セゾンテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セゾンテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セゾンテクノロジーは東証スタンダード市場に上場し、データ連携ソフトウェア「HULFT」を中心とした事業やデータプラットフォーム事業、システム受託事業を展開しています。直近の業績は、システム受託事業における開発案件の減少等により減収、一部プロジェクトの高負荷に伴う原価増や先行投資等により減益となっています。


※本記事は、セゾンテクノロジーの有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セゾンテクノロジーってどんな会社?


同社グループは、データ連携ソフトウェア「HULFT」やシステム受託開発等を提供するIT企業です。

(1) 会社概要


同社は1970年に西武情報センターとして設立され、情報処理サービスおよびソフトウェア開発事業を開始しました。1992年にセゾン情報システムズに商号を変更し、翌1993年には現在の主力製品である通信ミドルウェア「HULFT」の提供を開始しています。2004年にジャスダックに上場し、2024年4月に現在のセゾンテクノロジーへと商号を変更しました。

現在は連結従業員数734名、単体従業員数696名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は情報処理サービス等の提供先でもあるクレディセゾンで、第2位は資本業務提携を行っているメルコグループです。

氏名 持株比率
クレディセゾン 46.84%
メルコグループ 20.00%
インタートラスト トラステイーズ ケイマン リミテツド アズ トラステイ オブ ザ ユビキタス マスター シリーズ トラスト メルコ グループ マスター フアンド 7.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役 社長執行役員は葉山誠氏が務めています。取締役7名中、社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
葉山誠 代表取締役 社長執行役員 1997年サトーに入社し、常務執行役員などを歴任。2017年同社に入社し、HULFT事業部長等を経て、2024年4月より現職。
吉原淳 取締役 執行役員 1997年DDI東京ポケット電話に入社。ミクシィを経て2011年に同社入社。カスタマーサービス部長等を歴任し、2025年6月より現職。
渋谷淳一 取締役 執行役員 1992年ユニオンクレジットに入社し、クレディセゾンでリテール営業部長等を歴任。2025年4月に同社へ入社し、同年6月より現職。
小野和俊 取締役 1999年サン・マイクロシステムズに入社。アプレッソ代表取締役社長を経て、クレディセゾン専務執行役員CTO等を歴任し、2023年6月より現職。


社外取締役は、長瀬吉昌(元大和証券グループ本社専務執行役員)、マニヤン麻里子(TPO代表取締役)、黒田はるひ(本間合同法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HULFT事業」「データプラットフォーム事業」「システム受託事業」を展開しています。

HULFT事業

国内におけるデータ連携ソフトウェアのスタンダードである主力製品「HULFT」や「DataSpider Servista」、および関連製品の販売やサポートサービスを提供しています。
収益は、パッケージソフトウェア製品の販売や技術サポートサービスの利用料として受け取っています。運営は主に同社および海外の子会社が行っています。

データプラットフォーム事業

「HULFT」や日本発iPaaS「HULFT Square」などを活用し、企業内・企業間のシステムとSaaSのデータを連携することで、業務効率化や経営刷新を図るサービスを提供しています。
収益は、システム開発や情報処理サービスの提供に伴う対価として得ています。運営は主に同社および子会社が行っています。

システム受託事業

主に金融業や流通小売業の顧客向けに、情報処理サービス、システム開発、運用サービスを提供しています。
収益は、受託計算等のアウトソーシングサービス、クラウドサービス等の提供、システム開発の受託により得ています。運営は同社単体で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は230億円〜240億円台で堅調に推移していましたが、直近ではシステム受託事業の案件減少等により219億円となりました。経常利益はプロジェクトの高負荷に伴う原価増や、成長領域への先行投資等により、増減を伴いながら推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 232億円 240億円 239億円 244億円 219億円
経常利益 29億円 22億円 11億円 22億円 16億円
利益率(%) 12.7% 9.3% 4.5% 8.9% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 14億円 6億円 15億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高が減少したことに伴い、売上総利益および営業利益も減少しています。成長領域へのリソースの再配分や費用の増加等により、営業利益率は8.8%から7.3%へと低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 244億円 219億円
売上総利益 89億円 79億円
売上総利益率(%) 36.3% 35.9%
営業利益 21億円 16億円
営業利益率(%) 8.8% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が21億円(構成比36.1%)、業務委託費が8億円(同13.3%)を占めています。売上原価では、外注費が50億円(構成比36.1%)、労務費が35億円(同24.9%)を占めています。

(3) セグメント収益


HULFT事業はサポートサービスが堅調なものの、ライセンス売上の減少等により減収減益となりました。データプラットフォーム事業は「HULFT Square」の導入拡大により増収となりましたが、一部プロジェクトの高負荷による原価増やリソース再配分に伴う費用増により営業損失を計上しています。システム受託事業は案件減少により減収となったものの、コスト低減により増益を確保しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
HULFT事業 100億円 98億円 45億円 40億円 41.3%
データプラットフォーム事業 28億円 30億円 -26億円 -33億円 -111.4%
システム受託事業 116億円 92億円 3億円 9億円 10.0%
連結(合計) 244億円 219億円 21億円 16億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 12億円 17億円
投資CF -2億円 -4億円
財務CF -15億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.2%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る(Connect the world’s data and make it useful for everyone)」をミッションとして掲げています。データ連携基盤の導入ニーズが高まる市場環境において、自社製品サービスや卓越したソリューションの提供を通じて、顧客のビジネスの成功と社会の発展に注力しています。

(2) 企業文化

同社は「Our Values(共有する価値観)」として、「Customer Centric(現場に立ちお客様のためを考え抜く)」「Proactive(自ら考え自ら行動する)」「Respect(互いを尊重し会話をする)」の3つを掲げています。テクノロジーに熱意を持ち、絶えず学び続ける意欲や、アンコンシャスバイアスを排除した多様性を重視する文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標

中長期において魅力的で稀有な高収益IT企業となり、企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。株主の最終的な利益に整合した指標であるTSR(株主総利回り)を経営指標の1つに設定しているほか、以下の数値目標を掲げています。

・ROE20%以上(恒常的な達成)

(4) 成長戦略と重点施策

システム受託型から自社製品サービス提供型へビジネス構造を変革させるべく、データ連携ビジネスの拡大に注力しています。また、AIと顧客の基幹業務を実行可能な形で接続するテクノロジーの追求や製品企画開発力の強化を進め、人材育成と多様性の確保を通じてサステナブルな経営基盤の構築に取り組んでいます。

・データ連携ビジネス売上比率を70%以上に高める(2029年3月期)
・女性管理職比率を30%にする(2030年度)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

事業革新を推進できるDX・AI人材や、技術営業、高度エンジニアの採用・育成を積極的に推進しています。データエンジニアリングに必要なスキルの習得支援や、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用を行うとともに、在宅勤務やフレックスタイム制など多様な働き方を選択できる制度を整備し、皆が活躍できる環境基盤づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 13.8年 7,638,155円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.4%
男女賃金差異(正規雇用) 84.0%
男女賃金差異(パート・有期) 72.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティとシステム障害のリスク

外部パブリッククラウドサービスを利用した自社サービスの提供やシステム受託事業において、サイバー攻撃等による情報漏洩やシステム障害が発生した場合、信用失墜や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はISMSに準拠した体制の構築や、定期的な教育・訓練を実施して対策を講じています。

(2) 技術者の確保・育成に関するリスク

労働市場の逼迫等により、事業拡大に不可欠な一定水準以上のスキルを有する優秀な技術者を十分に確保できない場合や、人材の流出が生じた場合、同社の事業展開が制約される可能性があります。多様なキャリアパスの用意や働きやすい環境作りに努め、ミスマッチの最小化を図っています。

(3) 特定顧客および主力製品への依存リスク

売上高全体の約3割をクレディセゾン向けが占めており、同社向けの販売が縮小した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。また、主力製品である「HULFT」について、市場環境の変化や競合激化等により販売が減少した場合も同様のリスクがあります。同社は新技術や新領域への事業展開を進め、収益性の高い事業を創出して対応を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。