※本記事は、株式会社NSDの有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NSDってどんな会社?
同社は独立系のシステムインテグレーターとして、システム開発やソリューション事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1969年4月に日本システムディベロップメントとして設立されました。1999年11月に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たし、2010年10月に現在のNSDへ商号を変更しています。2022年4月の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、近年は積極的なM&Aによる事業拡大やAI関連事業の強化を推進しています。
同社グループは、連結従業員数4,555名、単体従業員数3,305名の体制で事業を展開しています。主要株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位、第3位にも国内外の信託銀行やカストディ銀行が名を連ねており、機関投資家からの保有比率が高い安定した資本基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.24% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE FIDELITY FUNDS(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 4.28% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表取締役社長は今城義和氏が務めており、取締役の社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 今城義和 | 代表取締役社長 | 1984年同社入社。システム本部長等を経て2009年代表取締役社長に就任。2011年より現職。 |
| 黄川田英隆 | 代表取締役専務執行役員営業統括本部長 | 1998年同社入社。先端技術戦略事業本部長等を経て2026年より現職。 |
| 矢本理 | 取締役専務執行役員グループ経営統括本部長開発サポート本部担当 | 1987年同社入社。公共・通信事業本部長等を経て2026年より現職。 |
| 三池真優子 | 取締役執行役員コーポレートサービス本部長 | 2013年同社入社。コーポレートサービス本部人事部長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、梶原祐理子(元日本放送協会千葉放送局長)、川股篤博(元日本たばこ産業執行役員)、陣内久美子(陣内法律事務所代表弁護士)、武内徹(元日東電工取締役専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システム開発事業(金融IT)」「システム開発事業(産業IT)」「システム開発事業(社会基盤IT)」「システム開発事業(ITインフラ)」「ソリューション事業」を展開しています。
■システム開発事業(金融IT)
銀行、保険会社、証券会社等の金融機関に対して、ソフトウエア開発やシステムコンサルティング等のサービスを提供しています。
システム開発やコンサルティングサービスの提供に伴う請負契約および準委任契約に基づく対価を収益源としています。同事業の運営は主にNSDやNSD AIテクノロジー等が担当しています。
■システム開発事業(産業IT)
製造業、商業等の企業に対して、ソフトウエア開発やシステムコンサルティング等のサービスを提供しています。
顧客企業の業務課題を解決するためのシステム開発およびコンサルティングの提供による対価を収益源としています。運営は主にNSDやNSD AIテクノロジー等が担っています。
■システム開発事業(社会基盤IT)
通信業、運輸業、電気・ガス・水道業等の企業や公共団体に対して、ソフトウエア開発やシステムコンサルティング等のサービスを提供しています。
社会インフラを支えるシステム開発や保守運用業務を通じた対価を収益としています。同事業の運営は主にNSDやFSK等が担当しています。
■システム開発事業(ITインフラ)
IT基盤やネットワークの構築、システムコンサルティング、システムの保守・運用等のサービスを提供しています。
顧客のITインフラ構築プロジェクトや運用・保守契約に応じた対価を主な収益源としています。事業の運営は主にNSDやFSK等が担っています。
■ソリューション事業
セキュリティやヒューマンリソース管理などの汎用的なプロダクトから、医療・物流等の業務特化型ソリューションまでを提供しています。
汎用・特化型プロダクトの販売代金や、システム利用に伴うサービス提供料を主な収益源としています。運営は主にNSDやノーザ等が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の業績推移をみると、直近5年間で売上高と経常利益はともに右肩上がりで拡大しています。積極的なM&AやDX・AI関連事業への注力により、収益規模が順調に成長していることがわかります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 712億円 | 780億円 | 1,013億円 | 1,078億円 | 1,178億円 |
| 経常利益 | 117億円 | 127億円 | 153億円 | 170億円 | 193億円 |
| 利益率(%) | 16.4% | 16.2% | 15.1% | 15.8% | 16.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 76億円 | 98億円 | 112億円 | 109億円 | 127億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および各段階利益は前期から順調に成長しており、売上総利益率は安定した水準を保ちながら、営業利益率の向上を実現しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,078億円 | 1,178億円 |
| 売上総利益 | 275億円 | 298億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.5% | 25.3% |
| 営業利益 | 168億円 | 191億円 |
| 営業利益率(%) | 15.6% | 16.2% |
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上高はすべて前期比で増加しています。特に金融ITやソリューション事業における成長が全体を牽引しており、旺盛なシステム開発やDXニーズを確実に取り込んでいることがうかがえます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 金融IT | 325億円 | 351億円 |
| 産業IT | 252億円 | 277億円 |
| 社会基盤IT | 224億円 | 241億円 |
| ITインフラ | 123億円 | 132億円 |
| ソリューション事業 | 154億円 | 177億円 |
| 連結(合計) | 1,078億円 | 1,178億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 123億円 | 162億円 |
| 投資CF | 9億円 | -31億円 |
| 財務CF | -103億円 | -105億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も75.7%といずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社の経営理念は、社員・お客様・株主との共存共栄を企業活動の原点とし、常に最先端のIT技術を探求することです。人や社会に役立つソリューションの創造・提供を通じて、社会の健全な発展に積極的に貢献することを使命として掲げています。この理念のもと、ステークホルダーと信頼関係を築き事業を展開しています。
■(2) 企業文化
社員が最大の財産であるとの認識に立ち、一人ひとりの持つ無限の可能性を信じ、健全で働きやすい環境を提供する文化を重視しています。夢と誇りを持てる働きがいのある会社を目指すとともに、持続可能な社会の実現に向け、ESGに関する全社一丸となった取り組みや健康経営の推進を経営の基本方針に据えています。
■(3) 経営計画・目標
同社はAIの進歩などの社会変化に対応すべく、DX・AIソリューション事業への取り組みを加速し、より付加価値の高い企業体質への変革を図る中期経営計画を推進しています。2029年3月期の目標として以下の数値を掲げています。
・連結売上高:1,500億円
・営業利益:234億円
・EBITDA:264億円
・当期純利益:154億円
・ROE:18.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
長期的に「人とITの未来」を提案する会社を目指し、システム開発の中流工程にとどまらず上流工程を含むコンサルティング領域へとビジネスの中心をシフトさせています。また、AI関連技術の活用やソリューション事業の規模拡大を進めています。
・システム開発事業における持続的な成長
・DXやAI分野への一層の注力
・コンサルティング事業の強化
・ソリューション事業における規模の拡大
・SDGs/ESGに対する取り組みの強化
・優秀な人材の確保
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員が最大の財産」との認識のもと、事業計画に沿った積極的な採用活動を進めています。エンジニア不足に対応するためポテンシャル人材の新卒採用や即戦力のキャリア採用を強化するほか、ITスキルの高度化に向けた多様な技術研修を実施し、多様な人材が活躍できる職場環境の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.2歳 | 14.9年 | 7,510,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.7% |
| 男性育児休業取得率 | 75.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 84.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 79.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(74.3%)、女性新入社員比率(54.1%)、女性社員比率(23.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) DXやAI分野への対応の遅れによるリスク
DXやAI分野への対応の遅れから生じる受注機会の逸失により、業績が変動する可能性があります。これに対し、社内組織を中心とした関連技術の蓄積や研究開発、人材育成を通じて、責任ある技術の提供に努めています。
■(2) 人材の確保・育成に関するリスク
安定的な事業運営や持続的成長には優秀な社員の採用・育成や協力会社からの人材確保が不可欠です。人材確保が想定どおりに進まない場合、生産性低下等が生じる可能性があるため、職場環境の整備や研修制度の充実を図っています。
■(3) 情報セキュリティ及び知的財産権に関するリスク
顧客の重要な情報を扱う事業の性質上、情報資産の流出や外部からの不正侵入、知的財産権の侵害が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償を招く恐れがあります。そのため、各種委員会による指導やセキュリティ対策を徹底しています。
■(4) 自然災害・感染症等の発生に伴うリスク
巨大地震等の自然災害や感染症の発生により、主要事業所や従業員が被害を受けた場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、安否確認訓練の実施や事業継続計画の改善、多様な働き方の導入により対応しています。



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