ジャフコ グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャフコ グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャフコ グループは東京証券取引所プライム市場に上場し、ファンドの運用を通じたベンチャー投資とバイアウト投資を主力としています。業績面では、直近の事業年度において売上高が216億円で前事業年度から減収となり、当期純利益も66億円へと減益となりました。国内投資への集中を掲げ成長を目指しています。


※本記事は、ジャフコ グループ株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャフコ グループってどんな会社?


ファンドの運用を通じたベンチャー投資とバイアウト投資を展開し、有望企業の発掘と成長支援を行う投資運用会社です。

(1) 会社概要


同社は1973年4月に日本合同ファイナンスとして設立され、1982年4月に国内初となる投資事業組合を設立しました。2001年1月に東証一部(現・プライム)へ上場し、2020年10月にジャフコ グループへと商号変更しています。近年は国内投資への集中方針のもと、2025年10月にアジア法人を、2026年1月に米国法人を譲渡しています。

従業員数は単体で133名です。大株主の構成は、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505018、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.97%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505018 5.27%
日本カストディ銀行(信託口) 4.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は三好啓介氏です。社外取締役比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三好 啓介 取締役社長 1993年同社入社。第二投資運用本部長、執行役員投資担当、取締役投資担当、パートナー等を経て、2022年4月より現職。
豊貴 伸一 取締役会長 1985年同社入社。常務取締役、専務取締役、代表取締役社長等を経て、2022年4月より現職。


社外取締役は、田村茂(元メディサイエンスプラニング社長)、梶原慶枝(元シーシーエス執行役員)、村岡香奈子(呉服橋法律事務所弁護士)、土井俊範(住友生命保険特別顧問)、榎本英二(リープ経営コンサルティング代表取締役)、林敬子(林敬子公認会計士事務所長)です。

2. 事業内容


同社グループはファンド運用事業を展開しています。

ファンド運用事業


ファンドの運用を通じたベンチャー投資とバイアウト投資を行っています。機関投資家や事業会社からファンドの運用資金を募集し、有望企業を開拓して新規投資を行い、良質のポートフォリオを構築します。投資後の経営関与を高め、起業家とともに事業の成長と企業価値の向上を図ります。

収益源は、ファンドからの運用報酬である管理報酬及び成功報酬と、ファンドへの直接出資に対するキャピタルゲインです。新規上場(IPO)やM&A等による売却(EXIT)を目指して運用を行います。事業の運営はジャフコ グループが単体で行っており、現在は国内ファンドの運用に集中しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高はファンドのEXIT状況やキャピタルゲインの有無により年度ごとに大きく変動する傾向があります。直近5年間では2023年3月期に経常赤字を計上したものの当期利益は大幅な黒字となっており、その後は再び安定した経常黒字を維持しています。当期は国内投資への集中に伴う体制見直しの影響等もあり減収減益となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 277億円 141億円 244億円 297億円 216億円
経常利益 184億円 -30億円 88億円 132億円 59億円
利益率(%) 66.3% -21.7% 36.1% 44.5% 27.3%
当期利益 148億円 425億円 83億円 96億円 66億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も減少しています。売上総利益率は前事業年度の53.4%から49.0%へ、営業利益率は40.6%から26.0%へとそれぞれ低下しており、利益水準が引き下がっている状況が見て取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 297億円 216億円
売上総利益 158億円 106億円
売上総利益率(%) 53.4% 49.0%
営業利益 121億円 56億円
営業利益率(%) 40.6% 26.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が14億円(構成比36%)、租税公課が5億円(同12%)を占めています。売上原価は110億円であり、そのうち営業投資有価証券売上原価が99億円(構成比90%)と大部分を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益と資産売却等による資金を借入返済や株主還元に充てる改善型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 104億円 56億円
投資CF 1億円 38億円
財務CF -54億円 -116億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「挑戦への投資で、成長への循環をつくりだす」というパーパス(存在意義)と、「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」というミッション(使命)を掲げています。社会課題を解決する有望企業の発掘と投資を通じ、起業家とともに新たな時代を切り開くことで持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


バリュー(行動指針)として、「当事者たる覚悟でやり抜く」「より早く、より深く、より高みへ」「多様な強みで共創を」「開拓者たれ、真摯であれ」の4つを定めています。投資先や出資者との共同事業である未上場投資において、誰よりも強い覚悟を持ち、多様なバックグラウンドを持つメンバーの強みを掛け合わせる組織文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は企業価値向上のため、国内投資に集中し利益成長と資本効率の向上を推進しています。具体的な中長期的目標として以下の数値を掲げています。

* 投資パフォーマンス(ROI):3倍以上
* 新規ファンドへの同社出資比率:20%
* ROE:15〜20%
* 株主還元:DOE(株主資本配当率)6%または配当性向50%の大きい方

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、投資運用力とファンド募集力の向上を進めています。有望な投資先を早期に発掘して深く経営に関与し、キャピタルゲインの最大化とパフォーマンス向上を図ります。また、外部出資の拡大により資金基盤を強化し、パートナーを中心とした独自の採用・育成モデルによって組織基盤を底上げすることで、持続的な企業価値の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の競争力の源泉である「個」に依存する特性を踏まえ、「強い個の育成」と「強固な組織基盤の構築」を重視しています。新卒やスペシャリスト人材を継続的に採用し、独自のキャピタリスト育成モデルでプロフェッショナルを育てます。また、人事制度の見直しやマネジメント育成、カルチャーの浸透を通じて社員が最大限の能力を発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.3歳 13.7年 13,656,206円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.4%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -

※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の影響


同社はファンド資金を用いて未上場株式へ投資しています。不況による起業環境の悪化や投資先企業の業績不振、EXIT時点における株式市場・IPO市場の低調により、ファンドが保有する株式の流動化機会が限定され、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 未上場株式等への投資リスク


シード・アーリーステージの未上場企業は事業の不確実性が高く、当初の計画通りに進捗せず倒産に至るなど、投資資金を回収できないリスクがあります。また、EXIT時に想定を下回る価格での売却となる可能性があり、ファンドのパフォーマンスを低下させる要因となります。

(3) 競合の激化


ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンド、コーポレートベンチャーキャピタル等との間で、有望な未上場企業への投資案件獲得競争が激化しています。投資機会の逸失や不利な条件での投資を強いられた場合、十分なキャピタルゲインをあげることができず業績に影響する可能性があります。

(4) ファンドの募集に関するリスク


ファンドの出資者は機関投資家や事業会社ですが、マクロ経済の悪化やファンドパフォーマンスの低迷、出資者ニーズとの乖離等により、想定通りに資金を集められない可能性があります。その場合、投資活動に支障をきたし、管理報酬や成功報酬が減少し収益を圧迫するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。