学究社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

学究社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

学究社は東京証券取引所プライム市場に上場し、中学・高校・大学受験向けの進学塾「ena」等を運営する教育事業と不動産事業を展開しています。直近の業績トレンドは、東京都の私立高校授業料実質無償化拡充の影響で都立中・高を目指す生徒数が減少し減収となった一方、合宿の拡充や費用削減等により営業増益を達成しました。


※本記事は、学究社の有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 学究社ってどんな会社?


教育事業を中核として、進学塾「ena」ブランドの運営と不動産賃貸事業を手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1976年10月、国立学院を母体として学究社を設立しました。1987年にニューヨークへ現地法人を設立し、1991年には専門塾「ENA」(現「ena」)を新設しました。2004年のジャスダック上場を経て、2012年には看護医療系・美術系受験塾などの事業を譲り受け、幅広く教育事業を展開して現在に至ります。

同社グループは、連結従業員数462名、単体従業員数378名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は同社代表執行役CEOの河端真一氏が全株式を所有するケイエスケイケイで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者の河端真一氏個人となっています。

氏名 持株比率
ケイエスケイケイ 36.62%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.56%
河端 真一 1.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表執行役CEOは河端真一氏、代表執行役社長COOは栗﨑篤史氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
河端 真一 取締役 取締役会議長 報酬委員 代表執行役CEO 学院長 1976年10月学究社設立、代表取締役社長就任。1987年米国法人設立等を経て、2023年10月より現職。
栗﨑 篤史 取締役 指名委員 代表執行役社長COO 2001年4月進研社(現学究社)入社。小中本部長などを歴任し、2023年10月より現職。
河原 圭一 取締役 専務執行役 1991年2月学究社入社。個別指導本部長や小中本部長などを歴任し、2026年3月より現職。
鈴木 和智 取締役 常務執行役管理本部長総務人事部長 2015年3月学究社入社。総務人事部長などを経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、永谷喜一郎(元永谷園フーズ社長)、三浦瑠麗(山猫総合研究所代表取締役)、瀬藤光利(浜松医科大学医学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

教育事業


同社グループの中核である教育事業は、中学、高校、大学への受験生を対象とした進学指導を行う進学塾の運営を展開しています。主に集団授業の「ena」、最難関中高受験指導の「ena最高水準」、個別指導の「ena個別」、オンライン授業などを提供し、関東圏および北米や欧州の邦人子女向けにサービスを提供しています。

収益源は、生徒および保護者から受け取る授業料や講習費用、合宿費用などです。運営は親会社である学究社が国内の「ena」ブランド各校舎を担当するほか、子会社のGAKKYUSHA U.S.A.やENA EUROPE GmbHなどが海外における邦人子女向けの塾運営を行っています。

不動産事業


不動産事業では、同社グループが保有する住居用および事務所用不動産等を活用した不動産賃貸事業を展開しています。教育事業の展開に伴い取得した物件や資産の有効活用として、安定的な収益基盤の構築を目的として施設を貸し出しています。

収益源は、賃借人である法人や個人から毎月受け取る不動産の賃貸料(家賃収入)です。本事業の運営および物件の管理は、親会社である学究社が主体となって実施しています。

その他


その他セグメントでは、主にインターネットを通じた受験・教育情報の配信サービス事業や、人材派遣紹介業などを展開しています。教育業界に関連する広告の掲載や、学校法人向け等の情報提供サービスを通じて、受験生や保護者の情報収集を支援しています。

収益源は、学校法人や一般企業から受け取るバナー広告等の広告掲載料や、人材紹介に関わる手数料などです。情報配信サービスは子会社のインターエデュ・ドットコムが、人材派遣紹介業はエデュケーターサポートサービスがそれぞれ運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の連結業績を見ると、売上高は124億円から130億円台で安定的に推移しています。経常利益も24億円から30億円へと底堅く成長しており、利益率は継続して約20%前後の高い水準を維持しています。当期純利益についても14億円から18億円へと増加傾向にあり、強固な収益基盤が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 124億円 130億円 132億円 133億円 131億円
経常利益 24億円 28億円 27億円 27億円 30億円
利益率(%) 19.4% 21.5% 20.6% 20.0% 23.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 18億円 17億円 18億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と比較してわずかに減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性の向上が見られます。売上総利益率は35.6%から38.4%へ、営業利益率は19.7%から22.2%へとそれぞれ改善しており、経営の効率化やコストコントロールの成果が表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 133億円 131億円
売上総利益 47億円 50億円
売上総利益率(%) 35.6% 38.4%
営業利益 26億円 29億円
営業利益率(%) 19.7% 22.2%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が4億円(構成比18%)、広告宣伝費が3億円(同16%)を占めています。また、売上原価については、人件費が37億円(構成比53%)、経費が27億円(同39%)と大きな割合を占めており、塾運営における人的リソースや施設関連のコスト構造が読み取れます。

(3) セグメント収益


教育事業が売上全体の大部分を占めており、事業の中心を担っています。同セグメントでは、夏期や冬期の講習会への参加が好調だった一方で、少子化や無償化制度の影響で生徒数が減少したため、前年と比較してわずかに減収となりました。不動産事業やその他事業の売上は安定して推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
教育事業 126億円 124億円
不動産事業 1億円 1億円
その他 6億円 6億円
連結(合計) 133億円 131億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業活動で得た資金で投資や借入金の返済を賄う「健全型」の優良なキャッシュ・フロー状態を示しています。
また、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.0%であり、いずれもプライム市場の平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 24億円
投資CF -1億円 -9億円
財務CF -12億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人間第一」を経営の基本理念とし、「勇気・品性・誠実」を教育理念とした運営を創立以来一貫して続けています。新しい時代の波に対して積極的に立ち向かう姿勢で取り組み、時代の先端を行く革新的な手法で業容を拡大し、今後も大胆にチャレンジし続けることを掲げています。

(2) 企業文化


学習塾業界のサービスの本質である「質の高い授業の実践」と「合格実績」に徹底的にこだわり、的確な「受験情報の提供」により、生徒や保護者から高い支持と信頼を獲得することを目指す文化が根付いています。受験勉強だけでなく、人間関係を尊重した指導と人間的教育の実践を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、本業での収益性を表す指標として「売上高営業利益率」を重視しています。2025年3月に策定された中期経営計画(2028年3月期まで)では、以下の目標が設定されています。

* 売上高営業利益率20.0%を継続的に上回る

(4) 成長戦略と重点施策


「都立のena」から「都立も私立も合格できるena」への転換を図り、私立中・私立高受験対策を強化しています。また、東京都内での指導ノウハウを活かした千葉県や埼玉県への新規校舎展開や、新中1生の授業料無料化などによる「大学受験までの一貫した経営モデルの確立」を成長戦略として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


教育サービスの質は講師やスタッフの能力に支えられるという考えのもと、授業力や面談力の向上を目的とした実践型研修を実施しています。また、多様な人材の採用と育成が企業価値の向上に繋がるとし、女性や中途採用者を積極的に登用し、多様な価値観を活かした組織運営を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。給与は各職務の内容や責任、成果などを総合的に勘案して決定され、時間講師を除く社員は役割や貢献度を反映する年俸制を基本としています。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.4歳 8.0年 4,866,780円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.3%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 54.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 74.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 学齢人口の減少に伴う受験人口の縮小


中学・高校・大学の各段階における学齢人口の減少は、受験人口の縮小に直結し、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。これに対し、多様な教育ニーズに応えるべく「ena」や「極」「家庭教師Camp」など多様なブランドを展開してリスクの軽減に努めています。

(2) 参入障壁の低さによる講師の引き抜きやノウハウの模倣


学習塾業界は新規参入が容易であり、競合他社による講師の移籍・引き抜きや教材作成ノウハウの模倣に晒されるリスクがあります。同社は「授業の質」と「合格実績」を徹底的に追求することで、生徒や保護者からの信頼を築き、盤石な事業基盤の確立を目指しています。

(3) 業績の四半期ごとの季節的変動


教育事業では、新学期がスタートする第1四半期に生徒数が最も少なく、受験期を迎える第3四半期に増加する傾向があります。また、春期・夏期・冬期の講習時期に売上が集中する一方、校舎の運営費用は年間を通じて発生するため、四半期ごとに収益性が大きく変動するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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