旭情報サービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭情報サービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭情報サービスは、東証スタンダード市場に上場し、ネットワークサービス、システム開発、システム運用の各情報サービス事業を展開する企業です。直近の業績では、自動車関連や金融・保険分野での受注拡大が牽引し、売上高、営業利益ともに前年を上回る増収増益を達成しており、安定した成長基盤を確立しています。


※本記事は、旭情報サービス株式会社の有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 旭情報サービスってどんな会社?


旭情報サービスは、オープン系ネットワーク構築やシステム開発などの情報サービスを主力とする企業です。

(1) 会社概要


1962年に旭事務機として設立され、1985年にシステム開発業務、1997年にネットワークサービス業務を開始しました。1987年に現在の旭情報サービスへ商号を変更し、2001年に東京証券取引所市場第二部に上場を果たしています。

現在の単体従業員数は1,911名です。筆頭株主は同社の社員持株会で、第2位は個人株主、第3位は投資事業組合となっています。

氏名 持株比率
旭情報サービス社員持株会 15.54%
大槻 幸子 5.13%
光通信KK投資事業有限責任組合 4.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は濵田広徳氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
濵田 広徳 代表取締役取締役社長 1985年同社入社。大阪支社長、総務部長、経営企画部長、人事部長などを経て、2022年より現職。
宮下 勇人 取締役常務執行役員 1985年同社入社。横浜支社長、総務部長、人事部長などを経て、2024年より現職。
水野 伸一 取締役上席執行役員管理副本部長 1986年同社入社。中部支社長、営業統括部長、人事部長などを経て、2026年より現職。
田茂 義之 取締役上席執行役員事業本部長ビジネスイノベーション推進室長関西圏事業担当 1992年同社入社。東京支社長、総務部長、経営企画部長などを経て、2024年より現職。
水島 克典 取締役上席執行役員管理本部長財務経理部長情報システム室長特命担当(カスタマーサクセス・AI推進担当) 1997年同社入社。中部支社長、総務部長などを経て、2026年より現職。


社外取締役は、久保英資(元はとバス代表取締役専務)、石野洋子(山口大学大学院技術経営研究科教授)、田辺均(元JR東日本テクノハートTESSEI常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社は、「ネットワークサービス」「システム開発」「システム運用」の各セグメントで事業を展開しています。

(1) ネットワークサービス


オープン系サーバやネットワークシステムの構築、運用管理をはじめ、セキュリティ関連業務、各種ソフトのインストール、ヘルプデスク、障害対応などの幅広いサポート業務を提供しています。顧客は自動車関連や金融・保険分野の企業が中心です。

顧客に対する技術的役務の提供や請負作業による対価が主な収益源です。運営は同社が行っています。

(2) システム開発


業務系システムの設計や開発、組込み系ソフトの開発および検証、ERPなどの業務パッケージソフトに関わる開発業務を提供しています。顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に関わる案件にも対応しています。

システム開発の受託や技術支援による役務提供の対価が主な収益源です。運営は同社が行っています。

(3) システム運用


汎用系システムの保守および運用管理業務を提供しています。大規模なシステム環境におけるオペレーション業務を中心に、安定したシステム稼働を支援しています。

システム保守および運用管理の役務提供による対価が主な収益源です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は持続的な成長を遂げており、利益面でも毎期安定した増益を達成しています。利益率も堅調に推移し、継続的な事業規模の拡大と収益力の向上を両立させていることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 129.7億円 138.6億円 147.9億円 158.2億円 165.5億円
経常利益 12.7億円 13.5億円 14.6億円 16.1億円 17.0億円
利益率(%) 9.8% 9.7% 9.9% 10.2% 10.3%
当期純利益 8.6億円 9.1億円 10.7億円 11.9億円 12.8億円

(2) 損益計算書


売上高の伸長に伴い、売上総利益および営業利益も着実に増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに高水準を維持しており、提供するサービスの付加価値向上と効率的な事業運営が図られていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 158.2億円 165.5億円
売上総利益 34.5億円 37.5億円
売上総利益率(%) 21.8% 22.7%
営業利益 15.9億円 16.5億円
営業利益率(%) 10.0% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与が6.0億円(構成比28%)、家賃が2.8億円(同13%)を占めています。売上原価の内訳では、給与が67.3億円(構成比53%)、外注費が24.6億円(同19%)となっています。

(3) セグメント収益


主力であるネットワークサービスが売上高の大部分を占めており、顧客への提案活動強化により増収となっています。システム開発とシステム運用は、需要の変化や他分野への技術者移行を進めているため微減傾向にあります。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ネットワークサービス 132.2億円 139.9億円
システム開発 22.9億円 22.8億円
システム運用 3.1億円 2.8億円
合計 158.2億円 165.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9.3億円 10.5億円
投資CF -5.3億円 -8.7億円
財務CF -4.8億円 -10.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も79.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ICT社会の発展を価値ある『サービス』と『人』で支える」をビジョンに掲げ、「サービス」と「人」を基盤に、ICT技術を通じて、社会の持続的成長を支え、すべてのステークホルダーに貢献し信頼される企業を目指しています。また、企業理念として「生き生きとした人づくりに基づき、創意工夫とたゆまぬサービス改善により情報社会の健全な発展に貢献します。」と定めています。

(2) 企業文化


「人材こそ源泉」という考えのもと、事業活動の基本は人であるとし、社員ひとり一人がプロの技術者として成長できる環境を重視しています。また、コンプライアンス委員会による企業倫理の浸透や、情報セキュリティの強化に向けたチーム活動(小集団活動)を推進するなど、誠実かつ透明性の高い組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画のスローガンとして「変革と共創で未来を創る」を掲げ、ソリューションパートナーとして顧客とともに成長することを目指しています。中期経営計画の最終年度である2028年3月期の経営指標として、以下の目標を設定しています。

* 売上高 196.5億円
* 営業利益 19.7億円
* 配当性向 40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の構造改革と新たなビジネス分野の開拓を両輪として成長を図ります。具体的には、DX分野の拡大や請負化の推進による収益力強化とともに、AIソリューションの活用や自社ソリューション開発を進めます。また、社内DXによるデータ活用や、ダイバーシティ推進などのサステナビリティ経営にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業基盤を支えるための採用・育成」と「従業員エンゲージメントの向上」を重点戦略に掲げています。成長に必要な人材の獲得やリスキリングを推進し、自律的なキャリア構築を支援する研修制度を充実させています。また、持続的な処遇改善や時間や場所に縛られない働き方改革を通じて、多様な人材が長期的に活躍できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.7歳 12.4年 5,073,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 55.6%
男女賃金差異(全労働者) 87.4%
男女賃金差異(正規雇用) 88.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 54.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(19.4%)、女性採用比率(31.0%)、有給休暇取得率(75.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT投資動向の変動と競争激化

顧客企業の情報化投資予算は経済情勢の影響を受けやすく、予算の縮小は業績に影響する可能性があります。また、クラウド化やAI活用などの環境変化に伴い高度な技術が求められる一方、価格競争が生じやすいため、付加価値の高いサービスの提供が常に求められています。

(2) 運用ミスによるシステム障害

大規模なシステム運用管理業務において、システム運用ミスによるシステムダウンが発生した場合、損害賠償を請求される可能性があります。これに対し同社は、小集団活動の推進や情報セキュリティ強化月間を設けることで、社員の技術力や意識の向上を図り、リスク回避に努めています。

(3) 機密情報の漏洩

業務を遂行するうえで個人情報を含む顧客の機密情報を取り扱うため、厳格な対応が求められます。万が一、情報の外部漏洩が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はプライバシーマークの取得など管理体制を強化して対応しています。

(4) 優秀なIT人材の確保と定着

同社の成長は人材に大きく依存していますが、情報サービス産業では高度技術者の獲得競争が激しくなっています。優秀な人材の採用や育成、既存社員の流出防止が計画通りに進まない場合、技術力の維持が困難となり、事業成長と業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。