記事タイトル:ビケンテクノ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、ビケンテクノの有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ビケンテクノってどんな会社?
同社はビルメンテナンス業務を中核に、不動産からフランチャイズ、ホテルまで多角的な事業を展開する総合企業です。
■(1) 会社概要
同社は1963年に不動産の管理や清掃の請負を目的として設立されました。その後全国へ拠点を拡大し、1993年に現在のビケンテクノへ商号を変更しています。1995年には大阪証券取引所市場第二部へ株式を上場し、2002年には東京証券取引所市場第二部にも上場を果たしました。
現在の従業員数はグループ全体で2,427名、単体で2,025名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は創業家が議決権を所有する東洋商事で、第2位はビケンテクノ取引先持株会、第3位は公益財団法人梶山高志・ビケンテクノ奨学財団となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東洋商事 | 28.38% |
| ビケンテクノ取引先持株会 | 12.98% |
| 公益財団法人梶山高志・ビケンテクノ奨学財団 | 7.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性18名、女性0名の計18名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は梶山高志氏、代表取締役社長は梶山龍誠氏が務めており、社外取締役比率は11.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 梶山高志 | 代表取締役会長 | 大栄不動産管理入社。同社を設立し代表取締役専務、社長を経て、2010年6月より現職。 |
| 梶山龍誠 | 代表取締役社長 | 三和銀行入行。同社入社後、東京支店企画室長、取締役副社長等を経て、2010年6月より現職。 |
| 菱矢洋一 | 取締役副社長 | 大和銀行入行。りそなホールディングス執行役等を経て、同社へ入社。2020年6月より現職。 |
| 梶山孝清 | 取締役FC事業部長システム部長 | 同社入社。東京支店プロパティマネジメント部長、経営企画室長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 重森保 | 取締役介護事業部長医療事業部長 | 大和銀行入行。同行より同社へ出向し、不動産開発部長等を経て、2023年7月より現職。 |
| 神月義行 | 取締役社長室長経営企画室長 | 大和銀行入行。同行より同社へ出向し、経営企画室長等を経て、2023年7月より現職。 |
| 溝口正人 | 取締役不動産部長 | 同社入社。執行役員不動産部長等を経て、2023年7月より現職。ニツカ代表取締役社長も兼務。 |
| 浦谷惣吉 | 取締役京都営業所長 | 同社入社。執行役員京都営業所長を経て、2018年6月より現職。 |
| 山田哲広 | 取締役サニテーション本部長 | 同社入社。執行役員サニテーション本部長を経て、2021年6月より現職。 |
| 中尾光延 | 取締役東京本部長社長室(東京)室長国際事業部長 | 東京銀行入行。同行より同社へ出向し、社長室(東京)室長等を経て、2024年11月より現職。 |
| 中原幸司 | 取締役ビル管理部長原価管理部長 | 同社入社。執行役員ビル管理部長・原価管理部長を経て、2023年6月より現職。 |
| 曽我省吾 | 取締役開発営業部長 | 同社入社。執行役員開発営業部長を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、濵本有仁氏(はまもと公認会計士事務所設立所長)、古瀬高嗣氏(ホワイトオーク法律事務所設立所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビルメンテナンス事業」「不動産事業」「介護事業」「フランチャイズ事業」「ホテル事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ビルメンテナンス事業
同事業では、清掃、設備保守、警備などの建物維持管理や、オーナー代行としての建物の運営、食品工場でのサニテーション、設備の更新工事や修繕工事などを幅広く提供しています。商業施設や物流施設などが主要な顧客です。
収益源は、顧客からのメンテナンス業務や工事請負に係る対価です。運営は主に同社や、ベスト・プロパティ、マイムコミュニティー、創和工業などのグループ会社が共同で担当しています。
■(2) 不動産事業
同事業では、不動産の売買、仲介をはじめ、自社で保有している不動産の賃貸業務などを行っています。入居企業や物件購入者が主な顧客です。
収益源は、不動産売買代金、仲介手数料、および保有不動産からの賃貸料です。事業の運営は同社および、ニツカなどのグループ子会社が連携して行っています。
■(3) 介護事業
同事業では、介護施設の運営や介護サービスの提供を通じ、入居者やその家族に対して高いレベルの生活補助サービスを提供しています。
収益源は、介護施設の入居者からのサービス利用料や居室の賃貸料です。運営は主に同社が単独で担当しています。
■(4) フランチャイズ事業
同事業では、複数のブランドで飲食店や物販店などのフランチャイズ店舗の運営・展開を行っています。
収益源は、店舗を利用する一般顧客からの飲食代金や物品の販売代金です。事業の運営は同社が直接担当しています。
■(5) ホテル事業
同事業では、東京や沖縄において宿泊特化型のホテル運営を行い、利用者に対して快適な宿泊とサービスを提供しています。
収益源は、ホテル宿泊客からの宿泊料金やサービス利用料です。運営は同社が単独で行っています。
■(6) その他
同セグメントでは、太陽光発電事業や環境衛生関連商品の販売、病院経営コンサルティング事業、保育事業など多彩な領域を展開しています。
収益源は、各事業の顧客からのサービス利用料や商品販売代金です。運営は同社をはじめ、ビーエムエス、クリーンテックなどのグループ会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は314億円から365億円へと堅調に推移しており、経常利益も15億円から25億円の間で推移し、安定した収益力を維持しています。利益率も概ね6%前後で推移しています。
| 項目 | 59期 | 60期 | 61期 | 62期 | 63期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 314億円 | 347億円 | 384億円 | 347億円 | 365億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 25億円 | 24億円 | 15億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 7.2% | 6.4% | 4.5% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 13億円 | 9億円 | 5億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し365億円となりました。売上総利益も81億円に拡大し、本業の儲けを示す営業利益は前期の14億円から21億円へと大幅な増益を達成しています。
| 項目 | 62期 | 63期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 347億円 | 365億円 |
| 売上総利益 | 74億円 | 81億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.4% | 22.3% |
| 営業利益 | 14億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 5.6% |
■(3) セグメント収益
主力のビルメンテナンス事業が安定して売上を伸ばしているほか、不動産事業が前期比で大きく伸長しています。一方、フランチャイズ事業や介護事業などは、一部事業拠点の再編等の影響で売上が微減となっています。
| 区分 | 売上(62期) | 売上(63期) |
|---|---|---|
| ビルメンテナンス事業 | 310億円 | 317億円 |
| 不動産事業 | 7億円 | 18億円 |
| 介護事業 | 9億円 | 8億円 |
| フランチャイズ事業 | 9億円 | 9億円 |
| ホテル事業 | 9億円 | 10億円 |
| その他 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 347億円 | 365億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は本業で生み出した営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況にあります。
| 項目 | 62期 | 63期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -22億円 | 16億円 |
| 投資CF | 19億円 | -7億円 |
| 財務CF | -12億円 | -27億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様第一主義に徹する」を経営理念として掲げています。快適な環境の創造と保全を社会的使命と認識し、環境管理から派生する事業に積極的に取り組むことで社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、新規事業開発や柔軟な業態変化をもって他社との差別化を図ることを重視しています。各事業において先端技術を駆使し、顧客の大切な資産価値の向上を図る姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な経営指標として、以下の目標を定めて経営に取り組んでいます。
* ROE(自己資本利益率)10%
* 営業利益率10%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、ビルメンテナンス事業では成長産業やSDGs関連などへの取り組みを拡充し、省エネ提案や業務のDX化を進めます。また、大型開発プロジェクトへの初期段階からの提案や、PPP事業、データセンター等へのメンテナンス業務拡充に注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財確保」を基本方針に掲げ、組織・人事・社員教育に関する方針を定めています。新入社員に対してはジョブローテーションを実施し、それぞれの適性を見極めながらスキル向上を図るほか、高齢者や外国人など多様な人材が活躍できる職場環境の整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 63期 | 52.1歳 | 9.6年 | 3,980,637円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全) | 71.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 86.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人雇用(400名前後)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 関連法令による規制対応
同社の事業はビル衛生管理法や宅地建物取引業法、介護保険法など多岐にわたる法的規制を受けています。将来的にこれらの規制の改廃や新たな規制が設けられた場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 関係会社の収益性変動
同社は国内外の関係会社を通じて事業の多角化を進めていますが、カントリーリスクや為替リスクなどが存在します。各社の事業計画どおりに業績が推移しない場合、グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 国際情勢による資機材費高騰
中東情勢などの国際情勢悪化に伴い、石油由来の原材料や資機材の価格高騰、調達遅延のリスクが生じています。これらの問題が深刻化・長期化した場合、同社の事業運営に直接的または間接的な影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。