※本記事は、アイエックス・ナレッジ株式会社 の有価証券報告書(第47期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイエックス・ナレッジってどんな会社?
独立系のシステムインテグレーターとして、コンサルティングからシステム開発、検証、保守運用まで一貫したITサービスを提供している企業です。
■(1) 会社概要
同社の源流は1979年に設立された日本ナレッジインダストリと、1964年設立のアイエックスです。1999年に両社が合併し、現在の商号となりました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2022年の市場区分再編に伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。独立系としての強みを活かし、特定のメーカーに依存しない中立的な立場で事業を展開しています。
連結従業員数は1,268名、単体では1,242名が在籍しています。筆頭株主は代表取締役社長の安藤文男氏で、第2位は従業員持株会であるIKI持株会、第3位は通信サービスや電力販売などを手掛ける事業会社の光通信となっています。特定の親会社は持たず、経営の独立性を維持しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 安藤 文男 | 15.91% |
| IKI持株会 | 7.87% |
| 光通信 | 7.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は安藤文男氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安藤 文男 | 代表取締役社長 | 1979年5月アイエックス入社。同社社長を経て、1999年の合併時にアイエックス・ナレッジ副社長に就任。2001年10月より現職。 |
| 犬飼 博文 | 代表取締役副社長事業部門・営業部門担当 | 1987年4月アイエックス入社。情報通信事業部長などを経て、2023年6月より現職。2024年3月より営業本部長を兼務。 |
| 中谷 彰宏 | 代表取締役専務執行役員管理部門担当 | 元三菱UFJ銀行システム部部長代理。KDDI等を経て2018年に入社し、経営企画本部長などを歴任。2023年6月より現職。 |
| 林 三樹雄 | 取締役相談役 | 1973年4月アイエックス入社。営業統括本部での要職や常務取締役、代表取締役副社長などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤孝夫(元有限責任あずさ監査法人代表社員)、黒木彰子(元ジャステック取締役)、佐藤未央(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報サービス業」の単一セグメントですが、提供するサービスの内容により「コンサルティング及びシステムインテグレーションサービス」「システムマネージメントサービス」「商品販売」の3つの品目に区分して事業を展開しています。
■(1) コンサルティング及びシステムインテグレーションサービス
顧客の経営課題に対し、ITコンサルタントやエンジニアがシステムのデザインから開発、導入、保守までを一貫して提供しています。また、第三者的な立場でシステム品質の妥当性や操作性などを検証する「システム検証サービス」も行っています。
収益は、顧客企業からのシステム開発受託費やコンサルティング料、検証サービス料などから得ています。主な運営はアイエックス・ナレッジが行っており、連結子会社の株式会社シーアンドエーコンピューターなども情報サービスに関連する業務を担っています。
■(2) システムマネージメントサービス
24時間365日体制でのシステムの稼働監視や障害対応、ヘルプデスク業務など、システム運用全般をサポートしています。また、運用業務のアウトソーシングや、効率化のための運用設計・基盤構築などの技術支援も提供しています。
収益は、顧客企業からのシステム運用保守費やアウトソーシングサービスの利用料などから得ています。運営は主にアイエックス・ナレッジが担当し、顧客のビジネスを支えるインフラ面での安定稼働を支援しています。
■(3) 商品販売
比較的低コストで導入が容易なパッケージソリューションや、コンピュータおよび関連機器、消耗品などを取り扱っています。システム構築や運用に伴うハードウェアやソフトウェアのニーズに対応しています。
収益は、ソフトウェア・プロダクトやコンピュータ機器等の販売代金から得ています。運営はアイエックス・ナレッジが行っており、サービス提供と合わせて必要な製品を顧客に提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、経常利益および当期利益ともに増加基調を維持しており、売上の伸長に伴って利益もしっかりと確保できていることが分かります。利益率も安定して推移しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 202億円 | 217億円 | 228億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 17億円 | 20億円 |
| 利益率(%) | 7.6% | 8.0% | 8.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 12億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、収益性は維持されています。営業利益も増益となっており、本業の儲けを示す営業利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 217億円 | 228億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 45億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.1% | 19.9% |
| 営業利益 | 17億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 7.6% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が2億円(同6%)を占めています。売上原価においては、労務費と外注費が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
全てのサービス区分において売上高が増加しており、特に主力のコンサルティング及びシステムインテグレーションサービスが堅調に推移しています。システムマネージメントサービスも増収となり、全社的な事業拡大に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| コンサルティング及びシステムインテグレーションサービス | 169億円 | 177億円 |
| システムマネージメントサービス | 48億円 | 52億円 |
| 商品販売 | 0.1億円 | 0.0億円 |
| 連結(合計) | 217億円 | 228億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は「健全型」です。本業で得たキャッシュで借入金の返済や株主還元を行いつつ、必要な投資も実施している安定した財務状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 8億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -4億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「しっかりとしたモノ(システム)づくりと高品質なサービスの提供」を通じて、「すべてのステークホルダーから選ばれる企業」になることをビジョンに掲げています。情報サービスを通じて人と社会の豊かさに貢献することを目指し、顧客との信頼関係を重視した経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、共創によりITと社会を繋ぎ豊かな未来を創造するため、グループパーパスとして「社会とITの未来をともにつなぐ(Connecting people one world)」を制定しています。また、「IKIのSDGs宣言」を通じて、平和と公正な社会、すべての人が生き生きと活躍できる社会、豊かで持続可能な社会の実現を目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は安定的かつ継続的な企業価値向上を目指し、中期経営方針のもと新たに策定した中期経営計画を推進しています。最終年度となる2028年3月期における数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:252億円
* 営業利益:22.3億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「中核事業の拡大」「次期成長事業の創出」「事業基盤の強化」を3本の柱として成長戦略を推進しています。中核事業ではクラウドネイティブな開発への対応力を強化し、パートナー連携を進めます。次期成長事業ではDX対応力を強化し、AIやIoTなどの先端技術を活用したイノベーションに取り組みます。また、サステナビリティ経営や人的資本への投資を通じて事業基盤を盤石なものにします。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を重要な資本と捉え、「プロフェッショナル人材育成・リスキル」「ダイバーシティ&インクルージョン推進」「エンゲージメント&職場環境向上」を三つの柱としています。新技術習得のための研修実施や、女性管理職登用の向上、健康経営や働き方改革を推進し、従業員が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.3歳 | 15.3年 | 5,756,934円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | 69.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 86.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 87.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(自己都合)(4.28%)、エンゲージメントスコア(50.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化に伴うリスク
情報サービス業界では競争激化や技術革新により案件価格が低下する可能性があります。経済情勢の急激な変化や価格競争の激化、先進技術への対応遅れなどが生じた場合、不採算案件の増加や案件獲得の失敗につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術要員調達リスク
事業の根幹を成す優秀な技術者の確保・育成が困難になった場合、高度化・多様化する技術ニーズに対応できなくなる可能性があります。同社は新卒・キャリア採用や教育・研修、協力企業からの派遣受け入れにより要員の確保に努めています。
■(3) システム開発業務に伴うリスク
システムの複雑化や短納期化が進む中、計画通りに品質を確保できない場合や開発が遅延した場合、コストが増大する可能性があります。同社は専門部署による受注段階でのチェックや進捗管理を通じて、こうした事態の防止に取り組んでいます。
■(4) 特定顧客への依存に関するリスク
主要顧客上位5社(グループ企業含む)への売上高が全体の5割以上を占めており、これらの顧客の事業方針変更や経営状態の変化が、同社の業績に影響を与える可能性があります。同社は新規顧客獲得や事業拡大により、特定の顧客への依存度を下げる努力を続けています。



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