KYCOMホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KYCOMホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。情報処理事業を主軸に、不動産、レンタカー、無線ソリューション事業を展開しています。2025年3月期は、DX需要やERP構築案件が堅調に推移し、売上高は68億円(前期比11.1%増)、経常利益は6.4億円(同11.1%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、KYCOMホールディングス株式会社の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KYCOMホールディングスってどんな会社?


情報システムの企画・開発・運用を行う情報処理事業を中核に、不動産やレンタカー事業も手掛ける持株会社です。

(1) 会社概要


1968年に福井県内の有力企業による共同出資で福井共同電子計算センターとして設立され、受託計算業務を開始しました。1990年に店頭登録を行い、2004年には持株会社体制へ移行しました。2011年に現在の商号に変更し、その後もM&Aを通じてレンタカー事業や無線ソリューション事業などへ領域を拡大しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は843名、単体では5名体制です。筆頭株主は代表取締役最高経営責任者の吉村昭一氏で、第2位は投資・資産管理を行うアルディート・アセット・マネジメント、第3位はカズオ ヨシムラ氏(常任代理人 みずほ証券)となっています。

氏名 持株比率
吉村 昭一 19.27%
アルディート・アセット・マネジメント 13.99%
カズオ ヨシムラ 8.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員最高執行責任者最高財務責任者は吉村仁博氏が務めています。取締役7名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
吉村 昭一 代表取締役最高経営責任者 福井共同電子計算センター(現同社)常務等を経て2011年より現職。
吉村 仁博 代表取締役社長執行役員最高執行責任者最高財務責任者 共栄システムズ社長等を経て2025年より現職。
辰巳 保彦 取締役経営指導部長 日立製作所出身。共同コンピュータ(東京)社長等を経て2011年より現職。
笹岡 晴雄 取締役情報システム統制部長 共同コンピュータ(福井)社長等を経て2016年より現職。
山本 義幸 取締役 日立製作所出身。KYCOMネクスト社長等を経て2025年より現職。


社外取締役は、松木武(元日立システムズエンジニアリングアンドソリューション専務)、松永敏明(インフォネクスト代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報処理事業」「不動産事業」「レンタカー事業」「無線ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 情報処理事業**
情報システムのコンサルティングから企画、設計、開発、保守、ヘルプデスク業務などを提供しています。また、文字・画像データのエントリー業務や指紋認証システムの開発、オフィス設備のリースなども手掛けており、顧客は民間企業から官公庁まで多岐にわたります。

収益は、顧客からのシステム開発受託費、保守運用費、データエントリー業務委託費などが柱です。運営は主に共同コンピュータ(東京・福井)、共栄システムズ、九州共栄システムズ、共栄データセンター、GISコンサルティング、KYCOMネクストなどが担っています。

**(2) 不動産事業**
社員寮と兼用したマンション経営や、太陽光発電事業を行っています。安定的な賃貸収入と売電収入を確保することを目的としています。

収益は、入居者からの賃料収入や電力会社への売電収入です。運営は共同コンピュータ(東京)、共栄システムズ、共栄データセンター、サムソン総合ファイナンスが行っています。

**(3) レンタカー事業**
北陸エリア(石川県など)を中心にレンタカー事業を展開しています。観光客やビジネスユースを主なターゲットとしています。

収益は、利用者からのレンタカー利用料です。運営は北陸エリア・レンタカーが行っています。

**(4) 無線ソリューション事業**
無線設備の設置工事、修理、点検、保守および無線通信ソリューションを提供しています。防災関連分野などの底堅い需要に対応しています。

収益は、顧客からの工事代金や保守点検料、機器販売代金などです。運営は綿引無線が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は51億円から68億円へと順調に拡大傾向にあります。経常利益も4.7億円から6.4億円へと増加基調を維持しており、利益率は9%~10%台で安定しています。当期純利益についても黒字を継続しており、堅実な成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 51億円 52億円 57億円 61億円 68億円
経常利益 5億円 5億円 5億円 6億円 6億円
利益率(%) 10.6% 9.0% 9.4% 9.4% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.7億円 0.3億円 0.5億円 0.2億円 0.4億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は約22.0%から21.3%へと微減しました。一方、営業利益率は8.9%から8.7%と概ね横ばいで推移しており、増収効果により営業利益額は約5.4億円から5.9億円へ増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 61億円 68億円
売上総利益 13億円 14億円
売上総利益率(%) 22.0% 21.3%
営業利益 5億円 6億円
営業利益率(%) 8.9% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.6億円(構成比31%)、役員報酬が1.8億円(同22%)を占めています。売上原価については内訳の詳細データがありません。

(3) セグメント収益


情報処理事業はDX関連需要やERP構築案件が寄与し増収となりましたが、人材投資等のコスト増により減益となりました。不動産事業は太陽光発電のトラブル影響等で減収減益です。レンタカー事業と無線ソリューション事業は需要回復や契約改善により大幅な増収となり、利益面でも改善が見られました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報処理事業 55億円 61億円 5億円 5億円 8.0%
不動産事業 2億円 2億円 1億円 1億円 39.3%
レンタカー事業 1億円 2億円 0.0億円 0.1億円 8.8%
無線ソリューション事業 3億円 3億円 -0.6億円 -0.0億円 -0.6%
その他 - - -0.0億円 - -
調整額 - - 0.1億円 0.3億円 -
連結(合計) 61億円 68億円 5億円 6億円 8.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を用いて借入金の返済(財務CFマイナス)を進めつつ、必要な投資(投資CFマイナス)も自己資金の範囲内で行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 5億円
投資CF -5億円 -2億円
財務CF 1億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.4%で市場平均を上回っています(スタンダード市場非製造業平均48.5%、ROE平均7.2%との比較)。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「収益拡大と経費節減」「企業リスクの管理」「新規分野への挑戦」の3つを経営の基本方針としています。株主、顧客、取引先、地域社会、従業員への利益還元を目指し、コスト管理の徹底、コンプライアンスの遵守、リスク回避に努めるとともに、ステークホルダーへの貢献増大のため新規分野への挑戦を続けることを理念としています。

(2) 企業文化


同社は、ITニーズに対し「真面目にコツコツと実績を積み重ねて継続的な信頼を得ていく」という姿勢を重視しています。また、人材を最も重要な経営資本と捉え、従業員満足度の向上や成長を実感できる環境づくりを推進しており、遵法精神を貫いて業務に精励する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは中期計画において、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高経常利益率:6%
* 株主資本利益率(ROE):15%

(4) 成長戦略と重点施策


IT人材不足やDX需要に対応するため、技術者のスキル向上と採用強化に注力しています。具体的には、資格取得推進や新技術習得機会の拡大、通年中途採用や積極的な新卒採用を実施しています。また、収益重視とコスト削減による高収益体質への転換を図り、本業以外の次世代事業育成に向けた投資原資を確保する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資本と位置付け、適切な賃上げや教育投資を通じて技術者の付加価値向上を目指しています。若手の資格取得推進や経験者への新技術習得機会の提供に加え、従業員満足度向上のための人事・研修制度の充実、営業力・技術力強化のための適材適所の登用を進め、定着率向上と組織活性化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 58.0歳 9.3年 5,330,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.0%
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 64.3%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 55.2%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 73.3%


※男性労働者の育児休業取得率について、計算の対象となる事例は不発生でした。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 子会社と密接に連動するリスク


同社は純粋持株会社であり、主な収益源は連結子会社からの経営指導料です。この指導料は子会社の売上高等に基づいて算出されるため、子会社の業績変動が同社の業績に直接的な影響を及ぼす構造となっています。

(2) お客様におけるリスク


子会社の主要顧客は公共、通信、電力、旅行業界など多岐にわたりますが、これら顧客企業の業績は景気動向や金利変動、災害等の影響を受けます。顧客側のリスク要因が顕在化した場合、発注の減少等を通じて同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 価格競争によるリスク


情報サービス業界は競争が激しく、製品やサービスの価格下落圧力が常に存在します。同社グループでは新規顧客開拓や経費削減に努めていますが、想定以上の受注価格下落が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。