※本記事は、株式会社DTSの有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. DTSってどんな会社?
DTSは、金融や公共、通信など幅広い業界に向けて総合的な情報サービスを提供するシステムインテグレーターです。
■(1) 会社概要
1972年に会社設立し、ソフトウェア開発等を開始しました。1999年に東京証券取引所市場第一部に上場し、その後国内外に子会社を設立・買収して事業を拡大しました。直近では2022年にプライム市場へ移行し、2024年に東北システムズ・サポート等を完全子会社化してグループ体制を強化しています。
同社の従業員数は連結で6,135名、単体で3,199名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には同社グループの社員持株会、第3位には海外の信託銀行が名を連ねています。国内外の機関投資家や従業員が主要な株主となっているのが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.91% |
| DTSグループ社員持株会 | 7.44% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト クライアント オムニバス アカウント オーエムゼロツー 505002(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 5.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は北村友朗氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北村 友朗 | 代表取締役社長 | 2003年エヌ・ティ・ティ・データ入社、事業本部長等を経て、2021年4月より現職。 |
| 浅見 伊佐夫 | 取締役専務執行役員 | 1987年同社入社。DTSインサイト代表取締役社長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 谷中 一勝 | 取締役常務執行役員 | エヌ・ティ・ティ・データ等を経て2024年7月同社入社。2025年6月より現職。 |
| 中村 裕 | 取締役(常勤監査等委員) | みずほ銀行支店長を経て2013年同社入社。アヴァンザ代表取締役会長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、山田伸一(元エヌ・ティ・ティ・データ取締役)、増田由美子(消費者の声研究所代表取締役)、木﨑重雄(キザキ・エンタープライズ代表取締役)、石井妙子(太田・石井法律事務所副所長)、飯室進康(飯室公認会計士事務所所長)、大野宏(元三井住友信託銀行執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、業務&ソリューション、テクノロジー&ソリューション、プラットフォーム&サービスの各報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 業務&ソリューション
強みであるプロジェクトマネジメント力や業界知見にデジタル技術を加え、システム導入のコンサルティングから設計、開発、運用、保守、業界特化型ソリューションの創出まで幅広く提供しています。
顧客からのシステム開発や運用保守の委託料等が主な収益源です。運営は同社を中心に、九州DTSやDTS WESTなどの子会社が地域・業界のニーズに合わせたサービスを展開しています。
■(2) テクノロジー&ソリューション
多様なニーズに最新技術で対応するためデジタル技術やソリューションに特化し、コンサルティングや基盤・ネットワークの構築、組込みソフトウェアの設計、開発などを業界・地域横断で提供しています。
システム開発の受託や自社・他社ソリューションの導入・運用に関する手数料が収益源です。同社のほか、DTSインサイトなどのグループ会社が専門的な技術力を活かして事業を運営しています。
■(3) プラットフォーム&サービス
顧客が安心して利用できるIT環境をサポートすべく、先端IT機器の導入やクラウド系サービスを含めた情報システムの運用設計、保守、常駐・遠隔でのシステム監視や最適化サービスを提供しています。
ITインフラの構築・運用に伴う対価や、サブスクリプション型の利用料などが主な収益源です。同社やデジタルテクノロジーなどの子会社が、トータルなIT環境のサポート業務を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期の業績は増収傾向にあり、売上高は945億円から1,352億円へと順調に拡大しています。経常利益も114億円から169億円へと増加し、利益率も11%台から12%台へと向上し、安定した収益力を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 945億円 | 1,061億円 | 1,157億円 | 1,259億円 | 1,352億円 |
| 経常利益 | 114億円 | 119億円 | 128億円 | 155億円 | 169億円 |
| 利益率(%) | 12.1% | 11.2% | 11.1% | 12.3% | 12.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 66億円 | 71億円 | 67億円 | 98億円 | 99億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は1,259億円から1,352億円へと成長し、売上総利益も284億円から297億円へと増加しました。営業利益率も11.5%から12.2%へと改善し、本業での稼ぐ力が高まっていることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,259億円 | 1,352億円 |
| 売上総利益 | 284億円 | 297億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.5% | 21.9% |
| 営業利益 | 145億円 | 164億円 |
| 営業利益率(%) | 11.5% | 12.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が23億円(構成比17.2%)、支払手数料が16億円(同12.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに底堅い業績を維持しており、特にプラットフォーム&サービスが前期比で大きく伸長しました。各事業領域での着実な売上拡大が、同社全体の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 業務&ソリューション | 532億円 | 528億円 |
| テクノロジー&ソリューション | 429億円 | 460億円 |
| プラットフォーム&サービス | 298億円 | 364億円 |
| 連結(合計) | 1,259億円 | 1,352億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益や資産売却によって借入返済等を進める改善局面のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 92億円 | 89億円 |
| 投資CF | -23億円 | 0.9億円 |
| 財務CF | -161億円 | -81億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「技術をもって顧客の信頼を築く 技術をもって企業価値を増大する 技術をもって社員生活の向上を図る 技術をもって社会に貢献する」という企業理念を掲げています。情報サービス業界をリードする独立系総合情報サービス企業として存在感を高め、ゆるぎない経営基盤を確立してステークホルダーから信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、行動規範の1つとして「人権の尊重・働き甲斐のある職場づくり」を掲げています。すべての社員が心身ともに健康で活き活きと働き、その能力を発揮することにより、個人も会社も成長し続けることを目指しています。また、サステナビリティを重要な経営課題と位置づけ、事業戦略と連動して取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は長期展望「Vision2030」の実現に向けた中期経営計画において、事業の成長・拡大と安定性・信頼性の強化を推進しています。2028年3月期の経営目標として、以下の数値を掲げています。
* 連結売上高:1,600億円
* 営業利益:187億円
* EBITDA:200億円
* ROE:18%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「フォーカスビジネスの進化と堅守ビジネスの深化」、「戦略的アライアンスの実行」、「グループ経営基盤の強化」を3つの柱としています。クラウドやデータ活用、生成AIなどの領域への集中投資・先行投資を推進し、他社との戦略的な提携を通じて新たな付加価値の創出と生産性の向上を図りながら事業拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材は最重要資本であるとの認識のもと、「人材獲得・育成」「働き方改革・健康経営」「社員エンゲージメント」「従業員給与・報酬の額や内容の決定に関する方針」の4つの人材戦略に取り組んでいます。DX人材の獲得を強化し、自律的なキャリア形成を支援するプロフェッショナル認定制度を導入しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 15.1年 | 6,587,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員エンゲージメントスコア(52.6)、障がい者雇用率(2.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT投資動向の変動
デジタルビジネスの拡大等により堅調なIT投資が見込まれるものの、社会・経済情勢の変動や生成AIの急速な進化などによって顧客のIT投資動向が変化した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報サービス産業における価格競争
顧客からの情報化投資に対する要求が厳しさを増しており、他業種からの新規参入や海外企業の参入、ソフトウェアパッケージの拡大などにより価格競争が激化しています。予期せぬ外的要因による価格低下圧力を受けた場合、収益性が低下するリスクがあります。
■(3) 海外事業の拡大に伴うリスク
海外取引の拡大や現地法人の設立など海外事業を推進していますが、各国の輸出管理法や現地の法令・商慣習の相違によるトラブル、労務管理や契約への対応不足などが発生した場合、訴訟や損害賠償に発展し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) ソフトウェア開発のプロジェクト管理
顧客からのシステム開発期間の短縮要求が強まっており、プロジェクト管理や品質管理の重要性がこれまで以上に高まっています。不測の事態によって採算が悪化するプロジェクトが発生した場合、全体の業績に悪影響を与えるおそれがあります。



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