) 194億円 201億円 9億円 10億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 17億円
投資CF -10億円 -12億円
財務CF -7億円 11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.2%で市場平均(スタンダード市場非製造業48.5%)をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「経営品質の向上」を事業活動の中核に据え、「お客様の意思を尊重し、お客様にとってより品質の高いロジスティクス・サービスを提供する」ことで豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。また、「美しく魅力のある会社 サンリツ」の実現を掲げています。

(2) 企業文化


「すべての人々の人権を尊重し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進します」という方針のもと、安全・安心で働きがいのある職場環境の実現を目指しています。また、ステークホルダーと積極的にコミュニケーションを取ることで「物流品質の向上」につなげる姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営の主たる指標として「売上高営業利益率」を用いています。安定的な成長を維持するための収益基盤づくりが不可欠であるとの認識のもと、人材採用・育成への投資などを勘案し、以下の目標を掲げています。

* 2026年3月期:売上高営業利益率4.5%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「オペレーションからソリューションへ」をビジョンに掲げ、従来の作業品質に加え、顧客との対話を通じて真のニーズを引き出し解決するソリューション力の強化を目指しています。ターゲット市場をB to B物流と定め、工作機械・精密機器・医療機器分野での価値提供を強化します。

* サステナビリティへの取り組みとして、ダイバーシティ&インクルージョンの推進。
* 省人化・省力化を目的とした物流DXの推進。
* 米国子会社への経営資源集中(サバンナ港倉庫の稼働による物流網拡大)。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、すべての人々の人権を尊重し、個性を多様性としてプラスの力にしていく方針です。新卒採用を基軸としつつ中途採用で補完し、公平・公正な評価制度、各種研修、育休・時短制度、専門職制度等を充実させることで、多様で柔軟な働き方ができる環境を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 12.5年 5,674,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.9%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 82.9%
男女賃金差異(正規雇用) 82.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 83.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、各種研修参加者(214名)、障がい者雇用比率(2.8%)、従業員1名あたり年間有給休暇取得日数(11.39日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 労働環境におけるリスク


顧客製品の需要急拡大時に長時間労働が発生し、従業員の健康が悪化する可能性があります。これに対し、安全衛生委員会によるパトロールや職場環境アンケートを実施し、環境改善や人材確保による時間外労働削減に取り組んでいます。

(2) 気候変動におけるリスク


予期せぬゲリラ豪雨や台風、地震などの自然災害により、物流設備が破損・浸水し、サービスが停止するリスクがあります。対応策として、マニュアルの見直し、ハザードマップの掲示、災害対策設備の設置などを進めています。

(3) 取扱製品群におけるリスク


主要取扱製品である工作機械と大型精密機器は需要の変動サイクルがあり、後退期には売上が著しく減少する恐れがあります。顧客情報の事前把握や事業所間の応援体制構築、ソリューション提案による利益率向上などで対応しています。

(4) 人材確保と育成におけるリスク


労働人口減少の中、梱包事業の人材確保が困難になるリスクや、人材流出による成長への影響が懸念されます。新卒・中途採用の強化、定着率向上のための環境整備、各種研修による人材育成に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。