※本記事は、日本空調サービス(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の有価証券報告書の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本空調サービスってどんな会社?
同社は空調を中心とした建物設備の保守管理、および維持管理から派生するリニューアル工事を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1964年に空調・電気設備の保守管理等を目的に設立されました。1996年に店頭登録後、2004年にジャスダック上場を果たしました。2006年の東京・名古屋証券取引所第二部上場を経て、2007年に両市場の第一部に指定され、2022年にはプライムおよびプレミア市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結で2,268名、単体で1,516名です。筆頭株主および第3位株主は資産管理業務を行う信託銀行となっています。また、第2位には日本空調サービス従業員持株会が名を連ねており、従業員による安定的な資本参加が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.22% |
| 日本空調サービス従業員持株会 | 7.54% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は依藤敏明氏が務めています。社外取締役は3名で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 依藤 敏明 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社。横浜支店長、九州支店長、経営企画部長兼海外部長等を歴任。2022年取締役を経て、2024年4月より現職。 |
| 諏訪 雅人 | 取締役上席執行役員人事部長 | 1984年同社入社。中国支店長等を経て人事部長。2019年執行役員、2022年取締役執行役員を経て同年10月より現職。 |
| 白石 一彦 | 取締役上席執行役員事業部門統括 | 1986年同社入社。中四国支店長、名古屋支店長等を経て2022年取締役上席執行役員。日本空調システム等の役員を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 西川 博志 | 取締役 | 1982年日本空調北陸入社。同社開発営業部長、ソリューション事業部石川部長等を経て2022年代表取締役社長。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、北川ひろみ(南山大学法務研究科教授)、西原浩文(西原浩文公認会計士税理士事務所所長)、柘植里恵(柘植公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建物設備メンテナンス部門」および「建物設備工事部門」等の事業を展開しています。
■(1) 建物設備メンテナンス部門
空調を中心とした建物設備のメンテナンスおよび維持管理サービスを提供しています。大型医療設備や工場などの特殊環境を有する施設において、設備の安定稼働と省エネの両立による施設運営の最適化を支援し、設備および環境の診断や評価を行っています。
収益源は、年間契約に基づく保守メンテナンスサービスや維持管理業務、および個別契約によるスポットメンテナンスの提供対価です。運営は主に日本空調サービスおよび日本空調システムをはじめとする国内外の連結子会社が行っています。
■(2) 建物設備工事部門
メンテナンスサービスを提供する現場から派生する、既設設備のリニューアル工事や新築設備工事などを手がけています。顧客の事業活動におけるサステナビリティ向上を目指し、省エネや省コスト提案、環境改善提案に基づくソリューションを提供しています。
収益源は、工事契約に基づくリニューアル工事や設備工事などの施工対価です。運営は主に日本空調サービスおよび日本空調システム、日本空調北陸、日本空調東北などの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が持続的に拡大しており、利益面でも堅調な成長を遂げています。特に直近の事業年度においては、特殊な環境を有する施設等での高付加価値サービスの提供や適正価格での受注が寄与し、経常利益および当期利益ともに大幅な増益を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 499億円 | 529億円 | 582億円 | 644億円 | 692億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 31億円 | 39億円 | 44億円 | 51億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 5.8% | 6.6% | 6.8% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 16億円 | 22億円 | 24億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益が順調に拡大しています。売上総利益率および営業利益率ともに改善傾向にあり、採算性の高い案件の獲得や価格転嫁が奏功し、収益性の向上が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 644億円 | 692億円 |
| 売上総利益 | 130億円 | 149億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.1% | 21.5% |
| 営業利益 | 42億円 | 48億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が62億円(構成比61%)、役員報酬が6億円(同6%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業活動で得た資金をもとに投資を行い、同時に借入金の返済なども進める健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 50億円 | 28億円 |
| 投資CF | -35億円 | -15億円 |
| 財務CF | 4億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も57.6%でいずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様の事業活動のサステナビリティに寄与し、社会全体の価値向上を図る」ことをパーパス(存在意義)として掲げています。また、「お客様に安心感を与える最適な環境を維持するために、技術力と人的資源を結集させ、高品質サービスを提供する」をミッション(果たすべき使命)としています。
■(2) 企業文化
同社は「何事にも誠実であることを基本姿勢とし、よりよい結果を目指す努力を惜しまず、あらゆるステークホルダーと納得いくまで対話を行い、最後まで成し遂げる信念をもって実現させる」という考え方を重視しています。これを基に、フェアにやるという企業風土の醸成を一層推進するためのコンプライアンスを充実させています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年3月期を最終年度とする「2026中期4ヵ年経営計画」を策定し、持続的な成長と資本生産性の改善を目指しています。
・売上高:900億円
・営業利益:72億円
・経常利益:76億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:53億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、建物設備メンテナンスを通じてお客様の施設の安定稼働と省エネの両立による施設運営最適化を実現させることで、企業価値の拡大を推進しています。
・エンゲージメントとリクルーティングの拡充による人的資本の強化
・現場対応能力や提案能力など総合的な技術力の再構築
・太陽光発電事業による製造工場等へのアプローチ強化や海外事業の拡充
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人的資本の価値向上」を最重要の経営戦略と位置づけています。従業員への還元拡充とパフォーマンスの継続的改善という好循環を加速させ、人材の多様性や育成を推進しています。技術・研修センターを活用した実践的研修を通じて、技術力の底上げと安全意識の向上、新人や若年層の早期戦力化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.2歳 | 14.3年 | 7,243,492円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 59.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理的地位にある労働者に占める中途採用者等の割合(45.4%)、エンゲージメントスコア(70.2ポイント)、CO2削減量(14,481トン)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部経営環境の変動
世界の経済動向、金融危機、自然災害、気候変動や感染症の流行等により、受注の減少や事業活動が停滞・停止するリスクがあります。これに対し、多様な業種へのサービス展開や、省エネ・環境改善提案による積極的なソリューションの提供、さらには事業継続計画(BCP)の策定などに取り組んでいます。
■(2) 労働力の確保と人的資本
国内の生産年齢人口減少に伴う採用環境の競争激化や人材不足により、技術力およびサービス提供力が低下するリスクがあります。同社は対策として、技術・研修センターを活用して人材教育の質と効率を高め、新入社員の早期戦力化を図るとともに、処遇改善によるエンゲージメントの向上に注力しています。
■(3) メンテナンス・工事施工の事故等
従業員の人為的なミスによる顧客への損失発生や、竣工後の瑕疵担保責任に伴う補修工事、賠償責任保険でまかないきれない損失による信用失墜のリスクがあります。これに対して、充実した研修やOJTによる技術力向上を図るとともに、品質管理および品質保証体制の強化を推進しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。