アイエックス・ナレッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイエックス・ナレッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイエックス・ナレッジは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、コンサルティングやシステムインテグレーションを主力とする独立系IT企業です。直近の業績は、企業のDX需要を背景にシステム開発や基盤構築案件が堅調に推移し、増収増益を達成しており、安定した成長を続けています。


※本記事は、アイエックス・ナレッジ株式会社の有価証券報告書(第48期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイエックス・ナレッジってどんな会社?


同社は独立系のシステムインテグレーターとして、コンサルティングから開発・運用までを一貫して提供する企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1979年の日本ナレッジインダストリ設立に遡ります。1988年に株式店頭登録を果たし、1999年にはアイエックスと合併して現在のアイエックス・ナレッジへ商号を変更しました。その後、2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2023年にはシーアンドエーコンピューターを連結子会社化するなど、事業基盤の拡大と連携強化を進めています。

現在の従業員数は連結で1,248名、単体で1,222名体制となっています。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の安藤文男氏であり、第2位は従業員持株会であるIKI持株会、第3位には光通信KK投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
安藤 文男 15.92%
IKI持株会 7.40%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は犬飼博文氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
安藤 文男 代表取締役会長 1979年アイエックス入社。1996年同社代表取締役社長。1999年合併によりアイエックス・ナレッジ代表取締役副社長。2001年代表取締役社長を経て、2025年6月より現職。
犬飼 博文 代表取締役社長 1987年アイエックス入社。1999年合併によりアイエックス・ナレッジ入社。事業統括本部長などを歴任し、2019年取締役、2023年代表取締役副社長を経て、2025年6月より現職。
中谷 彰宏 代表取締役専務執行役員管理部門担当兼 次期成長事業検討推進担当 1988年三和銀行入行。KDDIなどを経て2018年アイエックス・ナレッジ入社。取締役常務執行役員などを歴任し、2026年4月より現職。スタイル代表取締役社長も兼務。
市川 美徳 取締役常務執行役員事業部門・営業部門担当 1986年アイエックス入社。1999年合併によりアイエックス・ナレッジ入社。インフラサポート事業部長等を経て、2024年常務執行役員。2025年6月より現職。


社外取締役は、佐藤孝夫(有限責任あずさ監査法人元代表社員)、佐藤未央(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。提供するサービスは主に以下の3つに区分されます。

(1) コンサルティング及びシステムインテグレーションサービス


顧客の多様な経営課題に対し、ITコンサルタントやエンジニアがシステムのデザインから開発・導入・保守まで一貫したサービスを提供しています。また、第三者視点でシステム品質の妥当性を検証する総合品質ソリューション「システム検証サービス」も展開しています。

収益源は、システム受託開発やコンサルティング料、検証サービス料などです。運営はアイエックス・ナレッジおよび連結子会社が行っています。

(2) システムマネージメントサービス


24時間365日体制での稼働監視や障害対応、ヘルプデスク業務など、システム運用全般のサポートを提供しています。さらに運用業務のアウトソーシングや、専門技術者による基盤構築などの技術支援サービスを通じて、顧客のビジネスを支援しています。

収益源は、システム運用管理料や基盤構築の技術支援料などです。運営はアイエックス・ナレッジが主体となって行っています。

(3) 商品販売


比較的低コストでシステム導入も容易な各種パッケージソリューションや、コンピュータおよび関連機器の消耗品を取り扱っています。

収益源は、ソフトウェア・プロダクト等の商品販売代金です。運営はアイエックス・ナレッジが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去4期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)需要の拡大を背景に、システム開発や環境構築案件が堅調に推移し、売上高は着実に成長しています。利益面でも、適正な原価管理や販管費の抑制が寄与し、経常利益率は年々向上しています。増収増益の安定した成長基盤を確立していることが伺えます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 202億円 217億円 228億円 244億円
経常利益 15億円 17億円 20億円 23億円
利益率(%) 7.6% 8.0% 8.5% 9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 12億円 13億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の着実な伸びに加え、利益率の改善が目立ちます。売上総利益率は20%前後で安定的に推移しており、プロジェクトの進捗管理による原価率の低減が効果を発揮しています。また、働き方改革や社内デジタル化を通じたコスト削減の取り組みにより営業利益率も向上しており、収益力の高さが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 228億円 244億円
売上総利益 45億円 50億円
売上総利益率(%) 19.9% 20.6%
営業利益 19億円 22億円
営業利益率(%) 8.2% 9.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比33%)、賞与引当金繰入額が2億円(同7%)を占めています。売上原価においては、外注費が98億円(構成比52%)、労務費が85億円(同45%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は情報サービス業の単一セグメントですが、顧客のIT投資意欲を的確に捉え、事業規模の拡大を続けています。金融機関や通信事業会社向けのシステム開発案件が牽引したほか、医療機関やセキュリティ事業会社向けの環境構築案件も拡大し、全体として力強い成長を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
連結(合計) 228億円 244億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 16億円
投資CF -0.3億円 -1億円
財務CF -1億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.9%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会とITの未来をともにつなぐ(Connecting people one world)」というグループパーパスを制定しています。「しっかりとしたモノ(システム)づくりと高品質なサービスの提供」により、「すべてのステークホルダーから選ばれる企業」となることをビジョンに掲げ、ITと社会を繋ぐことで豊かな未来を創造することを存在意義としています。

(2) 企業文化


「IKIのSDGs宣言」を掲げ、「平和と公正な社会」「すべての人が生き生きと活躍できる社会」「豊かで持続可能な社会」の実現に貢献するサステナビリティ経営を推進しています。法令遵守や企業倫理を尊重し、従業員一人ひとりの人格や個性を重視する企業文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


安定的かつ継続的な企業価値の向上を目指し、中期経営計画の最終期である2029年3月期において、以下の目標の達成を掲げています。

* 売上高:269億円
* 営業利益:24.9億円

(4) 成長戦略と重点施策


「中核事業の拡大」「次期成長事業の創出」「事業基盤の強化」の3本柱を戦略に掲げています。既存システムへの対応だけでなく、クラウドネイティブ人材の育成を通じてDX対応力を強化し、クラウドやAI等のデジタル先端技術を活用した新たな高付加価値サービスの創出と収益基盤の強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「プロフェッショナル人材育成・リスキル」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」「エンゲージメントおよび職場環境の向上」を人材戦略の柱としています。キャリアパスに応じた教育計画や技術研修、中長期的な採用・育成計画を通じた定着率向上を図り、心身ともに健康で能力を発揮できる環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.2歳 15.2年 6,088,649円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 90.9%
男女賃金差異(全労働者) 89.3%
男女賃金差異(正規雇用) 87.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 96.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間離職率(4.1%)、エンゲージメントスコア(52.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化と価格競争


情報化投資動向の急変や業界内での価格競争激化により、不採算案件の増加や案件獲得に失敗するリスクがあります。同社は提供サービス領域の拡大や多様な技術分野への対応を進め、競争力強化に努めています。

(2) 優秀な技術要員の調達・確保


高度化・多様化する技術に対応するためには、優秀なITエンジニアの確保が不可欠です。人材獲得競争が激化し、人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、事業遂行に支障をきたす可能性があります。

(3) システム開発における品質・納期遅延


受託開発において、システムが複雑化・短納期化する中、計画通りに品質が確保できない場合や開発期間内に完了しない場合、コスト増大のリスクがあります。専門部署を設けて進捗管理や品質チェックを徹底しています。

(4) 特定顧客への依存


主要顧客上位5社からの売上が全体の5割以上を占めており、これら顧客の事業方針や経営状態に変化が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。新規顧客の獲得や次期成長事業の創出により事業基盤の強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。