※本記事は、ジャフコ グループ株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジャフコ グループってどんな会社?
国内外の有望な未上場企業への投資を行うベンチャーキャピタルです。起業家とともに事業成長にコミットします。
■(1) 会社概要
1973年に日本合同ファイナンスとして設立され、1982年に国内初の投資事業組合を設立しました。2001年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2018年にはパートナーシップモデルを導入して運営体制を刷新しています。2020年に現在の商号へ変更し、2025年には国内投資への集中を決定しました。
2025年3月31日時点の従業員数は連結163名、単体131名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位には個人投資家の穐田誉輝氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.37% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.23% |
| 穐田 誉輝 | 3.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名、計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は三好 啓介氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 豊 貴 伸 一 | 取締役会長 | 1985年入社。関西支社担当、投資部門担当役員、代表取締役社長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 三 好 啓 介 | 取締役社長代表取締役投資担当、パートナー | 1993年入社。第二投資運用本部長、執行役員投資担当等を経て、2022年4月より現職。 |
| 田 村 茂 | 取 締 役(常勤監査等委員) | 横浜銀行出身。メンバーズCFO、アプリックスCFO、メディサイエンスプラニング社長等を歴任。2019年6月より現職。 |
社外取締役は、梶原 慶枝(元シーシーエス執行役員)、村岡 香奈子(弁護士)、土井 俊範(元財務省財務総合政策研究所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファンド運用事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■ファンド運用事業
機関投資家や事業会社から資金を募り、ファンド(投資事業組合)を組成・運用します。主な投資対象は、創業期から成長期のスタートアップ企業への「ベンチャー投資」と、成熟企業の成長支援や事業承継を行う「バイアウト投資」です。常に有望企業を開拓し、投資後は経営に深く関与して企業価値の向上を図ります。
収益源は、ファンド管理運営に対する「管理報酬」および投資成果に応じた「成功報酬」と、同社自身がファンドへ出資することによる「キャピタルゲイン(売却益)」です。運営は主にジャフコ グループが行っており、投資先のIPO(新規上場)やM&AによるEXIT(売却)を目指します。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、投資先の株式売却状況(EXIT)により売上高と利益が大きく変動する傾向があります。第51期は赤字となりましたが、その後は回復基調にあります。直近の第53期は、IPOやM&Aが順調に進んだことで売上高、利益ともに前年を上回りました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 215億円 | 277億円 | 141億円 | 244億円 | 297億円 |
| 経常利益 | 117億円 | 184億円 | -30億円 | 88億円 | 132億円 |
| 利益率(%) | 54.4% | 66.3% | -21.7% | 36.1% | 44.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 378億円 | 148億円 | 425億円 | 83億円 | 96億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、利益率も改善しています。これは営業投資有価証券の売却が進み、キャピタルゲインが増加したことや、成功報酬が増加したことによるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 244億円 | 297億円 |
| 売上総利益 | 122億円 | 174億円 |
| 売上総利益率(%) | 49.9% | 58.6% |
| 営業利益 | 82億円 | 125億円 |
| 営業利益率(%) | 33.4% | 42.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が21億円(構成比41%)、租税公課が6億円(同12%)を占めています。売上原価においては、営業投資有価証券売上原価(売却原価等)が111億円(構成比90%)と大半を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループはファンド運用事業の単一セグメントであるため、連結数値を記載します。当期は投資先のIPOが8社あり、キャピタルゲインが大幅に増加しました。また、ファンドのEXIT進捗により成功報酬も増加し、増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結(合計) | 244億円 | 297億円 | 82億円 | 125億円 | 42.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は「改善型」です。営業活動で得たキャッシュと、投資活動(他社ファンドの分配等)によるキャッシュ・インがあり、それらを原資に配当金の支払等の財務活動を行っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -96億円 | 104億円 |
| 投資CF | 0.0億円 | 1億円 |
| 財務CF | 68億円 | -54億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はパーパスとして「挑戦への投資で、成長への循環をつくりだす」を掲げ、投資の継続が持続可能な社会を実現すると信じています。ミッションには「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」を据え、革新的な製品やサービスを生み出す起業家を支援し、新しい時代を切り開くことを使命としています。
■(2) 企業文化
バリュー(行動指針)として、「当事者たる覚悟でやり抜く」「より早く、より深く、より高みへ」「多様な強みで共創を」「開拓者たれ、真摯であれ」の4つを定めています。起業家と向き合うための強い覚悟や、常に成長し続ける姿勢、多様なメンバーとの共創、そして開拓者精神と誠実さを重視する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「企業価値向上の基本方針」において、中長期的な目標を掲げています。
* 投資パフォーマンス(ROI):3倍以上(投資倍率)
* 株主還元:DOE(株主資本配当率)6%または配当性向50%のいずれか大きい方を配当
■(4) 成長戦略と重点施策
国内投資への集中と資本効率の向上を軸に成長戦略を推進します。これまでのグローバル投資から方針転換し、優位性のある国内のベンチャー投資とバイアウト投資に経営資源を集中させます。
* 厳選集中投資と経営関与の進化:成長ポテンシャルの高い企業へのリード投資と、深い経営関与による成長支援、EXITを実現します。
* ファンド募集力の強化:安定したパフォーマンスと透明性の高い運用により、外部出資を拡大します。
* 資本効率の向上:新規ファンドへの同社出資比率を段階的に20%まで低減させ、高い収益性を維持します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「強い個の育成」と「強固な組織基盤の構築」を掲げています。投資事業の特性上、個人の力に依存する部分が大きいため、新卒・中途採用による多様な人材の確保と、独自のノウハウを活用した育成に注力しています。また、パートナーを中心としたフラットな組織作りや、成果に応じた報酬制度を導入し、個人の貢献とファンドパフォーマンスを連動させています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.4歳 | 13.5年 | 12,661,807円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 13.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異 | - |
※労働者の男女の賃金の差異については、同社は女性活躍推進法の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(27.5%)、管理職全体における中途採用者の管理職の割合(56.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況
同社グループの業績は、株式市場やIPO市場の動向に強く影響を受けます。不況や市況悪化により、投資先企業の業績不振や、IPO・M&Aの機会減少が起きると、ファンドのパフォーマンスが低下し、管理報酬や成功報酬、キャピタルゲインが減少する可能性があります。これに対し、ベンチャーとバイアウトという異なる性質への投資や、投資時期の分散により影響の軽減を図っています。
■(2) 未上場株式等への投資
投資対象である未上場企業は、経営基盤が不安定で不確実性が高いため、投資資金が回収できないリスクがあります。また、IPOやM&A等の出口が保証されているわけではなく、流動性も著しく低いため、想定価格での売却が困難な場合があります。同社は厳選投資と深い経営関与により、投資先の成長と企業価値向上を支援することでリスクの最小化に努めています。
■(3) ファンド募集
投資活動の原資となるファンド資金を十分に集められない場合、事業に支障をきたす可能性があります。市場環境の悪化やパフォーマンスの低迷により外部出資者からの資金調達が困難になると、管理報酬等が減少し業績に悪影響を及ぼします。同社は透明性の高い情報提供や出資者層の拡大に取り組み、信頼関係の構築と資金調達の安定化を図っています。
■(4) 有能な人材の確保や育成
事業の成長は優秀なキャピタリスト等の人材に依存しています。競争激化により人材確保が困難になったり、流出が進んだりすると、将来の成長や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はパートナーシップモデルや成果連動報酬の導入、柔軟な働き方の推進、独自の育成システムの強化により、人材の確保・定着と育成に努めています。



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