NSW 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NSW 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するNSWは、エンタープライズ、サービス、エンベデッド、デバイスの4領域でITソリューションを提供する企業です。製造業や金融機関向けのシステム構築から半導体設計まで幅広く展開しています。直近の業績は、各事業が伸長し売上高は増加したものの、増収減益の傾向にあります。


※本記事は、NSW株式会社の有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NSWってどんな会社?


製造業や金融機関向けシステム構築からIoT、組込み開発、半導体設計まで幅広いITソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


1966年に設立し、ソフトウエア開発および受託計算事業を開始しました。1990年に通商産業省(現経済産業省)からシステムインテグレータ企業として認定を受け、1999年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場、2000年に同市場第一部銘柄に指定されています。2022年に現在のNSWに商号変更しました。

現在、同社は単体で2,070名、連結で2,536名の従業員を抱えています。筆頭株主はタダ・コーポレーションで、第2位は創業者の多田修人氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
タダ・コーポレーション 33.55%
多田修人 10.31%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役会長(CEO)の多田尚二氏がトップを務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
多田尚二 代表取締役会長(CEO) ナカヤ取締役などを経て、2004年に同社取締役就任。代表取締役社長を経て、2026年より現職。
竹村大助 代表取締役執行役員社長サービスソリューション事業本部・エンタープライズソリューション事業本部担当(COO) デジタルヘッドクォーターズを経て、2001年に同社入社。サービスソリューション事業本部長などを経て、2026年より現職。
阿部徳之 取締役執行役員副社長デバイスソリューション事業本部長・エンベデッドソリューション事業本部担当(CTO,CIO) 1987年に同社入社。プロダクトソリューション事業本部長などを経て、2024年より現職。
須賀譲 取締役執行役員副社長コーポレートサービス本部長(CFO,CHRO) 富士銀行(現みずほ銀行)などを経て、2017年に同社へ出向。総務人事部長や経理部長などを歴任し、2024年より現職。
佐野滋 取締役(常勤監査等委員) 日本電気などで経理部長や常勤監査役を歴任後、2021年に同社内部監査室長に就任。2022年より現職。


社外取締役は、下川原郁子(元東芝執行役員)、増井正行(元東海カーボン情報システム室長)、石井尚子(桜通り法律事務所パートナー)、山口美幸(小谷野税理士法人社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンタープライズソリューション」「サービスソリューション」「エンベデッドソリューション」「デバイスソリューション」の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) エンタープライズソリューション


製造業、小売業、物流業向けのビジネスソリューションや、金融分野、官公庁などの公共分野向けITソリューションを提供しています。また、システム機器販売として各ソリューションに伴う機器の納入も行っています。

顧客へのシステム導入や機器販売による売上を主な収益源としています。運営は同社、NSS、および恩斯達信息技術(北京)有限公司が行っています。

(2) サービスソリューション


IoT&AIサービスやWebサイト構築などの業種共通ソリューションに加え、クラウドの環境構築や自社データセンターによる総合的なマネジメントサービスなどを展開しています。

クラウド環境の構築費やシステムの保守・運用マネジメントに伴う継続的なサービス料を収益源としています。運営は同社、NSS、恩斯達信息技術(北京)有限公司が担っています。

(3) エンベデッドソリューション


オートモーティブや産業機器向けのアプリケーション、ミドルウエア、ドライバ開発を中心とした組込み開発事業を行っており、製品のスマート化に向けた各種ソリューションを提供しています。

顧客からのシステム受託開発に伴う開発費等を収益源としています。運営は同社、NSS、および恩斯達信息技術(北京)有限公司が担当しています。

(4) デバイスソリューション


画像処理や通信関連などのLSI設計、ボード設計を行うデバイス開発事業を展開しています。論理設計から製造、テストに至るまで、要件に応じたソリューションを提供しています。

半導体等の設計・開発の受託に伴う開発費や技術提供料を主な収益源としています。運営は同社、NSS、恩斯達信息技術(北京)有限公司、NSW SOLUTION MALAYSIA SDN. BHD.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は毎期着実に増加しており、直近5年間で順調なトップラインの拡大が確認できます。一方、経常利益や当期利益は直近2期でやや伸び悩んでおり、利益率は11%台から10%台へとわずかに低下する傾向が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 435億円 462億円 503億円 500億円 524億円
経常利益 50億円 54億円 59億円 62億円 55億円
利益率(%) 11.6% 11.8% 11.8% 12.3% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 34億円 40億円 42億円 35億円 36億円

(2) 損益計算書


直近の業績では、売上高および売上総利益ともに堅調に推移し増加しています。一方で、経費の増加や不採算案件の影響などにより営業利益は減益となっており、営業利益率も低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 500億円 524億円
売上総利益 105億円 108億円
売上総利益率(%) 21.0% 20.6%
営業利益 61億円 53億円
営業利益率(%) 12.2% 10.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が17億円(構成比31%)、広告宣伝費が9億円(同16%)、その他が10億円(同17%)を占めています。売上原価の主な内訳は、外注費が171億円(構成比45%)、労務費が143億円(同38%)となっています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで売上高が増加しており、順調な成長を示しています。特にエンタープライズソリューションが全体を牽引する規模となっており、サービス、エンベデッド、デバイスの各ソリューションも安定して売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エンタープライズソリューション 172億円 174億円
サービスソリューション 126億円 141億円
エンベデッドソリューション 108億円 114億円
デバイスソリューション 95億円 96億円
連結(合計) 500億円 524億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 38億円 28億円
投資CF 64億円 -16億円
財務CF -14億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「優れたシステムを創造、提供し、社会を豊かにしたい」という想いを込めた企業理念「Humanware By Systemware」を掲げています。この理念の実現に向け、事業を通じて社会課題の解決に資する機会を創出し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、創業以来重視してきた行動規範である「NSW Way」のもとで事業を展開しています。具体的には、「常に時代の先を見る視点」「お客様中心のビジネス発想」「人間の持つ可能性を最大限に活かす人材活用の思想」「自立自営の精神と礼儀正しく謙虚で誠実な社風」「社会に貢献する企業姿勢」を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは「収益性の高い企業体質の実現」に向けて、売上高、営業利益および営業利益率を経営指標として掲げています。2025年4月からスタートした中期経営計画において、最終年度の2027年3月期に以下の目標を計画しています。

* 売上高540億円
* 営業利益54億円
* 営業利益率10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な成長に向けて、基本コンセプト「DRIVE DX×Change The Standard」のもと、顧客価値の共創を加速させます。AIを活用したITサービスの多様化・高度化に対応するため、技術やノウハウを強化し、各セグメントの注力分野での競争力向上を図ります。また、人材育成の強化やブランド戦略への投資を積極的に行います。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」を最大の資産と位置づけ、社員の能力を最大限に引き出すことを方針としています。「DRIVE DX~高付加価値を生み続ける人材の育成」を掲げ、自律的に学び挑戦し続ける人材の採用・育成を推進しています。役割重視の人事制度や複線型人事により、適材適所での配置と公正な評価を通じたエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.3歳 14.0年 6,487,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.2%
男女賃金差異(非正規) 53.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(75.0%)、時間外労働時間(18時間01分)、採用者に占める女性労働者の割合(15.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT投資動向など受注環境の変化


企業のIT投資は拡大が期待されるものの、費用対効果への意識が高まっています。景気変動によりIT投資動向が変化した場合や、生産コストダウンの要請が想定を超えた場合、稼働率の低下や採算確保が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先への依存


同社グループは、売上高に占める日本電気およびその系列企業(NECグループ)の割合が高く、当期においては11.0%となっています。取引基本契約を締結し安定した関係を築いていますが、事業環境の変化等により取引関係に影響が生じるリスクがあります。

(3) 不採算案件の発生


顧客からの要求事項に基づくソフトウエア受託開発において、見積審議会等による管理で採算悪化の防止に努めています。しかし、開発途中での大幅な仕様変更や納品物に対する認識の不一致により、予定したコストや納期を維持できず不採算化するリスクがあります。

(4) データセンター事業におけるシステム障害


顧客のシステムを継続的かつ安定的に稼働させるため、免震構造の採用やバックアップ機能の充実などハード・ソフト両面での整備を徹底しています。しかし、想定を超える大規模な自然災害等によりシステム障害が発生し、サービス提供が滞った場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。