クレオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クレオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クレオは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、人事給与・会計ソリューション「ZeeM」などのソリューションサービスやシステム受託開発を主力とするIT企業です。直近の業績は、ストックビジネスの堅調な推移により増収増益を達成しました。今後もAI活用とDX推進により持続的な成長を目指しています。


※本記事は、株式会社クレオの有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クレオってどんな会社?


同社は人事給与・会計システム「ZeeM」などの自社製品とシステム受託開発を主力とするIT企業です。

(1) 会社概要


1974年に設立され、1989年に現在の社名に変更しました。2004年にジャスダックに上場し、2005年にはヤフー(現LINEヤフー)と資本・業務提携を結びました。2011年に持株会社体制へ移行し、組織再編を実施しています。2013年に筆頭株主がアマノに異動し、翌年に同社と業務提携を行いました。

現在、同社グループの従業員数は連結で1,167名、単体で507名体制です。筆頭株主は業務提携先であるアマノで、第2位は資本提携先であるLINEヤフー、第3位は信託業務を行う日本カストディ銀行(信託E口)となっています。

氏名 持株比率
アマノ 32.59%
LINEヤフー 13.55%
日本カストディ銀行(信託E口) 4.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長 CEOは柿﨑淳一氏、代表取締役社長 COOは二宮桐人氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
柿﨑 淳一 代表取締役会長 CEO 1987年同社入社。ソリューション事業部長等を経て2017年に代表取締役社長。2026年より現職。
二宮 桐人 代表取締役社長 COO 1987年アマノ入社。同社執行役員営業総括等を経て2021年同社取締役、2026年より現職。
佐々木 尚也 取締役 1987年同社入社。クレオソリューション取締役等を経て2023年に同社取締役、2026年より現職。


社外取締役は、春木謙一氏(LINEヤフー ディビジョンリード)、室井清孝氏(アマノ 執行役員)、木脇秀己氏(元富士通 執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソリューションサービス事業」「受託開発事業」「システム運用・サービス事業」「サポートサービス事業」を展開しています。

ソリューションサービス事業


人事給与・会計ソリューション「ZeeM」をはじめとするソリューションサービスを提供しています。主に法人顧客向けに自社パッケージ製品のライセンス販売や、導入・構築・アドオン開発を行っています。

製品の保守サービス利用料や、クラウド型サービスのサブスクリプション利用料が安定的な収益源となっています。事業の運営は同社およびアマノが共同で行っています。

受託開発事業


主に富士通グループやアマノをはじめとする国内大手企業に対して、情報システムの受託開発サービスを提供しています。モダナイゼーションやクラウド移行支援など、時流に即した高付加価値領域の開発も手がけています。

プロジェクトの進捗度や作業完了に応じた受託開発費が主な収益源です。事業の運営は同社およびアマノが担い、システム開発事業本部やプロダクト開発事業本部が開発を推進しています。

システム運用・サービス事業


主に国内大手ポータルサイト事業者に対して、情報システムの開発や保守、維持、運用サービスを提供しています。LINEヤフーグループなどを主要顧客とし、安定したシステム稼働を支援しています。

サービスが提供される期間および実績業務時間に基づく利用実績に応じたサービス料が主な収益源です。事業の運営は、主に子会社であるココトが行っています。

サポートサービス事業


法人顧客に対して、ヘルプデスクやテクニカルサポートを中心としたサポートおよびサービス、コンタクトセンターサービスを提供しています。

実績業務時間やサービス提供期間に基づく対価が収益源となります。事業の運営は、主に子会社であるブライエやアダムスコミュニケーションに加え、アマノが共同で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は140億円台後半で安定的に推移しており、直近2期は連続して増収となっています。経常利益も底打ち後は回復傾向にあり、利益率は6%台から8%台へと着実に改善しています。主力のソリューションサービス事業におけるストックビジネスの拡大が、収益性の向上に大きく寄与しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 148億円 147億円 144億円 145億円 146億円
経常利益 11億円 9億円 11億円 12億円 12億円
利益率(%) 7.5% 6.2% 7.7% 7.9% 8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 2億円 7億円 7億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高の微増に対して売上総利益はそれ以上の伸びを示しており、売上総利益率は25%台へと向上しています。徹底した不採算プロジェクトの抑制や、高付加価値領域へのシフトが奏功し、営業利益および営業利益率ともに前年を上回る結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 145億円 146億円
売上総利益 36億円 37億円
売上総利益率(%) 24.5% 25.2%
営業利益 11億円 12億円
営業利益率(%) 7.8% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が8.7億円(構成比35.0%)、広告宣伝費が1.0億円(同4.0%)、賞与引当金繰入額が0.9億円(同3.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のソリューションサービス事業はストックビジネスの拡大により増収を牽引しました。システム運用・サービス事業も主要顧客からの受注が堅調に推移し増収となりました。一方で、受託開発事業は製品開発体制の強化を優先した影響で減収となり、サポートサービス事業も顧客の内製化進行により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ソリューションサービス事業 51億円 53億円
受託開発事業 30億円 28億円
システム運用・サービス事業 20億円 22億円
サポートサービス事業 44億円 43億円
連結(合計) 145億円 146億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.4%で、いずれも市場平均を上回っています。
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状態となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 10億円 13億円
投資CF -3億円 -4億円
財務CF -7億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは『人間の想像力』と『世界中のテクノロジー』を結合することで『感動!』を生む変革を起こし豊かな未来社会の実現を目指します。」というグループ理念を掲げています。情報化社会の発展に貢献し、デジタル化が進む未来社会に向けて、環境変化に適応しながら社会課題の解決を図る使命を持っています。

(2) 企業文化


同社グループは、誠実かつ真摯な姿勢でステークホルダーに対する責任を果たし、透明性の高い経営を行うことを重視しています。デジタル人材の育成と「変革を恐れない組織風土の醸成」を重点施策に掲げており、多様な人材が能力や適性に基づき公平に評価され、生き生きと持続的に活躍できる環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


中長期経営ビジョン「VISION2030 持続的成長への変革と創造」のもと、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しています。トップラインのさらなる伸長を図るとともに、株主還元においては資本効率の向上を重視しており、連結配当性向40%超を基本方針として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


DXを重要な経営戦略と位置づけ、2026年に新設した「DX本部」を中心に顧客のDX支援と社内DXの双方を推進しています。営業組織を「クロスセル志向型」へ一本化し、グループ間の事業連携を強化しています。ストックビジネスの拡充やHRテック周辺サービスへの投資、AI等の最新技術と自社サービスの連携による新たな価値創造に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは人材を最重要資産と捉え、「人財の価値を最大化し、個と企業の成長へ繋げる」ことを人材育成方針に掲げています。ITエンジニアの採用競争が激化する中、働きやすい環境の構築と健康経営を推進し、デジタル関連研修やリスキリングを通じてプロフェッショナルとして自律的にキャリアを形成できる支援体制を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 14.3年 5,842,751円


※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外給与及び賞与を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 38.9%
男女賃金差異(全労働者) 79.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 82.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ソリューションサービス事業の商談・導入長期化


中核製品である人事給与・会計システム「ZeeM」は、商談から導入完了までに数ヶ月から1年以上の期間を要し、案件規模の拡大によりさらに長期化する傾向があります。商談の成否や導入期間の延伸によって、売上高や利益の計上時期が計画から大きく乖離する可能性があります。

(2) 受託開発事業における高原価化


受託開発事業では主に請負契約を締結していますが、新技術仕様での開発や想定外の仕様変更により開発工数が見積りを上回り、案件が高原価化するリスクがあります。同社はプロジェクト管理の徹底や開発技術手法の整備により、不採算プロジェクトの抑制に努めています。

(3) 特定顧客への依存と内製化の進展


システム運用・サービス事業の売上高の約66%はLINEヤフーへの提供によるものです。同社の経営方針変更などにより業務が内製化された場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、サポートサービス事業でも顧客の組織統合に伴う内製化により、業務委託が停止・縮小されるリスクがあります。

(4) 人材の獲得および育成


ITエンジニアの採用競争が過熱する中、優秀な人材の継続的な確保と育成に大きく依存しています。計画通りの採用が進まない場合や人材の流出が想定を超えた場合、事業の拡大やサービスの品質維持に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。