※本記事は、株式会社KSKの有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. KSKってどんな会社?
同社は、半導体設計からソフトウェア開発、ネットワーク構築まで幅広いITサービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1974年に設立され、1979年に総合情報サービス企業へ転換して国際システムへ商号を変更しました。1990年に株式を店頭登録し、2004年に現在のKSKへ商号を変更してジャスダック証券取引所に上場しました。その後も子会社の合併や各技術センターの拡張を行い、事業基盤を強化しています。
現在の従業員数は連結で2,709名、単体で2,043名規模となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は山崎陽子氏で、第2位は投資信託等に関する業務を行う外国法人等、第3位は山崎武幹氏となっており、個人株主が上位に名を連ねているのが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山崎陽子 | 13.25% |
| BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND | 8.47% |
| 山崎武幹 | 7.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は松岡洋一氏が務めています。社外取締役比率は27.3%(11名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松岡洋一 | 代表取締役社長 | 1980年協和銀行入行。りそな銀行東京南地域CEOなどを経て2013年に同社入社。KSKテクノサポート社長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 河村具美 | 代表取締役会長 | 1974年協和銀行入行。1998年に同社入社後、常務、専務を経て2001年に代表取締役社長就任。事業本部長などを歴任し、2019年4月より現職。 |
| 阿佐見俊一 | 取締役 執行役員事業企画本部長 | 1983年日本アイ・ビー・エム入社。同社事業部長などを経て2017年に同社入社。事業本部長などを務め、2018年に取締役に就任し、2019年4月より現職。 |
| 照内定光 | 取締役 執行役員DX推進・リスク管理担当 | 1985年に同社入社。ネットワークサービス事業部ゼネラルマネージャーなどを経て2018年に取締役に就任し、2025年1月より現職。 |
| 川辺恭輔 | 取締役 執行役員管理本部長 | 1987年協和銀行入行。りそな銀行東京営業第二部長などを経て、2020年に同社入社。同年に取締役に就任し、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、多和田英俊氏(多和田公認会計士事務所所長)、井口広氏(元ルネサスマイクロシステム代表取締役社長)、鈴木順子氏(元レノバCHRO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システムコア事業」「ITソリューション事業」「ネットワークサービス事業」を展開しています。
■システムコア事業
LSIやFPGAなどの半導体設計を中心としたシステムデバイス、組み込みソフトウェア開発、計測装置の回路設計やプリント配線基板設計などのメカトロニクスデザインを提供し、自動車や家電等のメーカーを顧客としています。
収益源は、顧客からの半導体設計やソフトウェア開発等の受託開発、技術提供に係る対価です。運営は同社が行っています。
■ITソリューション事業
パッケージソフトウェアの開発、アプリケーションソフトウェアの受託開発、CADシステム開発、Webシステム開発などのほか、モバイル実機検証サービスやデータエントリー、オペレーター派遣業務等を提供しています。
収益源は、自社開発した住宅建設業者向けパッケージソフトの販売やアウトソーシング業務の委託料などです。運営は主に同社およびKSKテクノサポートが行っています。
■ネットワークサービス事業
クラウドの運用や仮想ネットワークの構築といったネットワークシステムの構築支援をはじめ、データセンター業務、インフラ基盤の運用・保守サービス、セキュリティ関連の支援業務を提供しています。
収益源は、企業や官公庁、通信キャリアなどに対するネットワーク構築支援や保守、運用管理、サポートセンター支援などに伴うサービス提供料です。運営は同社およびKSKテクノサポートが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の業績は、企業のDX投資やクラウドシフトの加速などを背景に、堅調な拡大を続けています。売上高は一貫して増加傾向にあり、経常利益も毎期着実な成長を遂げており、安定した収益基盤と高い成長性を両立させていることがうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 186億円 | 204億円 | 218億円 | 236億円 | 258億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 23億円 | 24億円 | 25億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 12.0% | 11.3% | 10.9% | 10.6% | 11.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 12億円 | 14億円 | 15億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
同社の損益構造は、売上高の増加に伴い売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。人的資本拡充に向けた処遇改善などの投資を行いつつも、契約単価の見直しや高付加価値分野へのシフトが奏功し、安定した利益率を維持している点が特徴です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 236億円 | 258億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 59億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.1% | 23.0% |
| 営業利益 | 24億円 | 27億円 |
| 営業利益率(%) | 10.2% | 10.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比19%)、募集費が3億円(同11%)、役員報酬が2億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに前年比で売上高を伸ばしています。特に主力であるネットワークサービス事業は、クラウド環境構築などの旺盛な需要を取り込み大きく成長しました。また、システムコア事業やITソリューション事業も半導体関連や自社パッケージソフトの伸長により順調に拡大しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| システムコア事業 | 42億円 | 47億円 |
| ITソリューション事業 | 55億円 | 61億円 |
| ネットワークサービス事業 | 139億円 | 150億円 |
| 連結(合計) | 236億円 | 258億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 34億円 |
| 投資CF | -9億円 | -11億円 |
| 財務CF | -13億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.4%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念「敬天愛人」並びにグループ企業行動憲章に則り、人間中心の経営を進め、エクセレントカンパニーを目指す姿勢を示しています。社員一人ひとりの高い技術力や人間力がお客様の期待に応え、社会の持続可能な発展に貢献し続けることを掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、社員の働きやすい環境整備の観点から「チーム制」をすべての活動のベースとしています。「心(人間力)・技(知識・技術・スキル)・体(心身の健康)」三位一体の真の人づくりを重視し、組織力で価値を提供する活力ある風土を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Blue Wind ChapterⅡ」に基づき、持続的な成長に向けた資本効率の向上と株主還元を推進しています。最終年度である2027年3月期に向けた具体的な数値目標を設定し、事業基盤の強化に取り組んでいます。
* 売上高営業利益率 10%
* ROE(自己資本利益率) 12%
* 配当性向 50%(2026年3月期に前倒し)
■(4) 成長戦略と重点施策
DXの進展に伴うクラウド環境の整備や生成AI関連市場の拡大に対応するため、成長分野へ経営資源を投入し、高収益体質への転換を図ります。既存ビジネスの収益力強化とともに、市場環境の変化に応じた新規ビジネスの創出やサステナビリティへの取り組みを通じ、企業価値向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の確保と育成を経営の最重要課題と位置づけ、独自の教育機関「KSKカレッジ」を通じた技術力と人間力の向上に努めています。「健康経営宣言」に基づき従業員の健康維持・増進にも注力し、働きがいのあるWell-beingな職場環境の構築を積極的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 34.2歳 | 8.9年 | 5,454,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.0% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 86.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 45.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(14.4時間)、年次有給休暇の取得日数(14.0日)、喫煙率(0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サイバー攻撃に伴う情報漏洩とシステムダウンリスク
外部からの標的型メール攻撃やランサムウェアなどの不正プログラムにより、機密情報が漏洩したりシステムが利用不能となるリスクがあります。同社は専門の対策チームを設置し、セキュリティ教育や監視システムを強化して対応体制を整えています。
■(2) 個人情報や秘密情報の漏洩リスク
業務上取り扱う個人情報や顧客情報などの秘密情報が外部に漏洩した場合、信用失墜や損害賠償による費用の発生が懸念されます。同社はプライバシーマークの取得や厳重な管理体制の構築を通じて、社員一人ひとりへの教育・研修を徹底し未然防止に努めています。
■(3) 人材の確保・育成に関するリスク
IT業界の技術革新や少子高齢化を背景に、高度な知識と経験を持つ技術者の確保が一層困難になっています。人材の採用や育成が想定通りに進まない場合、十分なサービス提供ができず、事業の拡大や受注機会に影響を及ぼす可能性があります。



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