学究社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

学究社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、首都圏を中心に進学塾「ena」の運営を行う教育事業を主力としています。直近の決算では、授業料改定や私立受験対応コースの効果で売上高は過去最高を更新し増収となりましたが、積極的な投資や人件費増により経常利益は減益となりました。


#記事タイトル:学究社転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社学究社 の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 学究社ってどんな会社?


首都圏を中心に進学塾「ena」を展開し、都立中高一貫校や都立難関高の合格実績に強みを持つ教育企業です。

(1) 会社概要


1976年に設立され、1985年に店頭登録を行いました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2011年には運営する進学塾の名称を「ena」に統一しました。2015年に東京証券取引所市場第一部へ指定替えとなり、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は499名、単体従業員数は409名です。筆頭株主は会長の河端真一氏が所有する資産管理会社のケイエスケイケイで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。

氏名 持株比率
ケイエスケイケイ 36.62%
日本マスタートラスト信託銀行 株式会社(信託口) 7.88%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 2.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表執行役社長COOは栗﨑篤史氏、代表執行役CEOは河端真一氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河 端 真 一 取締役取締役会議長報酬委員代表執行役CEO学院長 1976年10月同社設立、代表取締役社長兼学院長就任。2023年10月より現職。
栗 﨑 篤 史 取締役指名委員代表執行役社長COO 2001年4月株式会社進研社(現同社)入社。執行役副社長小中本部長兼学院長代行等を経て2023年10月より現職。
河 原 圭 一 取締役専務執行役教務本部長 1991年2月同社入社。常務執行役個別指導本部長等を経て2025年6月より現職。
鈴 木 和 智 取締役執行役管理本部長総務人事部長 2015年3月同社入社。中学部長、総務人事部長等を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、永谷喜一郎(株式会社営洋代表取締役)、山口真由(ZEN大学教授)、三浦瑠麗(株式会社山猫総合研究所代表取締役)、瀬藤光利(浜松医科大学医学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育事業」「不動産事業」の2つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 教育事業


中学、高校および大学への受験生を対象とした進学指導を行う進学塾の運営を行っています。中高受験指導の「ena」を軸に、「ena最高水準」「ena個別」「ena美術」などを展開し、関東圏および北米、欧州において事業を行っています。

主な収益は、生徒からの授業料や講習料等です。運営は、国内では主に学究社が、海外ではGAKKYUSHA U.S.A.CO.,LTD.やENA EUROPE GmbHなどの連結子会社が行っています。

(2) 不動産事業


同社グループが保有する住居用・事務所用不動産等を活用した不動産賃貸事業を行っています。

主な収益は、賃貸物件の入居者からの賃貸収入です。運営は学究社が行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、インターネットによる受験・教育情報の配信サービス事業等を行っています。

主な収益は、バナー広告の掲載料等です。運営は連結子会社のインターエデュ・ドットコム等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあり、当期は過去最高を更新しました。経常利益は2023年3月期をピークにやや減少傾向にありますが、依然として高い利益率を維持しています。当期純利益は安定的に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 113億円 124億円 130億円 132億円 133億円
経常利益 18億円 24億円 28億円 27億円 27億円
利益率(%) 15.8% 19.4% 21.5% 20.6% 20.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 14億円 18億円 18億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比微増となりましたが、売上原価の増加等により売上総利益は減少しました。営業利益率は低下したものの、依然として高い水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 132億円 133億円
売上総利益 48億円 47億円
売上総利益率(%) 36.4% 35.6%
営業利益 27億円 26億円
営業利益率(%) 20.4% 19.7%


販売費及び一般管理費(21億円)のうち、支払手数料が4.0億円(構成比18.9%)、役員報酬が2.8億円(同13.1%)、広告宣伝費が2.5億円(同11.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


教育事業は授業料改定等の効果で増収となりましたが、積極的な投資や人件費増により減益となりました。不動産事業は賃貸収入の微減に伴い減収となりましたが、利益は増加しました。その他事業は増収増益となり、堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
教育事業 126億円 126億円 25億円 24億円 19.2%
不動産事業 0.8億円 0.8億円 0.7億円 0.8億円 46.3%
その他 6億円 6億円 0.9億円 1億円 20.7%
調整額 8億円 9億円 -0.0億円 0.1億円 1.3%
連結(合計) 132億円 133億円 27億円 26億円 19.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 22億円 22億円
投資CF -3億円 -1億円
財務CF -16億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人間第一」を経営の基本理念とし、「勇気・品性・誠実」を教育理念としています。質の高い授業と合格実績にこだわり、生徒・保護者から支持される「日本一の私塾」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、新しい時代の波に対して積極的に立ち向かう姿勢を重視しています。時間講師の導入や都立中高一貫校受検対策など、時代の先端を行く革新的な手法で業容を拡大してきた実績があり、今後も大胆にチャレンジし続けることを掲げています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を初年度とする新たな中期経営計画に基づき、事業を推進しています。具体的な数値目標としては、2028年3月期までに千葉県および埼玉県で合わせて50校の新規開校を計画しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「都立のena」から「私立も都立も合格するena」への進化を目指し、私立中・高受験への対応を本格的に強化しています。また、東京都内で培ったノウハウを活かし、千葉県・埼玉県への進出を加速させ、首都圏全体をカバーするドミナント戦略を推進しています。さらに、大学受験までの一貫した経営モデルの確立にも取り組んでいます。

* 千葉県・埼玉県で2028年3月期までに50校の新規開校を計画
* 2026年3月期:「ena小中学部」ブランド10校開校

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


教育サービスの質は講師等の能力に支えられるとの認識から、実践型研修等で教務力の向上を図っています。多様な人材の確保・育成を重視し、女性や中途採用者の登用を進めています。また、子供手当や男性育休制度の導入、有給休暇の取得促進など、働きやすい環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.5歳 8.6年 4,977,354円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.8%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 50.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 学齢人口の減少問題


少子化による学齢人口の減少は、受験人口の減少に直結するため、大きなリスク要因です。これに対し、多様な教育ニーズに対応するブランド(ena最高水準、極、ena個別、enaオンラインclass等)の確立や、看護医療系・美術系などの多角的な教育サービスの提供により対応を図っています。

(2) 参入障壁の低い業界


学習塾業界は参入障壁が低く、新規参入や統廃合が頻繁に行われています。講師の引き抜きやノウハウの模倣といったリスクもあります。同社は「授業の質」と「合格実績」を追求し、都立中高一貫校や都立難関高入試対策での差別化により、競争優位性の確保に努めています。

(3) 業績の四半期ごとの季節的変動


教育事業は季節性が強く、生徒数は受験期(第3四半期)に最大化し、季節講習時期に売上が増大します。一方、固定費は通期で発生し、新年度募集の広告費は第4四半期に集中するため、第1・第4四半期は収益性が低くなる傾向があります。

(4) 人材の確保と育成


質の高い授業提供と新規校舎展開には優秀な人材が不可欠です。少子化による労働人口減少や業界内での人材獲得競争が激化する中、必要な人材を十分に確保・育成できない場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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