ソラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

プライム市場に上場するソラストは、医療事務受託、介護サービス、保育園運営を展開するトータルヘルスケア企業です。2025年3月期の業績は、売上高1374億円(前期比1.7%増)、営業利益70億円(同27.2%増)と増収増益を達成しました。特に介護事業の収益性改善が進み、利益面で大幅な成長を記録しています。


※本記事は、株式会社ソラスト の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ソラストってどんな会社?


医療事務の受託業務からスタートし、M&Aを通じて介護・保育分野へ事業を拡大したトータルヘルスケア企業です。

(1) 会社概要


1965年に日本医療経営協会として創業し、1992年に株式を店頭登録しました。2012年のMBOによる上場廃止と現社名への変更を経て、2016年に東証一部へ再上場を果たしました。その後、積極的なM&Aにより介護事業を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

連結従業員数は33,616名、単体では28,041名です。筆頭株主は建設・不動産事業を展開する大東建託で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
大東建託 34.47%
日本カストディ銀行(信託口) 9.77%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長社長執行役員チーフ・エグゼクティブ・オフィサーは野田 亨氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
野田 亨 代表取締役社長社長執行役員チーフ・エグゼクティブ・オフィサー 三菱商事、ベルリッツ会長兼社長兼CEO、西友執行役EVP兼COO、アルク社長等を経て、2025年4月より現職。
川西 正晃 取締役 日本生命、日本ヒューレット・パッカード、ダイエー、PwCあらた監査法人等を経て、同社取締役専務執行役員CHRO等を歴任。2024年6月より現職。
増原 一博 取締役 東芝情報システム、イエローハット、ニトリHD等を経て、同社専務執行役員CIO兼IT戦略本部長。2025年6月より現職。


社外取締役は、久保田 幸雄(元ウィルコム社長)、知識 賢治(ティーガイア副社長CSO)、光成 美樹(FINEV代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療事業」「介護事業」「こども事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医療事業


全国の医療機関を対象に、受付・会計・診療報酬請求などの医療事務関連業務や、医師事務作業補助・看護補助などの医事周辺業務、病院経営支援業務を提供しています。

収益は、契約に基づき医療機関から受領する業務委託費や人材派遣料によって構成されています。運営は主にソラストが行っています。

(2) 介護事業


訪問介護、通所介護(デイサービス)、有料老人ホーム、グループホームなど、在宅系から施設系まで多様な介護サービスを提供しています。主に関東・中京・関西圏で事業を展開しています。

収益は、介護保険制度に基づく介護給付費や利用者からの自己負担金等から成ります。運営はソラストのほか、ソラストケア、ポシブル医科学、ベストケアなどの子会社が行っています。

(3) こども事業


認可保育所を中心に、認証保育所、小規模保育所、病後児保育室などの保育サービスを提供しています。

収益は、自治体からの委託費や補助金、および利用者からの保育料等で構成されています。運営はソラストや、子会社のはぐはぐキッズ等が行っています。

(4) その他


クリニック等の医療機関を対象に、診療報酬請求業務を遠隔で提供するスマートホスピタル事業などを行っています。

収益は、医療機関から受領するサービス利用料等です。運営は主にソラストが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では2024年3月期に一時的な落ち込みが見られましたが、2025年3月期には経常利益および当期純利益ともに回復し、V字回復を果たしています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,062億円 1,172億円 1,311億円 1,351億円 1,374億円
経常利益 61億円 63億円 67億円 56億円 67億円
利益率(%) 5.7% 5.4% 5.1% 4.1% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 29億円 33億円 -13億円 33億円

(2) 損益計算書


売上高は微増ながら成長を維持しています。利益面では、営業利益率が改善傾向にあり、本業の収益性が高まっています。売上総利益率も安定的に推移しており、コストコントロールが進んでいることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,351億円 1,374億円
売上総利益 219億円 224億円
売上総利益率(%) 16.2% 16.3%
営業利益 55億円 70億円
営業利益率(%) 4.1% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が40億円(構成比26.3%)、支払手数料が29億円(同19.1%)を占めています。売上原価については内訳データがありません。

(3) セグメント収益


医療事業は安定的に推移し、売上高の過半を占める主力事業としての地位を維持しています。介護事業は増収に加え、利益率が大きく改善しており、全社の増益を牽引しました。こども事業も増収増益となり、堅調な成長を見せています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
医療事業 708億円 710億円 43億円 44億円 6.2%
介護事業 539億円 553億円 15億円 22億円 4.0%
こども事業 102億円 108億円 3億円 4億円 3.7%
その他 2億円 3億円 -6億円 -0.2億円 -7.2%
連結(合計) 1,351億円 1,374億円 55億円 70億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 79億円 59億円
投資CF -28億円 3億円
財務CF -18億円 -73億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.4%で市場平均(プライム非製造業平均24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、人とテクノロジーの融合により、「安心して暮らせる地域社会」を支え続けます。」を企業理念として掲げています。人とテクノロジーを融合させた新たなビジネスの創出や既存ビジネスの改革を行い、事業を通じて社会課題の解決に貢献し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社はサステナビリティテーマとして、社会課題の解決と持続的な成長を支える経営基盤の強化を掲げています。従業員一人ひとりの個性や多様性を尊重し、コンプライアンス遵守を徹底するとともに、環境や資源への配慮を意識した行動を推奨する風土があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「FY2025-2029」では、「環境変化への対応と人材育成を通じた持続的な成長の確保」を目指しています。
* 売上高:1,755億円(2029年度計画)
* 営業利益:100億円(2029年度計画)
* ROE:20%(2029年度計画)

(4) 成長戦略と重点施策


人口減少社会を見据え、「人的資本経営強化×テクノロジー」を重点戦略としています。医療事業ではソリューションビジネスの進化や処遇改善、介護事業ではBPRによる収益性改善やM&Aの実行、こども事業では保育の質の向上と差別化を進める方針です。また、全社施策としてIT基盤刷新や財務基盤の構築に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成を通じてサービスの品質を向上させるとともに、多様な人材の登用を促進させる方針を掲げています。専門知見や経験を持つ人材の育成に注力し、ダイバーシティ・マネジメントを推進することで、組織全体の活性化と持続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.2歳 11.7年 6,070,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 47.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.8%
男女賃金差異(正規雇用) 64.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス排出量(Scope1+2)(24,373t-CO2)、温室効果ガス排出量(Scope3)(10,071t-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界環境の変化と競争激化


主力である医療・介護事業は、診療報酬や介護報酬の改定、医療制度改革の影響を強く受けます。また、異業種からの参入やM&Aによる業界再編が進んでおり、競争環境が激化した場合、受託契約や利用者確保に影響が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保・育成


労働集約型のビジネスモデルであるため、質の高い人材の確保と育成が事業継続の鍵となります。少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、計画通りに人材を採用できない場合や、離職率が高まった場合には、サービス品質の低下や事業拡大の制約となるリスクがあります。

(3) 法的規制・訴訟


労働者派遣法や介護保険法などの法的規制の下で事業を行っており、法令違反や不祥事が発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。また、個人情報の漏洩や介護事故等による訴訟リスクもあり、これらが顕在化した場合は損害賠償責任等により業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。