※本記事は、日本空調サービス株式会社 の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本空調サービスってどんな会社?
空調設備のメンテナンスや維持管理、リニューアル工事を全国および海外で展開する独立系企業です。
■(1) 会社概要
1964年に名古屋市で設立され、空調・電気設備の保守管理等を開始しました。1996年に日本証券業協会へ店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2007年には東証・名証の各市場第一部銘柄に指定されました。2025年4月には、技術力の向上を目的とした技術・研修センターを開設しています。
連結従業員数は2,210名、単体では1,465名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は従業員持株会、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっており、特定の親会社を持たない独立した経営体制がうかがえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.71% |
| 日本空調サービス従業員持株会 | 7.33% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.09% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は依藤 敏明氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 依藤 敏明 | 代表取締役社長 | 1987年入社。横浜支店長、九州支店長、執行役員経営企画部長兼海外部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 諏訪 雅人 | 取締役上席執行役員人事部長 | 1984年入社。三河支店長、関東支店長、人事部長、執行役員経営企画部長などを歴任。2022年10月より現職。 |
| 白石 一彦 | 取締役上席執行役員事業部門統括 | 1986年入社。日本空調四国社長、名古屋支店長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 西川 博志 | 取締役 | 1982年日本空調北陸入社。同社ソリューション営業部石川部長、常務取締役、代表取締役社長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、田中 登志男(公認会計士・税理士)、東本 強(元三菱重工業)、北川 ひろみ(弁護士・大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建物設備メンテナンス」および「建物設備工事」事業を展開しています。
■(1) 建物設備メンテナンス
空調設備を中心とした建物設備の維持管理、メンテナンス、環境診断・評価、ソリューション提案を行っています。主な顧客は、高度な環境維持が求められる病院、研究所、製造工場などの施設保有者です。
収益は、顧客である施設保有者から受け取る保守メンテナンス契約料やスポットメンテナンス料からなります。運営は主に日本空調サービスや、日本空調システム、日本空調北陸などの連結子会社が行っています。
■(2) 建物設備工事
メンテナンスサービスを提供する現場から派生するリニューアル工事や、新築設備工事などを手掛けています。設備のライフサイクルに合わせ、メンテナンスと一体となったサービスを提供します。
収益は、顧客からの工事代金等からなり、工事の進捗に応じて収益を認識します。運営は日本空調サービスおよび各連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、直近では600億円台に達しています。経常利益も30億円台から40億円台へと推移し、利益率も6%台後半で安定しています。当期純利益も増加基調を維持しており、全体として安定的な成長を続けています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 492億円 | 499億円 | 529億円 | 582億円 | 644億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 28億円 | 31億円 | 39億円 | 44億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 5.6% | 5.8% | 6.6% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 27億円 | 16億円 | 22億円 | 24億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約20%、営業利益率は6%台を維持しており、コストコントロールが適切に行われていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 582億円 | 644億円 |
| 売上総利益 | 110億円 | 130億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.8% | 20.1% |
| 営業利益 | 36億円 | 42億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が54億円(構成比61.0%)、その他経費が27億円(同31.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両部門とも増収となりました。特に建物設備工事部門の売上高の伸びが顕著です。建物設備メンテナンス部門も堅調に推移しており、既存顧客との契約維持や新規獲得が進んでいることがうかがえます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 建物設備メンテナンス | 367億円 | 398億円 |
| 建物設備工事 | 215億円 | 246億円 |
| 連結(合計) | 582億円 | 644億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスであることから、積極型(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)に該当します。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 24億円 | 50億円 |
| 投資CF | -18億円 | -35億円 |
| 財務CF | -3億円 | 4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「お客様の事業活動のサステナビリティに寄与し、社会全体の価値向上を図る」ことをパーパス(存在意義)とし、「サステナブルな全てのステークホルダーの幸せ向上」を長期ビジョンとしています。その実現のため、「お客様に安心感を与える最適な環境を維持するために、技術力と人的資源を結集させ、高品質サービスを提供する」ことをミッションとしています。
■(2) 企業文化
「何事にも誠実であることを基本姿勢とし、よりよい結果を目指す努力を惜しまず、あらゆるステークホルダーと納得いくまで対話を行い、最後まで成し遂げる信念をもって実現させる」というあり方を重視しています。これをもとに、「フェアにやる」という企業風土の醸成を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同グループは「2024中期5ヵ年経営計画」を策定し、企業価値の拡大を推進しています。最終年度となる2029年3月期の数値目標として、以下を掲げています。
* 売上高:740億円
* 営業利益:43億円
* 経常利益:45億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:32億円
■(4) 成長戦略と重点施策
永続的な成長のため、サステナビリティに寄与する建物設備メンテナンスを安定的に拡大し、強固な経営基盤を構築する方針です。具体的には、2025年4月より本格稼働した技術・研修センターを活用した人的資本の価値向上、病院や工場など特殊環境施設への傾注、省エネ提案の強化、海外事業の拡大と強化を加速させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期ビジョンの達成には従業員のエンゲージメントや技術力の向上が最重要であると考え、「人的資本の価値向上」を推進しています。技術・研修センターの設立により人材教育の質と効率を高め、新入社員の早期戦力化を図ります。また、女性・外国人・中途採用者などの多様な人材確保と、適正な評価による管理職登用を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.3歳 | 14.6年 | 6,589,298円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 45.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 64.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部経営環境の変動
経済動向、金融危機、戦争、自然災害、気候変動、感染症の流行などが受注減少や事業停滞を引き起こす可能性があります。これに対し、病院や工場など多様な業種への展開、重要性の高い顧客への傾注、ソリューション提案による環境問題へのアプローチ、BCP策定などを進めています。
■(2) 競争環境の激化
メンテナンスコストの見直し意識の加速や新規受注競争の激化がリスク要因です。これに対し、独立系企業としての柔軟性、全国・海外への拠点展開による迅速な対応、特殊環境施設への傾注、ソリューション力とトータルサポート力による高品質サービスの提供で差別化を図っています。
■(3) 労働力の確保
生産年齢人口減少による採用難や、人材不足による技術力低下、労働環境悪化が懸念されます。技術・研修センターを活用した人材教育による技術力底上げ、国内外での人材確保、処遇改善によるエンゲージメント向上に注力し、人的資本の価値向上を図っています。
■(4) 海外展開のリスク
進出国における法規制、政治経済の混乱、為替変動などが事業停滞を招く可能性があります。現地情報の収集、海外マネジメント部門や国内部門による支援、ソリューション力とトータルサポート力を活かした高品質サービスの提供により、競合との差別化を図っています。



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