ビケンテクノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ビケンテクノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、ビルメンテナンスを中心に不動産、介護、フランチャイズ、ホテル等の多角的な事業を展開しています。直近の決算では、主力のビルメンテナンス事業は堅調でしたが、不動産販売の有無等の影響により、売上高は347億円、経常利益は15億円と前期比で減収減益となりました。


※本記事は、株式会社ビケンテクノ の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ビケンテクノってどんな会社?


ビルメンテナンスを祖業とし、不動産や介護など多角化を進める独立系総合管理企業です。

(1) 会社概要


1963年にビルメンテナンスを目的として設立され、1970年の日本万国博覧会で清掃業務を受注して実績を重ねました。1995年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1998年には介護事業へ進出しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は2,538名、単体では2,120名体制です。筆頭株主は創業者の関係会社である株式会社東洋商事で、第2位は取引先持株会、第3位は奨学財団となっており、創業家および関連団体が安定的に株式を保有しています。

氏名 持株比率
株式会社東洋商事 28.38%
ビケンテクノ取引先持株会 12.35%
公益財団法人梶山高志・ビケンテクノ奨学財団 7.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性18名、女性0名の計18名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は梶山龍誠氏、代表取締役会長は梶山高志氏です。社外取締役比率は11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
梶山 龍誠 代表取締役社長 1991年三和銀行入行。1995年同社入社。副社長等を経て2010年より現職。
梶山 高志 代表取締役会長 1963年同社設立と共に代表取締役専務就任。社長を経て2010年より現職。
菱矢 洋一 取締役副社長 1985年大和銀行入行。りそなHD執行役、りそな総合研究所専務を経て2020年より現職。
梶山 孝清 取締役FC事業部長 1995年同社入社。経営企画室長、国際事業部長等を経て2020年より現職。
重森 保 取締役介護事業部長医療事業部長 1975年大和銀行入行。2003年同社出向。常務等を経て2023年より現職。
神月 義行 取締役社長室長経営企画室長 1977年大和銀行入行。2007年同社出向。常務等を経て2023年より現職。
溝口 正人 取締役不動産部長 2003年同社入社。執行役員不動産部長等を経て2023年より現職。
浦谷 惣吉 取締役京都営業所長 1983年同社入社。2016年執行役員京都営業所長を経て2018年より現職。
山田 哲広 取締役サニテーション本部長 1986年同社入社。2016年執行役員サニテーション本部長を経て2021年より現職。
中尾 光延 取締役東京本部長社長室(東京)室長国際事業部長 1991年東京銀行入行。2019年同社出向。執行役員を経て2021年より現職。
中原 幸司 取締役ビル管理部長原価管理部長 1987年同社入社。2014年執行役員ビル管理部長・原価管理部長を経て2023年より現職。
曽我 省吾 取締役開発営業部長 1996年同社入社。2014年執行役員開発営業部長を経て2023年より現職。


社外取締役は、濵本有仁(公認会計士)、古瀬高嗣(弁護士・ホワイトオーク法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビルメンテナンス事業」「不動産事業」「介護事業」「フランチャイズ事業」「ホテル事業」および「その他」事業を展開しています。

ビルメンテナンス事業

清掃、設備保守、警備などの建物維持管理や、オーナー代行としての建物運営、食品工場でのサニテーション(洗浄・殺菌)、設備工事などを提供しています。主な顧客はビルオーナーや食品工場などです。

収益は、顧客からの業務委託料や工事代金などから得ています。運営は主に同社が行うほか、株式会社ベスト・プロパティ、創和工業株式会社、株式会社マイムコミュニティーなどのグループ会社も担っています。

不動産事業

不動産の売買、仲介、および保有不動産の賃貸を行っています。顧客は不動産を購入・賃借する法人や個人です。

収益は、不動産の売却代金、仲介手数料、賃貸料収入などから得ています。運営は同社のほか、株式会社ベスト・プロパティ、株式会社マイムコミュニティー、有限会社ニツカなどが行っています。

介護事業

有料老人ホームなどの介護施設の運営や、介護サービスの提供を行っています。利用者は高齢者およびその家族です。

収益は、施設入居者からの利用料や介護保険収入などから得ています。運営は主に同社が行っています。

フランチャイズ事業

「ミスタードーナツ」や「プロント」などのフランチャイズ店舗の運営を行っています。一般消費者を顧客とし、飲食サービスを提供しています。

収益は、店舗利用客からの飲食代金や物品販売代金から得ています。運営は同社が行っています。

ホテル事業

ホテルの運営を行っています。観光客やビジネス客などの宿泊者に対し、宿泊サービスを提供しています。

収益は、宿泊客からの宿泊料やサービス料から得ています。運営は同社が行っています。

その他

病院経営コンサルティング、環境衛生事業、太陽光発電事業、保育事業などを展開しています。

収益は、コンサルティング料、商品販売代金、売電収入、保育料などから得ています。運営は同社のほか、株式会社ビーエムエス、株式会社クリーンテックなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台で推移しています。2024年3月期までは増益傾向にありましたが、2025年3月期は減収減益となりました。利益率は4〜7%台で推移しており、比較的安定した収益性を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 346億円 314億円 347億円 384億円 347億円
経常利益 16億円 20億円 25億円 24億円 15億円
利益率(%) 4.8% 6.4% 7.2% 6.4% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 10億円 13億円 9億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期の384億円から当期は347億円へ減少しました。これは主に不動産販売の減少によるものです。売上総利益率は20.4%から21.4%へと改善しましたが、販管費の増加などにより営業利益率は5.6%から4.1%へと低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 384億円 347億円
売上総利益 78億円 74億円
売上総利益率(%) 20.4% 21.4%
営業利益 21億円 14億円
営業利益率(%) 5.6% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が26億円(構成比43%)、その他経費が15億円(同24%)を占めています。売上原価においては、サービス売上原価が262億円(構成比96%)と大半を占めており、労働集約的なコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


当期は主力のビルメンテナンス事業が増収増益と堅調でしたが、不動産事業において大口の売却がなかったことから大幅な減収減益となりました。介護事業やホテル事業は減収となり、フランチャイズ事業も店舗閉鎖の影響などで減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ビルメンテナンス事業 294億円 310億円 32億円 34億円 10.9%
不動産事業 56億円 7億円 8億円 2億円 29.5%
介護事業 9億円 9億円 -0.7億円 -1.1億円 -11.9%
フランチャイズ事業 11億円 9億円 0.5億円 0.1億円 1.0%
ホテル事業 10億円 9億円 3億円 3億円 30.2%
その他 3億円 3億円 -0.3億円 0.1億円 1.7%
調整額 - - -21億円 -23億円 -
連結(合計) 384億円 347億円 21億円 14億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ビケンテクノのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動では、税金等調整前当期純利益を計上したものの、棚卸資産の増加などにより資金を使用しました。投資活動では、長期貸付金の回収が主な収入となり、資金を獲得しました。財務活動では、借入金の純減少が主な要因となり、資金を使用しました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 35億円 -22億円
投資CF 1億円 19億円
財務CF -6億円 -12億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様第一主義に徹する」を経営理念として掲げています。快適な環境の創造と保全を社会的使命と認識し、環境管理から派生する事業への取り組みや新規事業開発、柔軟な業態変化を通じて社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、各事業において先端技術を駆使し、他社との差別化を図ることを重視しています。また、事業環境を踏まえた随時検証・見直しによる企業体質の強化や、奨学財団を通じた人材育成などのCSR活動にも注力しており、社会貢献と事業成長の両立を目指す姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な経営指標として、以下の目標数値を定めています。株主資本の効率的運用による投資効率の高い経営と、自己資本比率の向上による企業体質の強化を目指しています。

* ROE(自己資本利益率):10%
* 営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ビルメンテナンス事業の多角化と収益管理体制の強化を推進しています。特に、成長産業やSDGs関連企業への取り組み拡充、省エネ提案、DX化による業務効率化、グループ間連携の強化を重点施策として掲げています。また、M&Aを含めた新規事業への取り組みや、高品質なサービス提供による顧客満足度の向上にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財確保」を基本方針に掲げ、高齢者・外国人・障がい者等が活躍できる多様な人材の職場環境整備に注力しています。また、新入社員へのジョブローテーション実施や資格取得支援などを通じ、会社全体としての人材育成と個人の能力向上を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 52.2歳 9.0年 3,835,939円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.2%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 69.6%
男女賃金差異(正規雇用) 76.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 85.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制について


同社グループの事業は、ビル衛生管理法、宅地建物取引業法、介護保険法、食品衛生法、旅館業法など多岐にわたる法的規制を受けています。これらの規制の改廃や新たな規制の導入が行われた場合、事業運営や業績に影響を与える可能性があります。

(2) 関係会社の収益性について


同社グループは国内外の関係会社を通じて事業の多角化を推進していますが、海外展開におけるカントリーリスクや為替リスクが存在します。各関係会社の事業計画が進捗通りに進まなかった場合、グループ全体の業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 疫病流行による影響について


新型コロナウイルス感染症のような疫病の流行は経済活動に大きな影響を与えます。現在は経済活動との共存が進んでいますが、新たな感染拡大や変異種の発生など予期せぬ事態が生じた場合、同社グループの事業活動や業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 販売用不動産の価格下落リスク


同社グループは販売用不動産を保有しており、その販売活動を行っています。経済環境の変化などにより不動産市況が悪化し、販売が計画通りに進まない場合や価格が下落した場合、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。