イチネンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イチネンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するイチネンホールディングスは、自動車リース関連を中核に、ケミカル、パーキング、機械工具販売、合成樹脂、農業関連など多角的に事業を展開しています。直近の連結業績は、売上高が前期比増収の1623億円、営業利益も増益の109億円となり、堅調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社イチネンホールディングスの有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イチネンホールディングスってどんな会社?


自動車リース関連を中心に、多角的な事業展開で成長を続ける企業です。

(1) 会社概要


1963年に設立され、1969年に自動車リース業を開始しました。1994年に大証二部へ上場し、2005年に東証・大証一部へ指定されています。2008年の会社分割により持株会社体制へ移行し、現社名に変更しました。近年もM&Aを通じて事業領域の拡大を継続しています。

従業員数は連結で2067名、単体で89名です。筆頭株主は事業会社の第一燃料で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
第一燃料 11.67%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.45%
日本カストディ銀行(信託口) 3.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は黒田雅史氏です。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
黒田雅史 代表取締役社長 1988年イチネン本社入社。第一燃料代表取締役社長などを歴任し、2009年より現職。
黒田勝彦 取締役副社長 1983年イチネン・リース入社。イチネンTDリース代表取締役社長などを歴任し、2006年より現職。
村中正 取締役グループ管理本部長CSR担当 2001年イチネン入社。経理・財務部長等を経て、2024年より現職。
井本久子 取締役総合企画部長兼グループ事業開発室長 2002年イチネン入社。社長室長等を経て、2021年より現職。
木村平八 取締役 1988年イチネン・リース入社。日東運輸倉庫代表取締役社長など各グループ会社の役員を歴任し、2011年より現職。


社外取締役は、廣冨靖以(元りそな銀行副社長)、川村群太郎(元ダイキン工業副社長)、常陰均(元三井住友信託銀行社長)、下村信江(近畿大学法学部教授)、宮口亜希(公認会計士宮口亜希事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車リース関連事業」「ケミカル事業」「パーキング事業」「機械工具販売事業」「合成樹脂事業」「農業関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自動車リース関連事業


自動車リース、設備リース、車両販売、自動車メンテナンス受託、ガソリン給油カード発行などを提供し、法人や個人を顧客としています。

顧客からリース料やメンテナンス委託料、燃料販売代金を受け取ります。運営はイチネンやイチネンTDリースなどの子会社が行っています。

(2) ケミカル事業


自動車用、機械・設備用、工業用のケミカル製品を製造および販売しており、整備工場や一般消費者を主な顧客としています。

製品の販売代金を顧客から受け取ります。運営は主にイチネンケミカルズが行っています。

(3) パーキング事業


「OnePark」のブランド名で、来客用駐車場やコインパーキングの運営、施設附帯駐車場の管理などを全国で展開しています。

駐車場の利用者から支払われる駐車料金や、施設からの管理受託料を受け取ります。運営はイチネンパーキングが行っています。

(4) 機械工具販売事業


自動車部品、機械工具、空調・計測工具、DIY用品などの販売に加え、自社でのインターネット通販も展開しています。

各種製品・部品の販売代金を顧客から受け取ります。運営はイチネンアクセスやイチネンMTMなどの複数の子会社が行っています。

(5) 合成樹脂事業


遊技機器の部品や自動車用内外装部品の製造・販売のほか、半導体実装装置向けのセラミックヒーターなどの開発も行っています。

遊技機メーカーや自動車関連企業などからの製品販売代金を受け取ります。運営はイチネン製作所やマルイ工業などが行っています。

(6) 農業関連事業


自社農場での農作物の生産販売や、肥料の製造・販売、工業用原材料などの輸入・販売を行っています。

肥料や農作物の販売代金を顧客から受け取ります。運営はイチネン農園や日東エフシーなどが担っています。

(7) その他


一般曲げガラスや樹脂合わせガラスなどのガラス加工製品の製造・販売、不動産の賃貸および管理を展開しています。

ガラス製品の販売代金や不動産賃貸料を受け取ります。運営は新光硝子工業やイチネンファシリティーズなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が毎期連続して増加しており、事業規模の着実な拡大が見られます。経常利益も売上高の成長に連動して増加傾向にあり、安定した利益水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1206億円 1278億円 1383億円 1549億円 1623億円
経常利益 87億円 91億円 95億円 103億円 110億円
利益率(%) 7.2% 7.1% 6.8% 6.7% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 26億円 28億円 43億円 43億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益がともに増加しており、堅調な事業運営が行われています。営業利益も増益となっており、利益率も安定した水準を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1549億円 1623億円
売上総利益 340億円 355億円
売上総利益率(%) 22.0% 21.9%
営業利益 103億円 109億円
営業利益率(%) 6.6% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が7億円(構成比24%)、賃借料が4億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車リース関連事業や農業関連事業をはじめとする大半のセグメントで増収となっており、全社的な売上の成長を牽引しています。合成樹脂事業は前期と同水準を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
自動車リース関連事業 611億円 639億円
ケミカル事業 112億円 114億円
パーキング事業 79億円 82億円
機械工具販売事業 360億円 378億円
合成樹脂事業 190億円 190億円
農業関連事業 176億円 196億円
その他 22億円 24億円
連結(合計) 1549億円 1623億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 40億円 95億円
投資CF -21億円 -44億円
財務CF -13億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.8%であり、いずれも市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「最高の品質とサービスで、より多くの顧客に満足を与え、適正な利潤を確保することにより、株主及び従業員に報い、かつ社会に奉仕する」ことを経営の基本理念として掲げています。社会全体に関わる問題として地球環境保全にも配慮し、持続可能で豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「いちねんで、いちばんの毎日を。」というスローガンを掲げ、顧客に「快適さ」を提供することを重視しています。また、社員一人ひとりの「努力」と「挑戦」を通じて企業価値の向上を図ることを目指し、「努力」「挑戦」「信頼」を重んじる組織風土の醸成に取り組んでいます。多様な価値観を尊重し、安全・安心な職場環境の整備にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は企業価値の向上と継続的な成長を確保するため、財務基盤の確立に重点を置いており、中長期的な経営指標として以下の数値目標を掲げています。各事業部門においては、それぞれが連結営業利益の10%以上を稼ぐことを目標として設定し、グループ一体経営を推進しています。

* 自己資本比率:40%超
* 自己資本:920億円超
* 営業利益:170億円超

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の強化を進めつつ、事業領域の枠にとらわれない新規事業の開拓を推進しています。主力となる自動車リース関連事業では、地方市場や中小企業をメインターゲットに契約台数の増加を図ります。グループ全体では、業務効率の向上によるコスト削減、投資効率の高い事業への資源集中、M&Aや海外展開の加速を通じた規模の拡大と収益基盤の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な経営資源と位置づけ、社員の自律的な成長を支援しています。次代の経営層やグローバル人材の育成を目的とした選抜型階層別研修や海外派遣制度を展開し、資格取得の補助等も行っています。また、多様な人材が活躍できる「DEI」の推進や、若手社員の意見を反映した職場環境の改善を通じて、従業員エンゲージメントの向上と定着化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.4歳 14.4年 7,850,566円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 69.3%
男女賃金差異(正規雇用) 68.3%
男女賃金差異(パート・有期) 84.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原油価格変動によるリスク


自動車リース関連事業のメンテナンス部品(タイヤ、エンジンオイル等)や燃料販売において、原油価格の上昇に伴う仕入価格の高騰がリスクとなります。また、ケミカル事業における原材料価格の上昇に対しても、販売価格への適切な転嫁が図れなかった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合環境の激化によるリスク


主力である自動車リース事業は、多くの中小口規模の企業をメインターゲットとし、きめ細やかなメンテナンスサービスで差別化を図っています。しかし、同業他社が同社の主要な顧客層へ新規参入してきたり、過度な価格競争が発生したりした場合には、収益性の低下など業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) M&A及び新規事業展開に係るリスク


同社は事業規模の拡大や新たな収益の柱を育成するため、新規事業への参入やM&Aを積極的に推進しています。実行にあたっては事前の精査を十分に行っていますが、当初想定したシナジー効果や収益が得られなかった場合、のれんの減損処理等が発生し、グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。