※本記事は、株式会社セゾンテクノロジー の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セゾンテクノロジーってどんな会社?
データ連携ソフト「HULFT」で高いシェアを誇り、金融・流通業界のシステム開発も担うIT企業です。
■(1) 会社概要
1970年に設立され、1993年に主力製品となる通信ミドルウェア「HULFT」の提供を開始しました。2004年にJASDAQへ上場し、2013年にはデータ連携ソリューション強化のためアプレッソを子会社化しています。2024年4月、株式会社セゾン情報システムズから現社名へ商号変更を行いました。
連結従業員数は771名、単体では731名体制です。大株主構成は、筆頭株主が事業会社であるクレディセゾン、第2位が周辺機器メーカー等の事業会社であるメルコグループ、第3位が資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| クレディセゾン | 46.84% |
| メルコグループ | 20.00% |
| インタートラスト トラステイーズ ケイマン リミテツド アズ トラステイ オブ ザ ユビキタス マスター シリーズ トラスト メルコ グループ マスター フアンド | 7.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表者は代表取締役社長執行役員の葉山 誠氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 葉山 誠 | 代表取締役社長執行役員 | サトーにて執行役員等を歴任後、2017年に同社入社。HULFT事業部長等を経て2022年より社長、2024年4月より現職。 |
| 石田 誠司 | 取締役常務執行役員 | ソフトバンクIDC社長等を経て2021年に同社入社。新規ビジネス開発や営業本部を統括し、2024年4月より現職。 |
| 山本 善久 | 取締役執行役員 | クレディセゾン取締役等を経て2018年に同社取締役就任。開発本部長等を務め、2023年4月より現職。 |
| 藤内 聖文 | 取締役執行役員 | KDDI、SCSK等を経て2016年に同社入社。CFO等を歴任し、2024年4月よりIR/SR管掌として現職。 |
| 小野 和俊 | 取締役 | アプレッソ(現同社)代表取締役社長、クレディセゾン常務執行役員CTO等を歴任。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、長瀬 吉昌(元大和証券専務)、マニヤン 麻里子(株式会社TPO代表)、黒田 はるひ(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「HULFT事業」「データプラットフォーム事業」「流通ITサービス事業」「フィナンシャルITサービス事業」を展開しています。
■HULFT事業
国内におけるデータ連携ソフトウェアのスタンダードである「HULFT」、「DataSpider Servista」および関連製品の販売・サポートサービスを提供しています。
収益は主に製品のライセンス販売および保守サポート契約による利用料等から得ています。運営は主にセゾンテクノロジーや海外子会社が行っています。
■データプラットフォーム事業
「HULFT」やクラウド型データ連携プラットフォーム「HULFT Square」を活用し、システムやSaaSのデータ連携による業務効率化サービスを提供しています。
収益は主にプラットフォームの利用料や連携ソリューションの提供対価から得ています。運営は主にセゾンテクノロジーや海外子会社が行っています。
■流通ITサービス事業
主に流通小売業や航空業向けに、情報処理サービスおよびシステムの受託開発・運用サービスを提供しています。
収益は主に顧客企業からのシステム開発委託費や運用サービス料から得ています。運営は主にセゾンテクノロジーが行っています。
■フィナンシャルITサービス事業
金融業向けに、情報処理サービスおよびシステムの受託開発・運用サービスを提供しています。
収益は主に金融機関等からのシステム開発委託費や運用サービス料から得ています。運営は主にセゾンテクノロジーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は220億円から240億円台で安定的に推移しています。経常利益は2024年3月期に一時的に落ち込みましたが、当期は回復し22億円となりました。利益率は一時低下したものの、当期は改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 225億円 | 232億円 | 240億円 | 239億円 | 244億円 |
| 経常利益 | 30億円 | 29億円 | 22億円 | 11億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 13.3% | 12.7% | 9.3% | 4.5% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 | 21億円 | 17億円 | 7億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、売上原価の抑制により売上総利益および利益率が向上しています。営業利益も大きく伸長し、収益性が改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 239億円 | 244億円 |
| 売上総利益 | 73億円 | 89億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.6% | 36.3% |
| 営業利益 | 10億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が22億円(構成比33%)、その他が21億円(同32%)を占めています。売上原価については、労務費や外注費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上動向を見ると、HULFT事業は横ばいですが、データプラットフォーム事業と流通ITサービス事業が伸長しています。一方、フィナンシャルITサービス事業は減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| HULFT事業 | 100億円 | 100億円 |
| データプラットフォーム事業 | 25億円 | 28億円 |
| 流通ITサービス事業 | 28億円 | 37億円 |
| フィナンシャルITサービス事業 | 86億円 | 78億円 |
| 連結(合計) | 239億円 | 244億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスであることから、本業で稼いだ現金を投資や借入返済・株主還元に充てている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 12億円 |
| 投資CF | -8億円 | -2億円 |
| 財務CF | -15億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る(Connect the world’s data and make it useful for everyone)」をミッションとして掲げ、データ連携を通じて社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、共有する価値観(Our Values)として、「Customer Centric(現場に立ちお客様のためを考え抜く)」、「Proactive(自ら考え自ら行動する)」、「Respect(互いを尊重し会話をする)」の3つを掲げ、これらを重視した行動を推奨しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中長期的に魅力的で稀有な高収益IT企業となることを目指し、以下の数値目標を経営指標として設定しています。
* ROE 20%以上を恒常的に達成
* データ連携ビジネスの売上比率 70%(2028年3月期目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
システム受託型から自社製品サービス提供型への構造変革を目指し、「4つのシフト(事業・技術・組織・人材)」に取り組んでいます。特にデータ連携ビジネスの拡大に注力し、「HULFT Square」の機能強化や、シリコンバレーのVCへの出資を通じた先端テクノロジーの取り込み、エンジニアの育成等を推進しています。
* データ連携ビジネス(HULFT事業及びデータプラットフォーム事業)の拡大
* 先端テクノロジー(データマネジメント、AI、クラウド等)への重点投資
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材シフト」を掲げ、テクノロジーに熱意を持ち自律的に行動できる人材を求めています。DX・AI人材や高度エンジニアの採用・育成を強化するとともに、多様性を重視し、エンジニアのスキルアップ支援や柔軟な働き方ができる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.9歳 | 13.4年 | 7,444,654円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.3% |
| 男性育児休業取得率 | 64.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)(7,541.77t-CO2)、消費電力量に占める再生可能エネルギー電力比率(20.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報システムの支障等
金融・流通のシステム受託やクラウドサービスを提供しているため、システム障害やサイバー攻撃による情報漏洩が発生した場合、信用失墜や損害賠償により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策としてCSIRTの構築やセキュリティ教育を実施しています。
■(2) 技術者の確保・育成
事業拡大には優秀なエンジニアの確保が不可欠ですが、労働市場の逼迫により必要な人材を確保できない場合や人材流出が生じた場合、事業展開が制約される可能性があります。対応策として、多様なキャリアパスの提供や働きやすい環境作りに努めています。
■(3) 特定の取引先の動向
売上高の約3割を株式会社クレディセゾン向けが占めており、同社向けの販売が縮小した場合、業績に影響を与える可能性があります。新技術・新領域への事業展開を進め、新たな市場や顧客を開拓することでリスク分散を図っています。



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