DTS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

DTS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。金融機関や通信事業者向けのシステム開発、コンサルティング、運用保守などを手掛ける独立系情報サービス企業です。直近の連結業績は、売上高が前期比8.8%増、経常利益が同20.5%増となり、増収増益の堅調な推移を見せています。


※本記事は、株式会社DTS の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. DTSってどんな会社?


金融や通信、公共分野などに強みを持つ独立系システムインテグレーター(SIer)です。

(1) 会社概要


1972年に設立され、ソフトウェア開発やシステム運営管理を開始しました。1997年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1999年には同第一部へ指定替えとなりました。2003年に現在の商号へ変更し、2017年に本社を東京都中央区へ移転しました。その後も子会社設立や再編を経て事業基盤を拡大しています。

連結従業員数は6,188名、単体では3,172名体制です。筆頭株主は信託銀行で、第2位は同グループ社員持株会、第3位はカストディ業務を行う信託銀行となっており、機関投資家や社員が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.86%
DTSグループ社員持株会 7.53%
ステート ストリート バンク アンド トラスト クライアント オムニバス アカウント オーエムゼロツー 505002 5.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は北村友朗氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
北村 友朗 代表取締役社長 元NTTデータ執行役員ビジネスソリューション事業本部長。2020年同社入社、2021年4月より現職。
浅見 伊佐夫 取締役専務執行役員 1987年同社入社。DTSインサイト社長、経理部長などを経て2025年4月より現職。
谷中 一勝 取締役常務執行役員 元NTTデータテクノロジーコンサルティング事業本部長。2024年同社入社、2025年6月より現職。
中村 裕 取締役(常勤監査等委員) 元みずほ銀行支店長。2013年同社入社、営業本部長、経営企画部長などを経て2025年6月より現職。


社外取締役は、山田伸一(元NTTデータ代表取締役常務執行役員)、増田由美子(消費者の声研究所代表取締役)、木﨑重雄(キザキ・エンタープライズ代表取締役)、石井妙子(弁護士)、飯室進康(公認会計士)、大野宏(元三井住友信託銀行執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「業務&ソリューション」「テクノロジー&ソリューション」「プラットフォーム&サービス」事業を展開しています。

(1) 業務&ソリューション


金融、通信、公共、法人などの幅広い顧客に対し、システム導入のコンサルティングから設計、開発、運用、保守までを提供しています。また、業界特化型のソリューション創出も行っています。

収益は、顧客からのシステム開発や運用保守業務の対価として得ています。運営は、同社および九州DTS、日本SEなどのグループ会社が行っています。

(2) テクノロジー&ソリューション


デジタル技術やソリューションに特化し、自動運転や医療機器等の組込み開発、自社・他社ソリューションの導入などを提供しています。最新技術で顧客の多様なニーズに対応します。

収益は、開発業務の対価やソリューションの導入・ライセンス料などから得ています。運営は、同社およびDTSインサイト、安心計画などのグループ会社が行っています。

(3) プラットフォーム&サービス


ITプラットフォームの構築、クラウドサービスや仮想化システムを含む情報システムの運用設計、保守、監視サービスなどを提供しています。ITインフラの最適化を支援します。

収益は、システム運用・監視サービスの利用料や機器導入の対価などから得ています。運営は、同社およびデジタルテクノロジーなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加しており、事業規模の拡大が続いています。経常利益も右肩上がりで推移しており、当期は過去最高益を更新しました。売上高経常利益率も12%台と高い水準を維持しており、収益性を伴った成長を実現しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 905億円 945億円 1,061億円 1,157億円 1,259億円
経常利益 111億円 114億円 119億円 128億円 155億円
利益率(%) 12.3% 12.1% 11.2% 11.1% 12.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 76億円 79億円 80億円 73億円 106億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約22.5%で安定しており、営業利益率も改善傾向にあります。販管費の増加を売上総利益の増加で吸収し、増益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,157億円 1,259億円
売上総利益 249億円 284億円
売上総利益率(%) 21.5% 22.5%
営業利益 125億円 145億円
営業利益率(%) 10.8% 11.5%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が55億円(構成比40%)、給料及び手当が43億円(同31%)を占めています。

(3) セグメント収益


「業務&ソリューション」は銀行業向け案件の拡大等により大幅な増収増益となりました。「テクノロジー&ソリューション」もクラウド基盤や組込み関連が堅調で増収増益です。「プラットフォーム&サービス」は売上高が微減となったものの、利益は増加しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
業務&ソリューション 437億円 532億円 53億円 68億円 12.8%
テクノロジー&ソリューション 422億円 429億円 42億円 46億円 10.7%
プラットフォーム&サービス 298億円 298億円 30億円 31億円 10.4%
調整額 - - 0.1億円 0.1億円 -
連結(合計) 1,157億円 1,259億円 125億円 145億円 11.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金で投資や借入返済、株主還元を行う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 104億円 92億円
投資CF -85億円 -23億円
財務CF -78億円 -161億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人々の喜びや社会の豊かさを生み出す力」を「技術」と捉え、「技術をもって顧客の信頼を築く 技術をもって企業価値を増大する 技術をもって社員生活の向上を図る 技術をもって社会に貢献する」という企業理念を掲げています。

(2) 企業文化


すべてのステークホルダーから信頼され、安心感を与える企業を目指しています。また、既存SIビジネスモデルの進化に加え、新規ソリューションの創出や事業領域の拡大に向けて、果敢にリスクテイクし、新しいことにチャレンジできる人材、常に変化を楽しむことができる人材が活躍する文化・風土づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた経営ビジョン「Vision2030」のもと、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高:1,600億円
* 営業利益:187億円
* EBITDA:200億円
* ROE:18%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「フォーカスビジネスの進化と堅守ビジネスの深化」「戦略的アライアンスの実行」「グループ経営基盤の強化」を3つの柱としています。特に、デジタルBiz・ソリューションBiz・サービスBizからなるフォーカスビジネス領域の拡大に注力し、売上高比率57.0%以上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最重要資本と位置づけ、「人材獲得・育成」「働き方改革・健康経営」「社員エンゲージメント」に取り組んでいます。DX人材の獲得強化や、高度プロフェッショナル人材向けのジョブ型人事制度の導入、プロフェッショナル認定制度によるキャリア形成支援などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.6歳 15.0年 6,436,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.4%
男女賃金差異(正規雇用) 80.0%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異(非正規雇用)は、対象者がいない等の理由により記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性取締役比率(20.0%)、独立社外取締役比率(60.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変動について


顧客のIT投資動向は社会や経済情勢の変動により変化する可能性があり、これが同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。特定の産業への依存度は低い構造となっていますが、引き続き注視が必要です。

(2) 価格競争について


情報サービス産業では顧客からの投資対効果への要求が厳しくなっており、他業種からの参入や海外企業の進出などにより競争が激化しています。価格面での競争激化が予想以上に進行した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業について


海外取引の拡大や現地法人の運営において、現地の法律や商慣習への対応、労務管理、プロジェクト管理などが適切に行われない場合、トラブルや訴訟リスクが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) ビジネスモデル、技術革新について


急速な技術革新や顧客ニーズの変化に対して、同社グループの適応が遅れた場合、競争力を失い業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対応するため、新たな成長モデルの構築を目指しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。