KYCOMホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KYCOMホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するKYCOMホールディングスは、ソフトウエア開発やコンピュータ関連サービスなどの情報処理事業を中核とし、不動産やレンタカー、無線ソリューション事業も展開しています。当期連結業績は、情報処理事業のDX関連需要等が牽引し、増収増益の堅調な推移となっています。


※本記事は、KYCOMホールディングスの有価証券報告書(第59期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. KYCOMホールディングスってどんな会社?


情報処理事業を主軸に、多角的な事業展開とグループ経営を推進する純粋持株会社です。

(1) 会社概要


1968年に福井県で計算センターとして設立後、情報産業の発展とともに業容を拡大しました。1990年の店頭登録を経て、2004年に持株会社体制へ移行しています。2011年に現在の社名となり、2015年にレンタカー事業、2022年にM&Aで綿引無線を完全子会社化して無線ソリューション事業を開始するなど、グループの事業領域を広げています。

従業員数は連結で899名、単体で6名の体制です。筆頭株主は創業者で代表取締役最高経営責任者の吉村昭一氏となっており、第2位は資産管理業務等を行うアルディート・アセット・マネジメント、第3位はカズオヨシムラ氏と続いています。

氏名 持株比率
吉村昭一 19.27%
アルディート・アセット・マネジメント 13.99%
カズオ ヨシムラ 8.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役最高経営責任者は吉村昭一氏、代表取締役社長執行役員最高執行責任者最高財務責任者は吉村仁博氏が務めています。社外取締役の比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
吉村昭一 代表取締役最高経営責任者 1971年福井共同電子計算センター常務取締役、1985年同社代表取締役社長等を経て、2011年より現職。
吉村仁博 代表取締役社長執行役員最高執行責任者最高財務責任者 2004年共栄システムズ入社、サムソン総合ファイナンス代表取締役社長等を経て、2025年より現職。
辰巳保彦 取締役経営指導部長 1975年日立製作所入社、日立ファルマエヴォリューションズ代表取締役社長等を経て、2011年より現職。
笹岡晴雄 取締役情報システム統制部長 1988年共同コンピュータ入社、同社代表取締役社長等を経て、2016年より現職。
山本義幸 取締役 1974年日立製作所入社、日立オープンプラットフォームソリューションズ代表取締役社長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、松木武(元日立システムズエンジニアリングアンドソリューション専務取締役)、松永敏明(元PHIR21ブロードバンド放送部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報処理事業」「不動産事業」「レンタカー事業」「無線ソリューション事業」を展開しています。

(1) 情報処理事業


情報システムのコンサルティング、企画、設計、開発、保守などの業務をはじめ、ヘルプデスク、コンピュータ運用業務、アウトソーシング受託業務、データエントリー業務等を提供しています。近年はDXやAI関連、ERP構築事業などの需要にも対応しています。

ソフトウエア開発やシステム運用等の役務提供、および人材派遣の対価として顧客から収益を得ています。事業の運営は、共同コンピュータ、共栄システムズなど複数のグループ各社が行っています。

(2) 不動産事業


自社グループの社員寮と兼用したマンションの経営を行っています。また、福島県等に自社保有の太陽光発電所を設置し、太陽光発電による売電事業も展開しています。

マンションの入居者からの賃貸料や、電力会社への売電量に応じた売電収入を主な収益源としています。事業の運営は共同コンピュータ、共栄システムズ、サムソン総合ファイナンスなどが担っています。

(3) レンタカー事業


北陸エリアを中心として、一般顧客向けにレンタカーの貸出サービスを提供しています。あわせて、保有している中古車両の販売等も手掛けています。

顧客からのレンタカー利用料や、車両売却時の販売代金を主な収益源としています。事業の運営は子会社の北陸エリア・レンタカーが行っています。

(4) 無線ソリューション事業


無線設備の設置工事、修理、点検、保守サービスの提供や、関連する無線通信ソリューションおよび通信機器等の販売事業を行っています。

請負工事完了時の工事代金や、保守契約に基づく保守サービス料、および電気通信機器の販売代金から収益を得ています。事業の運営は子会社の綿引無線が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5期間で約1.4倍に拡大しています。経常利益も売上の成長に伴い増益を達成しており、利益率も9%台の安定した水準を維持しています。主力事業の底堅い需要を取り込み、着実な成長を続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 52億円 57億円 61億円 68億円 72億円
経常利益 5億円 5億円 6億円 6億円 7億円
利益率(%) 9.0% 9.4% 9.4% 9.4% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 4億円 4億円 5億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は21%台で横ばいを維持しており、営業利益も堅調に推移していますが、人件費等のコスト増加により営業利益率はやや低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 68億円 72億円
売上総利益 14億円 15億円
売上総利益率(%) 21.3% 21.2%
営業利益 6億円 6億円
営業利益率(%) 8.7% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3億円(構成比30%)、役員報酬が2億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


中核である情報処理事業が増収となり、全体を大きく牽引しています。不動産事業は太陽光発電施設の復旧などにより増収を果たした一方、レンタカー事業は競合環境等の影響で伸び悩むなど、事業ごとの明暗が分かれる結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
情報処理事業 61億円 65億円
不動産事業 2億円 2億円
レンタカー事業 2億円 2億円
無線ソリューション事業 3億円 4億円
連結(合計) 68億円 72億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5億円 6億円
投資CF -2億円 -3億円
財務CF -3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として、株主、顧客、取引先、地域社会、従業員などすべてのステークホルダーへの利益還元と貢献の増大を掲げています。徹底したコスト管理による収益拡大や遵法精神に基づく業務精励、リスク管理の徹底とともに、常に新規分野へ挑戦し続けることを存在意義として事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は「真面目にコツコツと実績を積み重ねて継続的な信頼を得ていく」という価値観を重んじています。経営の基本方針として「収益拡大と経費節減」「企業リスクの管理」「新規分野への挑戦」の3本柱を掲げ、着実な業務遂行とリスクへの備えを徹底する一方で、新たな領域にも果敢に挑む行動様式が定着しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期計画において以下の経営指標を目標として設定し、収益性の向上と資本効率の改善を目指しています。

・売上高経常利益率:6%
・自己資本利益率(ROE):15%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、人材を最も重要な経営資本と位置づけ、従業員の処遇改善や採用強化、研修制度の充実に注力しています。また、DXや生成AIなどの最新技術ニーズに対応するため、技術者の付加価値向上を図ります。さらに、ワンルームマンションの取得・運営による福利厚生の強化や、戦略的なM&Aによる事業領域の拡大と資本効率向上を推進し、中長期的な成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材こそが持続的な成長の源泉である」との方針のもと、社員一人ひとりが成長し活躍できる組織づくりを推進しています。積極的な採用活動に加え、多様な価値観を持った人材が能力を発揮できるよう、研修制度の充実や資格取得の支援など教育への投資を強化し、柔軟で働きやすい就業環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 57.3歳 5.6年 4,420,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 55.5%
男女賃金差異(正規雇用) 42.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.4%

※男性労働者の育児休業取得率計算の対象となる事例は不発生でした。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客の動向に依存するリスク

同社の子会社は、公共関連、通信、電力等の大規模案件を受注していますが、これらの重要顧客の業績変動や方針転換、不慮の災害などが発生した場合、同社グループの受注状況や全体業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報サービス業界の価格競争リスク

情報サービス業界は競合が激しく、製品やサービスの価格下落圧力が強い環境にあります。同社グループは新規顧客の開拓や経費節減に努めていますが、想定を超える受注価格の下落が生じた場合、収益性が低下するリスクがあります。

(3) 法制・規制変更への対応リスク

人材派遣を事業とする子会社等に関連して、労働条件や租税等の法令変更が生じた場合、それらに対応するためのコストが増加する懸念があります。新たな公的規制や税制の変更は、同社グループの事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

(4) 情報漏洩等のセキュリティリスク

同社グループは機密情報や個人情報を保有しており、プライバシーマーク等の認証取得などデータ管理を徹底しています。しかし、予期せぬ不正アクセス等により情報漏洩事故が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生を招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。