ソラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するソラストは、全国の医療機関に向けた医療事務受託や在宅・施設介護、こども事業を幅広く展開する企業です。直近の業績は、各主力事業が堅調に推移したことで増収を達成し、営業利益や経常利益も前年を上回る増益を記録しました。特別損失等により最終利益は減益です。


※本記事は、株式会社ソラストの有価証券報告書(第58期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ソラストってどんな会社?


ソラストは医療事務受託や介護、保育サービスを通じ、安心して暮らせる地域社会を支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1965年に創業し、1968年に設立されました。1979年に医事業務の全面受託を開始して以降、1999年に介護事業、2002年に保育事業(現こども事業)へと参入し、事業領域を拡大してきました。2012年に現在のソラストへと社名を変更し、2016年に東証一部(現在はプライム市場)へ上場を果たしています。近年も介護や保育領域でのM&Aを積極的に推進しています。

現在の従業員数は、連結で33,674人、単体で28,220人です。大株主の状況については、筆頭株主が事業会社である大東建託となっており、第2位および第3位には資産管理等を行う金融機関の信託口等が名を連ねています。

氏名 持株比率
大東建託 35.12%
NOMURA INTERNATIONAL PLC A/C JAPAN FLOW 7.78%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長社長執行役員チーフ・エグゼクティブ・オフィサーは野田亨氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
野田亨 代表取締役社長社長執行役員チーフ・エグゼクティブ・オフィサー 三菱商事に入社後、西友代表社員CEO、アルク代表取締役社長等を経て、2021年に同社社外取締役へ就任。2025年より現職。
増原一博 取締役 東芝情報システム等を経てニトリに入社。2017年に同社執行役員経営企画副本部長となり、2025年より現職。


社外取締役は、知識賢治(元カネボウ化粧品代表取締役社長執行役員)、光成美樹(FINEV代表取締役)、田中美穂(芝・田中経営法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療事業」「介護事業」「こども事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医療事業


全国約1,300の医療機関を対象に、受付や会計、診療報酬請求などの医療事務関連業務をはじめ、医師事務作業補助等の医事周辺業務、病院経営支援業務などを提供しています。人材派遣や業務受託を通じて医療現場の業務負担軽減に貢献しています。

主な収益源は、医療機関からの業務受託料や人材派遣に伴う手数料、病院経営コンサルティングの対価等です。事業の運営は同社および技能認定振興協会等のグループ会社が行っています。

(2) 介護事業


関東圏・中京圏・関西圏を中心に、訪問介護や通所介護といった在宅介護サービスをはじめ、グループホーム、有料老人ホームなどの施設系サービスを提供しています。多様なニーズに応える各種介護サービスを展開し、地域社会を支えています。

収益源は、介護保険制度に基づく介護報酬や、利用者から直接受け取るサービス利用料、入居一時金や家賃等です。事業の運営は日本エルダリーケアサービス、ベストケアをはじめとする複数の子会社が行っています。

(3) こども事業


首都圏を中心に、認可保育所や認証保育所、小規模保育所、病後児保育室などを展開し、待機児童問題の解消や子育て世代の支援に取り組んでいます。質の高い保育サービスの提供を通じて、社会課題の解決に貢献しています。

収益源は、自治体から支給される公定価格に基づく給付費(委託費)や、保護者から支払われる保育料、延長保育料等です。運営ははぐはぐキッズやなないろ等の子会社が行っています。

(4) その他事業


同社グループ内の事業展開をサポートするための各種サービスを提供し、経営の効率化や関連業務の支援を行っています。

主にグループ会社向けの不動産賃貸収入や損害保険代理店業務による手数料等が収益源となっており、同社自身が運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が毎年着実に成長を続けており、増収基調を維持しています。経常利益は一時的な減少があったものの、直近では回復し過去最高水準で推移しており、安定した利益率を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1172億円 1311億円 1351億円 1374億円 1411億円
経常利益 63億円 67億円 56億円 67億円 72億円
利益率(%) 5.4% 5.1% 4.1% 4.9% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 33億円 -13億円 33億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高は増加傾向にあり、売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率も5%台を維持し、安定した収益構造を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1374億円 1411億円
売上総利益 224億円 233億円
売上総利益率(%) 16.3% 16.5%
営業利益 70億円 73億円
営業利益率(%) 5.1% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が40億円(構成比25%)、支払手数料が34億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である医療事業が全体の売上を牽引しています。介護事業とこども事業もそれぞれ前年から売上を伸ばしており、全セグメントにおいて着実な成長が確認できます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医療事業 712億円 738億円
介護事業 553億円 560億円
こども事業 108億円 113億円
その他 0.5億円 0.4億円
連結(合計) 1374億円 1411億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業の営業活動で得た資金(プラス)を、将来に向けた投資(マイナス)と借入金の返済などの財務活動(マイナス)にバランスよく充当しており、健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 59億円 68億円
投資CF 3億円 -5億円
財務CF -73億円 -81億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.4%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、人とテクノロジーの融合により、『安心して暮らせる地域社会』を支え続けます。」を企業理念に掲げています。人とテクノロジーを融合した新たなビジネスの創出と既存ビジネスの改革を通じ、社会課題解決への貢献と価値あるサービスを提供し続けることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、持続的な成長を支える経営基盤として「ダイバーシティポリシー」を制定し、多様な人材の確保・活躍を推進しています。社員一人ひとりの多様性や個性を尊重し、人種、年齢、性別、障がいの有無等にかかわらず、全ての従業員が特性や魅力を反映させながら仕事に参画できる職場環境づくりを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、「中期経営計画FY2025-2029」において、「環境変化への対応と人材育成を通じた持続的な成長の確保」を目指しています。2029年度の定量目標として以下の数値を掲げています。

・売上高:1,755億円
・営業利益:100億円
・自己資本利益率(ROE):20%
・配当性向:50%超

(4) 成長戦略と重点施策


人口減少社会を見据えた「人的資本経営強化×テクノロジー」を重点戦略としています。医療事業では次世代アウトソーシング事業の育成や価格適正化、介護事業では業務プロセスの改善による収益性向上や厳選したM&Aの実行、こども事業では保育の質の向上と差別化戦略を推進し、全社的なIT投資と健全な財務基盤の構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ダイバーシティ・マネジメントを人事政策上の重要課題と位置付けています。3万人を超える社員という人的資本を価値創造の源泉と考え、中期経営計画において多額のキャッシュを人材投資へ配分する方針です。専門知見を持ち、多様性を実現するための人材育成や管理職への登用を促進し、優れた定着率の実現に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 12.2年 6,365,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 49.0%
男性育児休業取得率 71.9%
男女賃金差異(全労働者) 67.0%
男女賃金差異(正規労働者) 65.5%
男女賃金差異(非正規労働者) 83.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界環境の変化と競合のリスク


医療事業の主たる顧客である医療機関は、診療報酬の改定や医療制度改革等により経営に影響を受けることがあります。また、介護や保育サービスにおいても、他事業者の新規参入による競争激化や少子化の加速により、利用者の確保が困難となる場合には同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保と育成に関するリスク


同社グループの事業は人材によるサービス提供が主体であり、事業規模の維持・拡大には専門性の高い人材の確保と育成が不可欠です。介護・保育分野での慢性的不足に対し、処遇改善等で定着率向上に努めていますが、計画通りに人材確保が進まず人員基準を満たせなくなる場合、サービス継続が困難になる可能性があります。

(3) 法的規制や制度改正に関するリスク


介護事業は「介護保険法」等の規制を受け、3年ごとの制度見直しや介護報酬の改定が収益に影響を与えます。また、医療事業で行う労働者派遣も「労働者派遣法」の適用を受けます。同社は複数サービスの展開等でリスク分散を図っていますが、大幅な報酬引き下げや規制強化が行われた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。