両毛システムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

両毛システムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

両毛システムズは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、地方自治体などの公共事業や、エネルギー・製造などの社会・産業事業向けにITソリューションを提供する企業です。直近の業績では老朽化したシステムの刷新や行政サービスのデジタル化需要を取り込み、力強い増収増益を達成しており、堅調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社両毛システムズの有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 両毛システムズってどんな会社?


地方自治体や民間企業向けにソフトウェア開発やITシステムを提供する情報サービス企業です。

(1) 会社概要


同社は1970年1月に両毛電子計算センターとして群馬県に設立され、製造業や都市ガス、地方自治体などの分野へ参入しました。1982年に現在の両毛システムズへと商号を変更し、1990年に株式を店頭登録して上場を果たしています。近年はクラウド環境への移行支援などに取り組み、2024年には新たなデータセンターを新設するなど、事業基盤の強化を継続的に進めています。

同社グループの従業員数は連結で1,066名、単体で759名規模となっています。筆頭株主は自動車部品等の製造販売を手掛ける親会社のミツバであり、同社株式の半数以上を保有しています。また、第2位や第3位には銀行や投資運用法人が名を連ねており、安定した株主構成のもとで事業を展開しています。

氏名 持株比率
ミツバ 51.30%
横浜銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) 4.95%
HIKARI TSUSHIN INVESTMENTS OKINAWA 3.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は北澤直来氏が務めており、社外取締役比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
北澤 直来 代表取締役社長社長執行役員 1982年4月同社入社。2009年4月執行役員、2018年6月代表取締役専務執行役員を経て、2019年6月より現職。
山崎 信宏 代表取締役副社長執行役員管理統括本部長 1985年4月同社入社。2011年5月執行役員、2020年4月取締役専務執行役員管理統括本部長を経て、2025年6月より現職。
藤野 修二 代表取締役専務執行役員事業統括本部長事業本部長 1986年4月同社入社。2011年5月執行役員、2020年4月取締役専務執行役員事業統括本部長を経て、2025年6月より現職。
大澤 実 取締役専務執行役員データセンタービジネス統括本部長 1989年4月同社入社。2013年4月執行役員、2020年4月常務執行役員を経て、2025年4月より現職。
上山 和則 取締役常務執行役員 1987年4月同社入社。2013年4月執行役員、2017年6月取締役執行役員を経て、2020年4月より現職。
福田 哲夫 取締役(監査等委員) 1984年4月同社入社。2011年5月執行役員を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、星野陽司(群馬興業代表取締役社長)、小島昇(千代田税理士法人代表)、竹原朋子(東京清新法律事務所副所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共事業」および「社会・産業事業」を展開しています。

公共事業


地方自治体、警察、水道、学校・図書館などの公共市場をターゲットに、ソフトウェア開発や情報処理サービス、システム機器の販売などを展開しています。政府が推進する地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化への対応や、行政サービスのデジタル化に向けたソリューションの提供に注力しています。

システム開発や保守・運用を通じたサービス料のほか、IT機器の販売代金を地方自治体等の顧客から受け取ります。事業の運営は主に両毛システムズが主体となり、子会社の両毛ビジネスサポートなどがヘルプデスクや運用などのアウトソーシング業務を担って連携する体制を構築しています。

社会・産業事業


エネルギー、製造、印刷、流通、医療などの民間市場をターゲットに、システム開発やソリューションサービスを展開しています。次世代モビリティや物流分野におけるシステム研究・開発にも積極的に取り組み、民間企業の業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を支援しています。

システム導入や運用サービス、クラウド環境の構築、自社製品のシステム販売などを通じて民間企業から収益を獲得しています。運営は両毛システムズを中核とし、フィリピンやベトナムに拠点を置く海外子会社とも連携することで、高品質かつ効率的な開発および運用サポート体制を敷いています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高・経常利益ともに右肩上がりの成長を見せています。特に行政のデジタル化需要や民間企業のDX投資を背景に、売上高は着実に拡大を続け、直近では経常利益が大きく伸長して利益率も11%台まで向上するなど、収益基盤の強化が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 155億円 172億円 182億円 225億円 257億円
経常利益 14億円 18億円 19億円 21億円 30億円
利益率(%) 9.0% 10.3% 10.2% 9.5% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 12億円 9億円 16億円 22億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益と営業利益が大きく増加しています。高付加価値なシステム開発案件の獲得や標準化による生産性の向上などにより、利益率の改善も進んでおり、堅調なビジネスモデルが数値にも反映されています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 225億円 257億円
売上総利益 54億円 66億円
売上総利益率(%) 23.8% 25.8%
営業利益 22億円 30億円
営業利益率(%) 9.7% 11.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比24%)、賞与が2億円(同6%)を占めています。また、売上原価の主な内訳は、労務費が58億円(構成比31%)、機器及び材料費が57億円(同31%)を占めています。

(3) セグメント収益


公共事業セグメントは、地方自治体のシステム標準化対応や学校向けIT機器販売などが堅調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。一方、社会・産業事業セグメントも自社製品のシステム販売やDX需要を取り込み増収となったものの、利益面では前年並みの水準で着地しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
公共事業 125億円 148億円 21億円 31億円 20.8%
社会・産業事業 100億円 110億円 21億円 20億円 18.7%
調整額 - - -20億円 -21億円 -
連結(合計) 225億円 257億円 22億円 30億円 11.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる健全型です。本業のシステム開発等で生み出した潤沢なキャッシュを新たなデータセンターの構築などの設備投資に回しつつ、借入金等の返済を計画的に進める安定した資金繰りを行っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 41億円
投資CF -8億円 -7億円
財務CF -8億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も58.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「わくわく感を大切にするRSは 進化・発展を追求する組織を支援し、相互理解と信頼にもとづく調和のとれた社会を実現します」という経営理念を掲げています。様々な情報のやり取りに関する仕組みを通じて社会やステークホルダーの期待に応え、より良い関係を創造する「真の情報サービス企業」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は行動理念として、「お客さまの笑顔を創造しよう」「今日とは違う明日を創造しよう」「新たな期待を創造しよう」の3つを掲げています。社会課題の解決に向けてお客さまと共に成長することを重視し、社員一人ひとりが多様な価値観を認め合い、能力を十分に発揮できる働きがいのある組織づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は「グループの総合力を高め、社会課題の解決に取り組み、お客さまと共に成長する」という方針のもと、10次中期経営計画を推進しています。「スピード」「変革」「新価値創造」をキーワードに設定し、既存ソリューションの強化・拡大や公共ビジネスモデルの変革を進め、グループ全体の持続的な成長を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の重点施策として、データセンタービジネスの強化やセキュリティ領域の充実に注力しています。クラウドサービスの拡大やサイバー攻撃への対応など、変化するIT需要を的確に捉え、安全なデータセンターを活用したワンストップサービスの提供を推進し、新たな価値を創造できる高度な技術者の育成にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は持続的成長の原動力となる多様な人材の確保と高度な技術者の育成を最重要課題と位置づけています。スキルに応じた各種教育や目標管理制度による自律的な成長支援を行うとともに、働きやすい職場環境の仕組みづくりを推進し、個々の能力を最大化するダイバーシティマネジメントに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 16.2年 6,590,812円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.6%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.9%
男女賃金差異(正規雇用) 83.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正規社員における女性社員比率(26.1%)、年次有給休暇の取得日数(16.5日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) プロジェクト管理の遅延等による採算悪化


同社のソフトウェア開発などの商談プロジェクトでは、品質・コスト・納期の厳守が最重要とされています。プロジェクトの大型化に伴い高度な管理が求められる中、想定外の事態が発生して開発が遅延や中断した場合、採算が悪化し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品やサービスの欠陥に関するリスク


顧客に安心して製品やサービスを提供するため、業務の標準化や品質管理の強化に努めています。しかし、想定外の事態により計画通りの品質を確保できず、欠陥や瑕疵が発生した場合、製品の補修や顧客への補償、機会損失などの対応費用が生じ、同社グループの社会的信用の低下や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティインシデントへの対応


サイバー攻撃による情報漏えいや消失のリスクが高まる中、同社グループは情報セキュリティマネジメントシステムの認証取得やプロセスによる統制管理などを行っています。万が一、サイバー攻撃などにより情報漏えいや改ざんが発生した場合、事後対応や損害賠償による多額の費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。