※本記事は、株式会社 学究社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
学究社は教育事業を主軸とし、中学、高校、大学受験生向けの進学塾「ena」ブランドを関東圏、北米、欧州で展開しています。また、不動産賃貸事業やインターネットによる教育情報配信サービスも手掛けています。
単体従業員数は378名、連結従業員数は462名です。同社グループの事業セグメントは、教育事業、不動産事業、その他の3つです。
主な国内グループ会社は、当社、学究社、住居用・事務所用不動産等による不動産賃貸業、子会社、インターエデュ・などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
学究社は、教育サービスを通じて社会に貢献する企業として、社員一人ひとりの成長を重視した働き方を推進しています。給与水準や人材育成、多様な働き方への取り組みを通じて、社員が長期的に活躍できる環境づくりに注力していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
学究社では、社員の平均年齢と平均勤続年数から、比較的若年層が中心となって活躍しつつも、一定の定着が見られる職場環境であることがうかがえます。教育事業という特性上、若手社員の育成とキャリア形成に力を入れている傾向があると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 4,866,780円 |
| 平均勤続年数 | 8.0年 |
| 平均年齢 | 36.4歳 |
| 単体従業員数 | 378人 |
| 連結従業員数 | 462人 |
| 単体のグループ内比率 | 81.8% |
学究社は、確定拠出年金制度(会社が拠出した資金を従業員が運用する)を導入しています。また、一部の従業員には確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)の退職一時金制度も導入されています。
退職一時金制度はありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
学究社は「人間第一」を経営理念とし、質の高い教育サービス提供のため、優秀な人材の確保と育成を最重要課題と位置付けています。中期経営計画では新規校舎展開や受験対応強化を成長戦略の柱とし、これを支える人材基盤として新卒採用の拡大や採用体制の強化、校舎運営体制の充実を図っています。
給与決定においては、必要な人材を獲得・確保できる競争力のある水準を基本とし、職務内容や責任、個人の成果・能力、業績、外部労働市場の賃金水準、物価動向を総合的に考慮しています。時間講師を除く社員には年俸制を基本とし、年俸制対象外の社員には月例給与に加えて業績と人事評価に連動した賞与を支給しています。また、2026年4月には役員および臨時従業員を除く全社員を対象に、一律10%の給与水準引き上げ(ベースアップ)を決定しました。
人材育成では、授業力や面談力向上を目的とした実践型研修に加え、マネジメント層による直接指導を通じて教務力の強化を図っています。多様な人材の採用と育成にも注力しており、女性や中途採用者を積極的に登用し、女性取締役の選任など管理職層への登用も進めています。社内環境整備としては、2024年3月期より子供手当や男性社員の育児休暇制度を導入し、有給休暇の取得促進にも取り組むことで、多様な働き方ができる環境づくりを進めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、提出会社単体のデータを示します。正規雇用労働者の男女賃金差異は、男性の管理職比率の高さや女性の平均年齢・勤続年数の短さによる職位・年齢構成の違いが要因です。パート・有期労働者の男女賃金差異は、女性が事務職、男性が講師職に多く従事していることによる職種構成と時給水準の違いが要因です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 24.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 33.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 54.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 81.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 74.6% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
学究社グループは、主に教育事業を展開し、進学指導を通じて収益を上げています。不動産賃貸事業やインターネットを活用した情報配信サービスも手掛けており、多角的な事業構造を持っています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、中学、高校、大学への受験生を対象とした進学指導を主軸とする教育事業を核としています。関東圏や北米、欧州で進学塾「ena」ブランドを中心に展開しており、多様な教育ニーズに応えるサービスを提供しています。収益は主に授業料や季節講習の売上から得られています。また、保有する不動産の賃貸収入や、インターネットを通じた教育情報の配信サービスからも収益を得ています。
教育事業
同社グループの主力事業であり、中学、高校、大学への受験生を対象とした進学指導を行っています。中高受験指導の「ena」ブランドを軸に、関東圏、北米、欧州で事業を展開しています。最難関中高受験指導の「ena最高水準」や個別指導の「ena個別」、看護医療系・歯学・薬学受験指導の「ena歯学・薬学・看護」、芸大・美大受験指導の「ena美術」など、幅広いブランドを展開しています。オンライン授業専門の「enaオンラインclass」やオンライン家庭教師の「家庭教師Camp」なども運営しています。収益は、授業料や季節講習の売上から得ています。当連結会計年度では、生徒数の減少があったものの、夏期や冬期の合宿拡充が収益に大きく貢献しました。海外校舎グループは生徒数が順調に推移し、売上高が増加しました。
不動産事業
同社グループが保有する住居用・事務所用不動産等による不動産賃貸事業を行っています。収益は、不動産賃貸収入から得ています。当連結会計年度では、賃貸収入は前期と同水準で推移しました。
その他の事業セグメント
インターネットによる受験、教育情報の配信サービス事業等を行っています。収益は、広告関連売上や人材サービス売上から得ています。当連結会計年度では、広告関連売上全体は前期と比較して減少しましたが、学校法人関連の新規アプリやバナー商品の売上は伸長しました。人材サービス売上は、塾訪問サービスの需要拡大により増加しました。
同社グループの売上高は教育事業に大きく集中しており、国内の外部顧客への売上高が連結売上高の大部分を占めています。特定の顧客に売上高が集中している状況は見られません。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 教育事業 | 126億円 | 124億円 |
| その他の事業セグメント | 5.9億円 | 5.8億円 |
| 不動産事業 | 75百万円 | 74百万円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、直近5年間で変動が見られます。売上高は前期まで増加傾向にありましたが、当連結会計年度は減少に転じました。一方で、経常利益は当連結会計年度に大きく増加し、過去最高益を更新しています。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期から微減となりましたが、これは前期に計上された関係会社株式売却益の剥落や、当期に計上された減損損失が影響しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 124億円 | 130億円 | 132億円 | 133億円 | 131億円 |
| 経常利益 | 24.1億円 | 27.9億円 | 27.2億円 | 26.6億円 | 30.0億円 |
| 経常利益率 | 19.4% | 21.5% | 20.6% | 20.0% | 23.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 15.1億円 | 18.8億円 | 18.3億円 | 18.6億円 | 18.5億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 137.70 | 171.54 | 167.98 | 171.40 | 170.09 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高(連結)は前期から増加しており、生産性が向上している傾向が見られます。また、従業員1人あたりの営業利益(連結)も前期から増加しており、収益性の改善を示しています。これらの指標の改善は、組織全体の効率化が進んでいることを示唆しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 26.6百万円 | 28.3百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 5.3百万円 | 6.3百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、事業活動による安定した資金創出と、それによる投資余力があることを示しています。これらの状況から、経営の安定性について確認できます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、高い自己資本比率とROE(自己資本利益率)を示しています。自己資本比率は65.0%と、プライム市場の平均と比較して高い水準にあります。ROEも23.8%と、プライム市場平均を大きく上回る水準です。手元資金である現金及び預金も増加傾向にあり、これらの状況は同社グループの安定した経営状態を裏付けています。強固な財務基盤は、事業の継続性や将来の成長投資を支える要素となります。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 73.4億円 | 81.7億円 |
| 自己資本比率 | 60.3% | 65.0% |
| ROE(自己資本利益率) | 27.0% | 23.8% |
| 現金及び預金 | 26.4億円 | 34.2億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローは、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローが前期から増加しています。これは主に税金等調整前当期純利益や減価償却費、減損損失、前受金の増減額、法人税等の支払額によるものです。投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得や投資有価証券の取得などにより、前期と比較して支出が増加しました。財務活動によるキャッシュフローは、長期借入金の返済や配当金の支払いなどにより、前期から支出が増加しています。
これらの結果、営業活動による収入が投資活動による支出を上回るフリーキャッシュフローはプラスを維持しています。これは、本業で安定的に資金を生み出し、投資を賄った上でなお余剰資金がある状態を示しています。この資金状況は、同社グループが安定した事業運営を継続し、将来の成長に向けた投資余力も確保していることを示唆しており、雇用や給与の安定性にもつながる要素と言えます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 22.5億円 | 24.5億円 |
| 投資CF | △1.1億円 | △9.1億円 |
| 財務CF | △12.5億円 | △13.0億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 21.4億円 | 15.4億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、学齢人口の減少を大きなリスクと認識しており、中学、高校、大学の各段階における受験人口の減少が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、多様な進学塾ブランドを展開し対応しています。
また、学習塾業界は参入障壁が低いという特徴があり、講師の移籍やノウハウの模倣といったリスクに晒されています。同社グループは「授業の質」と「合格実績」を追求することで、事業基盤の強化を図っています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、質の高い授業提供と新規校舎展開のため、優秀な社員や時間講師等の人材確保と育成を最重要課題としています。少子化による労働人口減少や教育業界での人材獲得競争の激化により、必要な人材を十分に確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
学究社は、「人間第一」を経営の基本理念とし、教育を通じて社会に貢献することを目指す企業です。生徒一人ひとりの成長と保護者からの信頼を大切にする文化が根付いています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
学究社は、「人間第一」を経営の基本理念とし、「勇気・品性・誠実」を教育理念としています。
同社グループは、質の高い授業の実践と合格実績に徹底的にこだわり、的確な受験情報の提供を通じて生徒・保護者からの高い支持と信頼獲得を目指しています。
また、受験勉強だけでなく人間関係を尊重した指導と人間的教育を実践し、「日本一の私塾」を目指すことを掲げています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、新しい時代の波に積極的に立ち向かい、大胆にチャレンジし続ける姿勢を重視しています。
教育サービスの質の向上と地域社会との信頼関係の強化を持続的な成長に不可欠な要素と認識し、ガバナンス体制の充実に取り組んでいます。
多様な人材の採用と育成を重視しており、女性や中途採用者を積極的に登用する方針です。
年齢・性別・社歴・国籍にかかわらず、能力と高い意識を持つ人材を管理職に採用しています。
また、多様な人材が活躍できる環境整備として、子供手当や男性社員の育児休暇制度の導入、有給休暇の取得促進にも注力しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、少子化による市場縮小や教育費抑制、異業種参入といった厳しい経営環境に直面しています。
このような状況下で、教育サービスの品質低下や社会的信頼の毀損を重大な事業リスクと捉え、全社的に対応策を講じています。
人的資本に関わるリスク低減のため、全社員対象のアンケートを活用し、職場環境や働き方に関する意識や課題の把握に努めています。
また、首都圏の中学・高校受験ニーズに対応するため、都立中・高受験に加え、私立中・高受験への対応強化を進めています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
学究社は指名委員会等設置会社であり、経営の監督機能と業務執行機能が明確に分離された体制を採用しています。社外取締役が過半数を占める委員会を設置し、経営監督機能の透明性と独立性の強化を図っています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
学究社の株主構成を見ると、筆頭株主はケイエスケイケイ株式会社です。この会社は代表執行役CEO学院長である河端真一氏が100%所有しており、創業家が同社グループの経営に強い影響力を持つ資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| ケイエスケイケイ | 36.62% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.56% |
| 河端 真一 | 1.88% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
学究社の役員は11名(男性10名・女性1名)で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表執行役CEO学院長は河端真一氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河 端 真 一 | 代表執行役CEO学院長 | 1976年10月に同社を設立し、代表取締役社長兼学院長に就任。2003年6月には取締役兼代表執行役社長兼取締役会議長兼学院長に就任しました。2023年10月より同社取締役会長兼代表執行役CEO兼学院長を務めています。 |
| 栗 﨑 篤 史 | 代表執行役社長COO | 2001年4月に株式会社進研社(現 同社)に入社し、2011年7月に取締役就任。2023年10月より同社取締役兼代表執行役社長COOを務めています。 |
| 河 原 圭 一 | 専務執行役 | 1991年2月に同社に入社し、2005年5月に執行役大学受験本部長兼個別指導本部長に就任。2026年3月より同社取締役兼専務執行役を務めています。 |
| 鈴 木 和 智 | 常務執行役 管理本部長総務人事部長 | 2015年3月に同社に入社し、2024年7月に執行役管理本部長代理兼総務人事部長に就任。2026年4月より同社取締役兼常務執行役管理本部長兼総務人事部長を務めています。 |
社外取締役は、永谷喜一郎氏(営洋代表取締役・指名委員・監査委員)、三浦瑠麗氏(山猫総合研究所代表取締役・報酬委員・監査委員)、瀬藤光利氏(浜松医科大学医学部教授・指名委員・報酬委員・監査委員)です。
同社は指名委員会等設置会社であり、経営監督機能と業務執行機能の分離を明確にしています。社外取締役が過半数を占める指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置することで、経営監督機能の透明性と独立性を強化しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
学究社の役員報酬は、基本報酬である固定報酬のみで構成されています。取締役の報酬は所属する委員会や取締役会での役割に応じて、執行役の報酬は担当職務や業績、貢献度を総合的に考慮して報酬委員会が決定しています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 1.5億円 | 38.2百万円 |
| 社外取締役 | 4名 | 14百万円 | 3.5百万円 |
| 執行役 | 4名 | 37百万円 | 9.2百万円 |
同社グループの役員報酬総額は2.0億円であり、対象となる役員は合計12名です。
個人別報酬が開示されている役員は、河端真一氏(1.01億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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