三協フロンテア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三協フロンテア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の三協フロンテアは、ユニットハウスの製造・販売・レンタルを主力事業としています。建設現場やイベント施設、トランクルームなど多用途に展開し、モバイルスペースの普及を推進しています。第56期は大型案件の受注や能登半島地震への対応などが寄与し、売上高・経常利益ともに増加し、増収増益となりました。


※本記事は、三協フロンテア株式会社 の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三協フロンテアってどんな会社?


東証スタンダード上場のユニットハウス大手で、製造・販売・レンタルの製販一貫体制を強みとしています。

(1) 会社概要


1969年に建設用設備器材の製造販売を目的に設立され、1973年にユニットハウス「コスモCT」の製造販売を開始しました。1993年に株式を店頭登録し、2013年に東証JASDAQ(スタンダード)へ上場、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。中国、ミャンマー、マレーシア、米国にも現地法人を設立し、グローバル展開を進めています。

同社グループの連結従業員数は1,192名、単体では1,150名です。筆頭株主は創業家の資産管理会社である有限会社和幸興産で、第2位は代表取締役社長の長妻貴嗣氏、第3位は会長の長妻和男氏となっており、創業家が株式の過半数を保有するオーナー系企業です。

氏名 持株比率
有限会社和幸興産 50.55%
長妻貴嗣 14.93%
長妻和男 2.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は長妻貴嗣氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
長妻貴嗣 代表取締役社長 日本アイ・ビー・エムを経て1994年に入社。経営企画部長、営業本部長、管理本部長などを歴任し、2002年6月より現職。
藤田剛 常務取締役 富士フイルムを経て1997年に入社。情報システム部長、生産物流管理部長、経営管理統括部長などを経て、2025年6月より現職。
安齋光晴 取締役 2003年に入社。技術本部ハウス開発部長、技術第一部長、技術統括部長などを歴任し、2025年6月より現職。
松崎和秀 取締役 1995年に入社。新潟工場長、開発本部副本部長、茨城工場長、つくば事業所長などを経て、2022年6月より現職。
鈴木洋帆 取締役 2004年に入社。技術本部建築デザイン室長、技術第二部長、技術第一統括部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、野倉学(バレクセル代表取締役)、渡部秀敏(元ワタベウェディング代表取締役会長)、チョン シアク チン(元Ascendas Pte Ltd.社長兼CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ユニットハウス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ユニットハウス事業


建設現場の事務所やイベント施設、店舗などに利用されるユニットハウス(モバイルスペース)の製造・販売・レンタルを行っています。また、ユニットハウスを活用したトランクルームやレンタルスペースの運営も手がけています。

収益は、顧客からの製品販売代金、レンタル料、トランクルーム等の賃貸料などから得ています。運営は主に三協フロンテアが行っているほか、中国の子会社が原材料の製造、ミャンマーやマレーシア、米国の子会社が販売・レンタルや図面作成業務などを担っています。

(2) その他


立体駐車装置の製造・販売・レンタル、植物工場の製造・販売・レンタル、宿泊施設の経営などを行っています。

収益は、製品の販売代金やレンタル料、宿泊料などから得ています。運営は主に三協フロンテアが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調な右肩上がりを続けており、直近5期間で安定的に成長しています。経常利益も高い水準を維持しており、利益率はおおむね14%〜18%台で推移しています。第56期は大型案件の増加などにより売上高・利益ともに伸長しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 482億円 533億円 500億円 524億円 561億円
経常利益 79億円 101億円 69億円 81億円 82億円
利益率(%) 16.4% 18.9% 13.8% 15.5% 14.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 63億円 43億円 53億円 55億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率はやや低下傾向にあります。営業利益率は14%台を維持しており、高い収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 524億円 561億円
売上総利益 213億円 220億円
売上総利益率(%) 40.7% 39.3%
営業利益 81億円 80億円
営業利益率(%) 15.4% 14.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が45億円(構成比32%)、減価償却費が7億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のユニットハウス事業は、本建築における大型案件の受注増や被災地での応急仮設住宅建設などが寄与し、増収となりました。その他事業も微増しています。なお、同社は単一セグメントに近い構成のため、セグメント利益の開示はありません。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ユニットハウス事業 520億円 557億円
その他 3億円 4億円
連結(合計) 524億円 561億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済や配当も実施している健全型のキャッシュ・フローです。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.7%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 62億円 51億円
投資CF -25億円 -29億円
財務CF -24億円 -28億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会に役立ち、人々の心や暮らしを豊かにし、よって社会に貢献すること」を目的(存在理由)として掲げています。独自の技術と製品を通じて顧客の豊かな生活環境を実現し、株主への適切な利益還元を行うことを目指しています。

(2) 企業文化


「開拓の精神」「不断の努力」「誠実な意志」を基本的価値観(不変の主義)としています。また、コンプライアンスや内部統制、ルール、業務フローなどを守るべき基準として「規律」と定義し、「規律を大切にする文化」の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョンとして「VISION2050」を設定し、「Mobile Spaceを世界の常識にし、ハピネスあふれる社会の実現に貢献する」という方針を掲げています。サーキュラーエコノミーを実現できるモバイルスペースを世界中に提供することで、よりよい社会と地球環境への貢献を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


モバイルスペースの普及に向け、全国200カ所以上の展示場とデジタルマーケティングを組み合わせた営業体制の構築を進めています。また、生産工場や物流センターの設備増強、組織体制の見直し、業務標準化による生産・供給体制の強化を図り、職人不足等の課題に対応しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の拡充」を重要課題とし、組織と個人の能力向上を図る教育計画や、成果を適切に評価する制度の構築を進めています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、「SECIモデル」を取り入れた組織学習の活性化、資格取得支援の拡充など、社員の自発的な成長を促す施策を展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 9.5年 5,508,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 28.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.5%
男女賃金差異(正規雇用) 62.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) レンタル資産の保有リスク


同社はユニットハウス等のレンタル資産を保有しています。需要減少や技術革新、競合製品の台頭などによりレンタル資産が陳腐化した場合、減損損失の計上や廃棄処分が必要となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資材購入価格の上昇


主要製品であるユニットハウスや立体駐車装置の製造には鉄鋼製品などの資材が必要です。鉄鉱石価格の高騰や原油高による資材価格の上昇が発生した場合、製造原価が増加し、利益を圧迫する可能性があります。

(3) 建設投資動向の影響


主要顧客である建設・土木業界は、公共投資や民間設備投資の動向に大きく影響を受けます。公共事業の削減や民間工事の著しい減少が発生した場合、同社製品への需要が落ち込み、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 法的規制の影響


ユニットハウス事業は建築基準法等の法的規制を受けます。将来的にこれらの規制の改廃や新たな規制の導入が行われた場合、事業活動や業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。