ハリマビステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハリマビステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、清掃や設備保守管理などの建築物総合サービス事業を主力としています。2025年3月期は、前期に受注した新規物件の本格稼働や利益確保への貢献により、売上高280億円、経常利益12億円となり、過去最高の売上収益を更新するとともに増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ハリマビステム の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハリマビステムってどんな会社?


ビルメンテナンス等の建築物総合サービス事業を展開し、官公庁やマンション、民間施設等の管理を行う企業です。

(1) 会社概要


1961年に日光ブロック販売株式会社として設立され、1963年に播磨ビルサービス株式会社へ商号変更し清掃業務を開始しました。1993年に現在の株式会社ハリマビステムへ商号変更し、1995年に日本証券業協会へ店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2025年4月にはグループ内事業再編を実施し、事業基盤の強化を図っています。

同グループは連結従業員1,759名、単体1,370名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は有限会社おおとりで、第2位は光通信、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
有限会社おおとり 16.50%
光通信株式会社 7.30%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名(監査等委員)の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は免出一郎氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鴻 義 久 取締役会長代表取締役 1978年4月同社入社。1992年6月代表取締役社長。2022年6月より現職。
免 出 一 郎 取締役社長代表取締役 1983年4月三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行。2021年6月同社取締役常務執行役員営業本部長。2022年6月より現職。
松 谷 浩 幸 取締役上席執行役員 1987年4月第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2015年6月同社取締役執行役員営業企画担当。2022年4月より現職。
山 本 竹 範 取締役上席執行役員 1991年4月横浜銀行入行。2023年5月同社顧問。2023年6月より現職。
川 﨑 竜 哉 取締役上席執行役員 1994年4月同社入社。2022年4月上席執行役員経営企画本部副本部長兼経営企画部長兼海外事業部長。2023年6月より現職。
池 内 宏 取締役常勤監査等委員 2008年4月同社入社。2015年4月経理部長。2022年4月執行役員経理部長。2025年6月より現職。


社外取締役は、布施明正(弁護士)、望月典子(元横浜銀行支店長)、野田次郎(元神奈川県警察本部総務部長)、山田信之(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築物総合サービス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 清掃業務


公共施設、オフィスビル、店舗、医療施設など多岐にわたる建物において、日常的な清掃業務や定期的な特別清掃業務を提供し、快適な環境を維持しています。

収益は、顧客である施設所有者や管理者から受領する清掃業務委託料によって構成されています。運営は主にハリマビステム、株式会社ビステム・クリーン、協栄ビル管理株式会社、株式会社ハリマライフサポートなどが行っています。

(2) 設備保守管理業務


公共施設やオフィスビル等の電気・空調・給排水などの設備機器に対し、専門技術者の常駐または遠隔監視システムを用いて運転、監視、記録分析などの管理業務を提供しています。

収益は、顧客から受領する設備保守管理料からなります。運営は主にハリマビステム、協栄ビル管理株式会社、株式会社ハリマライフサポートが行っています。

(3) 警備業務


公共施設やオフィスビル等において、常駐警備員による防犯、防災、出入管理などの警備業務を提供し、施設の安全と安心を守っています。

収益は、顧客から受領する警備委託料からなります。運営は主にハリマビステム、協栄ビル管理株式会社が行っています。

(4) 工営業務


エレベーター、空調機器、消防機器等の定期的な保守点検業務や、建築物衛生法に基づく環境測定、点検改善指導などを提供しています。

収益は、保守点検料や工事代金などからなります。運営は主にハリマビステム、共和防災設備株式会社、株式会社関東消防機材、協栄ビル管理株式会社、株式会社ハリマライフサポート、株式会社TECサービスが行っています。

(5) その他


ホテルの客室整備、受付・電話交換業務、マンション管理代行、営繕工事業務など、建物管理に関連する周辺業務を幅広く提供しています。

収益は、各業務の委託料や工事代金などからなります。運営はハリマビステム、協栄ビル管理株式会社、株式会社ハリマライフサポートのほか、株式会社モマ神奈川パートナーズなどの関連会社も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近の2025年3月期には280億円に達しました。経常利益も安定的かつ緩やかな増加基調を維持しており、利益率も4%前後で推移しています。当期純利益についても、売上の伸長に伴い増加傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 242億円 250億円 253億円 266億円 280億円
経常利益 10億円 10億円 10億円 11億円 12億円
利益率(%) 4.0% 4.0% 4.0% 4.0% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 8億円 7億円 8億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は微増しており、営業利益率も改善傾向にあります。原価や販管費のコントロールを行いつつ、事業規模の拡大が利益増に寄与していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 266億円 280億円
売上総利益 35億円 39億円
売上総利益率(%) 13.0% 13.8%
営業利益 10億円 11億円
営業利益率(%) 3.6% 4.1%


売上原価(単体)のうち、外注費が106億円(構成比49%)、労務費が99億円(同46%)と大半を占めています。連結の販売費及び一般管理費においては、その他経費が12億円(構成比42%)、給料及び賞与が10億円(同36%)を占めています。

(3) セグメント収益


報告セグメントは「建築物総合サービス事業」単一ですが、業務別の売上推移を見ると、主力の清掃業務や工営業務、その他業務が順調に増加しており、全体の増収を牽引しています。設備保守や警備業務は概ね横ばいで推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
清掃業務 96億円 100億円
設備保守管理業務 28億円 29億円
警備業務 23億円 23億円
工営業務 61億円 65億円
その他 58億円 63億円
連結(合計) 266億円 280億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスで推移しており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済、配当支払いに充当する「健全型」のキャッシュ・フロー状態を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12億円 9億円
投資CF -8億円 -0.4億円
財務CF -0.6億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、経営理念として『全ての「施設」を快適に、全ての「人」に喜びを。』を掲げています。建物管理会社として進化し続け、安心・安全・快適な施設づくりを通じて社会に貢献し、全てのステークホルダーから「ハリマで良かった!」と評価される未来を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「お客さまの要望に耳をかたむけよう」「人を大切にしともに成長しよう」「新しいことに挑戦しよう」という基本方針を定めています。専門技術と同様に「人」を大切な財産と考え、顧客視点に立ったサービスの提供と従業員の成長、そして新たな領域への挑戦を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2023年度から2025年度までの中期経営計画に加え、2035年度を見据えた「長期ビジョン2026-2035」を策定しています。中期経営計画では「次のステージにステップアップするための基盤整備」を目的としています。

* 2026年3月期売上高:295億円
* 2026年3月期営業利益:14億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「人財の確保・育成と離職低減による地盤強化」を根幹戦略とし、顧客との信頼構築による基礎体力強化、グループ力強化による成長戦略を掲げています。また、長期ビジョンでは「事業エリア拡大」「新規事業開拓」「海外事業展開」「積極的なM&A」の4施策により「挑戦領域」への到達を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最も重要な財産と位置づけ、人財の確保・育成を最重要課題としています。階層別研修や専門性を高める実践的研修の充実に加え、外国人財の受け入れと定着支援も進めています。また、採用力強化、待遇改善や評価制度の運用による働きがい向上、健康経営の推進などを通じて、社内環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.0歳 9.6年 4,422,354円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規雇用) 80.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人財投資額(10億円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材不足や採用難


労働集約型のサービス業であるため、少子高齢化による人手不足や採用難が深刻化した場合、賃金や募集コストの上昇、業務継続の困難化などにより、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、外国人技能実習生の受入れや採用戦略の強化に取り組んでいます。

(2) 短時間労働者に関する法改正


従業員に占める短時間労働者の比率が高いため、最低賃金の引き上げ等の法改正により人件費が増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、契約価格の引き上げ交渉や、ロボット活用等による作業効率化・原価低減に努めています。

(3) 経営環境の悪化


ビルメンテナンス事業は契約価格の値下げ要求や解約のリスクに晒されており、景気低迷による空室率上昇などが業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、顧客基盤の分散やPPP分野、省エネ・環境分野などへの事業展開によりリスク軽減を図っています。

(4) 法令違反等による社会的制裁


建設業法や警備業法など多くの法的規制を受けており、法令違反や個人情報漏えい等の事故が発生した場合、業務停止や指名停止、社会的信用の失墜により業績に広範囲な影響を与える可能性があります。内部統制やコンプライアンス体制の整備により法令遵守を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。