※本記事は、三菱HCキャピタル株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三菱HCキャピタルってどんな会社?
リース事業を核に、環境エネルギーや航空機、ロジスティクスなどグローバルに資産ビジネスを展開する総合金融会社です。
■(1) 会社概要
1971年にダイヤモンドリースとして設立。2007年にダイヤモンドリースとUFJセントラルリースが合併し、三菱UFJリースへ商号変更しました。2016年に日立キャピタルと資本業務提携を締結し、2021年4月に両社が合併して現在の三菱HCキャピタルが発足しました。同年11月には米国のコンテナリース会社CAI International, Inc.を完全子会社化するなど、グローバルな事業展開を進めています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は8,380名、単体従業員数は2,102名です。筆頭株主は総合商社の三菱商事で、第2位はメガバンクグループの三菱UFJフィナンシャル・グループです。同社は三菱グループおよび日立グループとの強固なパートナーシップを基盤としています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 18.36% |
| 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 14.48% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員は久井大樹氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 久井 大樹 | 代表取締役社長執行役員 | 1985年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行欧州本部長、常務執行役員、三菱UFJ銀行専務執行役員等を経て、2021年同社副社長執行役員に就任。2023年4月より現職。 |
| 柳井 隆博 | 取締役会長 | 1982年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行専務執行役員等を経て、2017年三菱UFJリース(現同社)社長に就任。2021年同社代表取締役社長執行役員を経て、2023年4月より現職。 |
| 松永 愛一郎 | 代表取締役副社長執行役員 | 1986年三菱商事入社。同社常務執行役員電力ソリューショングループCEO等を経て、2024年4月同社副社長執行役員に就任。2024年6月より現職。 |
| 安栄 香純 | 取締役副社長執行役員 | 1985年日立リース(現同社)入社。日立キャピタル執行役専務CMO等を経て、2021年同社取締役専務執行役員に就任。2021年5月より現職。 |
| 佐藤 晴彦 | 取締役常務執行役員 | 1989年三菱商事入社。北米三菱商事会社CFO、三菱商事電力ソリューション管理部長等を経て、2021年4月同社取締役常務執行役員に就任し現職。 |
| 柴 義隆 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1986年東海銀行入行。三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務グループCAO等を経て、2024年5月同社顧問に就任。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、佐々木百合(明治学院大学経済学部教授)、川村佳世子(日本テラデータ執行役員)、近藤祥太(三菱商事常務執行役員)、中田裕康(一橋大学名誉教授)、金子裕子(金融庁企業会計審議会委員)、斉藤雅之(DIC顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「カスタマーソリューション」「海外地域」「環境エネルギー」「航空」「ロジスティクス」「不動産」および「モビリティ」事業等を展開しています。
■(1) カスタマーソリューション
法人・官公庁向けにファイナンスソリューション、省エネソリューション、ベンダーと提携した販売金融、不動産リース、金融サービスなどを提供しています。
収益は、顧客からのリース料やファイナンス収益等から得ています。運営は、主に同社および連結子会社の株式会社日医リース、三菱HCビジネスリース株式会社などが行っています。
■(2) 海外地域
欧州・米州・中国・ASEAN地域において、ファイナンスソリューション事業やベンダーと提携した販売金融事業を展開しています。
収益は、海外顧客からのファイナンス収益等から得ています。運営は、Mitsubishi HC Capital UK PLC、Mitsubishi HC Capital America, Inc.などの海外現地法人が行っています。
■(3) 環境エネルギー
再生可能エネルギー事業および環境関連ファイナンスソリューション事業を展開しており、太陽光・風力発電事業や脱炭素ソリューションを提供しています。
収益は、売電収入やファイナンス収益等から得ています。運営は、主に同社および連結子会社の三菱HCキャピタルエナジー株式会社などが行っています。
■(4) 航空
航空機リース事業および航空機エンジンリース事業を展開しており、世界の航空会社等へ機体やエンジンのリースを提供しています。
収益は、航空会社等からのリース料収入や機体売却益等から得ています。運営は、JSA International Holdings, L.P.やEngine Lease Finance Corporationなどの海外子会社が行っています。
■(5) ロジスティクス
海上コンテナリース事業および鉄道貨車リース事業を展開しており、海運会社や鉄道会社等へ物流機器を提供しています。
収益は、顧客からのリース料収入やコンテナ売却益等から得ています。運営は、CAI International, Inc.などの海外子会社が行っています。
■(6) 不動産
不動産ファイナンス事業、不動産投資事業、不動産アセットマネジメント事業を展開しており、商業不動産への投融資や保有不動産の賃貸等を行っています。
収益は、テナントからの賃貸料収入や不動産売却益、ファイナンス収益等から得ています。運営は、主に同社および連結子会社の三菱HCキャピタルリアルティ株式会社などが行っています。
■(7) モビリティ
オートリース事業および付帯サービスを展開しており、車両管理やEV関連サービスなどを提供しています。
収益は、顧客からのリース料収入やサービス料等から得ています。運営は、主に持分法適用関連会社の三菱オートリース株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に2022年3月期に大きく伸長した後も堅調に推移しています。経常利益も順調に拡大し、利益率は高水準を維持しています。当期純利益も増益基調が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,477億円 | 1兆7,656億円 | 1兆8,962億円 | 1兆9,506億円 | 2兆908億円 |
| 経常利益 | 650億円 | 1,172億円 | 1,461億円 | 1,516億円 | 1,936億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 6.6% | 7.7% | 7.8% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 553億円 | 994億円 | 1,162億円 | 1,238億円 | 1,352億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率、営業利益率ともに改善傾向にあり、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,506億円 | 2兆908億円 |
| 売上総利益 | 3,801億円 | 4,626億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.5% | 22.1% |
| 営業利益 | 1,462億円 | 1,871億円 |
| 営業利益率(%) | 7.5% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料・賞与・手当が778億円(構成比28%)、貸倒引当金繰入額が528億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
航空、ロジスティクス、不動産等のセグメントが大幅な増益となり全体を牽引しました。特に航空事業はリース料収入や売却益の増加により利益が大きく拡大しています。海外地域セグメントは貸倒関連費用の増加等により減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| カスタマーソリューション | 1兆437億円 | 9,689億円 | 382億円 | 369億円 | 3.8% |
| 海外地域 | 4,282億円 | 4,941億円 | 166億円 | 27億円 | 0.5% |
| 環境エネルギー | 498億円 | 460億円 | 73億円 | 48億円 | 10.4% |
| 航空 | 2,083億円 | 3,219億円 | 273億円 | 472億円 | 14.7% |
| ロジスティクス | 1,247億円 | 1,362億円 | 178億円 | 232億円 | 17.0% |
| 不動産 | 906億円 | 1,167億円 | 119億円 | 122億円 | 10.5% |
| モビリティ | 38億円 | 56億円 | 18億円 | 31億円 | 55.3% |
| 調整額 | 16億円 | 16億円 | 28億円 | 51億円 | 327.5% |
| 連結(合計) | 1兆9,506億円 | 2兆908億円 | 1,238億円 | 1,352億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
三菱HCキャピタルは、財務活動で資金を調達し、営業活動と投資活動で資金を使用しています。営業活動では、新規案件の積み上げや賃貸資産・貸付債権の取得により資金を使用しました。投資活動では、投資有価証券の取得等により資金を使用しました。財務活動では、直接・間接調達により資金を獲得し、配当金の支払い等を行いました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -491億円 | -2,969億円 |
| 投資CF | 1,433億円 | -970億円 |
| 財務CF | -2,230億円 | 3,536億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「アセットの潜在力を最大限に引き出し社会価値を創出することで、持続可能で豊かな未来に貢献します。」という経営理念を掲げています。また、「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」を10年後のありたい姿として定めています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念実現のために社員が持つべき価値観・行動として、6つの行動指針(チャレンジ、デジタル、コミュニケーション、ダイバーシティ、サステナビリティ、インテグリティ)を定めています。未来志向での挑戦や、多様性の尊重、高い倫理観を持つことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度から3カ年の中期経営計画(2025中計)を推進しています。「ホップ」・「ステップ」・「ジャンプ」の3段階のうち「ホップ」と位置づけ、将来の飛躍に向けた「種まき」と「足場固め」に取り組んでいます。
* 親会社株主に帰属する当期純利益:1,600億円(2026年3月期)
* ROA:1.5%程度
* ROE:10%程度
* 配当性向:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「ビジネスモデルの進化・積層化」を通じて事業ポートフォリオを変革し、利益成長をめざしています。具体的には、既存のリース・ファイナンスに加え、事業投資・運営などを通じて社会的課題の解決を図ります。
* セグメント別戦略:高収益資産の積み上げ、リファービッシュ事業や高付加価値サービスの推進、ポートフォリオの入れ替え等。
* 組織横断テーマ:水素、EV、物流、脱炭素ソリューションを重点テーマとして設定。
* 経営基盤強化:人材育成、DX推進、リスク管理の高度化等。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材ポートフォリオの充足」と「MHCエンゲージメントの維持・向上」をテーマに掲げています。経営戦略実現に必要な人材要件を定義・可視化し、確保・育成を進めるとともに、従業員が自発的に価値創造に取り組める職場環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.5歳 | 15.3年 | 10,076,000円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 18.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 81.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 66.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 64.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 64.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
リースや割賦販売、金銭貸付等の金融サービスを提供しているため、取引先の信用状況悪化による不良債権増加のリスクがあります。独自の格付制度や継続的なモニタリングにより与信管理を行い、リスクの分散と経営の健全性確保に努めています。
■(2) アセットリスク(グローバルアセット・不動産)
航空機、コンテナ等のグローバルアセットや不動産を保有し賃貸しているため、これらアセットの価格変動や需給変動のリスクを負っています。アセット価値の見極めやポートフォリオ管理、予兆管理モニタリング等を通じて、リスクの極小化と収益確保を図っています。
■(3) 投資リスク
再生可能エネルギー事業や各種事業会社への投資を行っており、事業環境の変化や投資先の業績不振により損失が生じる可能性があります。投資案件協議会での慎重な審査や継続的なモニタリングにより、リスク管理を徹底しています。
■(4) 金利変動リスク
リース料等は固定金利が中心である一方、資金調達には変動金利が含まれるため、市場金利の上昇が収益に影響を及ぼす可能性があります。ALM(資産・負債の総合管理)により金利リスクをモニタリングし、デリバティブ取引等を用いたヘッジを行うことで管理しています。



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