※本記事は、進学会ホールディングスの有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 進学会ホールディングスってどんな会社?
進学会ホールディングスは、全国展開する学習塾事業とスポーツクラブ運営を主力とする教育・健康支援企業です。
■(1) 会社概要
同社は1976年に北大学力増進会として札幌市で設立されました。1984年には不動産事業部門を新設し、1987年にスポーツクラブ稼働を開始して事業を多角化しました。1988年に店頭市場へ株式を公開し、2017年には持株会社体制への移行に伴い、現在の進学会ホールディングスへと商号を変更しています。
筆頭株主は不動産賃貸等を行う平井興産であり、第2位は個人株主の平井睦雄氏です。第3位には資本業務提携先である学研ホールディングスが名を連ねています。現在の従業員数は、連結で95名、単体で4名という体制でグループの運営を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社平井興産 | 38.27% |
| 平井 睦雄 | 13.99% |
| 学研ホールディングス | 6.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役は平井将浩氏が務めており、社外取締役の比率は約28.6%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平井 将浩 | 代表取締役 | 2009年進学会入社。2020年専務取締役、2022年代表取締役CFO等を経て、2023年より現職。 |
| 松井 信幸 | 取締役 | 2002年進学会入社。郡山本部長、個別指導本部長や監査等委員を経て、2025年より現職。 |
| 柴野 広太郎 | 取締役 | 2002年進学会入社。青森本部長や北東北エリア代表、管理部長等を経て、2025年より現職。 |
| 竹山 正輝 | 取締役 | 2004年進学会入社。富山本部長、管理部経営管理系部長等を経て、2024年より現職。 |
| 福島 純 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 2002年進学会入社。岩見沢本部長や南東北エリア代表等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、日向豊(北海道労働局札幌東公共職業安定所)、成田英典(札幌市生活支援体制整備事業生活支援コーディネーター札幌中央事業所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「教育関連事業」「スポーツ事業」「不動産事業」「資金運用事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 教育関連事業
同セグメントでは、小学生から高校生までを対象とした学習塾の経営と、小・中学校向け教育ソフトの販売を行っています。公立高校受験指導を主軸としつつ、大学受験や中学受験部門への対象拡大にも注力し、質の高い授業や受験情報を提供しています。
収益源は生徒や保護者からの授業料および講習会費、教材販売代金などです。事業の運営は進学会や浜進学会が行っており、教育ソフトの販売についてはホクシンエンタープライズに委託して展開しています。
■(2) スポーツ事業
同セグメントでは、安全で快適な施設での健康増進を目的として、会員制スポーツクラブの経営を行っています。幅広い年齢層の会員ニーズや競合状況に配慮しながら、幼稚園や小学校からのスイミング授業の受託など、質の高いサービスを提供しています。
収益源は、スポーツクラブ利用者からの入会金や月会費、レッスン受講料などです。この事業の運営は、進学会が主体となって担っています。
■(3) 不動産事業
同セグメントでは、マンション等の不動産所有と賃貸管理、不動産売買、ならびに学習塾における教室の管理や清掃サービスを提供しています。自社所有ビル等を活用し、テナントへの賃貸を促進して安定した事業基盤の構築を図っています。
収益源は、テナントや入居者からの不動産賃貸収入および不動産売買に伴う売却収入などです。賃貸マンションや教室の管理・清掃はノースパレスに委託しており、不動産の売買事業はホクシンビル開発が行っています。
■(4) 資金運用事業
同セグメントでは、グループの余剰資金や借入金等を用いた資金運用を行っています。国内外の株式市場や有価証券市場の動向を注視し、ポートフォリオの観点から株式や債券に分散投資するなど、中長期的な収益確保を目指しています。
収益源は、株式等の売買目的有価証券に係る配当金、売却益および評価益などです。実際の資金運用業務は、SG総研が専任で行っています。
■(5) その他
同セグメントは報告セグメントに含まれない事業であり、学習塾等で使用する教材の印刷や、グループ各社が使用する備品・消耗品の仕入および販売などのサービスを展開しています。
収益源は、グループ内企業からの教材印刷代金や備品等の販売代金などです。この事業の運営はホクシンエンタープライズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は減少傾向から直近2期で回復の兆しを見せています。一方で、経常利益および当期利益は継続して赤字を計上しており、とくに当期は株式市場の変動に伴う有価証券評価損の発生等により損失幅が再び拡大する厳しい状況となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 138.5億円 | 66.7億円 | 47.2億円 | 62.5億円 | 67.1億円 |
| 経常利益 | -95.5億円 | -14.8億円 | -13.6億円 | -4.8億円 | -15.7億円 |
| 利益率(%) | -69.0% | -22.2% | -28.8% | -7.7% | -23.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -57.9億円 | -18.1億円 | -13.9億円 | -5.8億円 | -17.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、資金運用事業における売上原価の増加等により売上総利益が赤字に転落しています。それに伴い営業赤字も大幅に拡大しており、本業の収益性改善が急務となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 62.5億円 | 67.1億円 |
| 売上総利益 | 1.7億円 | -9.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 2.8% | -14.8% |
| 営業利益 | -4.4億円 | -15.3億円 |
| 営業利益率(%) | -7.0% | -22.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が1.7億円(構成比31%)、給与手当が0.8億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である資金運用事業と不動産事業が増収を牽引しました。一方で、教育関連事業は不採算会場の閉鎖等の影響で減収となり、スポーツ事業も光熱費高騰等の影響を受け微減となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 教育関連事業 | 11.7億円 | 10.5億円 |
| スポーツ事業 | 3.4億円 | 3.3億円 |
| 不動産事業 | 7.8億円 | 13.0億円 |
| 資金運用事業 | 35.4億円 | 36.3億円 |
| その他 | 4.2億円 | 3.9億円 |
| 連結(合計) | 62.5億円 | 67.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業キャッシュ・フローはマイナス、投資キャッシュ・フローと財務キャッシュ・フローがプラスとなっており、本業のマイナスを資産売却と資金調達で補填する「救済型」のキャッシュ・フロー状況です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に有価証券の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-21.5%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も36.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12.3億円 | -27.3億円 |
| 投資CF | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 財務CF | 4.2億円 | 6.8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「未来への創造、可能性への挑戦」をスローガンとして掲げています。最新の情報と充実したサービスの提供を通じて、豊かな社会の実現に貢献することを使命としており、教育関連事業では的確な受験情報と質の高い授業を、スポーツ事業では安全快適な施設での健康増進を促進することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客からの信頼獲得を第一としつつ、企業の成長の源となる人材の育成と組織体制の強化に取り組んでいます。従業員にとどまらず、生徒や地域社会の可能性を広げるとともに、企業自身も無限の可能性に挑戦していく姿勢を推進しており、危機を乗り越えるために全社員で力を合わせることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、創業以来の高収益体質を維持することを経営上の重要な目標と位置づけています。具体的な数値目標として、売上高経常利益率において通期で15%以上の確保を目指し、採算の効率化に注力しています。
* 売上高経常利益率:通期で15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、主要な教育関連事業において、公立高校受験指導を柱としつつ、大学受験や中学受験の生徒層獲得による対象年齢の拡大を図ります。また、新規地域への進出や不採算地区からの撤退を含めた教室のスクラップ&ビルドを推進します。さらに、提携各社とのアライアンス強化や、全国どこでも受講可能なオンライン塾の展開を通じて、エリア拡大と新規顧客の獲得を進めていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、人材を重要な経営資本と位置付け、「採用」「育成」「定着」の好循環を通じてサービス品質の向上と事業競争力の強化を図ることを基本方針としています。新入社員研修やOJTによる専門知識の習得を支援するとともに、変形労働時間制の併用など多様な人材が能力を発揮できる職場環境の整備や、適切な労務管理の徹底に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 55.4歳 | 30.9年 | 4,835,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 97.4% |
※女性管理職比率および男性育児休業取得率については、集計対象となる従業員がいないため有報には該当数値の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 資金運用事業における株式市場変動への依存
同社グループの売上高は資金運用関連事業の比率が高く、株式市場の影響を受けやすい構造となっています。ETFの短期売買等に伴う売却損の拡大や、株価急落による有価証券評価損等の増加が、グループの運用損益や純資産に悪影響を及ぼし、財務内容を悪化させる可能性があります。
■(2) 少子化や個人消費低迷による影響
学習塾業界は、児童・生徒の絶対数の減少という少子化の影響に直面しています。将来的に出生者数が急速に減少した場合や、将来的な収入不安等に伴う個人消費の低迷により教育関連への支出が抑えられた場合、同社の業績にネガティブな影響を与えるリスクがあります。
■(3) 教室展開における立地や競合との競争
エリアの拡大や既進出地区の拡充に向け、同社は教室の新設や移転を機動的に行っていますが、必ずしも第一希望の立地に教室を構えられるとは限りません。競合他社との競争により当初計画どおりの生徒数が集まらない場合、教室の閉鎖を余儀なくされ、損失を計上する可能性があります。
■(4) 個人情報の流出による信用失墜
同社の子会社は、学習塾運営において相当数の生徒の個人情報データを保有しています。情報の管理には万全を期していますが、万一何らかの事情により外部へデータが流出した場合、社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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