NSD 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NSD 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の独立系システムインテグレーター。金融、産業、社会基盤向けのシステム開発およびソリューション事業を展開しています。2025年3月期は、社会基盤ITやDX関連事業の伸長により、連結売上高は1,078億円、営業利益は168億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社NSD の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NSDってどんな会社?


金融機関や社会インフラ企業向けのシステム開発を主力とする独立系SIerで、高収益体質が特徴です。

(1) 会社概要


1969年に大阪市で設立され、1999年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2010年に現在の商号へ変更し、2013年には米国現地法人を設立するなど海外展開も進めています。近年では2019年にNSD‐DXテクノロジーを設立して先端技術分野を強化し、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は4,455名、単体では3,256名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は外国法人のSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANYです。安定した株主構成のもと、長期的な視点での経営が行われています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.77%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 株式会社みずほ銀行) 8.16%
IPC株式会社 6.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は今城義和氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
今城 義 和 代表取締役社長 1984年入社。執行役員第1システム本部長、専務取締役営業統括本部長などを歴任し、2011年4月より現職。
前川 秀 志 取締役専務執行役員コーポレートサービス本部長経営企画本部長 1982年入社。取締役執行役員管理本部長、常務取締役ITサービス事業本部長などを経て、2024年4月より現職。
矢本  理 取締役専務執行役員営業統括本部長 1987年入社。執行役員第5システム本部長、取締役常務執行役員公共・通信事業本部長などを経て、2018年4月より現職。
黄 川 田 英 隆 取締役常務執行役員イノベーション戦略事業本部長コンサルティング事業本部担当 1998年入社。執行役員先端技術推進本部長などを経て、2025年4月より現職。NSD‐DXテクノロジー代表取締役社長を兼務。


社外取締役は、梶原祐理子(元日本放送協会経営委員会事務局専任局長)、川股篤博(元テーブルマークホールディングス社長)、陣内久美子(陣内法律事務所代表弁護士)、武内徹(元日東電工取締役専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発事業(金融IT)」「システム開発事業(産業IT)」「システム開発事業(社会基盤IT)」「システム開発事業(ITインフラ)」および「ソリューション事業」を展開しています。

(1) システム開発事業(金融IT)


銀行、保険会社、証券会社などの金融機関向けに、ソフトウェア開発やシステムコンサルティング等のサービスを提供しています。

収益は、顧客である金融機関からのシステム開発費やコンサルティング料等により構成されています。運営は主にNSDが行うほか、NSD‐DXテクノロジーやアートホールディングスなどの子会社も関与しています。

(2) システム開発事業(産業IT)


製造業や商業などの一般企業に対して、ソフトウェア開発やシステムコンサルティング等のサービスを提供しています。

収益は、顧客企業からのシステム開発受託費等により構成されています。運営は主にNSDが担い、NSD‐DXテクノロジー、アートホールディングス、FSKなどの子会社とも連携しています。

(3) システム開発事業(社会基盤IT)


通信業、運輸業、電気・ガス・水道業といったインフラ企業や公共団体に対して、ソフトウェア開発やシステムコンサルティング等のサービスを提供しています。

収益は、インフラ企業や公共団体からの開発費等により構成されています。運営は主にNSDが行い、NSD‐DXテクノロジー、アートホールディングス、FSKなどのグループ会社が協力して事業を展開しています。

(4) システム開発事業(ITインフラ)


IT基盤やネットワークの構築、システムコンサルティング、システムの保守・運用等のサービスを提供しています。

収益は、顧客からのインフラ構築費や保守・運用費等により構成されています。運営は主にNSDが行い、アートホールディングス、FSK、NSD International,Inc.などの子会社も事業に参画しています。

(5) ソリューション事業


システムを利用したサービスの提供やシステムプロダクトの販売を行っており、汎用性の高いソリューションから業務特化型のものまで幅広く提供しています。

収益は、システム利用料やプロダクト販売代金等により構成されています。運営はNSDに加え、アートホールディングス、ノーザ(医療関連)、ステラス(HR関連)、シェアホルダーズ・リレーションサービス(株主優待関連)などの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近2期で1,000億円台に到達しました。利益面でも経常利益、当期純利益ともに増加基調を維持しており、利益率も15%前後と高い水準で推移しています。安定した成長と高収益性を両立していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 662億円 712億円 780億円 1,013億円 1,078億円
経常利益 100億円 117億円 127億円 153億円 170億円
利益率(%) 15.0% 16.4% 16.2% 15.1% 15.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 65億円 76億円 98億円 112億円 109億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は約25%前後で推移しています。営業利益率も15%台を維持しており、販管費等のコストコントロールを行いつつ、効率的に利益を創出する収益構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,013億円 1,078億円
売上総利益 250億円 275億円
売上総利益率(%) 24.6% 25.5%
営業利益 152億円 168億円
営業利益率(%) 15.0% 15.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が36億円(構成比34.1%)、のれん償却額が15億円(同13.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで前期比増収を達成しており、特に社会基盤ITが大きく伸長しました。利益面では、ソリューション事業を除く全てのセグメントで増益となり、産業ITの利益率改善が目立ちます。金融ITは依然として最大の収益源であり、安定した収益基盤となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
金融IT 309億円 325億円 57億円 63億円 19.5%
産業IT 237億円 252億円 29億円 37億円 14.9%
社会基盤IT 203億円 224億円 40億円 46億円 20.3%
ITインフラ 118億円 123億円 21億円 22億円 17.6%
ソリューション事業 145億円 154億円 9億円 8億円 5.0%
連結(合計) 1,013億円 1,078億円 152億円 168億円 15.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、内部資金及び営業キャッシュ・フローを基本に資金需要をまかなっており、必要に応じて金融機関からの借入等も活用します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を主因として資金が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の償還収入等を主因として資金が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等を主因として資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 122億円 123億円
投資CF -178億円 9億円
財務CF -58億円 -103億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人や社会に役立つソリューションの創造・提供を通じて、社会の健全な発展に積極的に貢献する」ことを経営理念としています。社員・顧客・株主との共存共栄を企業活動の原点とし、常に最先端のIT技術を探求することで、社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「社員とともに」「お客様とともに」「株主の皆様へ」という3つの視点から経営の基本方針を定めています。社員を最大の財産と認識し、夢と誇りを持てる働きがいのある会社を目指すと同時に、顧客の発展への寄与や公平で透明性の高い経営による企業価値向上を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社はDX・AIソリューション事業への取り組みを加速し、付加価値の高い企業体質への変革を図っています。2026年3月期を最終年度とする経営目標として、以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:1,132億円
* 営業利益:171億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「人とITの未来」を提案する会社を目指し、システム開発事業の持続的成長と、DX・AI分野への注力を基本戦略としています。具体的には、既存事業での専門性強化に加え、AI・IoT製品開発やコンサルティング事業の強化を進めています。また、医療・ヘルスケア等のソリューション事業の拡大や、サステナビリティ活動の推進、優秀な人材の確保にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材をグループ最大の財産と位置づけ、DX・AI・ソリューション事業に対応できる技術スキルやプロジェクトマネジメント力の向上を目指しています。新卒およびキャリア採用の強化に加え、社内研修やインセンティブ制度の充実を通じて、多様な人材が活躍し働きがいを感じられる環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.5歳 15.3年 7,167,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.6%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 84.7%
男女賃金差異(正規雇用) 84.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 83.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(72.3%)、女性新入社員比率(49.7%)、ストレスチェック受検率(95.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業全般におけるリスク


社会・経済情勢の変化やIT技術の変革、競合他社との競争、顧客の信用状況などにより、業績が変動する可能性があります。特に大型案件の成否やプロジェクトの不採算化は業績に影響を与えるため、プロジェクト管理を含むリスクマネジメントを徹底しています。

(2) 人材の確保・育成に関するリスク


事業の継続的成長には優秀な社員の採用・育成および協力会社からの人材提供が不可欠です。これらが想定通りに進まない場合、生産性低下やコスト増大により業績に影響が生じる可能性があります。そのため、職場環境の整備や研修制度の充実、協力会社との関係構築に注力しています。

(3) 情報セキュリティ及び知的財産権に関するリスク


顧客の機密情報や個人情報を取り扱う業務の性質上、情報漏洩や不正アクセス、知的財産権の侵害が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求を招く恐れがあります。これに対し、各種委員会による教育や全社的なセキュリティ対策を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。