NSW 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NSW 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場上場。エンタープライズ、サービス、エンベデッド、デバイスの各ソリューション事業を展開。当連結会計年度は、システム機器販売の反動減等により売上高は微減収となったものの、高収益案件の獲得や不採算案件の収束により営業利益は増益となり、減収増益を達成しました。


※本記事は、NSW株式会社 の有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NSWってどんな会社?

ITソリューション、組込み開発、デバイス開発など幅広い領域でシステム開発やサービスを提供する独立系SIerです。

(1) 会社概要

1966年に事務計算センターとして設立され、1982年に現在の商号へ変更しました。1999年に株式を店頭登録し、2000年には東証一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、同年8月には商号をNSWへと変更しています。

同グループの連結従業員数は2,487名、単体では2,024名です。筆頭株主は同社代表取締役社長が代表を務めるタダ・コーポレーション、第2位は創業家一族の個人、第3位は信託業務を行う信託銀行となっており、創業家や安定株主による保有比率が高い構成です。

氏名 持株比率
タダ・コーポレーション 33.55%
多田修人 10.31%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.74%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役執行役員社長は多田尚二氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
多田尚二 代表取締役執行役員社長 ナカヤ取締役等を経て2004年同社取締役。2008年社長就任。タダ・コーポレーション社長を兼務し、2013年より現職。
阿部徳之 取締役執行役員副社長 1987年同社入社。デバイスソリューション事業部長、プロダクトソリューション事業本部長等を歴任。2024年より現職。
須賀譲 取締役執行役員副社長 富士銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ情報総研等を経て2017年同社出向。総務人事部長、コーポレート本部長等を歴任し2024年より現職。
竹村大助 取締役執行役員専務 2001年同社入社。クラウドソリューション部長、ビジネスイノベーション事業部長、サービスソリューション事業本部長等を歴任し2024年より現職。
佐野滋 取締役(常勤監査等委員) 日本電気入社。NECソリューションイノベータ常勤監査役等を経て、2021年同社内部監査室長。2022年より現職。


社外取締役は、下川原郁子(元東芝執行役員)、増井正行(元三菱油化入社)、石井尚子(弁護士)、山口美幸(公認会計士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「エンタープライズソリューション」「サービスソリューション」「エンベデッドソリューション」「デバイスソリューション」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) エンタープライズソリューション

製造業、小売業、物流業向けのビジネスソリューション事業や、金融・公共分野向けのシステム開発等を提供しています。また、各ソリューションに伴うPC・サーバーなどの機器販売も行っています。

収益は、顧客からのシステム開発受託費や機器の販売代金から得ています。運営は主にNSWが行っています。

(2) サービスソリューション

IoT・AIサービスやWebサイト・EC構築などのデジタルソリューション事業と、クラウド環境構築やデータセンター運用などのインフラサービスを提供しています。

収益は、システムの構築費用やデータセンター等の運用・管理サービスの利用料から得ています。運営は主にNSWが行っています。

(3) エンベデッドソリューション

オートモーティブや産業機器向けの組込みアプリケーション、ミドルウェア、ドライバ開発等を行っています。製品のスマート化や高品質設計を支援するソリューションを提供します。

収益は、顧客メーカー等からのソフトウェア開発受託費から得ています。運営は主にNSWが行っています。

(4) デバイスソリューション

画像処理や通信関連などのLSI設計やボード設計を行っています。高位設計から論理設計、検証、レイアウト設計、製造テストまで、LSI開発の工程に応じたソリューションを提供します。

収益は、半導体メーカー等からの設計・開発受託費から得ています。運営は主にNSWが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台後半から500億円規模へと拡大傾向にあります。当期はシステム機器販売の反動減等によりわずかに減収となりましたが、利益面では経常利益が連続して増加しており、収益性の向上が見られます。当期純利益については、当期に投資有価証券評価損を計上した影響で減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 393億円 435億円 462億円 503億円 500億円
経常利益 42億円 50億円 54億円 59億円 62億円
利益率 10.8% 11.6% 11.8% 11.8% 12.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 35億円 41億円 43億円 37億円

(2) 損益計算書

売上高はほぼ横ばいですが、売上総利益および営業利益は増加しており、利益率が改善しています。原価率の低減や不採算案件の収束などが寄与し、本業の収益力が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 503億円 500億円
売上総利益 100億円 105億円
売上総利益率 19.9% 21.0%
営業利益 59億円 61億円
営業利益率 11.7% 12.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が17億円(構成比39%)、その他経費が10億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益

エンタープライズソリューションは機器販売の減少等により減収減益となりました。一方、サービスソリューションはIoT関連の伸長と不採算案件の収束により大幅増益を達成しました。エンベデッドは自動車関連が好調で増収増益、デバイスは投資抑制の影響を受け横ばい圏での推移となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エンタープライズソリューション 179億円 172億円 24億円 23億円 13.3%
サービスソリューション 125億円 126億円 4億円 8億円 6.6%
エンベデッドソリューション 103億円 108億円 16億円 17億円 16.0%
デバイスソリューション 96億円 95億円 14億円 13億円 13.5%
連結(合計) 503億円 500億円 59億円 61億円 12.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社のCFパターンは「改善型」です。本業で得た資金に加え、定期預金の払戻等により投資CFがプラスとなり、手元資金が増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 51億円 38億円
投資CF -87億円 64億円
財務CF -9億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「優れたシステムを創造、提供し、社会を豊かにしたい」という想いを込めた企業理念「Humanware By Systemware」の実現に向け、事業を推進しています。

(2) 企業文化

創業以来重視してきた行動規範「NSW Way」のもと、事業活動を行っています。具体的には、「常に時代の先を見る視点」「お客様中心のビジネス発想」「人間の持つ可能性を最大限に活かす人材活用の思想」「自立自営の精神と礼儀正しく謙虚で誠実な社風」「社会に貢献する企業姿勢」を掲げています。

(3) 経営計画・目標

「収益性の高い企業体質の実現」に向けて、以下の経営指標を掲げています。
* 売上高:510億円(2026年3月期予想)
* 営業利益:51億円(2026年3月期計画)
* 営業利益率:10.0%(2026年3月期計画)

(4) 成長戦略と重点施策

2025年4月からの3ヵ年計画では、「DRIVE DX×Change The Standard」をコンセプトに、DXによる顧客価値共創の加速とビジネス・人材・テクノロジーの進化を推進します。具体的には、AI関連サービスの強化によるコア事業・基盤事業の拡大、新卒・キャリア採用強化と人材育成による経営基盤の構築、研究開発やビジネス開発への戦略的投資に注力します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

最大の資産である「人材」の能力を最大限に引き出すことを方針としています。多様なバックグラウンドを持つ人材の採用強化に加え、高度な技術力やプロジェクトマネジメント力を持つ人材の育成に向け、教育システムの刷新に取り組んでいます。また、複線型人事制度により、ライン職とプロフェッショナル職のキャリアパスを整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.2歳 14.1年 6,311,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 37.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.6%
男女賃金差異(正規雇用) 82.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 45.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性労働者の割合(18.0%)、年次有給休暇取得率(74.8%)、管理職の中途採用比率(42.3%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存度

同社グループの売上高において、日本電気株式会社およびその系列企業が占める割合が高くなっています(当連結会計年度は11.1%)。長年の安定的な取引関係にありますが、同社グループの事業環境の変化等によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 不採算案件の発生

ソフトウェアの受託開発において、顧客都合による仕様変更や認識の不一致等により、当初計画した品質・コスト・納期を維持できず、案件が不採算化するリスクがあります。プロジェクト管理を徹底していますが、不採算案件が発生した場合、その規模によっては業績に影響を与える可能性があります。

(3) 受注環境の変動

企業のIT投資動向は景気変動の影響を受けやすく、投資意欲の減退やコスト削減要請が強まる可能性があります。IT投資の抑制や顧客の信用状態の悪化が生じた場合、稼働率の低下や採算性の悪化を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティリスク

顧客の機密情報を取り扱う業務において、サイバー攻撃や内部要因による情報漏洩が発生するリスクがあります。ISO認証取得や教育徹底等の対策を講じていますが、万一漏洩が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。