ディーエムエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディーエムエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場するディーエムエスは、ダイレクトメールを主体としたメーリングサービス業務をはじめ、セールスプロモーションやイベント運営等のサービスを展開しています。直近の業績では、既存顧客の取引拡大や新規受注の促進などにより増収となり、営業利益や当期純利益も増加する増収増益を達成して順調に推移しています。


※本記事は、株式会社ディーエムエスの有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ディーエムエスってどんな会社?


ダイレクトメールを主体としたメーリングサービスやセールスプロモーション等を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1961年4月にダイレクト・メール・サービスとして東京で設立され、ダイレクトメールの取扱いを中心としたセールスプロモーション業務を開始しました。1991年に現在のディーエムエスに商号を変更しています。その後、1995年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所(現スタンダード市場)へ上場を果たしました。近年では物流事業やイベント事業を強化し、事業領域の拡大を進めています。

現在の従業員数は単体で283名です。筆頭株主は代表取締役社長の山本克彦氏で、第2位も個人株主の山本百合子氏となっています。第3位には投資事業組合が名を連ねており、上位株主は経営陣や個人が中心となっています。

氏名 持株比率
山本克彦 21.35%
山本百合子 5.25%
光通信KK投資事業有限責任組合 4.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は山本克彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山本克彦 代表取締役社長 1995年第一勧業銀行に入社し、1998年同社に入社。2000年社長室長、取締役等を経て2001年4月より現職。デック代表取締役会長なども歴任。
上林晋 常務取締役関西支社担当 1986年同社に入社し、第四営業部長、執行役員第三営業統括部長等を歴任。2017年取締役に就任し、2020年常務取締役に就任。2025年より現職。
金沢潤 常務取締役業務本部長 1986年同社に入社。執行役員第一オペレーション統括部長等を経て2017年取締役就任。2021年執行役員業務本部長となり、2022年より現職。
森健 取締役管理本部長 1989年同社に入社し、2019年経営企画室長、2020年執行役員経営企画室長を歴任。2025年4月に執行役員管理本部長となり、同年6月より現職。
松原利光 取締役営業本部長 1990年同社に入社。執行役員等を経て2024年に執行役員第一営業統括部長に就任。2025年4月に執行役員営業本部長となり、同年6月より現職。
丹野浩二 取締役(監査等委員) 1984年同社に入社。品質管理部長などを経て、2021年6月に取締役(監査等委員)に就任。


社外取締役は、中島信子(元全日本空輸)、梶谷篤(梶谷綜合法律事務所弁護士)、柿尾正之(元日本通信販売協会)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ダイレクトメール事業」「物流事業」「セールスプロモーション事業」「イベント事業」「賃貸事業」を展開しています。

ダイレクトメール事業


ダイレクトメールの企画・制作から、情報処理、封入・封緘、発送、アフターフォローまで、ダイレクトメールに関するあらゆる業務をトータルサポートしています。また、ダイレクトメール発送後の注文や問い合わせといった消費者対応についても、自社のメーリングセンターで対応しています。

収益源は、顧客企業からのダイレクトメール関連の業務受託料です。運営は同社が主体となり、宛名データ等の出力や多種多様なダイレクトメールの封入・封緘を行う機器を備えた自社内のメーリングセンターを活用して一括で実施しています。

物流事業


通販商品の出荷代行、キャンペーン景品の配送、支店や店舗間における販促品・用度品の保管管理発送など、消費者・企業双方に向けた物流業務の提案から運用までを幅広くサポートしています。EC市場の拡大を捉えたサービス展開が特徴です。

収益源は、顧客企業からの物流代行手数料や保管・発送等の受託料です。運営は同社が行っており、商品等の入荷検品、流通加工、バーコード管理、出庫、仕分け、梱包作業を一括して行うリソースを自社内の物流センターに保有しています。

セールスプロモーション事業


情報誌編集企画・制作、フィールド・サービス、キャンペーン企画、応募整理、グッズ・ノベルティ企画・開発・制作、マーケティングリサーチ、テレマーケティングなど、目的に応じた効果的な企業の販売促進活動をサポートしています。

収益源は、企業や自治体から支払われる業務委託費です。同社のコールセンターやバックオフィス機能を最大限に活用し、企画設計からシステム開発を含む各種支援業務の運営を同社が直接行っています。

イベント事業


スポーツ事業イベント、ビジネス事業イベント、文化事業イベントなど、多種多様なイベントの企画から実施、アフターフォローまで、消費者と企業双方のニーズに合ったイベント事業の運営をサポートしています。

収益源は、イベントの運営業務委託費や警備業務等の受託料です。運営は同社が主体となり、企画から当日の運営・警備業務までを一貫して行っています。

賃貸事業


自社が所有する不動産を賃貸しています。東京都や大阪府などに保有する賃貸用の土地および建物を活用し、安定的な収益の確保に努めています。

収益源は、不動産のテナントや社宅の一部を貸し出すことによる賃貸料です。同社が主体となって、自社所有不動産の賃貸運営と管理を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は概ね安定して推移しており、当期には303億円と300億円を突破しています。経常利益率も4%から6%台で推移し、堅調な収益性を維持しています。当期は既存事業の拡大により、前年に比べて増収増益を達成しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 280億円 293億円 269億円 276億円 303億円
経常利益 17億円 19億円 14億円 12億円 16億円
利益率(%) 6.1% 6.5% 5.2% 4.3% 5.3%
当期利益 10億円 11億円 15億円 8億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸びており、売上総利益率は約9%台後半を維持しています。営業利益も前年の12億円から15億円へと増加し、営業利益率は4.3%から5.0%へと改善しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 276億円 303億円
売上総利益 26億円 29億円
売上総利益率(%) 9.4% 9.6%
営業利益 12億円 15億円
営業利益率(%) 4.3% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.8億円(構成比41%)、賞与引当金繰入額が0.8億円(同6%)を占めています。また、売上原価においては、運賃が177億円(構成比65%)、外注加工費が52億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるダイレクトメール事業は既存顧客の取引拡大等により増収増益となりました。イベント事業も運営・警備業務の注力で大幅な増収増益を達成しました。セールスプロモーション事業は減収となったものの、業務効率の改善により利益は増加しています。全セグメントにおいて利益が増加する結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ダイレクトメール事業 228億円 248億円 16億円 18億円 7.4%
物流事業 28億円 31億円 0.4億円 0.6億円 1.9%
セールスプロモーション事業 7億円 6億円 1.2億円 1.7億円 28.3%
イベント事業 12億円 17億円 0.7億円 1.3億円 7.6%
賃貸事業 0.8億円 1.1億円 0.3億円 0.7億円 63.6%
連結(合計) 276億円 303億円 12億円 15億円 5.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7億円 19億円
投資CF -9億円 -4億円
財務CF -11億円 -23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「『株主には利益還元で奉仕を』『顧客にはニーズにあった質のよいサービスを』『社員には幸せで豊かなくらしを』『社会には貢献を』提供していく」ことを企業理念としています。また、相互信頼・相互扶助の精神を尊重し、顧客企業と生活者のよい関係づくりをトータルサポートすることを目指しています。

(2) 企業文化


相互信頼・相互扶助の精神を基盤として、夢と感性に満ちた企業組織体を重視しています。また、多様化する消費スタイルを捉えた有益な情報コミュニケーションを推進し、デジタルとリアルの「総合情報ソリューション企業」への進化に向けて前向きに挑戦し続ける文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。2027年3月期の目標としていた以下の数値目標は、当期において前倒しで達成しました。今後は中長期的な成長戦略および次期中期経営計画を新たに策定する予定です。

* 売上高280億円
* 営業利益13億円
* 当期純利益9億円
* ROE5.6%

(4) 成長戦略と重点施策


次世代事業の創出としてデジタル分野での新規事業開発を進めるとともに、物流およびセールスプロモーション事業を第2・第3の柱へと育成します。さらに、デジタルトランスフォーメーションの推進やサステナビリティ・健康経営の推進を通じて、経営基盤の強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


主力事業の枠組みを超えた総合情報ソリューション企業への変貌を目指し、「変革力とリーダーシップを備えた人材の創造」を方針としています。構想力、実行力、自律力、健康力、多様性の5つを柱とし、成果主義を基盤とした人事評価制度や資格取得支援を通じて、従業員の成長を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.7歳 16.6年 5,876,385円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 47.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 92.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 56.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要構造の変化


ダイレクトメール事業による売上が全体の約8割を占めています。デジタルマーケティングとの組み合わせでプロモーション手法として定着していますが、将来において顧客企業の手法に大きな変化が生じた場合、同社の経営成績や今後の事業展開に影響を与える可能性があります。

(2) 技術革新等の影響


持続的な成長のために、各事業において業務の継続的な改善とサービス開発、技術向上を推進しています。しかし、想定しない技術革新や競争環境の激変によって同社のサービスが競争力を失った場合、業績および事業展開に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 郵便制度の改正


ダイレクトメール事業や物流事業において郵便制度を利用しています。インフラとしての持続性を有していますが、サービス内容や料金の改正など、郵便制度に関する変更が実施された場合、同社の業績や事業展開に影響を与える可能性があります。

(4) 外部調達コストの高騰


ラッピングフィルム材、印刷物、梱包資材、配送手段などを外部から調達しています。為替の変動、原燃料価格や物流費の高騰、国内の人手不足等の影響により、調達が困難になるか価格が想定を大きく超えて高騰した場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。