※本記事は、株式会社アール・エス・シーの有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アール・エス・シーってどんな会社?
警備・清掃・設備管理などのビルメンテナンスと、人材派遣などのサービスを総合的に提供する企業です。
■(1) 会社概要
1971年に建物内外の安全および維持管理を目的に設立され、1978年のサンシャインシティ完成を機に本社を同所に移転しました。1997年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、2022年の市場区分見直しにより東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。2023年に友和商工、2025年にクリーンフォースを子会社化するなど事業拡大を進めています。
同社グループの連結従業員数は411名、単体では270名です。筆頭株主は同社の主要顧客でもあるサンシャインシティで、第2位は三菱地所、第3位はテーオーシーといずれも不動産関連企業が名を連ねており、主要顧客との間に安定した資本関係と取引関係を構築していることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サンシャインシティ | 25.34% |
| 三菱地所 | 6.41% |
| テーオーシー | 3.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名、計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は金井宏夫氏です。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 金井 宏夫 | 代表取締役社長監査室担当 | 1997年同社総務部長。大阪支店長、ビルマネジメント事業部長、常務取締役などを経て2013年6月より現職。アール・エス・シー中部代表取締役会長を兼任。 |
| 堀 伸幸 | 取締役副社長執行役員経営企画部担当兼サステナビリティ推進担当 | サンシャインシティ取締役などを経て2023年同社入社。取締役専務執行役員を経て2025年6月より現職。 |
| 太田 和孝 | 取締役専務執行役員営業推進部担当兼大阪支店担当兼名古屋支店担当兼仙台支店担当 | 2000年同社総務部長。人材サービス事業部長、PFI推進事業部長、名古屋支店長、常務取締役などを経て2025年6月より現職。 |
| 山口 規 | 取締役常務執行役員総務部担当兼コンプライアンス担当兼関連企業担当 | 2013年同社人材サービス事業部長。総務部長、取締役執行役員などを経て2025年6月より現職。アール・エス・シー中部取締役などを兼任。 |
社外取締役は、但木敬一(元検事総長)、中澤三男(元最高検察庁事務局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建物総合管理サービス事業」および「人材サービス事業」を展開しています。
■(1) 建物総合管理サービス事業
官公庁や民間企業のオフィスビル、商業店舗、ホテル、病院などの各種建物に対し、警備保障、清掃、オフィスサービス、設備管理、工事などのサービスを提供しています。主要な顧客にはサンシャインシティが含まれ、AI警備システムの導入やセキュリティロボットによる新技術活用も提案しています。
収益は、顧客である施設所有者や管理者から受け取る業務委託料などから構成されています。運営は、同社のほか、子会社のアール・エス・シー中部、友和商工、クリーンフォースが行っています。
■(2) 人材サービス事業
情報管理、ファイリング、機器操作等の人材派遣業務や、イベントプロモーションに関連する業務、有料職業紹介業務を展開しています。官公庁の長期案件や臨時の大型イベントプロモーション業務など、顧客のニーズに対応した人材サービスを提供しています。
収益は、派遣先企業や業務委託元から受け取る派遣料金や業務委託料から構成されています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近で増加傾向にあり、当期は88億円と過去5年間で最高を記録しました。経常利益は2億円から3億円前後で推移しており、当期は3.1億円となりました。当期純利益については、前期に計上された特別利益の反動などもあり、減益となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 59億円 | 57億円 | 60億円 | 81億円 | 88億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 2.4億円 | 2.0億円 | 3.0億円 | 3.1億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 4.2% | 3.3% | 3.7% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.5億円 | 1.6億円 | 1.3億円 | 2.4億円 | 1.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、営業利益も3億円台を確保しました。売上総利益率は17.2%と前期からやや低下しています。営業利益率は3.4%と前期並みの水準を維持していますが、売上原価の増加などにより利益率の改善には至っていません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 81億円 | 88億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.3% | 17.2% |
| 営業利益 | 2.8億円 | 3.0億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が4.8億円(構成比39.5%)、その他経費が2.3億円(同18.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建物総合管理サービス事業は、グループ会社における工事需要の減少などにより減収減益となりました。一方、人材サービス事業は、臨時の大型イベントプロモーション業務が大きく伸長したことなどから、大幅な増収増益を達成し、全社の業績拡大を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建物総合管理サービス事業 | 72億円 | 69億円 | 6.7億円 | 6.3億円 | 9.1% |
| 人材サービス事業 | 9億円 | 20億円 | 0.4億円 | 1.2億円 | 6.0% |
| 調整額 | - | - | -4.2億円 | -4.4億円 | - |
| 連結(合計) | 81億円 | 88億円 | 2.8億円 | 3.0億円 | 3.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* パターン:**改善型**
* 営業CFはプラス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスとなっています。営業活動で得た資金に加え、定期預金の払戻し等による資金を借入金の返済や株主還元に充てています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.2億円 | 0.2億円 |
| 投資CF | 0.4億円 | 0.2億円 |
| 財務CF | -1.6億円 | -1.6億円 |
* 企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「信頼されるサービスを提供し、人が生活するあらゆる場面において、常に安全・安心・快適な環境を創造する」という経営理念を掲げています。この理念のもと、働き甲斐のある革新し続ける企業を目指し、地域社会の発展に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
信頼されるサービスの提供を重視し、安全・安心・快適な環境を創造するプロフェッショナル集団を目指す文化があります。また、女性の職域拡大を含めた働きやすい職場環境の整備に取り組む「スマイルプロジェクト」を推進するなど、従業員のエンゲージメント向上やダイバーシティ推進を重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、収益構造の向上に取り組んでおり、経営指標としては以下の2つを重要視しています。
* 売上高
* 営業利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
警備・清掃・設備・工事・派遣の各業務を連携させたワンストップソリューションの提案により、事業規模の拡大と収益力の強化を目指しています。また、人材不足への対応と生産性向上のため、AI警備システムやセキュリティロボットなどの新技術活用、業務のDX化を推進します。さらに、経営基盤強化と事業拡大のため、M&A・アライアンス戦略を継続して進めていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本経営とダイバーシティを推進し、人材が持続的に活躍できる職場環境を目指しています。具体的には、従業員の待遇改善、自社研修所における独自の教育実施、資格取得の積極的な奨励を通じて、従業員エンゲージメントを高める方針です。また、女性が活躍できる雇用環境の整備を重点課題とし、「スマイルプロジェクト」を通じて働きやすい職場づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.2歳 | 13.5年 | 4,281,735円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 95.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 94.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 99.0% |
※男性労働者の育児休業取得率について、提出会社における数値の記載はありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の平均勤続年数(8.5年)、育児休業取得率(77.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動によるリスク
建物総合管理サービス事業および人材サービス事業は、国内景気や世界経済の影響を受けやすい性質があります。同業他社との価格競争の激化や、景気悪化による顧客からの値下げ要請などが発生した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制について
警備業法、労働者派遣法、建設業法などの法的規制を受けて事業を行っています。これらの法令に抵触し行政処分を受けた場合や、法令改正への対応に追加費用が発生した場合、業績に影響が出る可能性があります。特に警備業は公安委員会の認定が必要であり、コンプライアンス遵守が重要となります。
■(3) 契約先の情報管理及びプライバシー保護について
業務遂行上、顧客の機密情報やプライバシー情報を知り得る立場にあります。情報管理を重要事項と位置付け対策を講じていますが、万一情報の外部漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求などにより、業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 災害等外的要因による影響
大規模地震などの災害が発生した場合、特に古い耐震基準の建物などで重大な損傷が生じる可能性があります。また、感染症の拡大など予測困難な事態が発生した場合も、同社グループの業務遂行や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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