※本記事は、株式会社タナベコンサルティンググループの有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. タナベコンサルティンググループってどんな会社?
経営戦略策定から実行まで支援するチームコンサルティングを展開しています。
■(1) 会社概要
1957年に田辺経営相談所として創業し、1963年に法人化しました。2004年のジャスダック上場を経て、2016年に東京証券取引所市場第一部へ指定されています。2022年には純粋持株会社体制へ移行し、現在のタナベコンサルティンググループへと商号変更しました。近年はM&Aによる事業拡大も推進しています。
現在の従業員数は連結で843名、単体で52名です。大株主の状況としては、筆頭株主が田邊次良氏であり、第2位が田邊洋一郎氏、第3位が楢崎十紀氏となっています。経営コンサルティングの多様な領域で専門性を発揮できる体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田邊次良 | 11.80% |
| 田邊洋一郎 | 9.41% |
| 楢崎十紀 | 9.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長コンプライアンス担当は若松孝彦氏が務めており、社外取締役の比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若松孝彦 | 代表取締役社長コンプライアンス担当 | 1989年同社入社。大阪本部長、取締役副社長コンサルティング統轄本部長等を経て、2014年より代表取締役社長に就任。2022年より現職。 |
| 長尾吉邦 | 取締役副社長 | 1985年同社入社。北海道支社長、専務取締役コンサルティング戦略本部長等を経て、2022年より取締役副社長に就任し現職。 |
| 南川典人 | 専務取締役 | 1993年同社入社。西部本部長、常務取締役経営コンサルティング本部九州本部担当等を経て、2022年より専務取締役に就任し現職。 |
| 藁田勝 | 専務取締役 | 2000年同社入社。大阪本部長、取締役経営コンサルティング本部大阪本部担当等を経て、2022年より専務取締役に就任し現職。 |
| 奥村格 | 専務取締役 | 2009年同社入社。戦略総合研究所本部長等を経て、2022年より常務取締役デジタルコンサルティング事業部長に就任。2024年より現職。 |
| 川本喜浩 | 取締役コーポレート戦略本部長 | 1986年同社入社。管理本部経理部長、執行役員コーポレート本部長等を経て、2025年より取締役コーポレート戦略本部長として現職。 |
社外取締役は、神原浩(きっかわ法律事務所パートナー)、井村牧(全国保証社外取締役)、松本要(松本要公認会計士事務所所長)、篠木良枝(ライフコーポレーション社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「経営コンサルティング」事業および「その他」事業を展開しています。
■(1) ストラテジー&ドメイン
成長戦略、中長期ビジョン、パーパス&バリュー、マーケティング&セールス等の経営戦略策定を支援します。上場企業や業界トップ企業をはじめ、大企業から中堅企業、さらには行政や公共機関などを主要な顧客としています。
収益源はコンサルティングサービスに対するフィーです。主にタナベコンサルティンググループおよび子会社のタナベコンサルティングやSurpassなどが連携し、事業戦略の策定から現場の顧客創造までを一気通貫で提供しています。
■(2) デジタル・DX
DX戦略の策定からマーケティングDX、マネジメントDX、ERPコンサルティングまでをカバーし、企業のデータ利活用による新たな価値創造を支援します。製造業やインフラ、金融機関など幅広い業種に向けたサービスを展開しています。
IT化構想やシステム導入・実装に関するコンサルティング料やプロジェクト支援費用が主な収益源です。運営は主にタナベコンサルティングやリーディング・ソリューション、ジェイスリーなどが担い、専門的なDXサービスを提供しています。
■(3) HR
人事戦略の策定や人事システム構築、人材採用・育成、DE&I組織開発、コーポレートウェルビーイングの向上などを支援します。人的資本経営や事業ポートフォリオ見直しに伴う人材基盤拡充のニーズを持つ企業を顧客としています。
収益源は、組織開発や従業員支援プログラムなどのコンサルティング報酬です。運営はタナベコンサルティングのほか、女性活躍支援を担うSurpassや、従業員支援プログラムを提供するピースマインドなどの子会社が手掛けています。
■(4) ファイナンス・M&A
企業価値ビジョンの策定、ホールディングス化やグループ経営の構築、事業承継や成長に向けたM&A、IPO支援などを提供します。企業価値向上を目指す大企業から中堅企業まで、多様な業種の経営トップを顧客としています。
資本政策やM&Aの一貫支援、内部統制システムの構築等に関するアドバイザリー報酬が主な収益となります。主にタナベコンサルティングやグローウィン・パートナーズなどが連携し、専門性の高い金融ドメインの課題解決を支援しています。
■(5) ブランド&PR
ブランド戦略の策定、クリエイティブデザイン、戦略PR・広報、国内外のデジタルマーケティングなどを展開しています。パーパスやブランド構築を目指す大企業や中堅企業、行政機関向けに多角的なコミュニケーション支援を行います。
ブランド構築やPR活動の支援、プレスリリース配信サービスなどの利用料が収益源です。運営はタナベコンサルティングをはじめ、カーツメディアワークスなどの専門子会社が連携し、企業のプロモーション活動を支えています。
■(6) その他
経営コンサルティングのノウハウを活かした独自の商品展開を行っています。具体的には、ブルーダイアリー(手帳)の企画・販売や、顧客のセールスプロモーションを支援するための各種プロモーション商品などを提供しています。
商品の販売代金が主な収益源となります。主にタナベコンサルティングが主体となり、企業向けのノベルティや実務手帳を通じて、コンサルティングサービス以外の側面からも顧客企業のビジネス支援やブランディングに貢献しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して拡大を続けており、M&Aや事業領域の多角化が成長を牽引していることが伺えます。経常利益についても堅調な推移を見せており、直近では利益率も向上傾向にあります。事業規模の拡大と収益性の改善が同時に進んでいると言えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 106億円 | 118億円 | 127億円 | 145億円 | 163億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 12億円 | 10億円 | 16億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 9.9% | 8.0% | 10.9% | 11.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 4億円 | 1億円 | 12億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加にともない、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。特に売上総利益率が改善しており、付加価値の高いコンサルティングサービスの提供が収益性向上に寄与していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 145億円 | 163億円 |
| 売上総利益 | 66億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.5% | 48.9% |
| 営業利益 | 15億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 10.3% | 11.1% |
販売費及び一般管理費(61億円)のうち、給料及び手当が17億円(構成比28%)、広告宣伝費が7億円(同12%)を占めています。コンサルティング事業を支える人材への投資やプロモーション活動が主なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
各コンサルティング領域において売上高が順調に推移しています。特に「HR」領域は人的資本経営やDE&I推進のニーズを取り込み大きく成長しました。また、「ストラテジー&ドメイン」や「デジタル・DX」も企業の変革需要を背景に堅調な伸びを示しており、グループ全体の増収を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ストラテジー&ドメイン | 28億円 | 32億円 |
| デジタル・DX | 33億円 | 36億円 |
| HR | 26億円 | 34億円 |
| ファイナンス・M&A | 22億円 | 24億円 |
| ブランド&PR | 29億円 | 30億円 |
| その他 | 7億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 145億円 | 163億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 15億円 | 14億円 |
| 投資CF | 19億円 | -11億円 |
| 財務CF | -13億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。本業で得たキャッシュを成長投資と株主還元にバランスよく振り分ける健全な財務基盤を有しています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という創業時からの不変の経営理念を起点としています。さらに「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」というパーパス(貢献価値)を掲げ、中堅企業などのトップマネジメントの決断に寄り添い、社会や地域全体の発展に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「ビジネスドクター」として顧客の決断を支える文化を大切にしています。また、「プロフェッショナルなDE&I(多様性・公平性・包摂性)は、イノベーションの源泉である」と認識し、多様な人材が専門性と総合性を発揮できる組織づくりを重視しています。高い倫理基準のもと、誠実なビジネスを遂行する社風です。
■(3) 経営計画・目標
同社は「唯一無二のグローバル経営コンサルティングファーム」を目指す中期経営計画「TCG Future Vision 2030」を推進しており、最終年度の2031年3月期に向けて以下の数値目標を掲げています。
・売上高:250億円
・営業利益:30億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的な成長に向けて、経営課題に対するチームコンサルティング領域の開発と多角化を進め、成長M&A投資を積極的に推進しています。また、企業のプロフェッショナル人材不足に対応する「Consulting & BPaaS モデル」の展開や、多様な人材が活躍できる人的資本経営の実装にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様なプロフェッショナル人材の採用と早期戦力化、専門性と総合性を兼ね備えた人材育成、AI活用による生産性向上を人材戦略の中核に据えています。企業内大学「TCGアカデミー」を通じて自律的な学習環境を提供し、ライフステージの変化があってもキャリアを継続できる働きやすい社内環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.3歳 | 8.0年 | 7,505,069円 |
※平均年間給与は、在籍する従業員に対して年間に支払った金額を基に算出しております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 36.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 36.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(49.8%)、定着率(89.5%)、有給休暇取得率(71.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンサルタント人材の確保・定着
同社はチームコンサルティングを提供しており、顧客の評価を得られる人材の採用・育成・定着が進まない場合や、人材の大量流出が発生した場合には、事業拡大の制約となり経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐため、採用ブランディング投資や企業内大学を通じた早期戦力化を推進しています。
■(2) 機密情報および顧客情報の管理
同社はコンサルティングを通じて顧客の機密情報や個人情報を扱います。外部からの不正アクセスや従業員の過誤等により情報漏洩が発生した場合、同社の信用が低下し、事業に影響を及ぼす可能性があります。対策として、情報管理体制の強化や外部委託先との秘密保持契約の締結を徹底しています。
■(3) デジタル分野での新技術に関するリスク
DX支援やAI導入等の新たな情報技術に基づくコンサルティング活動を行っているため、予期せぬ技術的トラブルやシステム不具合が発生した場合、事業に支障が生じたり顧客企業へ損害を生じさせたりする可能性があります。同社は継続的な技術革新への対応と、情報管理上のリスクに対する適切な管理体制の構築に努めています。



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