※本記事は、燦ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 燦ホールディングスってどんな会社?
葬儀業界のリーディングカンパニーとして、関西・首都圏を中心に「公益社」などのブランドで葬祭サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
1932年に「株式会社公益社」として設立され、葬儀請負と霊柩運送を開始しました。2001年に東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部に上場を果たし、2004年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、2024年にはきずなホールディングスを連結子会社化するなど、M&Aを通じた事業拡大を進めています。
連結従業員数は1,153名、単体従業員数は54名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主と第2位は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位は保険代理店業や不動産業等を営む事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社 | 10.64% |
| 株式会社日本カストディ銀行 | 6.14% |
| 銀泉 | 5.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長は野呂 裕一氏、代表取締役社長は播島 聡氏です。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野呂 裕一 | 代表取締役会長 | 1986年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー入社。2006年同社入社。2016年代表取締役社長を経て、2019年4月より現職。 |
| 播島 聡 | 代表取締役社長 | 1987年リクルートコンピュータプリント入社。1999年同社入社。2013年代表取締役副社長、2016年公益社社長を経て、2019年4月より現職。 |
| 宮島 康子 | 取締役専務執行役員 | 1988年大正海上システム開発入社。1997年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー入社。2006年同社入社。2019年4月より現職。 |
| 横田 善行 | 取締役執行役員 | 1994年ガイアートクマガイ入社。2000年同社入社。経理部長、人事部長、経営企画部長などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、横見瀬 薫(消費者庁入庁、内閣府参事官付政策企画専門官)、根岸 千尋(広済堂ホールディングス副社長上席執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「公益社グループ」「葬仙グループ」「タルイグループ」「きずなグループ」「持株会社グループ」の報告セグメントで事業を展開しています。
■公益社グループ
関西圏(大阪府、兵庫県、奈良県の一部)および首都圏(東京都、神奈川県、千葉県の一部)において、葬儀の受注・施行を行っています。また、警備・清掃業務、料理等の葬祭関連商品の販売、介護サービスの提供、終活関連WEBプラットフォームの運営なども手がけています。
収益は、顧客からの葬祭サービス料、料理・返礼品等の商品販売代金、介護サービス料などから得ています。運営は主に公益社、エクセル・サポート・サービス、ライフフォワードが行っています。
■葬仙グループ
鳥取県(米子市、鳥取市)および島根県(松江市)とその周辺地域を営業地盤とし、葬儀の受注および付随する商品・サービスの提供を行っています。公益社から生花の納入を受けるなどグループ間連携も行っています。
収益は、顧客からの葬儀施行および付随サービスの対価から得ています。運営は葬仙が行っています。
■タルイグループ
兵庫県明石市とその周辺地域を営業地盤として、地域密着型の葬儀サービスを提供しています。葬儀の受注から施行、付随する商品・サービスの販売までを一貫して行っています。
収益は、顧客からの葬祭サービス提供および関連商品の販売代金から得ています。運営はタルイが行っています。
■きずなグループ
北海道から九州まで広域にわたり、家族葬を中心とした葬儀サービスを提供しています。北海道、関東、愛知、熊本、宮崎、京都、大阪、奈良、岡山など多岐にわたる地域で葬儀を受注・施行しています。
収益は、顧客からの葬儀施行および付随商品・サービスの対価から得ています。運営はきずなホールディングス、家族葬のファミーユ、花駒、備前屋が行っています。
■持株会社グループ
グループ各社が使用する葬儀会館等の不動産賃貸や、グループ会社に対する経営指導、事務受託を行っています。
収益は、グループ会社からの不動産賃貸料、経営指導料、事務受託手数料から得ています。運営は燦ホールディングスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高(営業収益)は一貫して増加傾向にあります。特に当期はきずなホールディングスの連結子会社化により大幅な増収となりました。経常利益も順調に推移しており、当期は固定資産売却益の計上もあり当期純利益が大きく増加しています。利益率は変動があるものの、安定した水準を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 189億円 | 200億円 | 217億円 | 224億円 | 320億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 34億円 | 38億円 | 38億円 | 44億円 |
| 利益率(%) | 13.4% | 16.9% | 17.7% | 16.9% | 13.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 20億円 | 28億円 | 24億円 | 47億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益額は増加していますが、販管費の増加により営業利益率はやや低下しました。事業規模の拡大と利益確保の両立が図られています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 224億円 | 320億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 78億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.8% | 24.3% |
| 営業利益 | 38億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 16.9% | 14.1% |
販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が8.2億円(構成比25.4%)、その他が7.7億円(同23.6%)、給料及び手当が5.6億円(同17.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
公益社グループは新規出店効果により増収増益を達成しました。葬仙グループ、タルイグループも堅調に推移し増収増益となりました。新たに追加されたきずなグループは売上貢献が大きいものの、取得関連費用やのれん償却により利益貢献は限定的でした。持株会社グループは不動産管理収入が増加しましたが、費用増により減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 公益社グループ | 185億円 | 204億円 | 23億円 | 31億円 | 15.1% |
| 葬仙グループ | 16億円 | 16億円 | 2億円 | 2億円 | 12.6% |
| タルイグループ | 20億円 | 21億円 | 5億円 | 5億円 | 24.2% |
| きずなグループ | - | 75億円 | - | 4億円 | 4.9% |
| 持株会社グループ | 67億円 | 68億円 | 30億円 | 23億円 | 33.9% |
| 調整額 | -63億円 | -64億円 | -22億円 | -21億円 | - |
| 連結(合計) | 224億円 | 320億円 | 38億円 | 44億円 | 13.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
燦ホールディングスは、親会社株主に帰属する当期純利益を計上する一方、剰余金の配当を実施しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や有形固定資産売却益などにより増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社株式の取得により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れにより増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 55億円 |
| 投資CF | -14億円 | -121億円 |
| 財務CF | -12億円 | 95億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人生に潤いと豊かさを。よりよく生きる喜びを。」をミッション(使命)として掲げています。これは、葬儀事業からライフエンディングのトータルサポート企業へ進化し、商品やサービスを通じて顧客と地域の人々に人生の豊かさを感じてもらうことを社会的な使命とするものです。
■(2) 企業文化
ミッションとビジョンを実現するための価値観(バリュー)として、「人生を主体的によりよく生きること、成長していくこと、変化を恐れず挑戦しつづけること、進化していくこと」を重視しています。また、社会に対する存在意義としてパーパス「シニア世代とそのご家族の人生によりそい、ささえるライフエンディングパートナー」を制定しています。
■(3) 経営計画・目標
2032年の創業100年に向けた「10年ビジョン」を策定しており、その次なるステップとして「中期経営計画(2025年度~2027年度)」を推進しています。資本収益性を意識した経営を実践し、持続的な企業価値向上を目指しています。
* ROE(自己資本利益率):中長期的に安定して8%以上
* 葬儀会館数:2031年度にグループ全体で550会館
* ライフエンディングサポート事業売上:2031年度に100億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「10年ビジョン」実現のため、全国規模での出店拡大とライフエンディングサポート事業の拡大を重点方針としています。また、M&Aによりグループ入りしたきずなホールディングスとの統合効果を最大化し、経営効率の向上を図ります。
* Growth(成長):家族葬ブランドを中心とした自社出店の加速、M&Aや提携の活用、ライフエンディングサポート事業の領域拡張。
* Quality(品質):家族葬ノウハウの活用による品質向上、クオリティマネジメントの強化、人財育成。
* Change(変革):経営統合(PMI)の推進による機能共有・最適化、決算期の変更による効率化。
* Sustainability(持続可能性):資本コストを意識した経営、人的資本経営の推進、ESG・SDGsへの取り組み。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「10年ビジョン」実現に必要なスキル・専門性を備える人財の採用・育成を進めています。グループ内外を対象とした教育機関「燦ビジネスアカデミア」を設立し、人財育成基盤の強化を図るとともに、エンゲージメント向上施策を継続的に実施することで、組織力の強化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 49.7歳 | 10.1年 | 8,053,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 11.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 68.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 71.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | - |
※「男性労働者の育児休業取得率」の「-」は、育児休業取得の対象となる男性労働者がいないことを示しております。
※「労働者の男女の賃金の差異(%)」の「うち臨時雇用者」の「-」は、対象となる臨時雇用者がいないため記載しておりません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、葬儀会館数(267会館)、従業員意識調査のエンゲージメントの点数(3.8点)、労働安全衛生度数率(3.48)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 葬儀需要の変動に関するリスク
葬儀需要は死亡者数という人口動態に依存します。中長期的には増加が見込まれますが、単年度ごとの死亡者数の変動により業績が影響を受ける可能性があります。また、季節性があり冬季に需要が高まる傾向があるため、インフルエンザ流行の程度などによっても業績が変動する可能性があります。
■(2) 大規模葬儀の変動に関するリスク
同社グループは社葬やお別れの会などの大規模な追悼セレモニーに強みを持ちますが、これらの件数は年によって変動があります。個人葬に比べて規模が大きい案件であるため、受託件数や金額の多寡が単年度の業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 規制と競争環境に関するリスク
葬祭業界は参入障壁が低く、異業種からの参入やインターネットによる葬儀紹介事業者の台頭などにより競争が激化しています。今後さらなる新規参入や競争環境の変化が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 自然災害、感染症等の発生に関するリスク
台風、地震等の自然災害により保有施設が損害を受けた場合、事業活動に支障が出る可能性があります。また、感染症の蔓延により人々の移動や集会が制限されると、葬儀の小規模化や参列者の減少、大規模葬儀の施行困難などを招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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