旭情報サービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭情報サービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ネットワークやシステムの構築・運用・開発を行う情報サービス企業です。直近の業績は、自動車関連や通信分野の受注が伸長し、売上高158億円、営業利益16億円といずれも前期を上回り、増収増益を達成しています。


※本記事は、旭情報サービス株式会社 の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 旭情報サービスってどんな会社?


同社は独立系の情報サービス企業として、ネットワーク構築やシステム運用・開発事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1962年に宛名印刷機の販売等を目的として大阪で設立されました。その後、データエントリー業務やシステム開発・運用へと事業を拡大し、1987年に現社名へ変更しています。2001年には東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。近年は本社機能を東京に集約しつつ、全国の拠点で事業を展開しています。

現在、同社(単体)の従業員数は1,863名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は従業員による持株会、第2位は大槻幸子氏、第3位は事業会社である光通信となっています。特定の親会社を持たない独立系の企業として経営されています。

氏名 持株比率
旭情報サービス社員持株会 15.37%
大槻 幸子 5.15%
光通信 4.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は濵田広徳氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
濵田 広徳 代表取締役取締役社長 1985年同社入社。人事部長、経営企画部長、総務部長等を歴任し、2022年6月より現職。
宮下 勇人 取締役常務執行役員 1985年同社入社。横浜支社長、総務部長、人事部長等を歴任し、2024年10月より現職。
水野 伸一 取締役上席執行役員 1986年同社入社。中部支社長、経営企画部長、パートナー推進室長等を歴任し、2024年10月より現職。
田茂 義之 取締役上席執行役員 1992年同社入社。東京支社長、総務部長、経営企画部長等を歴任し、2024年10月より現職。
水島 克典 取締役上席執行役員 1997年同社入社。中部支社長、総務部長、財務経理部長等を歴任し、2024年10月より現職。


社外取締役は、久保英資(元はとバス代表取締役専務)、石野洋子(山口大学大学院教授)、田辺均(JR東日本テクノハートTESSEI常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ネットワークサービス部門」「システム開発部門」「システム運用部門」事業を展開しています。

(1) ネットワークサービス部門


同部門では、オープン系サーバーやネットワークシステムの構築、運用管理業務を提供しています。また、セキュリティ関連業務のほか、各種ソフトウェアのインストール、ヘルプデスク、障害対応など、ITインフラに関する幅広いサポート業務を行っています。主な顧客は通信キャリアや一般企業等です。

収益は、顧客企業のシステム構築や運用管理業務を受託することによる対価や、技術者の派遣契約に基づく料金から得ています。契約形態には請負契約や派遣契約が含まれます。運営は主に旭情報サービスが行っています。

(2) システム開発部門


同部門では、企業の業務系システムの設計・開発や、組込み系ソフトウェアの開発・検証を行っています。また、ERP(業務パッケージソフトウェア)等の導入や開発に関わる業務も手掛けています。顧客のDX推進に関わる案件やアプリケーション開発の需要に対応しています。

収益は、システム開発プロジェクトの受託開発費や、技術者派遣による対価から得ています。プロジェクトの進捗や成果物の納品に応じた収益認識が行われます。運営は主に旭情報サービスが行っています。

(3) システム運用部門


同部門では、汎用系システムの保守および運用管理業務を行っています。長年にわたり培ったノウハウを活かし、顧客企業の基幹システムの安定稼働を支える役割を担っています。市場環境の変化に伴い、汎用系からネットワーク系技術への移行も進めています。

収益は、顧客企業のシステムセンター等に常駐し、保守・運用業務を提供することによる委託料や派遣料から得ています。運営は主に旭情報サービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期着実に増加しており、5期連続の増収トレンドにあります。利益面でも、経常利益や当期純利益が増加傾向を示しており、収益性が安定的に推移しています。特に直近では売上高158億円、経常利益16億円と過去最高水準の業績を達成しており、堅調な成長が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 123億円 130億円 139億円 148億円 158億円
経常利益 12億円 13億円 13億円 15億円 16億円
利益率(%) 10.1% 9.8% 9.7% 9.9% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 9億円 9億円 11億円 12億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績比較では、売上高が増加するとともに、売上総利益および営業利益も拡大しています。売上総利益率は21.7%から21.8%へと微増し、営業利益率も9.7%から10.0%へ改善しました。増収効果に加え、採算性の向上が利益成長に寄与していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 148億円 158億円
売上総利益 32億円 34億円
売上総利益率(%) 21.7% 21.8%
営業利益 14億円 16億円
営業利益率(%) 9.7% 10.0%


売上原価のうち、労務費が99億円(構成比80%)、外注費が24億円(同19%)を占めています。また、販売費及び一般管理費のうち、給与が6億円(構成比30%)、家賃が3億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


各部門の売上高を見ると、主力であるネットワークサービス部門が前期比で増加し、全社売上の大半を占めています。システム開発部門もDX需要等を背景に売上を伸ばしました。一方、システム運用部門は市場縮小の影響を受けつつも、微増で推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ネットワークサービス 132億円 148億円
システム開発 22億円 23億円
システム運用 3億円 3億円
連結(合計) 158億円 174億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

旭情報サービスは、営業活動により資金を創出し、投資活動や財務活動で資金を活用しています。

営業活動では、事業活動を通じて資金が増加しました。投資活動では、有価証券の取得等により資金が減少しました。財務活動では、配当金の支払い等により資金が減少しました。

当事業年度末の現金及び現金同等物は、前事業年度末より減少しました。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ICT社会の発展を価値ある『サービス』と『人』で支える」をビジョンに掲げています。「サービス」と「人」を基盤とし、ICT技術を通じて社会の持続的成長を支え、すべてのステークホルダーに貢献し信頼される企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「生き生きとした人づくりに基づき、創意工夫とたゆまぬサービス改善により情報社会の健全な発展に貢献します。」という企業理念のもと、人材を事業活動の基本と捉えています。多様な価値観を尊重し、働きがいのある職場環境の実現を目指すとともに、法令遵守や公正・誠実な企業活動を重視する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画において、「変革と共創で未来を創る」をスローガンに掲げています。顧客の課題解決に貢献するソリューションパートナーとして成長を目指しており、最終年度である2028年3月期の経営目標として以下の数値を設定しています。

* 売上高:196億5,000万円
* 営業利益:19億6,500万円
* 配当性向:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「事業戦略」「人材戦略」「経営基盤の強化」を重点戦略としています。事業面では、既存事業の構造改革による収益力強化や、新たなビジネス分野の開拓を進めます。人材面では採用・育成の強化と従業員エンゲージメントの向上を図り、経営基盤においてはDXを通じたサステナビリティ経営を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材こそ源泉」という指針のもと、プロフェッショナル人材の育成に注力しています。階層別研修やe-ラーニングに加え、資格取得奨励制度を整備し、自律的なキャリア形成を支援しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、キャリア採用への投資強化を通じて、優秀な人材の確保と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.4歳 12.2年 4,880,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 3.0%
男性労働者の育児休業取得率 53.8%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 87.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 88.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 49.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(18.4%)、女性採用比率(26.8%)、有給休暇取得率(76.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部環境の変化に対するリスク

情報サービス産業は顧客企業のIT投資動向に影響を受けやすく、景気変動により事業環境が悪化する可能性があります。また、技術の高度化や顧客ニーズの多様化が進む中、価格競争が激化しており、従来型のサービスでは価格低下が進み、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 法的規制に関わるリスク

同社は技術者派遣事業を展開しており、労働者派遣法等の法的規制を受けています。関連法令の改正により事業に不利な変更が生じた場合、業績に影響する可能性があります。ただし、従業員は無期雇用(正社員)であり、請負化を進めることでリスク軽減を図っています。

(3) システム運用に関わるリスク

大規模なシステム運用管理業務において、運用ミスによるシステムダウン等が発生した場合、損害賠償を請求される可能性があります。同社はチーム活動やセキュリティ強化月間などを通じて、技術力と意識の向上を図り、リスク回避に努めています。

(4) 人的資源に関わるリスク

同社の成長は人材に大きく依存しており、高度技術者の採用と育成が重要です。業界内での人材獲得競争が激しく、優秀な人材の確保が困難になったり、既存社員の流出が進んだりした場合、同社の成長と業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。