クレオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クレオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のIT企業です。人事給与・会計システム「ZeeM」等のソリューションサービスや、大手企業向けの受託開発、システム運用、サポートサービスを展開しています。2025年3月期の業績は、売上高145億円(前期比1.2%増)、営業利益11億円(同4.2%増)で増収増益となりました。


※本記事は、株式会社クレオ の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クレオってどんな会社?


人事給与・会計ソリューション「ZeeM」の提供や大手企業向けシステム開発を行うIT企業です。

(1) 会社概要


1974年に設立され、1990年に株式を公開しました。2011年には持株会社体制へ移行しグループ再編を実施しました。2013年にアマノが筆頭株主となり、資本関係を強化しています。2021年には給与クラウドサービス「ジームクラウド」の販売を開始し、2024年に創業50周年を迎えました。

連結従業員数は1,178名、単体では503名体制です。筆頭株主は勤怠管理システム等を手掛ける事業会社のアマノで、第2位は主要取引先でもあるLINEヤフー、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
アマノ 32.59%
LINEヤフー 13.55%
日本カストディ銀行(信託E口) 4.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は柿﨑淳一氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
柿﨑 淳一 代表取締役社長 1987年同社入社。ソリューション事業部長、クレオソリューション社長などを経て、2017年より現職。
二宮 桐人 代表取締役副社長 1987年アマノ入社。同社執行役員、取締役などを経て、2023年より現職。
佐々木 尚也 取締役 1987年同社入社。執行役員、常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、春木謙一(LINEヤフー技術管理統括本部技術管理本部管理支援部部長)、室井清孝(アマノ執行役員経営企画本部長)、木脇秀己(ベース社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソリューションサービス事業」「受託開発事業」「システム運用・サービス事業」および「サポートサービス事業」を展開しています。

(1) ソリューションサービス事業


人事給与・会計ソリューション「ZeeM」をはじめとする業務効率化や経営課題解決のためのソリューションを提供しています。主に人事・総務・経理部門などの管理部門を顧客とし、HRソリューションの拡販にも注力しています。

収益は、顧客からの製品ライセンス料、保守サービス料、クラウドサービスの利用料、導入支援やカスタマイズ開発に対する対価からなります。運営は主に同社が担当しています。

(2) 受託開発事業


富士通グループやアマノをはじめとする大手企業に対し、業務システムなどの受託開発サービスを提供しています。長年の信頼関係を基盤とした安定的な受注が特徴です。

収益は、システム開発案件ごとの請負代金や準委任契約に基づく開発支援対価として顧客から受領します。運営は主に同社が担当しています。

(3) システム運用・サービス事業


主に国内大手ポータルサイト事業者であるLINEヤフーおよびそのグループ会社に対し、システムの開発・保守・運用サービスを提供しています。

収益は、開発・保守・運用業務の対価として、サービス提供期間や実績業務時間に応じて顧客から受領します。運営は主に子会社のココトが担当しています。

(4) サポートサービス事業


企業向けヘルプデスクやテクニカルサポートなどのサポートサービス、および社会調査・市場調査などのコールセンターサービスを提供しています。

収益は、エンジニア派遣やコールセンター業務の委託料として、サービス提供期間や業務量に応じて顧客から受領します。運営は主に子会社のブライエおよびアダムスコミュニケーションが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は140億円台半ばで安定的に推移しています。利益面では、経常利益が9億円から12億円の間で推移しており、底堅い収益性を維持しています。当期純利益も毎期黒字を確保しており、安定した経営基盤を築いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 147億円 148億円 147億円 144億円 145億円
経常利益 12億円 11億円 9億円 11億円 12億円
利益率(%) 8.1% 7.5% 6.2% 7.7% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 7億円 5億円 7億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益および営業利益は共に増加し、利益率も改善傾向にあります。売上原価の管理や高付加価値化への取り組みが奏功し、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 144億円 145億円
売上総利益 34億円 36億円
売上総利益率(%) 23.6% 24.5%
営業利益 11億円 11億円
営業利益率(%) 7.6% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が11億円(構成比44%)、給料手当及び賞与が8億円(同35%)を占めています。

(3) セグメント収益


ソリューションサービス事業はクラウド利用料の伸長等により増収増益となりました。システム運用・サービス事業も堅調で増益を達成しました。一方、受託開発事業は高原価案件の影響等で減益、サポートサービス事業は主要顧客の内製化影響等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ソリューションサービス事業 47億円 51億円 7億円 9億円 17.9%
受託開発事業 30億円 30億円 6億円 6億円 18.3%
システム運用・サービス事業 20億円 20億円 3億円 3億円 15.2%
サポートサービス事業 46億円 44億円 4億円 3億円 7.3%
連結(合計) 144億円 145億円 11億円 11億円 7.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金の範囲内で投資活動と財務活動(配当や自己株式取得)を行っており、健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 22億円 10億円
投資CF -2億円 -3億円
財務CF -3億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人間の想像力」と「世界中のテクノロジー」を結合することで「感動!」を生む変革を起こし、豊かな未来社会の実現を目指すことを理念としています。情報化社会の発展に貢献しつつ、社会課題の解決と持続的な成長による企業価値向上に努めています。

(2) 企業文化


人財を最重要資産と捉え、働きやすい環境構築や働きがいの向上に努める文化があります。「健康経営」を標榜し、社員の心身の健康保持・増進に取り組んでいます。また、コンプライアンス意識の浸透やリスク管理の徹底を図り、透明性の高い経営を重視する風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


「VISION2030 持続的成長への変革と創造」のもと、2024年4月から2027年3月までの中期経営計画を策定しています。最終年度である2027年3月期には以下の数値目標を掲げています。

- 売上高:180億円
- 営業利益:15億円

(4) 成長戦略と重点施策


ソリューションサービス事業を成長事業と位置づけ、ストックビジネスの拡充や生産性向上によるビジネス創出を推進しています。また、グループ総合力の強化や投資拡大により、持続的成長に向けた事業基盤の再構築を図る方針です。

- 売上高:180億円
- 営業利益:15億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財の価値を最大化し、個と企業の成長へ繋げる」を育成方針に掲げ、個人の成長と安定活躍が業績に貢献できる人事・評価制度を運用しています。多様な人材が活躍できるよう、性別や国籍、採用区分に関わらず能力や適性に応じた登用を行い、働きやすい環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 14.2年 5,780,576円


※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外給与及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.1%
男性育児休業取得率 28.6%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用) 81.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体のCO2排出量(414.1t-CO₂)、重大インシデント発生件数(0件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 商談・導入期間の長期化リスク


主力製品「ZeeM」は導入までに長期間を要するため、商談の成否や導入期間の延伸が業績に乖離を生じさせる可能性があります。これに対し、サブスクリプション型への移行などストック売上比率を高めることで、収益の安定化と平準化を図っています。

(2) エンジニア確保と開発コスト


受託開発事業の売上は稼働可能なエンジニア数に比例するため、安定的な人財確保が課題です。また、開発途中の仕様変更等による工数増加で不採算案件が発生するリスクがあり、PMOによるプロジェクト管理や見積精度の向上で対策を行っています。

(3) 特定顧客への依存リスク


システム運用・サービス事業の売上の約7割はLINEヤフーとの取引であり、同社の経営方針変更や内製化が業績に影響を及ぼす可能性があります。顧客基盤の拡大やサービス範囲の拡充、高付加価値化によりリスクの分散と回避に努めています。

(4) 情報漏洩リスク


サポートサービス事業等では顧客情報などの機密情報を扱うため、漏洩が発生した場合、取引停止や損害賠償請求等の損失を招く可能性があります。セキュリティポリシーの徹底や従業員教育、プライバシーマークやISMSの運用により防止に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。