※本記事は、株式会社タナベコンサルティンググループ の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. タナベコンサルティンググループってどんな会社?
経営コンサルティングのパイオニアとして、全国に拠点を持ち、地域密着型で中堅企業の経営支援を行う企業です。
■(1) 会社概要
1957年に田辺昇一が田辺経営相談所を創業し、1993年に株式を店頭登録しました。2016年には東証一部銘柄に指定されています。2022年には持株会社体制へ移行し、現在の商号へ変更しました。近年はM&Aを積極的に進め、2024年には株式会社Surpassを子会社化するなど、グループ規模を拡大しています。
連結従業員数は711名、単体では49名です。筆頭株主は創業者一族と推測される田邊次良氏で、第2位も個人株主の楢崎十紀氏、第3位も田邊洋一郎氏となっており、創業家や個人株主の保有比率が高い構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田邊 次良 | 11.60% |
| 楢崎 十紀 | 9.47% |
| 田邊 洋一郎 | 9.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は若松孝彦氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若松 孝彦 | 代表取締役社長コンプライアンス担当株式会社タナベコンサルティング代表取締役社長コンプライアンス担当 | 1989年同社入社。コンサルティング統轄本部長等を経て2014年より現職。タナベコンサルティング社長を兼務。 |
| 長尾 吉邦 | 取締役副社長株式会社タナベコンサルティング取締役副社長 | 1985年同社入社。北海道支社長、経営コンサルティング本部長等を経て2022年より現職。 |
| 南川 典人 | 専務取締役株式会社タナベコンサルティング専務取締役ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部・M&Aコンサルティング事業部担当グローウィン・パートナーズ株式会社取締役 | 1993年同社入社。西部本部長、M&Aアライアンスコンサルティング事業部長等を経て2022年より現職。 |
| 藁田 勝 | 専務取締役株式会社タナベコンサルティング専務取締役コーポレートファイナンスコンサルティング事業部担当兼IPO支援コンサルティング担当グローウィン・パートナーズ株式会社取締役 | 2000年同社入社。大阪本部長、デジタルコンサルティング事業部担当等を経て2025年より現職。 |
| 奥村 格 | 専務取締役株式会社タナベコンサルティング専務取締役デジタルコンサルティング事業部長兼戦略総合研究所担当 | 2009年同社入社。戦略総合研究所本部長等を経て2024年より現職。 |
| 川本 喜浩 | 取締役コーポレート戦略本部長株式会社タナベコンサルティング取締役コーポレート戦略本部長 | 1986年同社入社。管理本部副本部長、執行役員コーポレート本部長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、神原浩(弁護士)、井村牧(元日本ロレアル副社長)、松本要(公認会計士)、篠木良枝(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「経営コンサルティング事業」および「その他」事業を展開しています。
■経営コンサルティング(ストラテジー&ドメイン)
ビジョンや中期経営計画の策定、ビジネスモデル変革、成長戦略の構築を支援します。顧客は中堅企業から大企業まで幅広く、サステナビリティの実装や新規事業開発も手がけます。
収益は、コンサルティングサービスの提供に伴うフィー収入が中心です。運営は主にタナベコンサルティングが行っています。
■経営コンサルティング(デジタル・DX)
DXビジョンの策定から、ビジネスモデル、マーケティング、HR、マネジメントの各領域におけるシステム実装・実行までを支援します。
収益は、DXコンサルティングやシステム導入支援に対する対価です。運営はタナベコンサルティングに加え、リーディング・ソリューション、ジェイスリー、Surpassなどが連携して行っています。
■経営コンサルティング(HR)
HRビジョンの策定、人事制度の構築、採用・育成・定着の支援、人的資本経営の実装などを提供します。企業内大学(アカデミー)の設立支援なども行います。
収益は、人事コンサルティングや研修サービス等の対価です。運営はタナベコンサルティングやSurpassなどが行っています。
■経営コンサルティング(ファイナンス・M&A)
M&Aの戦略策定からFA、デューデリジェンス、PMIまでを一気通貫で支援するほか、ホールディングス化や事業承継もサポートします。
収益は、アドバイザリー手数料や成功報酬などです。運営はタナベコンサルティングやグローウィン・パートナーズが行っています。
■経営コンサルティング(ブランド&PR)
経営戦略に基づくブランドコミュニケーション戦略の立案、クリエイティブ制作、PR・広報支援を行います。
収益は、ブランディング支援やPR代行、制作費などです。運営はタナベコンサルティング、カーツメディアワークス、ジェイスリーなどが行っています。
■その他
手帳「ブルーダイアリー」の製造・販売や、プロモーション商品の取り扱いを行っています。
収益は、これら製品の販売代金です。運営はタナベコンサルティングが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は右肩上がりで推移しており、直近5期間で約1.5倍に拡大しています。経常利益も増加傾向にあり、利益率は10%前後を維持しています。特に直近ではM&Aの効果もあり、売上・利益ともに大きく伸長しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 106億円 | 118億円 | 127億円 | 145億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 9億円 | 12億円 | 10億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 8.4% | 8.8% | 9.9% | 8.0% | 10.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 6億円 | 4億円 | 1億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、利益率も改善しています。販管費も増加していますが、増収効果が上回ったことで営業利益は大きく伸び、利益率も10.3%に向上しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 127億円 | 145億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 66億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.9% | 45.5% |
| 営業利益 | 10億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 7.9% | 10.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比28%)、役員報酬が6億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全領域で増収を達成しました。特にHR領域とデジタル・DX領域が大幅に伸長しています。M&Aによる新規連結効果や、企業のDX・人的資本経営への投資意欲の高まりが背景にあります。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ストラテジー&ドメイン | 23億円 | 25億円 |
| デジタル・DX | 27億円 | 33億円 |
| HR | 24億円 | 30億円 |
| ファイナンス・M&A | 19億円 | 22億円 |
| ブランド&PR | 26億円 | 29億円 |
| その他 | 7億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 127億円 | 145億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 15億円 |
| 投資CF | -4億円 | 19億円 |
| 財務CF | -12億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均(9.4%)と同水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という創業以来の経営理念を起点としています。また、パーパスとして「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」を掲げ、顧客企業のトップマネジメントの決断に寄り添い、企業の成功と社会全体の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「チームコンサルティング」と「一気通貫の支援」を重視する文化があります。特定の業種や機能に特化せず、複数の専門家がチームを組み、経営の上流(戦略策定)から下流(実装・実行)までを支援します。また、「100年先の未来をともに」をサステナビリティ定義とし、長期的な視点で顧客と共に歩む姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2021~2025)「TCG Future Vision 2030」を推進しており、最終年度である2026年3月期の目標達成に向けて取り組んでいます。
* 売上高160億円
* 営業利益18億円
* 株主資本当期純利益率(ROE)10%
* 従業員数800名
■(4) 成長戦略と重点施策
経営コンサルティング領域の多角化を推進し、M&Aによる事業拡大やプロフェッショナルDXサービスの拡充に注力しています。また、顧客体験価値(CX)を重視したクライアントサクセスの推進や、企業内大学(アカデミー)のコンテンツ充実を通じて、グループ全体の人的資本価値向上を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Business Doctors」としての専門性を高めるため、TCGアカデミーを通じた人材育成に注力しています。また、多様なプロフェッショナル人材を確保するため、ダイレクトリクルーティングやリージョン採用を強化し、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進して組織力の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.0歳 | 8.2年 | 7,304,243円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.9% |
| 男性育児休業取得率 | 63.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 35.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用管理職比率(77.3%)、定着率(88.8%)、育休復帰率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンサルタント人材の確保と定着
チームコンサルティングの質を維持するためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。人材の大量流出や採用難が発生した場合、事業拡大の制約となり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は採用ブランディングやTCGアカデミーによる育成強化、人事制度の充実により対応しています。
■(2) デジタル分野での新技術に関するリスク
DX支援等の新たな情報技術に基づくコンサルティングにおいて、技術革新に伴う予測不能な不具合や情報管理上のリスクが生じる可能性があります。これにより事業運営に支障が出たり、顧客企業に損害を与えたりした場合、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) グループ企業管理について
経営コンサルティング領域の多角化に向けたM&Aを推進していますが、グループ企業の急速な拡大により管理体制に問題が生じた場合、適切な事業運営が困難になる可能性があります。役員の派遣やコーポレート戦略本部によるモニタリングを通じて、ガバナンスの強化を図っています。



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