サンリツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンリツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンリツは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、工作機械や精密機器などの梱包事業、運輸事業、倉庫事業を中心とした物流事業を展開する企業です。直近の業績では、国内での工作機械等の取扱いが好調に推移したことにより増収を達成し、費用抑制も寄与して増益となるなど、安定した成長を継続しています。


※本記事は、株式会社サンリツ の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンリツってどんな会社?


サンリツは、梱包、運輸、倉庫を軸とした高品質な物流サービスを提供する物流企業です。

(1) 会社概要


1948年に設立されて梱包や運送業を開始し、1976年に千葉三立梱包運輸を設立しました。1987年に株式を店頭公開し、1999年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2007年には市場第一部へ指定されるなど規模を拡大し、2010年には米国子会社を設立して海外展開も推進しています。

従業員数は連結で456名、単体で404名です。大株主については、筆頭株主がSBI証券で、第2位はスノーボールキャピタルを常任代理人とする重田光時氏、第3位は三井住友銀行となっています。

氏名 持株比率
SBI証券 9.59%
重田光時 8.39%
三井住友銀行 3.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長社長執行役員は柴本守人氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
柴本守人 代表取締役社長社長執行役員 1997年同社入社。人事部長、業務部長、国内事業本部長などを経て2025年6月より現職。
三浦康英 取締役会長 1985年池田梱包運輸入社、1987年同社入社。代表取締役社長などを経て2025年6月より現職。
平輪貢 取締役常務執行役員事業本部長 1982年同社入社。千葉三立梱包運輸代表取締役社長やグループ統括本部長等を経て2025年7月より現職。
尾留川一仁 取締役(監査等委員)(常勤) 1984年同社入社。国際事業本部長や管理本部長などを歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、戸谷左織(元セディナ常務取締役)、吉能平(現銀座共同法律事務所パートナー)、宮川由香(元沖電気工業常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「梱包事業」「運輸事業」「倉庫事業」「賃貸ビル事業」を展開しています。

梱包事業


電子・通信機器、工作機械、医療機器などの各種製品の梱包や木箱製造等を提供しており、多様な顧客ニーズに対応した梱包サービスを展開しています。

顧客から梱包作業や流通加工作業などの対価として料金を受け取ります。運営は同社のほか、子会社の千葉三立梱包運輸や米国子会社が担当しています。

運輸事業


電子・通信機器、硝子製品、工作機械、医療機器などの製品をトラックで輸送するサービスを提供しており、安全かつ確実な運送を行っています。

顧客から貨物の運送等に伴うサービス対価として運送料を受け取ります。運営は同社を中心に、千葉三立梱包運輸および米国子会社が行っています。

倉庫事業


顧客の荷物の保管や入出庫作業、さらには倉庫の賃貸などを行っており、物流拠点として製品の安全な管理と効率的な運用を支援しています。

顧客から一定期間の保管料や入出庫の作業料、施設の賃貸料などを受け取ります。運営は同社、千葉三立梱包運輸、米国子会社が担っています。

賃貸ビル事業


自社で保有する事務所および共同住宅の賃貸事業を展開しており、主に東京都などの地域において不動産の有効活用を行っています。

テナントなどの入居者から、オフィスや共同住宅の利用に伴う賃貸収益を受け取ります。この事業の運営は同社が単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は180億円台から200億円台へと拡大傾向にあります。経常利益は一時的に減少した時期もありましたが、直近では回復基調を示しており、売上・利益ともに安定した水準を維持しつつ緩やかな成長を続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 185億円 203億円 194億円 201億円 205億円
経常利益 11億円 12億円 8億円 8億円 10億円
利益率(%) 6.0% 5.9% 4.1% 4.0% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 8億円 3億円 1億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から微増の205億円となりました。売上総利益および営業利益は前期と同水準を確保しており、売上総利益率は20%台、営業利益率は5%程度で安定的に推移しています。堅実な事業運営により、着実な収益基盤を維持していることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 201億円 205億円
売上総利益 44億円 44億円
売上総利益率(%) 21.9% 21.3%
営業利益 10億円 10億円
営業利益率(%) 5.1% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が13億円(構成比38%)、役員報酬および法定福利費がそれぞれ3億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の梱包事業は、国内での工作機械や電力変換装置の取り扱いが好調に推移したことで増収を牽引しました。倉庫事業も電力変換装置の取り扱い増により売上を伸ばしていますが、運輸事業や賃貸ビル事業はやや低調な推移となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
梱包事業 141億円 144億円
運輸事業 29億円 28億円
倉庫事業 29億円 31億円
賃貸ビル事業 3億円 2億円
連結(合計) 201億円 205億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金に加えて借入による資金調達を行い、設備などへ積極的に投資する「積極型」の状況となっています。また、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.4%となっており、いずれもスタンダード市場の平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 17億円 13億円
投資CF -12億円 -45億円
財務CF 11億円 18億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は事業活動の中核に「経営品質の向上」を据え、「お客様の意思を尊重し、お客様にとってより品質の高いロジスティクス・サービスを提供する」ことで豊かな社会の実現に貢献するという経営理念を掲げています。また、「美しく魅力のある会社 サンリツ」の実現を組織の目指すべき姿として定めています。

(2) 企業文化


同社は、創業以来培ってきた高い技術力や確実な作業品質を土台とした「オペレーション」の力を重視しています。また、高いサービス品質を支える競争力の源泉として「顧客のためにがんばる」という企業文化が根付いており、これを体現する従業員一人ひとりの誠実な働きを通じて、顧客の期待に応える組織風土を有しています。

(3) 経営計画・目標


安定的な成長を維持するためには確固とした収益基盤づくりが不可欠であるとの認識のもと、経営の主たる指標として売上高営業利益率を用いています。2026年5月に策定した3ヵ年の中期経営計画(2027年3月期〜2029年3月期)において、以下の数値目標を掲げています。

- 売上高営業利益率:6.1%

(4) 成長戦略と重点施策


同社にしかできないソリューションを提案し、戦略的パートナーを目指すための取り組みを推進しています。中長期的なビジョンである「オペレーションからソリューションへ」のもと、既存アセットの最大活用による収益力向上やサステナビリティの推進を通じた企業価値向上に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、すべての人々の人権を尊重し、一人ひとりの個性を多様性としてプラスの力にしていくことを基本方針としています。「美しく魅力のある会社」の実現に向けて、安全・安心でやりがいのある職場環境を構築・維持し、公平・公正な評価制度や各種研修制度、育休・時短制度などの充実を図ることで、多様で柔軟な働き方を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 12.7年 6,023,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 84.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 92.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員1名あたり年間有給休暇取得日数(12.71日)、従業員1名あたり月間残業時間(21.07時間)、障がい者雇用比率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 労働環境の悪化リスク


顧客の製品需要が短期的に急拡大した場合、物流現場において長時間労働が発生し、従業員の健康状態が悪化するリスクがあります。同社は安全衛生委員会による安全パトロールの実施や事業所間の応援体制構築などを通じて、働きやすい環境の整備に取り組んでいます。

(2) 人材の確保および育成に関するリスク


労働人口が減少する中で、主要事業である梱包事業はDX導入へのハードルが高く、必要な人材の確保が困難になり事業活動に制約が生じるリスクがあります。同社は人事制度の見直しや新たな研修計画の運用などを通じ、人材の定着と育成を推進しています。

(3) 特定取扱製品の需要変動リスク


同社が取り扱う主要製品群のうち、工作機械や大型精密機器は周期的に需要の拡大期と後退期が訪れる特性があります。需要の後退期に入った場合は売上高が著しく減少するリスクがあるため、顧客の生産情報を早期に把握し、効率的な体制構築を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。