KSK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KSK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、システムコア、ITソリューション、ネットワークサービスの3事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比8.4%増、経常利益が同5.2%増と増収増益で推移しています。


※本記事は、株式会社KSK の有価証券報告書(第51期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KSKってどんな会社?


半導体設計や組込ソフト開発、ネットワーク構築などを手掛ける独立系システムインテグレーターです。

(1) 会社概要


1974年にサンユウ商事として設立され、1979年に国際システムへ商号変更し情報サービス業へ転換しました。2004年にKSKへ商号変更すると同時にフレックス・ファームを合併し、同年ジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結で2,625名、単体で1,962名です。大株主構成については、筆頭株主は山崎陽子氏であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行(常任代理人)、第3位は山崎武幹氏となっています。

氏名 持株比率
山崎 陽子 13.27%
BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND 8.58%
山崎 武幹 7.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は松岡洋一氏が務めています。社外取締役比率は約27%です。

氏名 役職 主な経歴
松岡 洋一 代表取締役社長 元りそな銀行東京南地域CEO、BMLフードサイエンス常務を経て2013年入社。KSKテクノサポート社長等を歴任し、2024年6月より現職。
河村 具美 代表取締役会長 1974年協和銀行入行。1998年同社入社。常務、専務を経て2001年代表取締役社長に就任。2019年4月より現職。
阿佐見 俊一 取締役 執行役員事業企画本部長 元日本アイ・ビー・エム理事。2017年同社入社。事業本部長、事業推進部長等を経て2019年4月より現職。
照内 定光 取締役 執行役員DX推進・リスク管理担当 1985年同社入社。ネットワークサービス事業本部長等を歴任。2025年1月より現職。
川辺 恭輔 取締役 執行役員管理本部長 元りそな銀行東京年金営業部長、昭和リース執行役員。2020年同社入社。管理本部副本部長を経て同年6月より現職。


社外取締役は、多和田英俊(公認会計士)、井口広(元ルネサスマイクロシステム社長)、鈴木順子(元BP JAPAN代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムコア事業」「ITソリューション事業」および「ネットワークサービス事業」を展開しています。

(1) システムコア事業


LSIやFPGAなどの半導体設計、組込みソフトウェア開発、ハードウェアの装置設計などを行っています。エッジコンピューティングやコネクテッド社会の実現に向けた技術力を提供し、半導体メーカーや機器メーカーが主な顧客となります。

収益は、顧客からの開発受託費や設計費などから得ています。運営は主に同社が行っています。

(2) ITソリューション事業


パッケージソフトウェアの開発、アプリケーションソフトウェアの受託開発、CADシステム開発、Webシステム開発、データエントリー業務などを行っています。モバイル端末向けの検証サービスや、住宅建設業者向けパッケージソフト「住宅マネージャー」なども提供しています。

収益は、システムの受託開発費、パッケージソフトのライセンス料や保守料、データエントリー等の業務委託費から構成されます。運営は主に同社および株式会社KSKテクノサポートが行っています。

(3) ネットワークサービス事業


通信・コンピュータ関連システムの構築・運用・保守、CADシステムの運用管理、サポートセンター業務などを提供しています。クラウド基盤の運用や5Gネットワークの展開支援、セキュリティ対策支援なども手掛けています。

収益は、ネットワーク構築のプロジェクト報酬や、運用・保守業務の委託費などから得ています。運営は同社および株式会社KSKテクノサポートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに堅調な増加傾向にあります。特に売上高は毎期着実に伸長しており、事業規模の拡大が続いています。利益面でも、経常利益率は10%台後半から11%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。当期純利益も増加傾向にあり、順調な成長軌道を描いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 175.5億円 186.2億円 203.6億円 217.8億円 236.1億円
経常利益 22.8億円 22.3億円 22.9億円 23.8億円 25.1億円
利益率(%) 13.0% 12.0% 11.3% 10.9% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 11.5億円 12.3億円 12.5億円 14.1億円 15.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は24%台で推移しており、安定した利益構造が見て取れます。営業利益率は約10%の水準を維持しており、売上規模の拡大と利益確保のバランスが取れています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 217.8億円 236.1億円
売上総利益 52.7億円 56.9億円
売上総利益率(%) 24.2% 24.1%
営業利益 23.1億円 24.2億円
営業利益率(%) 10.6% 10.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比21%)、募集費が5億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収増益となりました。システムコア事業は半導体分野や組込ソフトが伸長、ITソリューション事業はパッケージソフト等が堅調でした。主力であるネットワークサービス事業は企業のネットワーク構築需要等を捉え、売上・利益ともに全体を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
システムコア事業 38.2億円 41.8億円 10.3億円 10.8億円 25.8%
ITソリューション事業 52.4億円 55.0億円 13.4億円 14.7億円 26.7%
ネットワークサービス事業 127.1億円 139.3億円 29.1億円 31.4億円 22.6%
連結(合計) 217.8億円 236.1億円 23.1億円 24.2億円 10.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金で借入返済を行い、投資も手元資金で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 19.4億円 18.3億円
投資CF -4.7億円 -9.3億円
財務CF -4.7億円 -12.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは経営理念として「敬天愛人」を掲げています。人間中心の経営を進め、責任ある企業の一員として持続可能な社会の実現に向けて貢献し、中長期的な企業価値向上に努めることを基本としています。また、社員の技術力と人間力を高め、顧客に新たな価値を提供し続ける「エクセレントカンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループでは、「エンゲージメント(企業風土)」を経営の基軸の一つと位置づけ、すべての活動のベースとなる「チーム制」を展開しています。チームで業務に取り組むことで社員の孤立を防ぎ、成長を促進させています。また、「心・技・体」三位一体の人づくりを掲げ、健康経営にも注力しており、健康経営銘柄やホワイト500への選定実績があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、具体的な経営指標として売上高営業利益率10%を目標としています。また、中期経営計画「Blue Wind ChapterⅡ」の最終年度である2027年3月期において、自己資本当期純利益率(ROE)12%を目指しています。株主還元については、2026年3月期に配当性向50%を目指す方針を掲げています。

* 売上高営業利益率:10%
* ROE(2027年3月期):12%
* 配当性向(2026年3月期):50%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画において、「事業の強靭化」「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)への取組み」「人と組織の強靭化」を重点課題としています。IoT、クラウド、生成AI、サイバーセキュリティなどの成長分野へ経営資源を投入し、柔軟な業務シフトを行うことで収益力を強化します。また、人的資本への投資を拡充し、技術力と品質の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材の確保と育成を最重要課題とし、独自の教育研修機関「KSKカレッジ」などを通じて人的資本への投資を積極的に行っています。技術研修に加え人間力研修を実施し、自立したエンジニアの育成を目指しています。また、健康経営を推進し、社員が能力を最大限発揮できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.3歳 9.4年 5,321,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.2%
男性育児休業取得率 89.5%
男女賃金差異(全労働者) 83.2%
男女賃金差異(正規雇用) 85.2%
男女賃金差異(非正規) 45.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(14.9時間)、年次有給休暇の取得日数(13.7日)、育児休暇の取得率(女性)(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保について


同社の事業は先端技術に関連しており、高度なスキルを持つ技術者が不可欠です。しかし、少子高齢化による労働人口減少やDX化に伴う技術レベルの高度化により、人材確保は困難になっています。必要な技術者を十分に確保・育成できない場合、顧客の要求に応えられず受注機会を逸し、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) プロジェクトの運営について


請負契約におけるプロジェクト運営では、見積りの精度や技術者のスキル、工程管理などが重要です。プロジェクトマネジメントの不備や仕様変更、予期せぬトラブルが発生した場合、見積りを大幅に上回るコスト増や納期遅延による損害金が発生し、経営成績や事業展開に悪影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティ対策


同社は個人情報や機密情報を取り扱っており、サイバー攻撃のリスクに晒されています。標的型攻撃やランサムウェアなどにより情報漏洩やシステムダウンが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求が生じる恐れがあります。保険加入等の対策を講じていますが、想定を上回る損害が発生する可能性もあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。